社会部 武田愛一郎
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南海トラフ地震新被害想定「夏までの公表困難」 国の検討会、能登検証踏まえ防災対策
内閣府は25日、策定を進める南海トラフ巨大地震の新たな被害想定について、夏までに公表するのは困難との見通しを示した。当初は2023年度内の公表を予定していたが、能登半島地震を受けて策定作業を中断していた。政府の能登半島地震の検証作業が6月ごろまでかかるため、それを踏まえて、被害想定とセットで防災対策に盛り込む手続きがあるのが理由。 同日の「南海トラフ巨大地震モデル・被害想定手法検討会」(座長・平田直東京大名誉教授)の会合後、担当者が取材に対して明らかにした。 検討会は非公開で、昨年9月以来の開催。内閣府の担当者は「被害想定を算出する手法は了承された。現時点で被害想定と防災対策の公表のめど
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立憲民主、鈴木康友氏の推薦決定【静岡県知事選】
立憲民主党は23日の常任幹事会で、静岡県知事選(5月9日告示、26日投開票)に無所属で出馬表明している前浜松市長鈴木康友氏(66)の推薦を決めた。19日に県連から上申があった。 岡田克也幹事長は、常任幹事会後の記者会見で「同じ旧民主党議員であり、その後も交流がある。浜松市長として実績を残し、知事に最適」と理由を述べた。 知事選では、国民民主党も19日に鈴木氏への推薦を決定している。
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女性2人のレーシングチーム始動 御殿場出身ドライバー川合さん総監督 アニメともコラボ
御殿場市出身のレーシングドライバー川合孝汰さん(29)が総監督を務める女性2人のレーシングチーム「ハイスピード エトワール レーシング」が今春、発足した。昨年「スーパーGT GT300」や「スーパー耐久ST-Z」でシリーズチャンピオンを獲得するなどトップ選手として活躍する川合さん。今季は監督業との“二刀流”への挑戦となり、「決して簡単ではないが、モータースポーツ界を盛り上げるために頑張りたい」と意気込む。 同チームは、都内で医療や健康関連事業を展開する企業が母体の「プラチナムファクトリー」が設立した。4月からテレビ放映が始まった女性レーシングドライバーが主人公のアニ
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愛媛、高知震度6弱 南海トラフ「変化見られず」 政府地震本部臨時会
政府の地震調査研究推進本部地震調査委員会(委員長・平田直東京大名誉教授)は18日、17日深夜に発生した豊後水道を震源とするマグニチュード(M)6・6の地震を受けて都内で臨時会を開いた。平田委員長は会合後の記者会見で、南海トラフ巨大地震との関連について「地震後の地殻変動に有意な変化は見られず、発生の可能性が平時と比べ高まったとは考えていない」との見解を示した。 同委によると、地震発生後に近傍のひずみ計の観測データや低周波地震活動に有意な変化はみられなかった。平田委員長は「南海トラフ地震がいつ起きてもおかしくないことに変わりはない。普段からの対策が重要」とした。 (東京支社・武田愛一郎)
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国民民主・榛葉氏「塩谷氏の意見抹殺すべきでない」 裏金事件・自民再審査請求巡り
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡り、離党勧告処分を不服として塩谷立氏(衆院比例東海)が党に再審査請求したことについて、国民民主党の榛葉賀津也幹事長(参院静岡選挙区)は12日の記者会見で「塩谷さんは岸田文雄総理総裁にも責任があると言っている。意見を抹殺すべきではない」と述べ、岸田首相の責任を問わなかった自民党の対応を批判した。 岸田首相は今国会中の政治資金規正法改正を明言している。衆参両院には同日までに、議論をする「政治改革に関する特別委員会」が設置された。榛葉氏は「真相を究明せずして、どう法律をつくるのか。明らかにせずに次のステージにはいけない」と強調した。
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【静岡県知事選】国民民主・榛葉幹事長「特定候補を応援」「傍観しない」
