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地震訓練、風水害に応用 吉野篤人/浜松医科大救急災害医学講座教授【提言・減災】

 地球温暖化の影響なのか、最近、風水害に見舞われることが増えています。多くの医療機関は大規模地震に備えた医療訓練を行っていますが、これは風水害時にも役立ちます。

吉野篤人/浜松医科大救急災害医学講座教授
吉野篤人/浜松医科大救急災害医学講座教授

 災害医療で重要なのは三つのTと言われています。傷病者に優先順位をつける(Triage)、処置を行う(Treatment)、適切な場所に運ぶ(Transport)―です。これらがうまくいくためには、まずCSCAを確立することが必要です。CSCAは指揮命令系統(Command & Control)、安全確保(Safety)、情報伝達(Communication)、状況評価(Assessment)の頭文字を並べたものです。大地震に対する訓練では、災害医療関係者はこのCSCAの確立に取り組みます。
 2018年の台風24号による県西部地域の大規模停電の際、浜松市の医療救護本部に入り、情報収集や停電している医療機関のリストアップを行いました。災害拠点病院や中規模の病院の停電がないこと、あるいは解消されたことを確認し、続いて透析医療機関や出産を取り扱う有床診療所などをチェックし、停電からの復旧を支援しました。このようなアクションは、私たち医療関係者が地震に対して訓練していた動きでした。
 大地震に対する訓練はよく行われますが、地震以外の災害が発生した場合に、災害であると認識し、即座に行動を開始することは意外に難しいようです。そのため大地震の訓練の成果が、地震以外の災害に有効活用できないということが起きます。地震以外の災害への対応経験は、大地震発生時の備えにも役立ちます。滞った部分が、大地震の際に問題を引き起こす可能性があるため、災害計画や訓練内容の修正の機会となります。
 従って、大規模地震に備えて訓練を入念に行い、風水害時もその成果を発揮し迅速に対応することが肝要になります。

 よしの・あつと 浜松医療センター総合診療科医長、浜松医科大付属病院講師などを経て2013年5月から現職。専門は救急医学。災害医療チームの指導役として現場で活動する。

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