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【第1章】危機意識の低下② 転倒すれば「凶器」にも 始めよう家具の固定を【東海さん一家の防災日記 南海トラフ地震に備える/いのち守る 防災しずおか】

 いつ起きるか分からない南海トラフ地震に市民はどう備えるべきか。自治会・自主防災会会長の東海駿河[とうかいするが]さん(71)と妻の伊豆美[いずみ]さん(66)、長男の遠州[えんしゅう]さん(36)親子、長女の富士子[ふじこ]さん(33)の3世代をモデルに、自助、共助の取り組みを考える。


 ある日曜、東海駿河さんの自宅に長男遠州さんの一家が遊びに来た。リビングで遊んでいた孫の小学1年竜洋君(7)は、あることに気付いた。
 「おじいちゃんの家のテレビは、どうして壁とつながってるの」。壁に取り付けた金具とテレビの背面との間にワイヤが張られていた。「地震の時に落ちないようにしてるんだよ」と東海さん。「うちのテレビには、こういうのないよ」と不思議がる竜洋君に、遠州さんは「以前はベルトで固定してたけど、テレビを買い替えてから何も付けてなかったなぁ。転勤で引っ越しも多いし」と頭をかいた。
 「お義父さんのお宅は冷蔵庫や寝室のたんすも固定されてますもんね。うちも対策しなきゃ」と遠州さんの妻三保さん(34)は反省した。固定していないテレビや電子レンジは横に飛ぶと聞いたことがある。特に竜洋君と妹のかのちゃん(5)には危険だ。
 東海さんに勧められて遠州さんは県地震防災センター(静岡市葵区)の見学を予約し、後日訪れた。案内役の「インストラクター」の女性は、震度6強の揺れで固定していない食器棚が倒れる動画を見せてくれた。県によると、1995年の阪神大震災では死亡者の10%が家具転倒に伴う圧死や窒息死で、負傷者の46%が家具転倒によるものだった。「地震の時、固定していない家具は凶器にもなる。キッチンの冷蔵庫や玄関のげた箱が倒れると先に進めず、避難の妨げにもなるかもしれません」とインストラクターの女性。遠州さん一家は、家具の固定器具にはL字形金具や突っ張り棒、ベルトなど多様な種類がありホームセンターなどで購入できることを知った。
 来館者に配られる県作成の地震防災ガイドブックには、自宅の平面図を描いて家具倒壊の危険箇所や避難経路を家族でチェックする「家庭内DIG(災害図上訓練)」のワークシートも付いていた。「ねぇ、子ども部屋は大丈夫だよね」。かのちゃんの一言が胸に刺さり、遠州さんは「よし、わが家も家具固定を始めよう」と誓った。

 手間や費用も 28%「していない」
 県が2022年度に実施した南海トラフ地震の県民防災意識調査によると、家具固定を「大部分している」「一部している」と答えたのは計72.0%、「していない」は28.0%だった。固定していない理由(複数回答可)は「やろうと思っているが先延ばしにしている」(33.9%)、「手間がかかる」(30.3%)、「費用がかかる」(21.1%)などが多い。
 賃貸マンションに住む遠州さんは「大家さんの許可がなければ壁にネジなどは取り付けられないかも」と悩み、転倒防止器具の製造販売や設置を行う大石製作所(吉田町)に相談してみた。同社防災事業部の大石康人さん(43)=写真=からは「家具と天井の間に突っ張り棒を設置し、家具の下にストッパーなどを取り付ければL字形金具と同等の効果があります」と助言を受けた。
 高齢者や障害者に対しては、家具固定を建築組合やシルバー人材センターなどに委託し、利用者に補助金を出している市町もある。大石さんは「地元市町に確認してみては」と勧めた。

 「東海さん一家の防災日記」で取り上げてほしいテーマや、地域・家庭での特色ある活動、県や市町の防災行政への意見などを募集します。情報を基に取材をさせてもらう場合もあります。お住まいの市町名、氏名またはペンネーム、年齢、連絡先を明記し、〒422-8670(住所不要) 静岡新聞社編集局「東海さん一家の防災日記」係<ファクス054(284)9348>、<Eメールshakaibu@shizuokaonline.com>にお送りください。

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