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旧天竜林業高事件 元市長の再審請求棄却 浜松簡裁 弁護側、高裁に即時抗告

 旧天竜林業高(浜松市天竜区)で起きた大学推薦入試の調査書改ざん・贈収賄事件をめぐり、贈賄罪で罰金の略式命令を受けた元天竜市長(90)の再審請求審で、浜松簡裁が請求を棄却していたことが12日、関係者への取材で分かった。弁護側は棄却を不服とし、東京高裁に即時抗告した。
 関係者によると棄却は8日付、即時抗告は11日付。審理は同簡裁の大村泰平裁判官が担当した。
 弁護側は、元天竜市長が厳しい取り調べにより虚偽の自白に追い込まれたと主張し、県警の取り調べメモや供述心理学の専門家の鑑定意見書などを提出した。同メモの記述から、2回目の現金授受があったとされる日に、舞台となった同校の校長室にいるのは物理的に不可能で、アリバイが成立するとも訴えていた。
 簡裁の棄却決定では、元天竜市長が略式手続きに異議を述べなかった点などから、捜査機関からの追及で自白に追い込まれたとする弁護側の主張を退けた。アリバイについても、取り調べメモの記載を根拠に成立するとは言えないとした。
 略式命令によると、元天竜市長は孫の大学進学が有利になるよう元校長(75)=加重収賄罪などで有罪確定=に取り計らいを依頼し、謝礼として現金20万円を渡した。
 元校長も無罪を主張して再審請求していたが、3月に最高裁が特別抗告を棄却した。元校長の弁護団は第2次請求をする意向を示している。

「開かれた審理を」 請求弁護人
 浜松簡裁が元天竜市長(90)の再審請求棄却を決定したことについて、請求人弁護人の杉尾健太郎弁護士は12日、「そもそも裁判所が追加証拠の開示を認めなかったのに、新証拠の明白性が不十分というのはおかしい。開かれた形で審理を進めてほしい」と不満をあらわにした。
 弁護側は、現金授受があった日の元天竜市長の行動履歴を明らかにすることなどを目的に、裁判官の職権による追加の証拠開示を求めていた。職権を発動しなかったことに「疑問を正面から解明しようとする姿勢が見られない」と批判した。
 一方、簡裁の棄却理由では、取り調べが長期間にわたったことや警察官による執拗(しつよう)な追及、元天竜市長の供述内容に変遷があることなどから「捜査段階の供述の信用性を考慮する必要がある」ことが認定されたという。杉尾弁護士は「確実な前進もあった」との認識を示した。

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