テーマ : 裁判しずおか

大自在(7月12日)こども六法

 2019年に出版された「こども六法」(弘文堂)は児童書ながら発行部数70万部を超すベストセラー。憲法や刑法、刑事訴訟法、少年法などを子ども向けに解説する。
 著者は教育研究者で俳優の山崎聡一郎さん。自身がいじめられた経験やいじめる側に回ってしまった後悔を基に企画した。いじめはれっきとした犯罪になり得ると分かりやすく説く。
 法律を知らない子どもたちは、いじめを目の当たりにしても「そういうものだ」と我慢してしまうかもしれない。「こども六法」の人気の理由は、学校で“犯罪”に直面しながらも違和感を言語化できなかった子どもたちに目からうろこが落ちる法解釈を与え、立ち向かう背中を押してくれるからだろう。
 いじめ防止対策推進法の章には「大人たちみんなでいじめを防ぐ!」とあった。「勇気を出して、いろんな大人に相談してみてください!」とも。著者や編集者からのメッセージのなんと頼もしいことか。
 実際の大人の世界はどうだろう。1966年に現在の静岡市清水区で起きた殺人事件で死刑が確定し裁判のやり直しが決まった袴田巌さん(87)の再審公判について、検察は有罪を立証する方針を静岡地裁に伝えた。無罪判決がまた遠のいた。
 東京高裁は、検察の証拠は捏造[ねつぞう]の可能性が極めて高いと指摘して再審を認めている。無罪の公算が大きい中、高齢の巌さんと姉ひで子さん(90)はさらに検察の保身に付き合わされる。国家による“いじめ”になってはなるまい。国民に寄り添い、血の通った司法とは何かを考えさせられる。

裁判しずおかの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