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6月の台風2号 県に適用求めたものの… 浜松など4市「救助法」見送りに

 6月2日の台風2号による豪雨時、浜松や磐田など県内5市が災害救助法の適用を県に求めたものの、適用されたのは磐田のみで、他の4市は見送られていたことが、9日までに分かった。県は「磐田以外は適用の要件を満たさなかった」とするが、「要件は満たしていた」と反論する自治体もあり、救助法の運用に課題を残している。磐田とそれ以外の市とで被災者支援に差も生じている。

土砂崩れで住民1人が犠牲になった浜松市北区引佐町渋川の現場=6月3日、同市(本社ヘリ「ジェリコ1号」から)
土砂崩れで住民1人が犠牲になった浜松市北区引佐町渋川の現場=6月3日、同市(本社ヘリ「ジェリコ1号」から)

 「市民への危険は切迫していた。救助法は適用できたのではないか」。浜松市の小林正人危機管理監代理は、発生から2カ月以上が経過した今もそんな思いが消えない。
 救助法は、一定規模以上の災害発生時のほか、災害が迫り多数の人の生命、身体に危険が及ぶ恐れがある場合にも適用される。適用により迅速な救助や被災者支援につながる。県が内閣府と協議して決める。
 県によると、6月2日深夜から同3日未明にかけ、緊急安全確保や避難指示を出していた22市町に適用の意向を確認した。磐田、浜松、静岡、島田、藤枝の計5市が求めた。磐田は敷地川の堤防が決壊し、多くの市民に危険があると判断し適用した。残る4市は、被害や避難の情報が得られず適用は困難と判断した。
 ただ、当時、県西部と中部では線状降水帯がたびたび発生し、気象庁は「顕著な大雨に関する気象情報」を出して厳重な警戒を呼びかけていた。浜松市では、県から連絡が入った時点では大きな被害は発生していなかったが、「降雨の状況から被害が発生することは想定できた」(危機管理課)。結果的に土砂崩れで1人が死亡、住家2棟が全壊、68棟が床上浸水した。
 県危機対策課の百瀬尚至課長は「被害や救助などの情報がある程度ないと、適用は難しい」と強調。同市を含め適用を希望した複数の市の担当者は、夜間に状況を確認するのは困難▽救助法は「被害の恐れ」の段階でも適用できるのではないか-と異口同音に訴え、見解はかみ合わない。
 救助法適用で、被災者は住宅の応急修理(最大約70万円)や仮設住宅の入居などさまざまな支援が受けられるが、今回の災害では磐田市以外は対象外。百瀬課長は「支援の方法や内容は救助法以外にもあると認識している」とする。

 的確な適用へ平時の勉強必要
 被災者支援に詳しい永野海日本弁護士連合会災害復興支援委員会副委員長(静岡市清水区)の話 同じ災害では極力、同じ支援がなされるのが望ましく救助法は積極的に適用すべき。夜間の災害時に被害や避難の状況を調べるのは困難。国や県は詳しい情報を求めすぎてはいけない。一方、県と市町は国の説得も大事。「被害の恐れ」を根拠に適用できるタイミングはわずかで、力量が問われる。過去の適用事例を研究するなど、県と市町が連携して的確な適用に向け平時から備えてほしい。

 災害救助法 災害発生直後の応急救助に対応する法律。一定規模以上の災害が発生した場合や、災害が迫り多数の人の生命や身体に危険が及ぶ恐れがあって救助を必要としている場合などに適用される。県知事が、市町村の意向を確認し国とも協議して市町村単位で決める。適用されると、避難所の開設や、応急仮設住宅や食料、学用品の提供、住宅の応急修理費の助成などの公的支援が受けられる。奨学金の給付など、民間のさまざまな支援の根拠にもなる。

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