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1年に2度決壊の敷地川 中小河川の危険性説明を【西部記者コラム 風紋】

 6月の台風2号による記録的豪雨で再び決壊した磐田市北部の敷地川。昨年9月の台風15号の際にも決壊し、静岡県は土のうを積むなどして“仮堤防”を築いていた場所だ。近年、局所的に豪雨をもたらす「線状降水帯」が頻発し、全国各地で豪雨による自然災害が多発している。従来の想定を超える規模で激甚化する状況を踏まえ、県などの関係機関は、これまで以上に迅速に復旧工事を進める必要がある。
 同市によると、台風2号による豪雨で、仮堤防が決壊した敷地川周辺の家屋50件が床上・床下浸水の被害を受けた。このうち、昨年の台風15号と連続して自宅が被害を受けた世帯は21件に上った。
 1年足らずで2度も甚大な被害に見舞われた市民からは、日常生活への不安や行政への不満の声が聞かれた。昨年に続き自宅が床上浸水した40代女性は「炒め物の音が雨の音に聞こえる。精神的に疲れた」とこぼし、60代男性は「県がやってくれるから大丈夫だと思っていた」と悔やんだ。わずか数カ月前に建てた自宅に土砂が流入した世帯や、2度目の被災で自宅を手放した高齢男性もいた。
 現地に足を運ぶと、蒸し暑い中、サーキュレーターを回して畳を乾かし、スコップを手に庭先の土砂をかき出す住人やボランティアたちの姿があった。昨年9月の台風15号の際、取材で見た光景と同じ状況が広がっていた。
 川勝平太知事は今回の被災から4日後に現地を視察し「通常の応急措置のやり方だったが、かつてない大雨で土のうが持ちこたえられなかった」と述べた。県袋井土木事務所の榊原正彦所長は、川の流れが大きく曲がっている敷地川の特徴に触れながら「激しい水流により土砂が削り取られる『洗掘』(せんくつ)が発生した」と説明した。
 県袋井土木事務所は7月上旬までに、崩落した堤防に鋼矢板を二重に施すなどの応急復旧工事を終えた。本格的な復旧工事は今秋に開始する。
 同じ場所で2度、大きな水害が発生した。円滑に復旧工事を進めるためにも、関係機関は工事の進捗(しんちょく)状況はもちろん、敷地川の特性や中小河川の持つ危険性を丁寧に住民に伝えることが欠かせない。
 (磐田支局・崎山美穂)

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