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【能登地震 長期断水】井戸活用8市町未整備 事前登録必要性高まる

 能登半島地震から1カ月の間に4万戸超の断水が続いた石川県輪島市や珠洲市など8市町で、災害時に井戸水を使う計画が事前に整備されていなかったことが19日、各市町への取材で分かった。過去の災害での教訓から、災害時に使用する井戸は各自治体で事前登録などが進んでいる。8市町も地域防災計画では「緊急用の水源として井戸水の確保に努める」「比較的汚染の少ない井戸を水源に選定する」などとしていたが、具体的な制度づくりには至っていなかった。

災害用井戸の活用制度を導入した自治体
災害用井戸の活用制度を導入した自治体
災害用井戸活用の具体的な制度例
災害用井戸活用の具体的な制度例
石川県珠洲市飯塚地区の避難所で活用された井戸=1月30日
石川県珠洲市飯塚地区の避難所で活用された井戸=1月30日
災害用井戸の活用制度を導入した自治体
災害用井戸活用の具体的な制度例
石川県珠洲市飯塚地区の避難所で活用された井戸=1月30日

 被災地では住民の声がけなどにより井戸が自発的に開放され、共用された地域もあった。計画が整備されていればよりスムーズに活用できた可能性があり、制度づくりの必要性が高まっている。
 1995年の阪神大震災などでも長期間、飲料水や生活用水が確保できなかったことから、近年、断水時に住宅や工場、商業施設の井戸を近隣住民に開放する仕組みを導入する自治体が増加。「災害応急用」「防災用」など名称は違うが、災害用井戸を事前登録する制度が導入されている。
 こうした災害用井戸の活用制度について、大阪公立大の遠藤崇浩教授(環境政策学)が調査すると、2018~19年に全国1741市区町村のうち418市区町村で導入されていたという。石川県でも、金沢市は1997年度に「災害時協力井戸」の制度を始めた。現在は民間事業者を中心に約190カ所が登録され、所在地も公表する。
 一方、輪島や珠洲などの8市町には同様の制度はなく、災害時に使える井戸を把握していなかった。羽咋市は1月初旬、水が枯渇しそうな状況に追い込まれ、井戸水の開放を呼びかけた。市内の企業や市民が応じ、市のホームページで約30カ所を公開したという。
 羽咋市の担当者は「苦肉の策だった」と振り返る。また大規模火災で消火の水が不足したという輪島市の担当者も「トイレの水が流せて、洗濯にも使える」と有用性を強調。いずれも「今後の災害に備え、活用できる井戸を把握することが大事だ」と口をそろえた。
 ただ別の自治体担当者からは「防災対策として、個人の財産である井戸を当てにするべきではない」との声もあった。
 断水の長期化は今回の地震の大きな特徴の一つで、配水管の老朽化が被害拡大の要因になったとみられる。地震発生1カ月が経過した2月1日で8市町の4万戸超の水が止まり、翌2日に羽咋市の断水が解消した。19日時点で7市町の約2万3700戸の断水が続く。

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