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防災人材「活用なし」半数超 静岡県「マッチング急務」【いのち守る 防災しずおか】

 新型コロナウイルス禍で3年間、訓練の中止や縮小が相次いだ地域防災活動。新型コロナの感染症法上の位置付けが5類になった本年度は活動が活発化している。昨年9月の台風15号で防災意識が高まっていることも相まって、実動訓練を積極的に取り入れようとしている自主防災組織(自主防)もある。一方で訓練の知識や経験の不足などの不安も否めない。静岡県は「ふじのくに防災士」などの防災人材を登録し、自主防の活動を支援する「地域防災人材バンク」を運営しているが、活用は低調だ。

地域防災人材バンク活用のイメージ
地域防災人材バンク活用のイメージ
地域防災人材バンク活用のイメージ


自主防 台風で意識高まる  台風15号で浸水や断水の被害があった静岡市清水区の岡地区は12月の地域防災訓練で小中学生を交えたメニューを計画している。今回は実施日が登校日となり、地区内の全児童生徒が参加する予定。同地区連合自治会の小林靖明会長(78)は「過去の訓練よりも参加者が増えるため工夫が必要」と頭を悩ます。
 同地区では、昨年の台風で浸水被害の状況や給水活動などの情報発信に課題が残った。高齢者と若い世代には異なる手段でのアプローチが必要だと感じ、発信方法の検討も進めている。小林会長は「助言を求められる人がもっと身近にいれば」と期待するが、静岡県の人材バンクは利用したことがないという。
 「地域の状況を良く理解している人に有効なアドバイスがもらえるなら活用してみたい」と話すのは同市葵区清沢地区自治会連合会の前田万正会長(66)。同地域は中山間地に位置し、高齢化や人口減少が加速している。現在は防災関連の困り事があった場合には市に相談をしている。前田会長は「(活用には)顔を合わせて関係性を構築する場が必要」との認識を示す。
 静岡県が実施した2022年度の自主防災組織実態調査では、防災人材の存在を「知っている」と答えた人は53%だった。このうち、活用の有無について、「したことがない」は57・7%に上り、「方法が分からない」が11・2%だった。活用の具体例としては「自主防災組織の役員になっている」が19・8%で最も多かった。
 静岡県内では、自主防の会長や役員に「ふじのくに防災士養成講座」の受講を推奨している市町もあるが、養成した防災人材が十分に活用できていない現状が浮かび上がる。防災活動に貢献したいと意欲のある人がいる一方で、地域ごとの事情への対応や、防災知識のほかに講師として活動するスキルも求められる。県危機情報課の担当者は「防災人材と地域のマッチングは急務」とし、「ふじのくに防災士フォローアップ研修で地域との連携や調整に関するプログラムの導入を検討する」と述べた。


人材バンク登録410人 依頼は仲介か直接交渉  「地域防災人材バンク」の制度は2013年度に始まった。名簿登録者数は23年3月時点で410人。静岡県のウェブサイトで名簿や連絡先を公開している。
 人材登録されているのは防災講座を修了した「ふじのくに防災士」、建築士や看護師資格などを持つ「防災マイスター」、静岡大のプログラムを修了した「防災フェロー」のうち、地域への紹介を希望している人。
 講師や助言の依頼は県、市町による仲介か、連絡先情報が公開されている場合には直接交渉ができる。活用の具体的な実績は「直接交渉で依頼しているケースもあり把握できていない」(県危機情報課)という。
 県内ではこのほか、市町が委嘱する「地域防災指導員」が21市町で計4113人活動している。
 

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