川勝平太知事の辞職に伴う静岡県知事選(5月9日告示、26日投開票)を巡り、国民民主党の榛葉賀津也幹事長(参院静岡選挙区)は12日の記者会見で、党として「特定の候補を応援していく」との考えを示した。 国民民主、立憲民主両県連と連合静岡、県議会第2会派ふじのくに県民クラブは13日に静岡市内で会合を開き、支援候補について協議する。連合静岡は立候補の意向を固めた前浜松市長の鈴木康友氏(66)を支援する方針。 榛葉氏は争点としてリニア中央新幹線や中部電力浜岡原発(御前崎市佐倉)の再稼働、人口流出といった問題を挙げて「課題は山積している。(党として)自主投票とかで傍観するのではなく、仲間の意見をしっ
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塩谷氏が陳謝「多大な迷惑をおかけした」 自民県連国会議員会合
自民党安倍派の座長を務めた塩谷立氏(衆院比例東海)は9日、国会内で開かれた同党県連の国会議員の会合に出席し、派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡って党から離党勧告処分を受けたことについて「多大な迷惑をおかけした」などと陳謝した。会合終了後、城内実県連会長(衆院静岡7区)が明らかにした。 塩谷氏は処分の内容に不服があるとして、党に再審査を求めることを検討していて、請求期限の13日までに判断する考えを示している。城内氏は「(塩谷氏から)『県選出国会議員の会合に出席するのは最後になるだろう』というような発言もあった」と説明した。 (東京支社・武田愛一郎、三島支局・岡田拓也)
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自民県連会長 城内氏続投へ
自民党県連は9日、所属国会議員の会合を国会内で開き、次期県連会長に城内実衆院議員(静岡7区)を再任する人事を内定した。今後開催予定の県連大会で正式決定する。任期は大会から1年間。城内氏は2022年5月から県連会長を務めていて、3年連続で県連運営のかじ取りを担う。 川勝平太知事の辞意表明により、早ければ5月中の投開票が見込まれる知事選が喫緊の課題となる。城内氏は、県連としての対応について「候補者の政策や人柄、熱意などを見極め、早急に決めていく」と取材に答えた。 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた信頼回復への取り組みも問われる。通常国会会期末の6月との観測もある衆院解散・総選挙、
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川勝知事辞意、国交相「コメント控える」 リニアは「JRの対策見守る」
斉藤鉄夫国土交通相は5日の閣議後会見で、静岡県内でのリニア中央新幹線トンネル工事を認めてこなかった川勝平太知事の辞意表明について「政府の立場でコメントすることは差し控える」と述べるにとどめた。その上で、国土交通省が2月に設置したモニタリング会議などを通じ、大井川流域の水資源や南アルプスの環境保全に関するJR東海の対策を継続的に確認すると説明。「JR東海が流域や地域の人々の安心と納得を得られるよう努力する姿をしっかり見守る。地元の理解によってプロジェクトが進行できるように、と考えている」と強調した。 (東京支社・武田愛一郎)
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【自民・裏金処分】静岡県内与党国会議員「自浄能力問われる」 野党「国民納得してない」
派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡り、自民党が4日に決定した所属議員39人の処分について、静岡県内の同党国会議員は重く受け止め、野党議員からは「国民の納得は得られない」との声が上がった。 処分を決めた自民党党紀委員会の委員で、党県連の城内実会長(衆院静岡7区)は「処分だけで国民の納得を得られたとは考えていない。失った信頼は簡単に取り戻せず、自民党の自浄能力が問われている」と受け止めた。塩谷立氏(衆院比例東海)の離党勧告処分について「長年、地元のために尽力されただけに残念だが、(多くの処分者を出した)安倍派座長という立場の責任は重い」とした。「出処進退は議員自らが判断すべき」とも述べ、県連
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【自民・裏金処分】宮沢博行氏、不記載132万円で対象ならず 「改めて国民に謝罪」
