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社説(6月19日)同性婚訴訟 法制化議論 本格化急げ

 同性婚を認めない現行法制の違憲性を問い、2019年から全国5地裁で争われてきた訴訟の一審判決が、8日の福岡地裁で出そろった。
 5判決のうち、21年3月の札幌地裁と今年5月の名古屋地裁が「違憲」とし、22年11月の東京地裁と今回の福岡地裁が合憲としながらも「違憲状態」。はっきりと「合憲」としたのは22年6月の大阪地裁だけだった。損害賠償請求は全てで棄却された。
 ただし、大阪判決も同性カップルには「望み通りに婚姻できない重大な影響が生じている」と認め、将来「違憲となる可能性」があると言及した。現行制度の不備を指摘して立法措置を促している点で司法の姿勢は一致する。
 立法府はこの判断を重く受け止めなければならない。速やかに法制化の議論を本格化させる必要がある。
 社会では変化が始まっている。公益社団法人「マリッジ・フォー・オール・ジャパン」の調べでは、LGBTなど性的少数者カップルの関係を地方自治体レベルで証明する「パートナーシップ制度」は、8年足らずの間に320を超す自治体に拡大した。
 静岡県内でも、県と浜松、富士、静岡、湖西の4市が導入している。ただ、制度には法的根拠がなく、限界があることは否めない。共同通信が5月に行った世論調査では、71%が同性婚を「認めた方がよい」と回答した。政府はこうした民意をいつまでも放置することはできない。
 各地裁が違反を認定した憲法の規定は、法の下の平等を保障する14条と、家族に関する法律について個人の尊厳に立脚した制定を求める24条2項。初の違憲判断となった札幌判決は14条の違反に絞って「違憲」としたが、名古屋判決は14条に加え、24条2項の違反にも踏み込んだ。
 名古屋判決は「異性カップルに法律婚制度を設け、同性カップルには保護する枠組みすら与えないのは国会の裁量を超える」と判断。とりわけ24条2項について「伝統的な家族観が唯一絶対ではなくなっている。世界規模で同性カップルを保護するための具体的な制度化が実現し、わが国でも承認しようとする傾向が加速している」とした。その上で「法律婚制度の利用から排除することで大きな格差を生じさせ、合理性が揺らぎ、もはや無視できない状況に至っている」と断じた。
 東京判決と福岡判決は、24条2項に反する状態にあるとする一方、「立法府の今後の検討に委ねることが不合理とまでは言えない」として、違憲と断じるのを避けた。同性カップルを正当な関係としていかに社会的に承認していくか、立法府に課せられた責任は重いことを認識すべきだ。

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