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袴田さん有罪立証へ調整 検察 衣類血痕 補充捜査

 1966年に起きた旧清水市(静岡市清水区)の一家4人殺害事件で死刑が確定し、裁判やり直しが決まった袴田巌さん(87)の再審公判で、検察側が有罪立証する方向で最終調整していることが8日、関係者への取材で分かった。弁護側は「審理に時間がかかる」などと非難した。検察は慎重に検討を重ね、期限としてきた10日、静岡地裁に方針を伝える見通し。

袴田巌さん
袴田巌さん

 関係者によると、検察は、確定判決で「犯行の着衣」とされた5点の衣類に残った血痕の赤みなどについて補充捜査。有罪立証可能とみているもようで、衣類の評価が再審で再び焦点となる可能性がある。
 衣類は事件から約1年2カ月後、赤みが残った状態でみそタンクから見つかった。3月の東京高裁決定は弁護側の実験結果などに基づき、こうした状況では「衣類に赤みは残らない」と判断。捜査機関側が証拠を捏造(ねつぞう)した可能性に言及し、再審開始を認めた。
 最高裁への特別抗告は憲法違反や判例違反がある場合に限られる。検察は高裁決定に「承服しがたい点がある」(幹部)としつつ、申し立てを断念。再審開始が決まったが再審公判の主張内容に法的な制限はない。刑事訴訟法は再審開始について「無罪を言い渡す明らかな証拠」があった時と定め、再審無罪判決が言い渡される公算が大きい中、検察の対応が注目されている。 再審長期化 弁護団反発 「抵抗のポーズ」  現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審公判を巡り、検察当局が有罪立証を維持する方針だと報じられた8日、弁護団の戸舘圭之弁護士が検察に断念を求めるネット署名を始めた。検察が改めて有罪を立証しようとすれば審理の長期化は避けられない。「袴田さんが亡くなるのを待っていると言っても過言ではない」と検察の姿勢を批判する。
 再審公判で検察が有罪立証することは法的には問題ない。「島田事件」など過去にあった死刑囚の再審4事件では、実際に有罪立証を試みた。しかし、いずれも無罪判決に至っている。
 戸舘弁護士は有罪立証の維持について「メンツの問題に過ぎない。(衣類5点の証拠が)捏造(ねつぞう)ではないと抵抗したいだけのポーズ」と反発する。弁護団に開示していない証拠がまだまだあるとも強調し、「公益の代表者」である検察官がなすべきは「一日も早く無罪判決を出すために審理に協力すること」と呼びかける。

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