自民党は4日、派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡り、関係議員ら39人の処分を決めた。安倍派の衆院側、参院側でトップだった塩谷立(衆院比例東海)、世耕弘成両氏を離党勧告とし、同派幹部を務めた下村博文、西村康稔両氏に党員資格停止1年、高木毅氏に同6カ月を科した。宮沢博行氏(衆院比例東海)は処分対象にならなかった。 安倍派に所属し、政治資金収支報告書への不記載が132万円だった宮沢氏は4日の党の処分対象にならなかったものの、「改めて国民に謝罪し、信頼回復に努める」と述べた。国会内で取材に答えた。 宮沢氏は、派内から多くの処分者が出たことに「反発もあるようだが、不記載の事実を受け止め、真摯(
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リニア中止あり得ず 後継打診の立民・渡辺氏
川勝知事の辞意表明の直前に知事本人から電話を受けた立憲民主党の渡辺周衆院議員(比例東海)は3日、次期知事選で争点となる可能性のあるリニア中央新幹線を巡る問題について「課題はあるが、ここまで来た以上止めるというのはあり得ない」と強調し、事業を着実に推進する必要性を指摘した。国会内で記者団の取材に答えた。 渡辺氏は「大井川流域の人々の不安を解消し、(開通と)両立させる必要がある。万一の場合、知事なり、国土交通省なり、JR東海が責任を持つよう、覚え書きを交わせば前に進む」との考えも示した。 自らの出馬は「党の役員を務め、政権交代に向けて安全保障政策をとりまとめる側にいる。目の前のことにまい進する」
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リニア開業遅れ「非常に残念」 国交相、早期開業へ「対話促す」
斉藤鉄夫国土交通相は2日の閣議後記者会見で、JR東海がリニア中央新幹線品川ー名古屋間の2027年開業を断念したのを受け、「静岡工区に関連して目標が実現できないことは非常に残念。静岡県とJR東海の対話を促すなど、一日も早い開業に向けてしっかり取り組んでいく」と述べた。 斉藤氏は、同省専門家会議のまとめた水資源や環境保全に関する報告書に基づいて「JR東海はさまざまな施策を講じようと努力している」とする一方、「必ずしも静岡県の理解を得られずに今日に至っている」との認識を示した。 経済成長や国土強靱化(きょうじんか)の観点から、リニアが国家的な重要プロジェクトだと改めて指摘。新設した「静岡工区モ
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狩野川の築堤 着手 国交省 静岡県1257億円配分 本年度当初予算
国土交通省は1日、2024年度当初予算のうち、公共事業の予算配分(箇所付け)を発表した。本県への補助事業の配分額は前年度当初予算比40億円増の1257億円。19年10月の台風19号で広範囲の浸水被害が発生した沼津市大平地区の浸水対策として、国直轄で狩野川の築堤工事に着手する。用地取得などに11億7千万円を計上した。 そのほか、直轄の新規採択では、大井川の長島ダム(川根本町)のえん堤改良やストックヤード整備に2億1千万円を充てた。堆積が進む土砂を撤去し、貯水能力の回復を図る。過去の洪水で浸水被害があった掛川市の下小笠川などの改修にも5億円を割り当てた。 道路関係の直轄は、国道1号静清バイパ
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【終章】遺したもの㊦ 家族の今 歩生誇りに 感謝と決意【青春を生きて 歩生が夢見た卒業】
寺田歩生[あゆみ]さんの闘病を支えた家族は、歩生さんの存在を感じながら日々を生きている。長女侑加さん(27)=磐田市=は、市内の福祉施設で働く傍ら、社会福祉士の資格取得を目指している。歩生さんの東京での治療に付き添った際に滞在した施設「ペアレンツハウス」での出来事が大きい。がん患者だけでなく、家族にも心を配るソーシャルワーカーのプロ意識に感銘を受けた。 「患者の家族、特に幼いきょうだいのケアの大事さを知った」。そんな思いから、がん患者のきょうだいを支援する活動に関わりたいとの夢を抱く。 病状悪化で片足を失いながらも、高校に通った歩生さん。最期の日、ベッドの下にテスト勉強用のプリントが1枚
