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富士山噴火避難、備え見直し 病院や学校、静岡県内230施設が計画作成へ

 3月に公表された富士山の噴火に備える避難基本計画。ハザードマップの改定を受けて、旧計画を見直し、病院や福祉施設の避難、学校などの休校、児童生徒の引き渡しなど対策を強化した。市町から避難促進施設に指定された場合、施設は迅速で円滑な避難のため、避難確保計画の作成が求められる。県内では新たに約230施設が計画を作る見込みとなっている。富士山火山防災対策協議会は施設ごとの計画作りの検討事項を詳しく示した。

避難対象エリアマップ
避難対象エリアマップ
病院、福祉施設の主な検討事項
病院、福祉施設の主な検討事項
教育関連施設の主な検討事項
教育関連施設の主な検討事項
古村孝志氏
古村孝志氏
避難対象エリアマップ
病院、福祉施設の主な検討事項
教育関連施設の主な検討事項
古村孝志氏


 基本計画によると、避難確保施設に指定されるのは、第3次避難対象エリアより内側の入院、入所型の医療機関、福祉施設と、第4次避難対象エリアより内側の教育関連施設。県のまとめでは、保育園や学校が83施設、放課後児童クラブや放課後デイサービスなどが111施設、障害者、高齢者施設が30施設、病院は6施設だった。
 避難確保計画は、内閣府や市町が公表している手引きを参考に、施設の立地場所や避難が必要な人数、経路、体制などを記載する。今回公表された基本計画では、施設の形態に応じて検討すべき項目を踏み込んで明記した。
 病院や福祉施設は、診療やサービスの停止時期と連絡方法▽避難車両に乗り込む時間から逆算した避難開始時期▽系列などへの緊急時の避難、転院―など15項目を挙げた。教育関連施設は、突発的な噴火で引き渡しが間に合わない場合の緊急安全確保、授業再開の時期など8項目ある。
 教育関連施設の場合、避難確保計画の策定を求められているのは第4次エリアまでだが、噴火警戒レベル3(入山規制)で、1~6次全エリアで休校や生徒児童の引き渡しを行う。裾野市の山本泰男危機管理調整監は「登下校中などさまざまなパターンを想定し、引き渡しの方法を徹底する必要がある」と強調する。同市では5月に須山地区の小中学校、幼稚園で引き渡し訓練を実施する予定で、市内の他の学校関係者にも見学してもらい、計画作成の参考にしてもらう。

 提言 古村孝志 東京大地震研究所所長・教授 人工地震 判別の方法は
 昨年3月に起きた福島県沖の地震や昨年11月の三重県沖の深発地震の際、筆者の元に「人工地震だという投稿がネットで流れている」との問い合わせがあった。さらには今年2月のトルコ・シリアの地震でも同様の問い合わせが寄せられた。同じ場所で繰り返し起きていることや、震源から遠く離れた場所で大きな震度(異常震域)が見られるのがその証拠だという。人工地震の特徴だという波形も載っている。
 もちろん荒唐無稽な主張だが、投稿へのツイートには人工地震の存在の有無と、当該の地震が人工地震かどうかの議論が混在していた。人工地震というもの自体は存在する。人工的に起こした爆発や、重りの落下などで揺れを起こす技術で、石油ガス資源調査などに用いられている。最近では制御震源と呼ぶことが多いためか、昔の新聞の見出しに人工地震を見つけると、地震兵器のようなものをイメージさせるのかもしれない。
 私も大学院生時代に、山梨から静岡を横断する人工地震探査に参加したことがある。全国から集まった研究者と手分けして安倍川沿いに地震計を設置し、深夜に山奥で行われた発破の微弱な揺れを観測した。発破点が見える距離では突き上げるような瞬間的な揺れを感じるが、数キロも離れると地震計でしか捉えられない微弱な揺れとなる。
 自然地震の波形は縦波が小さく、後続の横波が何倍も大きい。一方、爆発による揺れは、縦波が大きく横波が小さい特徴がある。震源に近い場所では縦波と横波の到着時間の差が短く、波形が重なり見づらいが、時間軸を拡大すれば、自然地震か人工地震か容易に区別がつく。

 ふるむら・たかし 北海道教育大助教授などを経て、2008年4月より東京大地震研究所教授。23年4月に所長就任。専門は地震学。観測データ解析とコンピューターシミュレーションから大地震の強い揺れと津波の成因を研究。59歳。
 

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