熱海土石流災害の記事一覧

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熱海土石流の判読不能文書 濃度上げ白黒化「意図的」 記者立ち会い再現実験で静岡県認める
熱海市伊豆山で盛り土が崩落し28人が死亡した大規模土石流を巡りカラー行政文書を静岡県が不適切に開示した問題で、判読できなくなっていた白黒の開示文書は複写機で濃度を引き上げて作成された可能性が高いことが27日までの県の再現実験で分かった。川勝平太知事はこれまで「(文書を複写した職員は)特殊な処理は行っていない」と説明し濃度設定に言及していなかったが、県の調査担当者は再現実験を踏まえ、職員が意図的に白黒化や濃度の引き上げをしたと認定した。 再現実験は24日に県熱海土木事務所で行われ、記者が立ち会った。複写機で元のカラー文書を1度白黒コピーした上で、スキャナーの「白黒・文字モード」に設定して濃度
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川勝知事、盛り土災害再発防止へ「検証漏れないよう指示」 熱海土石流の行政対応巡り
熱海市伊豆山で盛り土が崩落し28人が死亡した大規模土石流を巡り静岡県が行政文書を白黒化して検証が不十分になった問題で、川勝平太知事は9日の定例記者会見で、盛り土災害の再発防止を目的に進めている内部検証作業で、再度の検証漏れがないように事務方に指示していることを明らかにした。「検証漏れがあってはいけない。(記者から)問題提起されたものは一つ一つチェックしてもらっている」と強調した。 熱海土石流の行政文書を巡っては、文書開示の担当職員がカラーの行政文書を白黒化したことで、崩落地そばに設置された集水用の穴など分水嶺(れい)付近の乱開発の状況が分からなくなり、行政対応と技術的な発生原因の二つの第三
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熱海土石流 盛り土崩落地そばに集水用穴 判読不明文書に写真
熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川で盛り土が崩落して28人が死亡した大規模土石流を巡り、約20年前の無許可開発時、盛り土崩落地のそばに雨水を地下に浸透させる集水用の穴が設置されていたことが8日までの県や複数の専門家への取材で分かった。県が白黒化して判読できなくなっていた行政文書などに記載されていた。専門家は、分水嶺(れい)付近に穴を掘るなどの乱開発で逢初川源頭部は隣の流域から水が集まる場所になったとし、当時、源頭部で盛り土を強く規制しなかった県の対応を問題視した。 県や市の行政文書によると、穴は逢初川とその北側を流れる鳴沢川の分水嶺付近にあり、市の非公表文書の図面には2カ所記されていた。県が
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熱海土石流巡り判読不明だったカラー文書分析 土石流災害に詳しい技術士・坂本学さん 分水嶺開発で集水域拡大
熱海土石流を巡り、静岡新聞社の指摘を受けるまで判読不明だったカラーの県行政文書の開示によって、盛り土造成前の乱開発の実態が明らかになってきた。伊豆大島の土石流災害の調査に携わった技術士(森林土木)の坂本学さん(60)に文書の分析を依頼し、熱海土石流の原因や教訓を聞いた。 -カラー写真などから、土石流の起点付近に浸透枡とみられる集水用の穴が造られていたと分かった。 「驚いた。普通は、こんな崖っぷちに浸透枡を造らない。地中の水圧が上がって斜面が緩くなって崩れやすくなる可能性がある。地中に浸透した水がどこに流れたのか行き先が分からないのも気になる。標高の低い逢初(あいぞめ)川(源頭部左岸)に流
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熱海土石流 白黒化、黒塗り… 静岡県の不適切な文書開示 山積する疑問 十分な調査せず【ニュースを追う】
熱海市伊豆山で2021年7月に盛り土が崩落して28人が死亡した大規模土石流を巡り、静岡県の行政対応を記録した文書の不適切開示問題を本欄「ニュースを追う」で取り上げて半年。カラーの行政文書が白黒化されて一部が判読できなくなったり、開示されるべき情報が黒塗りされていたり、不適切な対応の実態が取材を通じて明らかになった。県の不自然な説明に次々と疑問点が浮かぶ一方、関係職員へのヒアリングなど文書白黒化の経緯を県は十分調査しておらず、都合の悪い情報を出し渋る県の姿勢は変わっていない。 (社会部・大橋弘典) 「白黒問題は先ほど知事が一件落着にしたじゃないか。調査はおしまい。外部に対して(の説明)も
