テーマ : 防災対策

災害対応、教えて理解 静岡大が独自プログラム 大学生→高校生→園児【いのち守る・防災しずおか】

 災害時に受け身にならず自ら行動できる市民を増やそうと、静岡大教育学部の藤井基貴准教授(47)の研究室は県内の高校と連携し、独自の「BOSAIユースアンバサダープログラム」に取り組んでいる。大学生が防災の基礎知識を高校生に教え、さらに高校生が幼稚園児や保育園児に広める―という試み。園児が学んだ内容を思い出しやすいよう、クイズや遊びなどで楽しさを取り入れている。

災害時の停電をテーマにした紙芝居を読み聞かせる島田樟誠高の生徒=島田市の島田学園付属幼稚園
災害時の停電をテーマにした紙芝居を読み聞かせる島田樟誠高の生徒=島田市の島田学園付属幼稚園
BOSAIユースアンバサダープログラムの流れ
BOSAIユースアンバサダープログラムの流れ
レッサーパンダに扮した大学生(右)から地震の時に頭を守るポーズを教わる園児(写真の一部を加工しています)
レッサーパンダに扮した大学生(右)から地震の時に頭を守るポーズを教わる園児(写真の一部を加工しています)
災害時の停電をテーマにした紙芝居を読み聞かせる島田樟誠高の生徒=島田市の島田学園付属幼稚園
BOSAIユースアンバサダープログラムの流れ
レッサーパンダに扮した大学生(右)から地震の時に頭を守るポーズを教わる園児(写真の一部を加工しています)

 「停電になると、エアコンや冷蔵庫などが使えなくなったりするんだ。真っ暗だと怖いし、心細いよね」
 「じゃあ、停電になる前に準備しておかないとね。食べ物と飲み物…。あっ、懐中電灯や電池も!」
 島田市の島田学園付属幼稚園で行われた同プログラムの防災講座。島田樟誠高の女子生徒2人が、年長クラスの園児計34人に「災害時の停電」をテーマにした紙芝居を読んで聞かせた。
 大雨の夜、ある家庭が停電で真っ暗になり、男児が泣き出した。すると懐中電灯を手にしたレッサーパンダのぬいぐるみが現れ、男児を安心させようと語り出す―という内容。かわいいキャラクターが登場すると不安げな表情だった園児たちから歓声が上がった。
 生徒は約8カ月前から「総合的な探究の時間」などを使い、どんな防災講座を行うかを藤井研究室の学生と相談。防災講座は紙芝居を軸とし、ストーリーを考えた。停電が起きる原因や復旧方法は、中部電力パワーグリッドの社員から説明を受けた。絵本の下絵を描き、読み聞かせをした保育士志望の村松里咲さん(3年)は「紙芝居は一方通行になりがちなので、『停電になると何が使えなくなるかな』などと質問を織り交ぜるよう意識した。予想以上に盛り上がってくれて良かった」と成果を喜んだ。
 不安や恐怖を過剰にあおらない「脅さない防災」は、藤井研究室の理念の一つ。絵本では、子どもでもできる防災の備えとして、自宅の懐中電灯の置き場所や電池が切れていないかのチェックを促した。帰宅後に家族と実践してもらうため、レッサーパンダのイラストシールを配り、懐中電灯に貼るよう呼びかけた。
 絵本以外では藤井研究室の学生が、地震の時に頭を守って身を伏せる「ダンゴムシのポーズ」なども教えた。同大4年の大塚萌香さんは「園児にも分かる言葉遣いを心がけた。高校生や園児に分かりやすく教えようと考えながら準備することで、自分たちも理解を深められている」と語った。

 人材育成へ 7高校実践
 BOSAIユースアンバサダープログラムは「将来を見据え、若者の中に防災の担い手を増やしていく必要がある」と考えた藤井准教授が2019年から取り組みをスタート。これまで三島南、沼津西、駿河総合、静岡東、島田樟誠、浜松学芸、浜松江之島の7高校が実践してきた。
 藤井准教授は防災教育において「伝える(担い手を広げる)」「考える(自分事として捉える)」「脅さない(不安や恐怖で行動を促さない)」の三つを柱に据え、災害時に適切に行動できる市民の育成を目指している。今後はICT(情報通信技術)と組み合わせながら活動の拡充を図る。
 同プログラムの推進などで藤井研究室と連携する一般社団法人ボウサイエデュラボの上田啓瑚代表理事(24)は「防災の知識を身につけるだけでなく、さらにアウトプットすることで防災を学ぶ意欲を高められる。学んだことを人にどう伝えるか考えることは非常に大事」と話す。

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