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袴田さん弁護団「衣類は捏造、決着済み」 検察側の蒸し返しと批判 再審第7回公判

 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審第7回公判が17日、静岡地裁(国井恒志裁判長)であり、前日の第6回に引き続き弁護団が反証した。事件から1年2カ月後に見つかり犯行着衣とされた「5点の衣類」の色に関する実験や鑑定に基づき「衣類は捏造(ねつぞう)だと示している。巌さんは無罪」と強調。再審請求審で決着がついた論点を検察側が蒸し返しているとして「再審公判を長期化させている」と批判した。

みそタンクから見つかった「5点の衣類」のコラージュ
みそタンクから見つかった「5点の衣類」のコラージュ

 袴田さんの取り調べ状況を踏まえ、「捜査機関が犯人に仕立てた」とも主張。取り調べの録音テープを一部再生した。犯人と決め込む警察官や検事が自白や謝罪を迫り、袴田さんが「関係ないものはない」と否認する音声が法廷に流れた。「被害者4人は縄などで縛られ、身動きが取れない状態で刺された」とする新たな論点についても立証。遺体の写真を示したが、法廷の大型モニターは消され、傍聴席には見えなかった。
 5点の衣類は現場近くのみそタンクで見つかり、血痕が付着していた。弁護団は、発見当時に警察官は血痕の色を「赤紫色」と記しているほか、第2次再審請求審で開示されたカラー写真を見ると赤みが鮮明に残っていると説明した。弁護団と検察側の合わせて九つの実験は、1年以上みそ漬けにすれば衣類のみその色は濃くなり、血痕の赤みは消えることを指し示すと指摘。専門家の鑑定で血痕の赤みが消失するメカニズムも明らかになったとした。
 再審公判で「血痕に赤みが残り得る」としている検察側に対して、「1年以上みそ漬けにされていたことが間違いないという証明をしなくてはいけない。赤みが残る可能性があるという程度の立証では、到底合理的な疑いを超えた証明とは言えない」とけん制した。
 袴田さんの再審開始を認めた2014年の静岡地裁決定は、みそ漬け実験も重視し、衣類が捏造された疑いがあると判断した。差し戻し後の即時抗告審は血痕の色調変化が論点となり、23年の東京高裁決定は専門家の鑑定を評価して検察側の即時抗告を棄却。捏造の可能性が「極めて高い」といっそう踏み込んでいた。
 再審公判終了後の記者会見で、間光洋弁護士は「捏造はあり得ない、という検察官の主張は決着がついている。終わった話をもう一度している。理不尽で怒りを禁じ得ない」と述べた。

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