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能登教訓に対策確認を 横田崇/愛知工業大地域防災研究センター長・教授【提言・減災】

 1月1日に発生した能登半島地震により、能登半島を中心に石川県、富山県、新潟県など広い範囲で大きな被害が発生し、240人(2月2日現在)の方が亡くなられている。犠牲になられた方に哀悼の意をささげるとともに、被災者の皆様に心よりお見舞い申し上げたい。

横田崇氏
横田崇氏

 地震による被害は甚大で、被災場所が半島という地理的制約もあり、救援物資もすぐには届かず、被害の実態が明らかになるのにも時間を要した。震災から1カ月を経た現在も多くの方の避難生活が続いており、被災地を離れた2次避難(広域避難)も行われている。応急仮設住宅の建設や復旧に向けた取り組みは、ボランティアの方の支援も含め、精力的に行われているものの、被災地ではまだまだ厳しい状況が続くものと思われる。
 住家の倒壊については、耐震基準を満たし倒壊を免れている家屋のそばで、耐震性の低い建物が倒壊し、父母や子どもや孫が死傷する事態も発生している。火災による被害も、当日の風速が強ければ、延焼範囲はさらに広範囲になっていたと思われる。今後の地震対策として、改めて家の耐震化と家具固定の推進が急がれ、出火防止のための感震ブレーカーの設置と延焼防災帯の整備の重要性も再認識される。
 ライフラインの復旧や物資等の供給や支援についても、より大きな被害が広範囲に及ぶと想定される南海トラフ地震では、今回の地震で要する期間よりもより長期間になると想像される。飲料水や生活用水については、給水支援による対策だけでなく、例えば井戸や湧き水の利用や貯水タンクの整備など、被災時にも自立できる地域を目指した対策への変換が必要と考える。南海トラフ地震や直下地震に備えるためにも、能登半島地震を教訓として、各地域において、地震対策の実施状況を確認し、未実施の事項については速やかに対処し、地域づくりも含めて検討することが望まれる。

よこた・たかし
 気象庁気象研究所地震火山研究部長、東京管区気象台長などを経て2015年、愛知工業大工学部教授。翌年に地域防災研究センター長に就任。気象庁「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」の委員を務める。69歳。

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