テーマ : 防災対策

災害時の初動迅速化へ浜松市実験 ドローン整備、企業協力

 防災に小型無人機(ドローン)を活用するための整備が各自治体で広がっている。豪雨や予想される大規模地震に備え、浜松市でも地元企業などが協力し、実験に熱が入る。土砂災害や洪水、停電など各所で多様な被害が発生する災害時、状況把握や物資輸送といった初動の迅速化を官民連携で目指す。

災害発生時にドローンを活用して被害状況を把握し、支援など初動の迅速化を目指す実証実験=3月上旬、浜松市浜北区
災害発生時にドローンを活用して被害状況を把握し、支援など初動の迅速化を目指す実証実験=3月上旬、浜松市浜北区

 3月上旬、同市浜北区の馬込川付近の住宅街上空約50メートル。全長約30センチのドローンが軽快に飛行し、周辺の様子を撮影した。
 実験は、2022年9月の台風15号と同様の被害が発生したとの想定で進められた。JX通信社(東京都)提供のAIが交流サイト(SNS)上の情報を自動収集するシステムで被害発生箇所を確認。そこにドローンを向かわせ、被害状況を詳細に調査して3次元の地図に反映した。
 航路は3次元地図データを基にあらかじめ自動生成し、飛行中も障害物を感知するため、ほぼ操縦を必要としない。医薬品などの支援物資を運搬することも可能という。
 ドローンを運航したソフトウエア開発のトラジェクトリー(東京都)は浜松市に実証実験の拠点を構える。同社の岡村弦樹さん(26)=同市浜北区=は「今後も地域の方々を守るための実験に協力したい」と前向きだ。
 安全に飛行させ、被害を可視化するために使用した3次元地図は、測量・設計業のフジヤマ(同市中区)が作成した。作成には県が全国に先駆けて整備した3次元点群データを用いている。
 「点群データによる3次元地図ができてから、状況把握は格段に早くなり、被害の進行予測も可能にした」とフジヤマの営業推進室長山浦篤さん(51)。実際に21年の熱海土石流災害でも点群データが役立てられた。山浦さんは「点群データの活用法を発展させ、市民の生活を守る取り組みに挑戦し続けたい」と意気込みを語る。

自動運転や観光 3次元点群データ、活用推進に期待
 各地点の座標と色をデータ化し、地域の立体的景観、地盤や水底の状況を電子保存した3次元点群データ。膨大な情報量から、さまざまな分野で活用が進むと期待される。
 自動車や航空機に搭載したレーザーで測量され、県は2019年から3年間でほぼ県内全域の点群を収集。「VIRTUAL SHIZUOKA(バーチャル・シズオカ)」としてネット上で公開している。
 10~20センチおきに1点という圧倒的な情報量を持つ点群の整備は、災害時の状況把握などの業務を安全で、短時間に実施することを可能にした。このほか、地形リスクの把握や自動運転技術、観光用コンテンツの開発などにも役立つとされる。
 データ収集を主導した県建設政策課未来まちづくり室の増田慎一郎室長は「取り扱いには技術や知識がいるため、普及にはまだ課題があるが、多くの可能性を秘めている。公共事業に限らず、企業にも積極的に活用してほしい」と話す。

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