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河川道路整備「見える形で」 市長、現場説明の方針 熱海土石流
熱海市伊豆山の土石流被災地で静岡県、熱海市が計画する河川道路の整備事業について、同市の斉藤栄市長は25日の定例記者会見で、被災者らでつくる市復興まちづくり推進懇話会の提言を受け、現場説明の場を設ける意向を明らかにした。分かりにくいと指摘される整備計画を現場で可視化し、被災者の不安解消につなげる。 23日に開かれた懇話会の初会合では、整備計画の全体像がよく見えないとの意見に加え、現場にロープを張って河川道路の位置関係を指し示すといった説明の工夫を要望する声が上がっていた。斉藤市長は会見で「(現場説明を)見える形でやると分かりやすいと提案があった。ぜひ実施したい」と述べ、地権者や県と調整に入る
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熱海土石流 河川道路整備「一刻も早く」 懇話会が初会合
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、市の復興まちづくり計画に住民意見を反映させるための懇話会が23日、発足した。市役所で開かれた初会合で、県市が被災地の逢初(あいぞめ)川流域で計画する河川道路の整備事業に関して、委員からは早期の対応と明確な説明を求める声が相次いだ。 懇話会は斉藤栄市長を座長とし、被災者や地元の町内会長、有識者ら計10人で構成。土石流発生から2年以上、計画策定から1年以上が経過する中でようやく始動した。2024年度中の完了を目指す県の河川拡幅と両岸への市道整備は、復旧復興の根幹になることから、多くの委員が「一刻も早く」「分かりやすい情報を」と声を上げた。 被災者でもある委員
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2005年以前の文書、第三者委員会に未提出 知事、従来発言を修正 熱海土石流検証巡り
熱海市伊豆山で盛り土が崩落し28人が死亡した土石流の検証を巡り、川勝平太知事は23日の定例記者会見で、土石流起点で起きた「約20年前の土砂崩れ」など2005年以前の行政文書を静岡県の判断で行政対応検証委員会(第三者委員会)の委員に提出していなかったことを明らかにした。逢初(あいぞめ)川と隣接する鳴沢川の分水嶺(れい)に及んだ無許可開発の文書も未提出だった。 川勝知事はこれまで土地改変に関連する全ての文書を検証委に提出して検証を任せたという趣旨の発言をしてきたが、「盛り土の手続きが始まった06年を起点にした」と提出文書を限定していたと修正した。 この日の会見で川勝知事は「06年10月から盛
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熱海土石流復興へ、住民説明会始まる 市と静岡県 全7地区で順次開催
熱海市伊豆山で2021年7月に発生した大規模土石流で、市と県は17日、被災地の逢初(あいぞめ)川流域で復旧復興事業の地区別説明会を開始した。河川・道路整備や宅地復旧、ライフライン復旧など懸案事項を題材に、12月までに全7地区で順次開催する。 初日は逢初川最下流にある浜地区の8世帯12人(帰還済み)を対象とした。このうち出席した2世帯3人に対して、市と県熱海土木事務所の担当者が復旧復興事業の概要を説明し、意見交換と個別相談に応じた。 斉藤栄市長は説明会の冒頭、これまでに意見聴取や合意形成が不十分だと指摘された経緯を振り返り「膝をつき合わせて説明し、意見交換する。ご理解をいただき、事業を進め
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砂防規制放置問題 再検討文書に静岡県職員「早急に編入必要」のメモ 熱海土石流
熱海市伊豆山で盛り土が崩落し28人が死亡した大規模土石流を巡り、逢初(あいぞめ)川上流域で砂防法の盛り土規制区域「砂防指定地」の指定が放置された問題で、上流域で乱開発が始まる前の1998年の静岡県行政文書に「(流域を)早急に指定地に編入する必要がある」という職員のメモ書きがあることが8日までに分かった。開発の開始前に県が規制力の強い砂防法を適用する必要性を認識していた可能性がある。 ただ、県が県議会の要請で進めている内部検証の経過報告書でメモ書きの記載は抜け落ちていて、検証されるのかは不透明だ。 この文書は「砂防指定進達範囲の再検討について」のタイトルで、国から上流全域を盛り土規制区域に
