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能登半島地震 群発領域の拡大謎多く 小原一成/東京大地震研究所教授【提言・減災】

 1月1日、能登半島を含む北陸地方をマグニチュード(M)7・6の大地震が襲った。令和6年能登半島地震である。この地震により建物倒壊、斜面崩壊、火災、津波等で甚大な被害が生じた。この災害により犠牲になられた皆さまに心より哀悼の意をささげるとともに、すべての被災者の皆さまに心よりお見舞い申し上げたい。

小原一成氏
小原一成氏

 能登半島では、昨年5月5日にもM6・5の地震が発生したほか、20年12月より群発地震活動が継続していた。この群発活動は、震源が移動したり、顕著な地殻変動を伴いつつ地下には電気を通しやすい物質の存在が推定されたりしたことから、流体の影響で生じたと考えられている。
 群発地震の場合、火山地域等で中小規模の地震が継続する事例が多いが、能登半島での一連の活動は、今回の大地震も含め分からないことばかりである。ただ、能登半島北方沖には海底活断層が存在しており、また、07年能登半島地震の震源域と群発活動域の間で地震活動が空白になっていたことから、地震活動の拡大が懸念されていた。それが現実のものになってしまった可能性もある。いずれにしても、これまで能登半島北東部の30キロ程度の範囲に限定されていた地震活動が、そこを中心として北東および南西方向の全長約150キロもの領域に広がったことは疑いない事実である。
 結果的にはこれまでの群発活動が、今回のM7地震の前駆的活動だったと言えるかもしれないが、今後はこの広がった領域でしばらく余震活動が継続するであろう。しかし、一連の地震活動が予測できないものばかりであったことを思い返すと、油断はできない。日本海沿岸では、これまでもたびたび大地震が発生している。日本海が拡大した時の古傷がその原因とも考えられている。しかし、似たような古傷は日本列島の至る所に存在する。静岡県では、富士川河口断層帯や北伊豆断層帯、中央構造線がある。やはり、日本ではいつどこでも地震が起こりうることを再認識し、日頃から備えておくことが重要であろう。

 おばら・かずしげ 防災科学技術研究所を経て、2010年5月より東京大地震研究所教授。20年6月より日本地震学会会長。気象庁「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」の委員を務める。専門は観測地震学。世界で初めて深部低周波微動を発見した。64歳。

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