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無許可開発、分水嶺改変か 逢初川上流域に及んだ疑い 熱海土石流

 熱海市伊豆山で28人が死亡した盛り土崩落に伴う土石流を巡り、20年前に隣接流域で行われた都市計画法違反の無許可開発が分水嶺(れい)を改変し、土石流起点の逢初(あいぞめ)川上流域に及んでいた疑いがあることが26日までの取材で分かった。この無許可開発は、想定を上回る水が逢初川流域に流れ込む流域変更や、崩落した盛り土の造成につながった可能性があるが、当時行政対応した県は土石流後に設置した二つの検証委員会に情報を提供せず、行政対応面でも技術面でも検証されていない。

都市計画法の無許可開発区域(上の赤く囲った部分)を記載した県の行政文書(D27)。当初は非開示情報として黒塗りにされていた(画像の一部を加工しています)
都市計画法の無許可開発区域(上の赤く囲った部分)を記載した県の行政文書(D27)。当初は非開示情報として黒塗りにされていた(画像の一部を加工しています)

 本紙の指摘を踏まえて県が4月、黒塗りを解除した文書(D27)に無許可開発の区域が記されていた。文書には、県の許可を受けず土地を造成したとして2003年2月に開発業者に工事停止命令を出した際の対応や経緯が書かれていた。この業者は土石流起点の土地を11年2月まで所有していた神奈川県小田原市の不動産管理会社の関連会社。
 県は一連の文書のうち、無許可開発区域を記載した図面を黒塗りで非開示にしていたが、本紙の要請に応じて再検討。情報公開条例の非開示理由に該当しないとして開示した。図面の無許可開発区域は、砂防法関連の県の文書に記された逢初川上流域の範囲と照合したところ、逢初川流域に含まれることが判明した。
 県は行政対応検証委員会(第三者委員会)の検証対象を06年以降の対応に限定したため、この文書は検証対象から外れていた。また、遺族や被災者が静岡地裁沼津支部で県などを相手に起こした損害賠償請求訴訟で、県が関連文書を同支部に提出した際もこの文書は含まれていなかった。
 (社会部・大橋弘典)

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