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液状化地域の家屋再建、軽微では対象外? 能登地震2000棟影響 静岡県も南海トラフは液状化想定

 能登半島の付け根に位置する石川県羽咋市。能登半島地震で揺れや津波の被害は小さかった一方、深刻な液状化被害が発生した。住家被害約2千棟(2日現在)の大半が液状化の影響を受け、町内一帯が地盤沈下した地域もあり、被災者は途方に暮れている。静岡県内でも南海トラフ巨大地震の発生時、各地で液状化被害が想定されている。

応急危険度判定で「危険」と判定された自宅を見上げる宮崎誠さん夫妻=1月下旬、石川県羽咋市
応急危険度判定で「危険」と判定された自宅を見上げる宮崎誠さん夫妻=1月下旬、石川県羽咋市
石川県羽咋市
石川県羽咋市
応急危険度判定で「危険」と判定された自宅を見上げる宮崎誠さん夫妻=1月下旬、石川県羽咋市
石川県羽咋市

 「コミュニティーが維持できるか…」。1月下旬の羽咋市大川町。町会長の庵修さん(68)は肩を落とした。町内では、最大50センチほど沈下し、傾いた家屋があちこちでみられる。新築で被害を受けた人や、既に町内を離れると決めた人もいるという。上下水道は1月下旬に復旧したが、下水道は仮設でしのいでいる。
 地盤を改良し、同じ場所にまちを再生するか、再生を断念し別の場所に移転するか―。「住民の意見を集約し、まちづくりの方向性を決めるのは年単位になる」。市の担当者は厳しい表情を浮かべる。
 築35年の木造3階建て住宅に住む同町の宮崎誠さん(62)は「住家の被害は認めてもらえるのか、そこが心配」と話す。近くの電柱が倒れてくる恐れがあるとして、応急危険度判定で「危険」と判定されたが、外見上は家屋の傾きや沈み込みはみられない。屋内でも傾きは感じないという。
 生活再建支援策は、上物である家屋の被害を前提にしている。半壊以上であれば、仮設住宅への入居や公費解体などの支援が受けられる。液状化の場合、地盤が沈下し再建が困難でも、家屋の被害が軽微であれば「準半壊」や「一部損壊」と判定されることは「あり得る」(同市)という。
 政府は1日、300万円を上乗せして最大計600万円を支給する生活再建支援の新制度を創設する方針を示した。現時点の説明では対象は「半壊以上」「珠洲市や輪島市など6市町を中心とする地域」などとされ、大規模な液状化に襲われた羽咋市内の被災者が対象になるかは不透明。「住んでいる自治体によって支援に差があるのは納得できない」。同市内の50代男性はそう不満を漏らした。
 静岡県の第4次被害想定では、天竜川や太田川、巴川、狩野川の流域など県内全域で液状化のリスクが懸念される。
 (社会部・武田愛一郎)

独自施策が必要  被災者支援に詳しい関西大の山崎栄一教授の話 罹災(りさい)証明の基になる住家の被害認定調査も、政府が最大600万円の支給を決めた被災者生活再建支援制度も、住家の被害に対する支援という視点に立っている。地盤が影響を受ける液状化はカバーしていない。地盤に関する支援制度も必要だと思うが、日本は静岡県を含め地盤が弱いところが多く、難しい問題。今回は、将来創設されるであろう国の復興基金から拠出するとか、県や地元自治体が独自施策で支援することが必要ではないか。

 

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