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ペット同行避難は原則 飼い主や地域、浸透道半ば【いのち守る 防災しずおか】

 大規模災害が発生する度に課題となるペットの避難。国は在宅避難が困難で避難所まで逃げなければならない場合には、ペットとの同行避難を原則としている。犬や猫は家族の一員との意識が一般的になっているが、同行避難について、飼い主や地域の認識は十分ではない。コロナ禍で新たにペットを飼う人は増加傾向で、理解促進と受け入れ体制整備の必要性が高まっている。

飼い主とペットの受け付け手順を確認する参加者=2021年12月、三島市(市提供)
飼い主とペットの受け付け手順を確認する参加者=2021年12月、三島市(市提供)
山田有仁会長
山田有仁会長
飼い主とペットの受け付け手順を確認する参加者=2021年12月、三島市(市提供)
山田有仁会長

  昨年12月、三島市で行われたペット同行避難訓練。飼い主とペットの受け付けや一般避難者の居住場所と離れた所に飼育スペースを設置するなどの手順を確認した。4歳のビーグル犬と参加した同市の主婦道村美千代さん(52)は「避難所でのペットの管理は飼い主が責任を持ってやる必要があるのが分かった」と振り返った。
  道村さんは東日本大震災で飼い主とはぐれた動物が野放しになったのを知り、ペットの防災対策への関心が高まった。一方、「周囲では避難所でペットの受け入れが可能と知らない人はかなり多い」(道村さん)。ペット保険を扱う民間会社が2021年に行った調査では、同行避難という言葉を知っていても、避難時の原則と認識している人は15%にとどまった。
  受け入れ体制はどうか。県衛生課によると、今年3月末時点で、県内35市町のうち一部または全ての避難所でペットの受け入れが可能なのは31市町。避難所数では1705カ所のうち753カ所で、半数に届いていない。県は15年に同行避難の在り方などを定めた「災害時における愛玩動物対策行動指針」を策定した。同課の阿部冬樹技監は「訓練を実施する市町が増えていて、同行避難の意識は浸透してきている」としつつ、ペット受け入れの優先順位が低くなる場合や避難所が手狭など地域によって事情が異なるという。「どの市町にもペットを連れた飼い主はいるので、本来支援に差が出てはいけない」として、理解促進をより図っていくとしている。
  東日本大震災では、いったんは避難した飼い主がペットを避難させるために自宅に戻って津波に巻き込まれたケースがあった。県動物保護協会の曽田尚寿常務理事は「過去の災害ではペットと離れたくないために、家が壊れているのにとどまる人がいた。同行避難は動物愛護の観点だけでなく、飼い主を守るという意味でも重要」と強調する。

  ■「家族の一員、備えに責任」 山田有仁・静岡県獣医師会長に聞く
  災害時のペットとの同行避難にはどのような備えが必要か。県獣医師会の山田有仁会長(68)に課題や飼い主の心構えを聞いた。
  -同行避難はなぜ必要か。
  「同行避難は発災直後に、飼い主とペットが一緒に避難先まで行くこと。ペットを守ることで飼い主の命を守るだけでなく、放浪動物によって起こる衛生環境の問題を防ぐためにも大事。環境省や市町が避難所での受け入れ方針を示していても、各自主防災組織まで浸透していないのが現状。市町の危機管理部局内に動物救護の担当を設けるなどして、より地域に理解を求めていく必要がある」
  -飼い主に求められる準備は。
  「本来は自宅の耐震化を図るなど、在宅避難できるのが一番いい。避難所には動物が苦手な人もいる。犬は無駄ぼえをさせないなど基本的なしつけをしてほしい。猫はしつけが難しいが、避難所ではケージの中にいることになるため、普段から練習を。ペットを連れて避難所までの経路をシミュレーションするのも大事だ。健康管理や去勢手術、迷子札やマイクロチップの装着も欠かせない」
  -最寄りの避難所でペットの受け入れができない場合もある。
  「親族やペット仲間宅など安全に預けられる場所の選択肢をあらかじめ考えておく分散避難の必要がある。全ての避難所で受け入れができるようになるのが望ましい。飼い主側から自主防などにペットの避難について問い合わせたり、相談したりすることで、地域の理解が進むことも期待できるだろう。災害時は自助が基本なのはペットも同じ。家族の一員であるペットを守るのは飼い主の責任。だからこそ、災害の備えもしっかり考えてほしい」

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