テーマ : 裁判しずおか

熱海土石流 損賠2訴訟併合審理へ 遺族ら真相究明期待「全ての被告そろった」

 熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、遺族ら111人と3法人が県と熱海市に計約64億円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が14日、静岡地裁沼津支部であり、古閑美津恵裁判長は、遺族らが土石流の起点の現旧土地所有者らを相手取り起こした損害賠償請求訴訟と併合審理すると決めた。原告側の代理人弁護士は全ての被告がそろうことで「真相究明に近づいた」と期待感を示した。

弁論終了後の記者会見で思いを語る「被害者の会」会長の瀬下雄史さん(手前)=14日午前、沼津市内
弁論終了後の記者会見で思いを語る「被害者の会」会長の瀬下雄史さん(手前)=14日午前、沼津市内
熱海土石流行政訴訟の争点表
熱海土石流行政訴訟の争点表
弁論終了後の記者会見で思いを語る「被害者の会」会長の瀬下雄史さん(手前)=14日午前、沼津市内
熱海土石流行政訴訟の争点表

 県、熱海市を被告とした訴訟と現旧所有者らに対し計約58億円の損害賠償を求めた訴訟が併合され、来年1月11日には非公開の弁論準備手続きが行われる。「被害者の会」会長の瀬下雄史さん(54)は「今まで責任のたらい回しが現旧所有者、県、市の間で行われていた。併合審理されることで新たな真実が浮かび上がると思う」と話した。
 県と熱海市を相手にした訴訟では、遺族らは不適切な盛り土を造成した旧土地所有者に対し、市が県条例に基づく措置命令を出さず、県も発令を市に求めなかったことなどが被害の拡大につながったと訴えている。これに対し、県と市は法的責任を否定し、事前に提出した答弁書で請求棄却を求めた。
 同日の弁論には県側の代理人は出席したが、市側は欠席した。遺族、被災者からは「われわれに向き合おうとしていない」などと不満の声が上がった。民事訴訟法は、被告が答弁書を提出していれば初回の弁論に限り、欠席しても答弁書を陳述したと認める制度があるが、弁論終了後に記者会見した原告側の加藤博太郎弁護士は「熱海市の行政上の過失が重いと判断して起こした訴訟。市が法廷の場で説明しないのは遺憾だ」と述べた。
 瀬下さんは「怒りを通り越してあきれている。市のこうした無責任な体質が土石流を招いた」と非難。母チヨセさん=当時(82)=を亡くした鈴木仁史さん(57)も「市への不信感が増した。火に油を注ぐ行為だ」と怒りをあらわにした。
 斉藤栄市長は同日、「訴訟を通じて本市の見解を述べていく。伊豆山の復旧復興に全力を尽くす」とのコメントを発表した。県法務課の河合隆晴課長代理は弁論終了後の取材に「行政に不十分な点があったことは認めつつ、法的な責任は別の話になるので裁判で主張していきたい」と述べた。

裁判しずおかの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