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袴田さん再審で証人尋問開始 血痕の赤み「否定できず」 検察側・法医学者指摘【最後の砦 刑事司法と再審】

 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審第10回公判が25日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれ、3日間にわたる証人尋問が始まった。犯行着衣とされる「5点の衣類」に付着した血痕の色調変化を巡り、検察側証人で法医学者の神田芳郎久留米大教授は血痕に赤みが残る可能性について「いろんな状況を考えれば否定できない」と述べた。

小雨が降る中、証人尋問が実施される静岡地裁へ向かう袴田巌さんの姉ひで子さん(左から2人目)と弁護団=25日午前、静岡市葵区
小雨が降る中、証人尋問が実施される静岡地裁へ向かう袴田巌さんの姉ひで子さん(左から2人目)と弁護団=25日午前、静岡市葵区

 弁護団はこれまでの再審公判で、再審請求審と異なり立証責任は検察にあるとして「血痕の赤みが残ることが間違いないと立証できなければ反証としては不十分だ」とけん制している。
 神田氏は尋問で、再審開始を認めた2023年の東京高裁決定を「科学的に判断されていない」と批判。長期間みそに漬かった血痕が黒色化するメカニズムを専門的に明かし、赤みは残らないと結論づけて高裁決定の根拠となった弁護団の鑑定に対し「赤みが残らないと証明することはほぼ不可能」との見解を示した。メカニズム自体に「異論はない」とし、問題は化学変化の速度にあると説いた。
 同じく検察側証人で法医学者の池田典昭九州大名誉教授は尋問で、みそ漬けの血痕を放置すれば黒色化するとして「ほぼ全ての法医学者は『赤みは残らない』と思うだろう。常識中の常識」と断言した。5点の衣類の生地が1年以上みそに漬かっていたにしては「白すぎる」と感じたことも明らかにした。一方で「黒色化を阻害する要因が考察されていない」と弁護団の鑑定に疑問を投げかけた。衣類がみそタンクという「特殊環境下」で見つかったことを踏まえ、阻害要因としてタンク内の酸素濃度などが考えられると説明。鑑定について、こうした検討が十分ではないと指摘した。
 26日は神田氏への反対尋問を続け、弁護団の鑑定を手がけた清水恵子旭川医科大教授ら2人と物理化学者1人の尋問に移る。27日には証人5人全員が証言台の前に並んで尋問を受ける。
 シャツなど5点の衣類は事件から約1年2カ月後、現場近くのみそタンクで麻袋に入った状態で見つかった。直後に撮影されたカラー写真では血痕の赤みが見て取れ、弁護団は不自然として「捏造(ねつぞう)された証拠」と訴えている。

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