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【第3章】ついの別れ㊦ 精いっぱいの18年 希望 未来信じ 生涯全う【青春を生きて 歩生が夢見た卒業】
静岡県立磐田北高2年の寺田歩生[あゆみ]さんが亡くなったことは翌日の2021年10月14日、校内放送で生徒たちに知らされた。歩生さんは留年し、一つ上の学年にも友人がいたことや、歩生さんのために教室の配置を変えたことなどを踏まえ、学校側が判断した。 5限目の冒頭に伝え、そのまま授業に入る段取りだった。歩生さんのクラスは国語の授業で、たまたま担任の杉山さやか教諭がついた。自身の口からも伝えようとしたが、こみ上げる感情を抑えられず、たまらず廊下に出た。 ◇ 通夜は、磐田市内で営まれた。コロナ禍でもあり、学校は、参列を個人の判断に委ねたが、制服姿の生徒が会場を埋め尽くした。号泣し介
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【第3章】ついの別れ㊥ 最高点 答案残して 努力の歩み 旅立ちの朝【青春を生きて 歩生が夢見た卒業】
最期の瞬間は、予期しない形で訪れた。2021年10月13日、2学期の中間テスト最終日。静岡県立磐田北高2年の寺田歩生[あゆみ]さんは午前8時頃、目を覚ました。前夜は日が変わる時間まで勉強し、その成果をぶつけるつもりでいた。 「トイレ行こっか」 母の有希子さん(54)が歩生さんの部屋を訪れた時だった。歩生さんは、ベッドの上で急に息苦しそうにした。「今日は苦しい」。自分でベッドサイドに座り、扇風機の風に当たりながら呼吸を整えた。「テストは受けられない」。呼吸はいつものようには落ち着かず、苦しさは増し、意識を失った。 あまりにも突然娘に襲いかかった死の影に、有希子さんは、気が動転した。以前か
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【第3章】ついの別れ㊤ 前夜のテスト勉強 学ぶ意欲 命尽きるまで【青春を生きて 歩生が夢見た卒業】
「明日の物理、嫌だなぁ。分かんないんだよね」。静岡県立磐田北高2年の寺田歩生[あゆみ]さんは、母有希子さん(54)にこぼした。2021年10月11日、2学期の中間テスト初日を終え、自宅で一息ついていた。「いいよ、できるところまでやれば。投げ出しちゃうのはやめようね」 「じゃあ、頑張るか」 母に励まされて気持ちを切り替え、再び自室の机に向かった。 歩生さんは、会話はできたものの、2年生になり日常生活に介助を必要とするほど、体力が低下した。肺機能が著しく下がり、自宅で酸素吸入した。食事の量が極端に減り、高カロリー輸液を投与した。「いつ何があっても不思議ではない」(有希子さん)状態だった。そ
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【第2章】高校時代⑤完 最後の成績通知 限界超え出席 証し刻む【青春を生きて 歩生が夢見た卒業】
静岡県立磐田北高は2021年3月、2年生に進級する寺田歩生[あゆみ]さんへの遠隔授業を出席扱いとすることを決めた。国は19年度、病気療養中の高校生が受ける遠隔授業を出席と認める方針を出したが、県教委は検討中の段階で、県内の県立高で初のケースとなった。実現したのは、歩生さんに関わった現場の先生たちの声が大きかった。 「遠隔授業を出席扱いにしませんか」。同月、同校の職員室。歩生さんの学年主任や担任らが当時の鈴木真人校長(62)に提案した。遠隔授業は2学期に導入し、歩生さんは病室や自宅から授業や定期テストに参加できていたが、出席扱いにはなっていなかった。まだ研究段階だった。 通信が不安定になる
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【第2章】高校時代④ 2度目の1年生 執念の登校で“祝 進級”【青春を生きて 歩生が夢見た卒業】
新型コロナ感染拡大とともに2020年4月、2度目の1年生が始まった。ネットによる遠隔授業は認められたものの、出席扱いにはなっていない。学校で授業を受けなければ、再び進級が危うくなることに変わりはなかった。病状は悪くなることはあっても、よくなることはない。県立磐田北高の寺田歩生[あゆみ]さんと家族は、背水の陣だった。 歩生さんは、驚異的な頑張りを見せる。1学期は1日しか休まなかった。右足は既に失っている。肺だけでなく、腰や腎臓にも転移していた。2学期。右肺にうみがたまったり、腰への放射線治療が必要だったりして入院し、中間テストは初めて病院で受けた。痛みを抑えるための医療用麻薬や栄養を取り入れ