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関東大震災 発生から100年 三島に残る被災児の声「夢中で逃げた」錦田郷土研究会所有の雑誌

 「逃げて間もなく火が家についた。(弟が)あの中で焼けて居るのかと思い、ぞっとした」「『津波だ』と言われ夢中で逃げた」。9月に発生100年を迎える関東大震災で被災した県東部や神奈川県西部の子どもたちの生の声が集まった雑誌が三島市に残っている。震災から1カ月後に発行された「子供之(の)世界 震災慰問号」。数年前に存在を見つけて手に入れ、当時の様子を分析した錦田郷土研究会(同市)の神山明久さん(60)は「読み込めばいろんなことが分かる貴重な証言史料。専門家が研究したら新たな発見につながるかもしれない」と話す。

子供の投稿から分かる関東大震災の状況を説明する神山明久さん=19日午後、三島市
子供の投稿から分かる関東大震災の状況を説明する神山明久さん=19日午後、三島市
子供之世界 震災慰問号
子供之世界 震災慰問号
子供の投稿から分かる関東大震災の状況を説明する神山明久さん=19日午後、三島市
子供之世界 震災慰問号

 「この一冊を地震のためになくなられた読者諸君の霊前にささげます」。この文章で始まる表紙には、愛読者らの「血の出るような手記」「涙の記録」を集めて作ったと記される。「全滅だと全国にうわさされた田方北部」「山崩れに押しつぶされた駿東北部」「大地震につづいて津波の押し寄せた田方東海岸」などの構成で、各地の子供たちの投稿が並ぶ。
 津波が襲った現・伊東市からの投稿では、家や漁船を巻き込み押し寄せる津波、裸での避難、竹やぶの中などで夜を過ごした避難生活の様子などが克明に記載。駿東北部からの投稿では多くの犠牲者が出たという富士瓦斯[がす]紡績小山工場の火災の様子とみられる記述も存在する。東京や横浜から三島市に避難した子供の投稿もあり、神山さんは「彼らなりに感じたことがダイレクトに書かれている」と話す。
 同会は2021年度、掲載された体験記の時代背景を調査。県の「大正震災誌」や各地の市史や町史などを参考に当時の被災状況などを分析した。東京や横浜の被災した児童が清水港や箱根を経由して避難したこと、県が県外の救援活動に携わったことなどを“再発見”したという。
 子供之世界は1935年発刊の児童投稿誌。購読・投稿範囲は田方・駿東郡全域を中心に神奈川県、東京都にも及んだという。震災慰問号は三島市図書館に所蔵され、データを閲覧できる。(三島支局・岡田拓也)

体験記読み解く講座 三島・錦田公民館で
 三島市の錦田公民館で22日午前9時半から、「子供之世界 震災慰問号」を読み解く講座が開かれる。神山さんが講師を務め、関東大震災の被災状況や県の災害対応などを紹介する。
 「『震災慰問号』に掲載された体験記を読む」「『体験記』から再発見!静岡県による県内外の救済事業」の2部構成で、同会の分析を交えて当時を振り返る。神山さんは「三島市にこういう史料が残っていると知ってほしい」と話す。
 申し込み、問い合わせは同公民館<電055(973)0308>へ。

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