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障害者の災害関連死2割超 東日本と熊本、支援や対策急務

 被災後の心身の負担が原因で亡くなる「災害関連死」のうち、発災時に障害者手帳を持っていた人の割合が、2011年の東日本大震災で21%、16年の熊本地震で28%だったことが10日、自治体への共同通信の調査で分かった。国の推計によると、障害者は人口の9%ほどとされ、リスクが際立つ。関連死は適切な支援があれば防げると言われる。能登半島地震の被災地でも障害者関係施設の被災や断水が起きており、支援が途絶えないよう対策が求められる。

「災害関連死」のうち発災時に障害者手帳を持っていた人の割合
「災害関連死」のうち発災時に障害者手帳を持っていた人の割合

 3月11日で東日本大震災から13年。調査は震災から20年7月豪雨までの五つの「特定非常災害」で、関連死認定があった静岡など16都県延べ149自治体(関連死計4千人超)を対象に23年11~12月に実施。手帳保有者の有無について回答があった延べ98自治体の関連死計2686人を分析した。「把握していない」などと回答した自治体は除いた。
 東日本大震災は、調査対象97自治体のうち63が手帳保有者の有無を回答。関連死2419人のうち保有者は21%の497人だった。熊本地震は、20自治体中15が回答し、186人のうち28%の52人が保有者だった。
 18年の西日本豪雨は、19自治体中11が回答し8%超(52人中4人以上)。19年の台風19号は11自治体中7が回答し7%超(27人中2人以上)。20年の7月豪雨は全2自治体が回答し、関連死2人は手帳を持っていなかった。いずれも東日本や熊本より少なく、地震と水害の違いや避難期間の違いが影響している可能性がある。
 回答があった手帳保有者の8割超は65歳以上の高齢者だった。また身体障害、療育(知的障害)、精神障害の種別で見ると、9割超が身体障害者手帳を持っていた。
 関連死が出た自治体全体に障害者らへの支援の課題を問うと、6割が戸別訪問のための「人手不足」を挙げた。次いで3割が「支援が必要な人の安否を確認する方法がなかった」とした。
 日本障害者協議会の藤井克徳代表は「障害者は津波や家屋倒壊による直接死のリスクが2倍とも言われる。関連死で同様との結果は重い」と話す。手帳を所持していない障害者も多いと指摘し、国による詳細な分析と対策を求めている。

 災害関連死 地震による建物の倒壊や津波、洪水が原因で亡くなる「直接死」とは別に、避難生活の疲労や環境変化のストレスなどから体調が悪化して亡くなり、災害が原因と認められるもの。自殺も含まれる。市町村が審査委員会などを設けて審査。災害と死亡の因果関係が認定されれば、災害弔慰金支給法に基づき生計維持者を亡くした遺族に500万円、生計維持者以外を亡くした遺族に250万円が支給される。遺族の申請が必要なため、実際は認定数以上の死者がいるとの指摘がある。

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