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静岡県53文書未提出 熱海土石流巡り裁判所に 逢初川無許可開発関連

 2021年に盛り土崩落に伴い28人が死亡した熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り遺族や被災者が県などを相手に損害賠償請求した訴訟で、県が裁判所に提出していない逢初(あいぞめ)川源頭部の無許可開発に関連する文書が少なくとも53種類に上ることが18日までの取材で分かった。裁判所は盛り土造成の経緯が分かる文書の提出を県に求めたが、県による文書の分類が不正確だったため提出されなかったとみられる。

裁判所に未提出の2003年2月の行政文書に記された無許可開発区域(上の赤色斜線部)。範囲は逢初川流域に及んでいた(文書の一部を加工しています)
裁判所に未提出の2003年2月の行政文書に記された無許可開発区域(上の赤色斜線部)。範囲は逢初川流域に及んでいた(文書の一部を加工しています)

 無許可開発に関連する53文書は03年2月から05年10月にかけて県が作成したり業者から受理したりし、20年前に逢初川源頭部で起きた土砂崩れも記録されていた。複数の専門家はこの土砂崩れと21年の大規模土石流の関連性を指摘。土砂崩れ箇所の盛り土崩落が下流域の多くの住民を巻き込んだ土石流最大波のきっかけになった可能性がある。
 県によると、昨年10月に静岡地裁沼津支部から「逢初川源頭部の盛り土工事の経過等を明らかにするために必要な文書」の提出を求められ、県は今年3月に逢初川源頭部の崩落盛り土の関連文書を提出した。しかし、提出したのは06年10月以降の文書に限定。20年前の土砂崩れが逢初川源頭部で発生したことを文書で確認済みだったのに、土砂崩れの関連文書を同支部に提出しなかった。
 また、県が03年に作成した文書には無許可開発の範囲が隣の鳴沢川流域から逢初川流域に及んだ記載があったのに、県は本紙が開示を求めるまで範囲を黒塗りにして情報を出さず、遺族や被災者は無許可開発が逢初川源頭部に及んでいたことを知らなかった。
 県はホームページにこれらの文書を公表した際も、提出を求められていない鳴沢川流域に限定した文書として分類し、現場を撮影した写真は白黒化して判読できない状態になっていた。
 文書の開示作業や黒塗り部分の決定に関与し、訴訟も担当している森隆史法務課長は取材に対し、「必要なら原告の弁護士が提出を求めてくるはずだ」と主張している。
 (社会部・大橋弘典)

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