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【第2章】学校の防災② 災害知識 講座で習得 小中高生、地域の“戦力”に【東海さん一家の防災日記 南海トラフ地震に備える/いのち守る 防災しずおか】

 南海トラフ地震が起きれば、多くの小中学校体育館が避難所になる。空調やトイレなどの設備は十分か。南海トラフ地震臨時情報が発表された場合、学校活動は休止するのか。第2章では自主防災会会長の東海駿河さん(71)やその家族と共に、学校の防災課題を点検していく。
東海さん わたしの避難計画
 「地震が起きたらどうする? 例えば、学校にいるとき、自宅にいるとき、この瞬間…」。東海さんの長女で小学校教諭の富士子さん(33)のクラスで開かれた「ふじのくにジュニア防災士」の養成講座。講師を務めた自主防災会副会長の大池将斗さん(70)の問いかけに、クラスの児童たちは「机の下に隠れる」「揺れが収まったら逃げる」などと元気よく答えている。
 富士子さんの学校で養成講座を取り入れたのは今回が初めて。「これがジュニア防災士の認定証。かっこよくて子どもたちの評判もいいんだよ」と大池さん。「ふじのくに防災士」の資格を持っている大池さんに以前から、養成講座を勧められていた。学校の年間行事は年度末に決まっているため、すぐには予定を組めずにいた。昨年の台風で学校周辺も浸水被害が多かったため、今年は学校としても防災教育に力を入れることになった。「教員だけでの防災教育には限界もあるんですよね」。大池さんを教室に案内しながら、富士子さんはそう説明した。
 大池さんの授業は、児童がグループに分かれ、タブレット端末を囲みながら進む。「僕の家は震度6強」「私の家は震度7。同じ地域でも違うんだね」。ハザードマップやアプリを使って学校や自宅周辺の災害リスクのほか、家の中の危険箇所を確認していく。「大人が近くにいるとは限らない。いざというときは、身の守り方を自分で判断しないといけないよ」。大池さんは防災意識を高めておく大切さを呼びかけた。
 講座終了後、富士子さんは手元にあるジュニア防災士のパンフレットに目を落とした。心得3カ条の一つに<地域の戦力になることを自覚。地域の防災活動に参加すること>とある。「平日の昼間は、親が仕事で自宅を空けていても子どもたちは家や地域にいるのよね」と、別のクラスの教員に声をかける。「そうだね。中高生になれば避難所運営の戦力になるよな。地域全体にとっても子どもたちへの啓発は大事だね。やっぱりまずは自分の命を守ってもらうことが大切だ」
 富士子さんは帰りの会で児童に聞いてみた。「今日は1日お疲れさまでした。もうすぐ地域の防災訓練があるけど、みんな、いつも行っていますか」。児童からは「習い事が忙しくて行けていない」「防災訓練が開かれているか分からない」「親も行こうって言わないから。でも今日の講座で参加してみたいと思った」などの返答があった。富士子さんは「子どもたちの防災教育には保護者の理解が不可欠かもしれないな」と思いを巡らせた。

年3万人育成目標 訓練で活躍の場を
 次世代の地域防災の担い手となる小中高生を育成する「ふじのくにジュニア防災士」の養成講座。2022年度の実施学校は272校で受講者数は2万9753人に上った。県が目標に掲げる年間300校3万人に届く勢いで年々伸びている。ふじのくにジュニア防災士の認定証
 養成講座は小学4年から高校生を対象に2010年に始まった。現在は東日本大震災の語り部動画を視聴して防災講話を受けたり、災害発生時の状況を設定して行動を考える「災害時判断ゲーム」に取り組んだりするなど三つのコースを設定。講話ではハザードマップや避難場所の確認、家具固定などの日常的にできる備えを呼びかけている。
 コースの幅を広げた20年度以降、実施学校と受講者は急増した。「市町や教育委員会との連携が実を結んできた」と県危機情報課の担当者。「児童生徒も助けられる側から助ける側になってほしい。子ども発信で家庭内の防災を盛り上げてもらえたら」と見据える。
 一方、各地域の中高生の防災訓練参加率は2割ほど(22年度実績)にとどまる。新型コロナウイルス禍で自主防災会の動きが縮小した中、ジュニア防災士となった生徒の活動の場が減っていた実情もある。防災訓練参加を条件にしているコースで、参加できない場合にはリポートを提出してもらう形をとっている。
 県は22年度末から各市町の防災部局を通じて、各自主防災会に児童生徒の活躍の場を提供してもらえるよう呼びかけているという。担当者は「子どもたちの活躍の場を設けてもらうことが地域防災活動の活性化にもつながれば」と願った。
明日へのメモ
 「東海さん一家の防災日記」で取り上げてほしいテーマや、地域・家庭での特色ある活動、県や市町の防災行政への意見などを募集します。情報を基に取材をさせていただく場合もあります。お住まいの市町名、氏名またはペンネーム、年齢、連絡先を明記し、〒422-8670(住所不要) 静岡新聞社編集局「東海さん一家の防災日記」係<ファクス054(284)9348>、<Eメールshakaibu@shizuokaonline.com>にお送りください。

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