テーマ : 裁判しずおか

政府 28日代執行 辺野古 1月着工へ 沖縄県 上告方針 設計変更承認命じた高裁判決 不服

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡り、政府は26日、工事の設計変更を沖縄県に代わって承認する「代執行」を28日に行うと発表した。地方自治法に基づき国が代執行する初の事例となる。防衛省沖縄防衛局は来年1月12日にも軟弱地盤がある大浦湾側の工事に着手する。県は強く反発。設計変更の承認を命じた福岡高裁那覇支部判決を不服とし、期限となる27日に最高裁へ上告する方針だ。

米軍普天間飛行場の移設先として工事が進む沖縄県名護市辺野古。手前は大浦湾=25日
米軍普天間飛行場の移設先として工事が進む沖縄県名護市辺野古。手前は大浦湾=25日
米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設で想定される今後の日程
米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設で想定される今後の日程
米軍普天間飛行場の移設先として工事が進む沖縄県名護市辺野古。手前は大浦湾=25日
米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設で想定される今後の日程


 斉藤鉄夫国土交通相が26日午前、国の代執行を通知する文書を玉城デニー知事へ発出した。27日に県庁へ到着する見通しだ。県は「到達後、内容を確認し対応を検討する」と説明。28日の代執行は、国交相が知事に代わって承認したことを示す書類を、防衛省が受け取ることで完了する。
 代執行は2000年の地方分権改革に伴い地方自治法で規定。国が自治体に委ねている「法定受託事務」の管理や執行を自治体が怠った場合などに、所定の手続きを経て担当相が事務を行う。政府は、高裁支部から承認を命じられた県が25日までの期限内に承認しなかったためだと説明している。
 県は弁護士や行政法の専門家を交え、上告理由を詰めている。県幹部は判決に関し「代執行の要件である『公益』の判断基準について、一方的に国の公益のみを採用しており、さまざまな問題がある」と指摘する。ただ、逆転勝訴しない限り工事を止められない仕組みとなっている。
 斉藤氏は記者会見で「上告は執行停止の効力を有しない」と言及。県が国との対話を求めている点には「防衛省の所管事業であり、回答は控える」とした。
 代執行訴訟は、15年11月、辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した当時の翁長雄志知事に対し、国側が撤回を求めて提訴して以来2例目。この訴訟は和解が成立し、代執行までは至らなかった。
沖縄知事が退院  沖縄県は26日、大葉性肺炎のため入院していた玉城デニー知事が、同日午後に退院したと発表した。27日午後から県庁に登庁し、公務に復帰する見通し。発熱などの症状があり、20日から公務を取りやめて知事公舎で療養、21日に入院した。
Q&A「代執行」 国介入 例なし 「最終手段」  米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡り、工事の設計変更を県に代わって国が承認する「代執行」が28日に行われます。
 Q 代執行とは。
 A 自治体の仕事のうち旅券発行や選挙管理などは、国から委ねられた「法定受託事務」と呼ばれます。その執行を怠ったり、法令に違反したりした場合、国が代わって行います。ほかに解決手段がなく、そのままにすると著しく公益を害するケースが対象です。
 Q 手続きの流れは。
 A 担当閣僚はまず、適切に事務を行うよう自治体に勧告や指示を出し、応じなければ高裁に裁判を起こします。高裁は国の訴えを認めると、自治体に事務の執行を命じます。それでも従わないと、国は事前に通知した上で代執行できます。
 Q 実施した例は。
 A 2000年施行の改正地方自治法で、国と自治体の関係は「上下・主従」から「対等・協力」に改められ、自治体の判断を尊重し、国の介入は最小限にするのが大原則となりました。代執行は万が一に備え、この時に定めた手続きで、前例はありません。
 Q 問題点は。
 A 自治体行政への強行介入である代執行は「最終手段」とも言われ、専門家の間では「地方自治の侵害だ」との批判があります。一方で「自治体が司法判断に従わないのなら、違法状態を解消するために仕方がない」との指摘もあり、賛否両論があります。

裁判しずおかの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