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袴田さん弁護団「証拠調べ請求却下を」 検察も意見書、有罪主張を補充【最後の砦 刑事司法と再審】

 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、今年3月に裁判のやり直しが決まった袴田巌さん(87)の再審公判を巡り、弁護団と静岡地検の双方が31日、新たな意見書を静岡地裁(国井恒志裁判長)に提出した。弁護団は地検の有罪立証方針を批判するとともに、地検が請求した証拠調べについて「必要性が認められない」として却下するよう要請。地検は有罪主張を補充した。9月12日に次回の3者協議が予定され、意見書を踏まえて今後の進め方などが話し合われる。=関連記事31面へ

記者会見で「検察官は有罪立証できない」と指摘する弁護団の小川秀世事務局長(左から2人目)ら=31日午後、静岡市内
記者会見で「検察官は有罪立証できない」と指摘する弁護団の小川秀世事務局長(左から2人目)ら=31日午後、静岡市内

 弁護団が静岡市内で記者会見し、概要を説明した。弁護団は意見書で、再審公判で検察官に求められているのは、事件から1年2カ月後に現場近くのみそタンクで見つかり、血痕が付着した「5点の衣類」を袴田さんの犯行着衣であると立証することだと指摘。しかし、その立証が不可能なのは明らかとして、地裁に対し「検察官の無意味な立証活動に時間を費やすのではなく、速やかに立証方針を撤回させて」と望んだ。
 また地検の証拠255点のうち、とりわけ再審開始確定後に作られた法医学者7人による共同鑑定書などの新証拠について、再審請求審の蒸し返しに過ぎないとして却下を強く訴えた。
 一方、地検は66ページに上る意見書で、旧証拠を含めた間接事実の総合評価で袴田さんの犯人性を立証できると改めて主張しているという。5点の衣類について、袴田さんの再審開始を認めた3月の東京高裁決定は捜査機関により捏造(ねつぞう)された可能性が「極めて高い」と判断したが、地検は意見書で「大がかりな捏造をするはずがない」と否定。別途、長期間みそに漬かった血痕に赤みが残らないことを化学的に示した弁護団の鑑定などに反論する意見書も出したという。
 (社会部・佐藤章弘)

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