テーマ : 防災対策

能登の経験検証不可欠 災害ケア、被災地との連携巡り 活動円滑化に時間も

 災害派遣福祉チーム(DWAT)は東日本大震災を教訓に設置が進み、災害関連死の犠牲を食い止める役割を担う。能登半島地震では各地から人員が集結、長期の避難を強いられる被災者を支える。全都道府県のチームが活動する初のケースとなる見込みだが、被災地側との連携体制には課題もあり、専門家は検証が必要と指摘する。

能登半島地震に応援を派遣した静岡、富山、京都、岡山4府県の災害派遣福祉チームによる打ち合わせ=1月、石川県七尾市役所(静岡DWAT提供)
能登半島地震に応援を派遣した静岡、富山、京都、岡山4府県の災害派遣福祉チームによる打ち合わせ=1月、石川県七尾市役所(静岡DWAT提供)


 お互いさま
 「静岡でもいつ災害が起きるか分からない。お互いさまの気持ち」。菊川市の障害者施設の相談支援専門員、長坂智香子さんは静岡DWATの一員として1月10~13日、石川県七尾市の避難所で活動。衛生環境の改善や、エコノミークラス症候群を防ぐための体調確認、家族の介護をしながら避難する被災者の相談対応に当たった。
 かつて働いた施設で利用者の親が「障害のある子どもと避難所には行けない。自宅で一緒に死ねばいいと思っている」と漏らした言葉が忘れられない長坂さん。東日本大震災などの関連死は障害者も目立ち、支援が届かなかったことが一因とされる。長坂さんは「活動を通じ『避難所に行けば支援者がいる』と思ってくれる人を増やしたい」と願う。

 新しいテーマ
 2013年にチームを発足させた岩手県は石川県輪島市の避難所などで活動。県担当者は「仮設住宅の整備に時間がかかって避難生活が長引く可能性がある。求めがある限り応じたい」と意気込む。
 16年の熊本地震で他県からの応援を受け入れた熊本県の担当者は「福祉施設も被災し、要配慮者の避難生活を支援する人員確保が難しくなった。応援が不可欠だった」と振り返る。能登半島地震では初の県外活動として、金沢市の避難所へ人員を派遣した。
 能登半島地震は、ホテルなどへの2次避難に先立ち一時的にスポーツセンターなどへ滞在する1・5次避難が活用された。静岡DWAT事務局の松永和樹さんは「災害福祉はまだ新しいテーマで、能登は過去の災害と異なる点がある」と指摘。「経験あるチームと未経験チームが連携して関連死を防ごうと努めている」と話す。

 国が調整
 DWATの県外派遣はこれまで各自治体の判断だったが、能登半島地震は厚生労働省が被災地のニーズを集約して調整する初のケースとなった。全国社会福祉協議会によると、1月8日に石川のほか群馬、静岡、京都の計4府県が活動を開始。3月末までに全都道府県が参加することになる予定だ。
 協議会の大元格彦・法人振興部副部長は、派遣側と受け入れ側の連携について事前の検討が十分とは言えず、活動が軌道に乗るまで時間がかかったと説明。「能登の経験を検証し、今後の災害でより円滑な活動につなげる必要がある」
 静岡県立大短期大学部の鈴木俊文教授(災害福祉)は「多くのDWATは今回が初めての活動だ。得られた教訓を生かし、各地域での災害に備えてほしい」と指摘した。

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