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【提言・減災】生活継続計画のすすめ/横田崇 愛知工業大地域防災研究センター長・教授

 地震による死因の主たるものとして、①建物の倒壊・家具転倒による圧死②火災による焼死③津波による水死が挙げられる。このため、建物の耐震化と家具の固定、シェイクアウト、感震ブレーカーの設置、津波避難路と避難場所の整備が推進されている。

横田崇愛知工業大地域防災研究センター長
横田崇愛知工業大地域防災研究センター長

 一方、災害を生き抜いた後、④災害による負傷の悪化や避難生活における身体的負担等により亡くなる「災害関連死」があり、阪神・淡路大震災の死者約6400人のうち約900人、東日本大震災の死者約2万2200人のうち約3800人もの方が災害関連死で亡くなっている。
 このため、避難所の運営力の向上、被災者の生活環境の改善、応急的な住まいの確保、生活復興支援などがうたわれており、ライフラインの復旧を含め、社会全体として課題とされている。これに対処するには、一人一人が被害を最小限に抑え、その後の家族との生活を継続するための対策を講じることが重要となる。
 生活を継続する観点から見ると、各人が建物の耐震化・家具固定等により家族の生命を守ることが基本となる。このことにより、被災生活においても自宅が活用でき、被災者の方を支援する側として活動できるようになる。また、自宅が被災した場合においても、自宅の修繕や建替え等、元の生活に戻るための対策等についても検討しておくことも肝要となる。このことは、「生活継続計画(LCP:Life Continuity Plan)」と呼ばれているが、南海トラフの巨大地震への備えにあたり、改めて各人におけるLCPの作成を提言したい。
 LCPは事業継続計画(BCP)を補完するうえでも大切である。被災後も、従業員に元気で活躍してもらうには、会社にいる時のみならず、通勤時や帰宅後や休日も含め、従業員が家族との安全な生活の継続を実現する必要がある。企業防災力や地域防災力を高めるために、従業員や個々人のLCPの作成をBCP策定の一部として企業や地域として取り組み、一人一人が災害そのものから身を守り、その後の生活の継続が図られることを期待する。

 よこた・たかし 気象庁気象研究所地震火山研究部長、東京管区気象台長などを経て2015年、愛知工業大工学部教授。翌年に地域防災研究センター長に就任。気象庁「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」の委員を務める。68歳。

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