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災害伝承 参加型教育で/池田浩敬常葉大大学院環境防災研究科教授【提言 減災】

 広島市で開かれていた先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)が21日に閉幕した。ウクライナ情勢が緊迫化し、核兵器使用のリスクへの懸念が高まる中で、多くの国の首脳が世界の平和と持続的な発展に向けた対話を、被爆地広島で行ったことの意義は大きいと考えられる。戦争の悲惨さを忘れてはならない、二度と同じことを繰り返してはならない。この思いは多くの人が共有している一方で、時がたつと記憶は風化し抱いた思いも薄れていってしまいがちである。

池田浩敬教授
池田浩敬教授

 災害伝承も同じではないだろうか。先日、岩手県の野田村を調査で訪れた際に、「未来の『いのち』へ生かす“時速3km”の震災学習」という取り組みを紹介された。野田村は東日本大震災の時、最大18メートルの津波に襲われ、役場周辺の中心的な市街地も大きな被害を受け、37人の方が犠牲となった。こうした津波による被災と復興過程を実際に歩いて見て回り、感じ、考えてもらう防災ウオークとワークショップを組み合わせた防災教育のプログラムである。
 地域内外の小中高生や一般の方々を対象としている。終日コースでは、昼食で地域の名産品を含むおいしい食事も用意されている。このような参加型の災害伝承プログラムは、東日本大震災をはじめとする全国の他の被災地でも数多く実施されている。実際にその地域を訪れ、自分の目で見て、感じて、考えることは重要で、その地域の歴史や産業、文化、そして地域の人々を知れば知るほど、災害が及ぼした影響の大きさを実感することが出来る。
 そして、地域の人々がその後どうやって災害を克服して来たのかを学ぶことによって、防災を自分事として意識するきっかけとなるのではないか。学校行事や家族旅行、友人たちとの旅行の一部に組み込んでみてはいかがか。
 いけだ・ひろたか 三菱総合研究所主任研究員、富士常葉大(現・常葉大)環境防災学部教授などを経て現職。環境防災学部長、社会環境学部長も歴任。専門は都市防災、災害復興計画論など。62歳。
 

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