テーマ : 防災対策

震災時中高生、子育てに奮闘 「無意識の我慢」影響、指摘も 支える、ケアと交流の場

 東日本大震災から11年半以上が経過し、中高生だった被災者の一部は子育てに励んでいる。支援者は当時の「無意識の我慢」が育児に影響している可能性を指摘し、ケアと交流の場で支える。当事者は悩みを抱えながらも、日々奮闘中だ。

長男智貴ちゃんを抱く星愛香さん=9月、宮城県名取市
長男智貴ちゃんを抱く星愛香さん=9月、宮城県名取市
長男智貴ちゃんとベンチに腰かける星愛香さん=9月、宮城県名取市
長男智貴ちゃんとベンチに腰かける星愛香さん=9月、宮城県名取市
長女とサロン活動「きびたん’S」に参加する浅野朋香さん=7月、仙台市
長女とサロン活動「きびたん’S」に参加する浅野朋香さん=7月、仙台市
長男智貴ちゃんと散歩する星愛香さん=9月、宮城県名取市
長男智貴ちゃんと散歩する星愛香さん=9月、宮城県名取市
長男智貴ちゃんを抱く星愛香さん=9月、宮城県名取市
長男智貴ちゃんとベンチに腰かける星愛香さん=9月、宮城県名取市
長女とサロン活動「きびたん’S」に参加する浅野朋香さん=7月、仙台市
長男智貴ちゃんと散歩する星愛香さん=9月、宮城県名取市

 「自分よりつらい状況の人がたくさんいた。不満を言っても家族の雰囲気が悪くなるだけ、と思っていた」。宮城県名取市の星愛香さん(26)は、中学3年だった被災当時の思いを振り返る。
 2011年3月11日。名取市北釜地区にあった自宅が津波で流され、祖父を失った。高校進学への不安もあったが、口にしないようにしていた。仮設住宅での暮らしは3年以上に及んだ。
 今は長男智貴ちゃん(4)の育児に励む。震災の影響について自覚はないが、地震があると当時の出来事がフラッシュバックするという。
 福島市出身で、結婚を機に仙台市で暮らす浅野朋香さん(27)も当時、中学3年。東京電力福島第1原発事故後、屋外で水くみなどを手伝った。昨年、長女を出産。「放射性物質の影響が出るのではないか」「地震が起きたらどう逃げよう」。時折、不安に襲われる。
 厚生労働省の統計を分析すると、被災3県(岩手、宮城、福島)の市町村への「育児・しつけ相談」件数は震災後の11年度以降、計200~300件台で推移。だが因果関係は不明だが18年度以降から増加傾向で、20年度は700件を超える。一方、全国的に見ると、18年度以降は減少傾向が顕著だ。
 中高生の時に被災した子育て世代に詳しい清水冬樹・東北福祉大准教授(児童福祉)は「震災後の厳しい環境下で、自身のつらさを大人に話す機会が少なかったとみられ、心理的影響が出ている可能性がある」と話す。
 子育て支援団体「マザー・ウイング」(仙台市)の代表理事、小川ゆみさん(53)も「震災当時、無意識に我慢していた中高生は多い」と言う。11年半以上が経過し、心理的影響は自覚しにくくなっているとみられ「丁寧なサポートが必要。出産や育児をきっかけにメンタル面に不調が出る人もいる」と指摘する。
 小川さんは「同じ思いを抱く人たちが集まることで、安心して過ごせる場」を目指し、子育てサロン活動にも関わる。
 浅野さんはそのうちの一つ、福島県から仙台市への転入者向けサロン「きびたん’S」に通う。乳幼児の親子が集い、手遊びしたり、育児情報を交換したり。「福島の思い出も話せて楽しい」と笑顔を見せる。

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