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静岡県総合防災訓練 湖西で園児引き渡し確認 「お迎え可否」判断難しく 保護者の安全確保も課題

 浜松、湖西の両市で3日に行われた静岡県総合防災訓練。救助救出や物資輸送など各種訓練を展開し、住民や防災関係機関が連携の重要性を再確認した。湖西市では園児の引き渡し訓練を実施。園児らの安全確保だけでなく、保護者が来園できるタイミングをどう判断するのか、課題も浮かび上がった。

突発地震を想定して行われた新居幼稚園の引き渡し訓練=3日午前、湖西市
突発地震を想定して行われた新居幼稚園の引き渡し訓練=3日午前、湖西市

 「慌てないでゆっくりね」。湖西市の新居幼稚園で行われた引き渡し訓練。教諭の引率で園児約90人がクラスごとに、園舎裏に昨年度完成した命山を目指した。園からの連絡を受けた保護者が命山で、子どもを引き取り帰宅した。
 東日本大震災では園児を迎えに来た保護者やきょうだいが津波に巻き込まれて亡くなるケースがあった。県教育委員会は震災後、危機管理マニュアルの作成手引きを改定し、子どもや保護者の安全が確保されるまでは、引き渡しをしない方針を明記した。引き渡すタイミングの判断基準として、大津波、津波警報の解除▽周辺の浸水状況の確認-などを示している。幼稚園や保育園の引き渡し条件も、県の方針に準拠して作られていることが多い。
 新居幼稚園での今回の訓練は安全が確保された状況を想定して行った。実際には警報の解除や被害状況の確認までに時間がかかり、保護者への引き渡し連絡が遅くなる可能性がある。年中の娘を迎えに来た同市の会社員若林達也さん(50)は「心配で一刻も早く迎えに行きたいと思うはず」と打ち明ける。同市のパート従業員鈴木美穂さん(39)は自宅が高台にある。引き渡しで浸水区域に向かっていくことへの不安もありつつ、「子どもの安全も気がかり。園がしっかり見てくれていると信頼して任せるしかない」と語った。
 園児の安全確保や避難を行いつつ、周辺の被害状況を確認するのは園だけでは困難だ。池田真利子園長は「市からの情報が重要になる。密に連絡を取って引き渡しの判断をしていく」と強調した。
 内陸でも安全確保は課題となる。津波浸水想定区域外にある鷲津幼稚園で行われた引き渡し訓練では、地震発生後、運動場に避難した約100人の園児を、保護者が徒歩や自転車で迎えに来た。年長の娘が通う公務員森真能さん(45)は、「自宅周辺は津波被害が心配」と懸念し、「むしろ園からあまり動かない方がいいかもしれない。家族が集まる避難所を皆で確認しておきたい」と訓練を振り返った。
 豊田香織園長は「実際の場面では園周辺の道路などにどんな被害が出るか分からず、周囲で火災が起こる可能性もある。さまざまな場面を想定して職員同士で対応を検討したい」と気を引き締めた。
 (社会部・中川琳、湖西支局・杉崎素子)
教育現場 検討これから 南海トラフ地震臨時情報 発表時対応
 2019年5月に運用が始まった南海トラフ地震臨時情報。県教委は運用開始後、危機管理マニュアルの作成手引きに対応の方針を示したが、教育現場での具体的な検討はまだ十分できていない。
 手引きによると、マグニチュード(M)8以上の大地震が発生した際に発表される「巨大地震警戒」の対応では、事前避難対象地域で原則1週間程度、授業を中止する。ただ、集団下校や引き渡しの実施のタイミングは詳細な記載がない。県教委は「一律に細かい基準を決めるのは難しく、地域の特性や災害リスクを踏まえて市町や学校ごとに事前に考えてもらいたい」と説明する。
 湖西市の新居幼稚園の危機管理マニュアルには、大規模地震対策特別措置法(大震法)に基づく「警戒宣言」発令時の対応が載ったままだ。池田真利子園長は「警戒宣言がもう出されないことは認識している」としつつ、「臨時情報については市から方針が示された上で、隣接する新居小とも対応の足並みをそろえなければならない」とする。市は「地域防災計画でも臨時情報の対応が細かく決められていない部分があり、さらに充実させる必要がある」と強調した。
 臨時情報の対応が不十分な点は県教委も認識していて「県立高校には直接、小中学校や幼稚園は市町を通じて検討を促していく」と述べるにとどめた。

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