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【提言・減災】災害時に備え国際連携 阪本真由美/兵庫県立大大学院減災復興政策研究科教授

 今年2月にトルコ南東部を震源とする地震が発生した。被災地には世界からたくさんの支援が提供され、国際連合が支援調整を行った。いつ頃から、このような国際機関による支援調整が行われていたのかを調べたところ、関東大震災が世界初の事例であることが分かった。

阪本真由美 兵庫県立大大学院減災復興政策研究科教授
阪本真由美 兵庫県立大大学院減災復興政策研究科教授

 関東大震災で被害を受けた日本には、世界30カ国から約2211万円(約100億円)の支援が提供された。米国や英国政府からの支援に加え、国際連盟(国際連合の前身)の支援もあった。国際連盟は、第1次世界大戦からの復興のために1920年に設立された。関東大震災が起きたのは、第4回国際連盟総会がジュネーブで開催される直前であった。9月3日に開始した総会では開会式から日本への支援が話題となった。総会では、日本に対する経費分担率の軽減と、被災した大学・図書館への支援が議論された。震災からの復興には莫大[ばくだい]な費用が必要である。日本は分担率の軽減を必要としていた。
 しかし、戦争復興の財源確保に苦しむ他国からの要請が却下されるなか、日本は議題を切り出せずにいた。偶然、オーストリアの復興に対する発言の機会を得た安達峰一郎大使が関東大震災の被害を伝えた。それを聞いたフランス代表から、分担率軽減が間接的に復興に貢献するのではないかと非公式に打診があった。そして、震災により人的・物的被害を受けた国に対する一時経費分担率の軽減が公式に提案、可決された。
 関東大震災により被害を受けた大学・図書館には図書の寄贈が検討された。建物が再建されても、失った図書を得ることは難しい。図書がないと研究を進められない。そこで、世界に図書の収集・提供が呼びかけられた。収集された図書は、震災により図書館を焼失した東京大学に寄贈された。
 関東大震災が起きた当時、日本は連盟の常任理事国であり、国際的な議論をリードする立場にあった。国際支援は、日本と国際社会とのつながりを認識させた。災害時の国際支援の重要性は現在も変わらない。災害時に助け合えるよう、日頃より国際的な関係の醸成に取り組む必要がある。

 さかもと・まゆみ 国際協力機構(JICA)で開発途上国への国際協力に携わった後、京都大大学院情報学研究科博士後期課程修了。博士(情報学)。名古屋大減災連携研究センターなどを経て現職。専門は減災コミュニケーション、防災教育。52歳。

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