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男性に無罪判決「犯罪証明ない」 伊豆の国市の暴行死亡事件、静岡地裁・差し戻し審判決

 2019年9月に伊豆の国市内の工事現場で同僚に暴行したとして、暴行の罪に問われた男性の差し戻し審の判決で、静岡地裁は20日、無罪(求刑懲役6月)を言い渡した。国井恒志裁判長は判決理由で「犯罪の証明がない」と述べた。

静岡地方裁判所
静岡地方裁判所

 無罪となったのは建設作業員の男性(35)。当初、防水工の同僚男性=当時(56)=の左顎に暴行を加え、傷害を負わせて死亡させたとして傷害致死の罪に問われ、21年3月に静岡地裁沼津支部の裁判員裁判で懲役5年の実刑判決を受けた。東京高裁は22年3月の控訴審判決で、一審判決を破棄して審理を静岡地裁に差し戻した。その後、暴行罪に訴因変更された。
 事件を巡り、同じ現場で働いていた別の同僚2人も逮捕された(後に不起訴処分)。国井裁判長は判決理由で、この2人のうちの1人について、当日に被害男性を叱って暴行したと自認していることなどを踏まえ「本件時間帯より前に致死的暴行を加えた可能性が高い」と踏み込んだ判断を示した。その上で、男性から「顎に一発入れた」と聞いたとする2人の証言について「自身の刑事責任を免れるために虚偽の証言をした合理的な疑いが残る」として信用性を否定した。
 検察側が主張した犯行時間前の段階で、被害男性には耳から出血があり、携帯電話も通話できないほど壊れていた。弁護人を務めた小川央弁護士は取材に「相当強い暴行が疑われるが、検察は死亡との因果関係をはなから度外視していた」と指摘した。静岡地検の奥田洋平次席検事は「判決結果を精査し、適切に対処したい」とコメントした。

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