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緊急輸送路 道路ふさぐ恐れある建物 静岡県内300棟以上

 耐震性がなく大規模災害時に前面道路の半分以上をふさぐ恐れがある建築物が300棟以上あるとの調査結果が13日に公表された県内の緊急輸送ルート沿い。特に伊豆半島に約6割が集中している。南海トラフ巨大地震で建物が倒壊すれば緊急輸送ルートが覆われて救援が遅れるのは必至だ。多くの道路がふさがれ、道路沿いの建築物の耐震化の重要性を突き付けた阪神大震災から17日で28年を迎える中、緊急輸送ルート沿いの耐震性確保という喫緊の課題があらためて浮上している。

伊豆箱根鉄道修善寺駅前の商店街。多くの建物の耐震不足が判明した=16日午後、伊豆市柏久保(写真の一部を加工しています)
伊豆箱根鉄道修善寺駅前の商店街。多くの建物の耐震不足が判明した=16日午後、伊豆市柏久保(写真の一部を加工しています)

 伊豆市の伊豆箱根鉄道修善寺駅前。県内有数の観光地の玄関口だが、緊急輸送ルートに指定されている県道沿いの建物の多くが「耐震性なし」と判断された。木造2階建ての寝具店もその一つ。2022年に閉店したが、23年度に就労支援のNPO法人の拠点に生まれ変わる予定で、耐震補強を計画している。
 寝具店は元々、同NPO法人理事長の風間淑行さん(69)が営んでいた。「現在のNPOの活動拠点が手狭になったことや耐震化に行政から支援が受けられることが重なり、補強を決めた」と語る。  ただ、こうした事例はまだ少ない。同市によると、市内には耐震性がない建物が49棟あり、対策を講じたのは寝具店を含め2棟にとどまる。耐震設計まではしたものの、補強費用の見積額が膨らみ、耐震化の工事を断念した所有者もいる。
 県内で最多の55棟が「耐震性なし」と判定された浜松市。伊豆半島と同様、幅員が狭く老朽化した住宅や店舗が集まる同市北区の国道362号沿いに密集する。自営業の女性は「解体費用の支援は受けられても建て替えは自己負担。捻出できないよ」とこぼす。
 集合住宅では、入居者の合意というハードルもある。下田市のアパート経営大川広基さん(58)は22年3月、市の助成を得て耐震不足のアパートを解体した。入居者は2世帯2人だったが「説得に苦心した人もいる。合意形成は容易ではない」と語る。
 静岡大防災総合センターの岩田孝仁特任教授は緊急輸送ルートの耐震化について「さまざまな課題があり特効薬はない」とした上で、「必要性について社会的な機運を醸成し、所有者に理解してもらえるよう行政が粘り強く働きかけていくしかない」と強調する。
 (社会部・武田愛一郎、下田支局・伊藤龍太)
 

 

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