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ペット同行避難 訓練重ね模索 鳴き声、衛生面…空間確保など課題

 災害時にペットを連れて避難所に行く同行避難を想定した防災訓練が静岡県内で徐々に広がっている。ペットスペースの確保や避難に要する時間の増加といった課題もあり、継続的な訓練の必要性を訴える声が上がっている。

ペットスペースを開設した飼い主ら=2022年12月4日、静岡市駿河区の西豊田小
ペットスペースを開設した飼い主ら=2022年12月4日、静岡市駿河区の西豊田小

 「地域防災の日」の昨年12月4日、避難所に指定されている静岡市駿河区の西豊田小で、遊具などを防雨用のブルーシートで覆って作るペットスペースの開設訓練が初めて行われた。飼い主らは、市動物指導センターが市内防災倉庫に配備したペットスペース開設マニュアルや備品入りのボックスを活用しながら作業を進めた。
 訓練中、問題になったのは設営場所の選定だった。当初は体育館付近にある駐輪場と決めていたが、一般避難者が近くを通るため衛生面を考慮して断念した。校庭の鉄棒付近に変更したが住宅地との距離が近く、参加者からは「鳴き声が近所迷惑にならないか」という意見や、「トラブルにならないか心配」との声が漏れた。
 同センターの小野寺あゆ子さんは「訓練を重ね、各避難所で最適な設営場所を見つけてほしい」と話す。
 同日に下田市の吉佐美地区で実施された同行避難訓練は津波を想定した。飼い主がペットを連れて津波浸水区域から約300メートルの高台に向かった。猫や小型犬は箱形のハウス「クレート」に入れて運び、大型犬はリードを付けて避難。坂道や階段などを登るのに苦戦する場面もあり、想定より避難に多くの時間を要した。
 同地区自主防災会の白鳥敬悟会長(67)は「初めての訓練で課題が多く見つかった。今後も継続的に実施し、問題を解決していきたい」と強調した。

東日本、熊本の震災で関心高まる 国や県指針で備え啓発
 ペットの同行避難に対する社会的関心が高まったのは、2011年の東日本大震災や16年の熊本地震がきっかけだった。東日本大震災では避難指示区域で飼われていた多くのペットが飼い主と避難できず、放浪状態になったり命を落としたりした。熊本地震では避難所での鳴き声などのトラブルが問題になった。
 環境省は13年にガイドラインを策定して同行避難を推奨し、避難所でのペットの受け入れ態勢整備を各自治体に促してきた。県も17年、飼い主の心得などをまとめたガイドラインを作り、しつけやフードの備蓄など日頃からの備えを呼びかけている。
 ペット防災の啓発活動を行う「人と動物の共生センター」(岐阜市)の奥田順之代表は同行避難への関心の高まりを評価しつつ、「自治体側も飼い主側も実践面では知識がまだ足りないことが多い」と指摘する。

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