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伊豆市土肥、目指せ「観光と防災」の両立 能登半島と地形類似 

 南海トラフ地震が起きると最短6分で最大10メートルの津波が襲うと想定される伊豆市の土肥地区は「観光と防災の両立」を進めてきた。市は今夏、土産物店なども入った津波避難の複合施設を海岸に開業する。地区は伊豆半島の西側にあり、道路が寸断された能登半島地震と地理的条件が似ている。地元は備えを再強化しながら「災害でも安全な地域」を目指す。

波打ち際から津波避難複合施設の建設地まで歩く避難訓練に参加する住民ら=2023年11月、伊豆市の土肥地区
波打ち際から津波避難複合施設の建設地まで歩く避難訓練に参加する住民ら=2023年11月、伊豆市の土肥地区
津波避難複合施設の建設地前で、訓練参加者に避難にかかった時間を伝える伊豆市職員(右端)=2023年11月、伊豆市の土肥地区
津波避難複合施設の建設地前で、訓練参加者に避難にかかった時間を伝える伊豆市職員(右端)=2023年11月、伊豆市の土肥地区
建設中の津波避難複合施設の前に立つ土肥温泉旅館協同組合の野毛貴登理事長=2023年11月、伊豆市の土肥地区
建設中の津波避難複合施設の前に立つ土肥温泉旅館協同組合の野毛貴登理事長=2023年11月、伊豆市の土肥地区
海沿いに旅館などが立ち並ぶ伊豆市の土肥地区=2023年11月
海沿いに旅館などが立ち並ぶ伊豆市の土肥地区=2023年11月
伊豆市土肥地区
伊豆市土肥地区
波打ち際から津波避難複合施設の建設地まで歩く避難訓練に参加する住民ら=2023年11月、伊豆市の土肥地区
津波避難複合施設の建設地前で、訓練参加者に避難にかかった時間を伝える伊豆市職員(右端)=2023年11月、伊豆市の土肥地区
建設中の津波避難複合施設の前に立つ土肥温泉旅館協同組合の野毛貴登理事長=2023年11月、伊豆市の土肥地区
海沿いに旅館などが立ち並ぶ伊豆市の土肥地区=2023年11月
伊豆市土肥地区

 2023年11月、土肥地区の約50人が波打ち際から施設建設地まで歩く避難訓練があった。飲食店従業員桜井よし江さん(65)は「住民は近くのホテル、観光客は新しくできる施設に避難する。海が近くても安心感がある」と笑顔を見せた。
 市によると、地区の人口は23年4月現在約3200人。観光客は日帰りと宿泊を合わせ、22年度は約72万人に達した。
 土肥温泉旅館協同組合は市と結んだ協定で、災害時は住民が「津波避難ビル」に指定された近くのホテルや旅館に避難するよう決めている。定期的な訓練で、参加者は建物の出入り口や階段の位置を把握する。
 観光業者が最初から津波防災に積極的だったわけではない。市によると、防潮堤の建設是非を巡り、観光地のイメージ悪化を懸念する業者側と、海沿いの地域住民との間で長年対立があった。16年、市は市民や組合などと「津波防災地域づくり推進協議会」を設置。会長を務めた加藤孝明東大教授(地域安全システム学)は「組合が防潮堤建設の反対決議を持ち込み、緊張感があった」と振り返る。
 景観を損なう防潮堤の代替策として、沿岸の一部を「オレンジゾーン」と呼ばれる津波災害特別警戒区域に指定する案が浮上した際も、観光への影響を懸念する声が上がった。
 市は集会を重ね、土肥支所長だった山口雄一さん(57)は延べ500人以上と対話した。「東日本大震災のような津波であれば、土肥地区住民の約4割が亡くなる危険性を伝え、何ができるかを考えてもらった」
 18年、全国初のオレンジゾーンが指定される一方で、平時は観光拠点となる津波避難複合施設の計画も組合の提案に沿って始動した。
 6月に完成予定の施設「テラッセ オレンジ トイ」は高さ約19メートル。3階以上に1200人以上が避難できる。特産品の直売所やレストランを併設、水なども備蓄する。
 能登半島地震を受け、地元は備蓄品や、孤立する恐れがある地区に配備済みの通信機器を点検した。組合の野毛貴登理事長(54)は「能登半島と似ており、孤立する可能性がある。ただ、観光客や住民の避難を受け入れる体制はできてきた。安心して遊びに来てほしい」と強調した。

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