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袴田さん再審 特別抗告、判断いかに 東京高裁決定受け検察 期限は20日 要件が壁、断念なら無罪公算

 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん(87)を巡り、東京高裁が再審開始を認める決定をしたのに対し、東京高検は期限の20日までに最高裁に特別抗告するかどうかを決める。決定は弁護側の主張を全面的に認めたことに加え、抗告の要件は憲法違反か判例違反に限られており、ハードルは高い。ただ過去にも再審開始決定に特別抗告したケースはあり、判断が注目される。

東京高裁決定を伝えた時の袴田巌さんの様子などを語る姉ひで子さん=15日午後、浜松市内
東京高裁決定を伝えた時の袴田巌さんの様子などを語る姉ひで子さん=15日午後、浜松市内

 特別抗告すれば最高裁が改めて審理し、結論まで年単位の時間がかかるとの見方もある。袴田さんは高齢で、第2次再審請求は申し立てから15年近くが過ぎ、弁護側は抗告断念を強く求めている。抗告しなければ静岡地裁で再審公判が開かれ、袴田さんは再審無罪となる公算が大きい。
 13日の決定で大善文男裁判長は、確定判決が「犯行着衣」と認定した衣類5点の証拠を捜査機関側が捏造(ねつぞう)した可能性が極めて高いとまで指摘した。検察関係者は「なぜそこまで言えるのか」と反発する。だが「事実誤認」だけでは特別抗告の理由には当たらない。再審開始には証拠の新規性や明白性が求められ、検察側はこれらに関する判例違反があるなどと主張する必要が出てくる。
 鹿児島県大崎町で79年に起きた大崎事件では、第3次再審請求で2017年に鹿児島地裁が、翌年には福岡高裁宮崎支部がいずれも再審開始を認める決定をした。だが検察側が特別抗告し、最高裁は19年、再審を認めない判断をした。今年2月に大阪高裁が再審開始を認めた滋賀県日野町で起きた強盗殺人事件でも、大阪高検は「承服しがたい」とのコメントを出し、特別抗告した。

巌さんに「もう絶対に大丈夫」 ひで子さん 浜松で会見
 一家4人を殺害したとして死刑判決が確定した袴田巌さん(87)の再審開始を認める東京高裁の決定を受け、姉ひで子さん(90)が15日、浜松市中区の自宅で記者会見した。都内から14日夕に帰宅し、袴田さんに「いいことあったよ。もう絶対に大丈夫だよ」と伝えたと明らかにした。
 ひで子さんによると、同日に帰宅した際、東京高裁から袴田さん宛てに再審開始の決定文が郵送で届いていた。文書を見せて「再審開始になったよ」と報告すると、袴田さんは黙って聞いていたという。
 袴田さんの反応は鈍く、ひで子さんは「どこまで伝わっているか分からないけど、とても喜び安心していると思う」と心境を代弁した。夕食は、袴田さんの好物のうなぎを食べてお祝いした。
 検察の特別抗告について、ひで子さんは「権利なので、やるかもしれない」と予想しつつ、「ここまで57年間、闘ってきた。いまさら3年や5年くらい延びたところでどうってことない」と言葉に力を込めた。
 一方、審理の長期化などを理由に、ひで子さんは「再審法の改正も進めてほしい」と強調。今回の決定が「ほかの再審請求事件にも影響を与えられるよう大いに闘いたい」とも語った。

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