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活断層活動 予測難しく 加藤尚之/東京大地震研究所教授【提言・減災】

 1月1日に能登半島でマグニチュード(M)7・6の大地震が発生し、大きな被害をもたらした。能登半島では2020年から活発な地震活動が続いており、その推移に注意が払われていた。しかし、今回の大地震を正確に予測した地震学者はいないだろう。地震の研究にはまだ多くの課題がある。

加藤尚之 東京大地震研究所教授
加藤尚之 東京大地震研究所教授

 地震というと、南海トラフ沿いの巨大地震や大正関東地震(関東大震災)、2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)のような、隣り合う二つのプレートの境界で発生するプレート境界地震を思い浮かべることが多いかもしれない。しかし、日本海沿岸でも多くの大地震が発生している。今回の地震の震源域付近でも、2007年に能登半島地震(M6・9)があった。津波などによる大きな被害があった1983年の日本海中部地震(M7・7)や1993年の北海道南西沖地震(M7・8)なども知られている。
 太平洋側では、海溝からプレートが沈み込む速さが年間数センチ程度と推定されており、歴史記録などから過去の地震の起こり方もある程度分かっている場合が多い。そのため、不確定性は大きいが、大地震発生の時間間隔を推定できる。一方で、日本海沿岸や日本の内陸には多くの活断層が存在し、それら全体でひずみを解放していて、地震の発生メカニズムは複雑だ。地震を発生させる活断層がすべて発見されているわけでもない。ひずみが蓄積される速度が小さいため、一つ一つの活断層での地震発生間隔が長い。活動履歴を詳しく知ることは難しく、太平洋側のプレート境界地震よりも、長期的予測の精度は低い。
 静岡県など太平洋側でも、沈み込むプレート内部や内陸の活断層などで地震が発生することがある。日本海沿岸と同様に発生メカニズムが複雑で長期的な予測も難しい。被害を小さくするためには、地震の起こり方や予測の研究が重要であることは当然だ。地震の発生は前提として、揺れや津波の性質を理解し、建物の耐震性を高めたり、避難計画を検討したりするなどの対策が欠かせない。

かとう・なおゆき 東北大助手、産業技術総合研究所主任研究員などを経て現職。気象庁「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」の委員を務める。岩石の破壊や摩擦の理解に基づき、地震発生のメカニズムを研究している。60歳。

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