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静岡地裁所長に就任した 永渕健一さん【時の人】

 「静岡地裁をより力強い存在にできたらいい」。就任の記者会見で、願いを込めてそう強調した。

永渕健一さん
永渕健一さん

 とかく縁遠く感じられてしまいがちな司法の分野。社会のIT化・デジタル化が進む中、裁判所としても対応を図り、利用のしやすさを追求する。「より良い司法サービスの提供が目指すところだ」
 憲法は「裁判官の独立」を保障する。「独立して仕事ができるところ、最終的な判断を示すことで社会に貢献できるところ」に魅力を感じ、裁判官を志望した。主に刑事裁判を担い、直近の東京地裁では裁判長として、収賄罪に問われた前伊東市長に実刑判決、福島第1原発事故を巡って業務上過失致死傷罪で強制起訴された東京電力の旧経営陣3人に予見可能性を否定して無罪判決を言い渡した。
 有罪か無罪か、実刑か執行猶予か。「判断に苦しむ、悩むことは珍しくない」。どんなときにも明るく前向きに、を心がけて来た。そして一つ一つを地道に。「それぐらいしか取りえがない」と謙遜するが、根底には「被告人や被害者にとっては一生に一度の裁判かもしれず、地道に取り組むことが人としての道」との思いがある。
 導入から来年5月で15年を迎える裁判員制度については、争点や証拠を絞る公判前整理手続きの長期化を懸念。「準備期間が長引くほど、人の記憶は減退する。公判の質を下げてしまう面があり、問題だと思っている」と説明する。
 妻と2人暮らし。「夫婦そろって食いしん坊。静岡は食べ物もお酒もうまい。わが家のエンゲル係数が上がっていくのではと心配しています」。長崎市出身の61歳。

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