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被災者支援 寄り添って 静岡県 調整役(コーディネーター)養成

 多様化する被災者の要望に寄り添い、支援の漏れや偏りをなくすために支援団体間の調整を行う「被災者支援コーディネーション」の重要性が増している。静岡県は本年度、調整役となるコーディネーターの養成に乗り出した。早期の生活再建や災害関連死防止へ被災者のニーズを把握し、行政や社会福祉協議会、NPO、企業など支援に関わる団体をつなぎ、課題を解決する。南海トラフ地震に備え、全35市町で各1人以上の人材を育成することを目標としている。

被災者支援コーディネーターのスキルを説明する鈴木まり子さん=7月中旬、浜松市東区
被災者支援コーディネーターのスキルを説明する鈴木まり子さん=7月中旬、浜松市東区
被災者支援コーディネーターの役割
被災者支援コーディネーターの役割
被災者支援コーディネーターのスキルを説明する鈴木まり子さん=7月中旬、浜松市東区
被災者支援コーディネーターの役割

 被災者の要望は多様化し、行政が一手に対応を引き受けるのは難しい。民間の力が不可欠だが、各団体がそれぞれの専門分野で活動するだけでは支援の漏れが生じる。東日本大震災では全国からさまざまな団体が駆け付けたが、支援が行き届かなかったケースがあり、被害や支援状況全体を見渡した対応が必要となっている。
 7月中旬、オンラインで開かれたコーディネーター育成研修の第1回講座。12市町の社会福祉協議会などから推薦を受けた災害支援活動の経験者やまちづくり団体の代表ら18人が受講した。熱海市伊豆山で発生した大規模土石流で、コーディネーターとして避難所で活動した鈴木まり子さん(63)が講師を務めた。企画提案力や交渉力など八つのスキルと、熱海での活動事例を紹介し、「住民主体での復興が進むよう、縦割りになりがちな組織間の潤滑油や地域コミュニティーの再構築などが求められる」と強調した。
 研修は来年2月までの全9回。熱海市伊豆山の被災者の支援を企画する実践講座もある。富士市から参加した赤沢佳子さん(54)は「まちづくり活動で培った経験やネットワークが防災にも生かせると感じた」と期待する。元県警警察官でボランティア団体を運営する堀内宏樹さん(40)=掛川市=は「前職の経験を生かしつつ、困っている人の本音を引き出して解決につなげられる立場になりたい」と意欲を見せた。
 県は熱海の土石流で初めて、被災地全体の調整を図るコーディネーション職を置いた。局地災害だった土石流に対して南海トラフ地震は県内全域が被災し、県外からの支援も十分に望めない。県危機情報課の担当者は「災害は平時の延長にある。早期の復旧復興には、地域の関係者が中心となって活動できる体制が一層重要」と意義を話した。
 (社会部・中川琳)  資金や人材確保 体制づくり課題  被災者支援コーディネーションを定着させるための人材や組織の育成は全国でも進んできているが、活動資金や必要な人材の確保が課題となっている。
 内閣府は本年度、人材や組織の育成、強化を進める都道府県への補助事業を始めた。研修やシンポジウムの開催などに充てることができる。本年度は岩手や愛知など8県がモデル事業に選ばれた。認定NPO法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)は2022年3月、「被災者支援コーディネーションガイドライン」を作成し、長野県などで体制整備のための研修会を実施した。
 JVOADによると、調整役を担うスタッフは本業と兼業している場合が多い。活動費や人件費の確保も課題の一つ。基金を設立したり、金融機関の助成金を活用したりする事例があるものの、同NPO法人の担当者は「災害時を含めて活動資金は十分ではない」と指摘する。

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