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熱海土石流 静岡県行政文書白黒化 開示時「職員6人で決定」
熱海市伊豆山で盛り土が崩落して28人が死亡した大規模土石流を巡り、開発業者への対応などを記したカラーの県行政文書が白黒化され、写真などが判読できない状態で不適切に開示された問題で、県の内藤信一総務局長は5日の県議会総務委員会で、情報公開を担当する法務文書課(現法務課)の職員6人が文書を開示する際に打ち合わせしてカラー文書を白黒化する方針を決めたと説明した。 川勝平太知事はこれまでの記者会見で「(法務文書課が元の文書について)カラーだと気が付かなかったそうだ」と答えていたが、県として説明内容を変えた形になった。総務局によると、元の行政文書がカラーだという認識は県内部で当初からあったという。
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静岡県砂防条例罰則強化 懲役2年以下、罰金100万円以下
静岡市日向、杉尾地区の砂防指定地に造成された全国最大級の無許可盛り土問題を受けて、県は4日、砂防指定地管理条例を来年4月に改正し、条例としては最も厳しい「懲役2年以下または罰金100万円以下」に罰則を強化する方針を明らかにした。業者に対する行政処分の命令内容を公表する規定も明文化する。 県議会建設委員会で鍋田航平河川砂防管理課長が明らかにした。 同条例は砂防法の盛り土規制区域「砂防指定地」内の制限行為や行政手続きなどを定めているが、現行の罰則は「懲役1年以下または罰金2万円以下」。川勝平太知事は2月の記者会見で「(業者が)逮捕されるような案件になったので(罰則強化を)検討する余地はある」
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「03年土砂崩れ」不記載 静岡県内部検証の経過報告 熱海土石流
熱海市伊豆山で盛り土が崩落して28人が死亡した大規模土石流を巡り、県は4日、県議会から求められていた行政対応の内部検証に関する経過報告書を各常任委員会に提出した。土石流の起点で2003年に発生し未検証だった「土砂崩れ」については内部検証の論点や項目として記載しなかった。幹部職員による内部検証の会合は7月以降、週1回ほど開いているが議事録はその都度作成されず、協議内容は経過報告書でも明かされなかった。 経過報告書は、関係法令ごとに当時の行政対応を時系列に整理した上で「検証の論点」を記した。03年に逢初(あいぞめ)川源頭部に及んでいた無許可開発に関し、論点として「谷状の箇所に集められた倒木に適
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熱海土石流 静岡県、検証委員にも白黒文書 重要な情報判読できず
熱海市伊豆山で2021年7月に盛り土が崩落し28人が死亡した大規模土石流を巡り、開発行為への対応を記したカラーの行政文書を静岡県職員が複写機で白黒化し不適切に開示していた問題で、静岡県が行政対応検証委員会(第三者委員会)の委員に送付した行政文書も白黒化されていたことが3日までの県などへの取材で分かった。元の文書で色分けされていた開発区域などが分からなくなっていた。 川勝平太知事は「(検証委は)独立した組織だから、私どもで何か判断して、資料に対していじくるとかは一切していない」と述べており、説明内容と実態が食い違っている。 県などによると、検証委の初会合が21年12月22日に開かれた際、委
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伊豆山港にカフェ開店 熱海土石流、復興向け「恩返し」 ダイバー飯塚さん
熱海市伊豆山の大規模土石流から2年3カ月が経過した3日、被災地の伊豆山港を拠点に活動するダイバー飯塚広海さん(55)が港内にカフェを開店した。10代の頃から通い続ける伊豆山の海と人にほれ込み、9月末に東京から移住した。復旧復興を目指す伊豆山の一員として「微力ながら恩返しを」と意気込む。 飯塚さんは16歳の時、伊豆山漁業会の松本早人代表(48)の祖父が操業していた船で海に繰り出し、ダイビングの資格を取得した。以来、自宅がある都内から伊豆山港にたびたび足を運び、ダイビング客を案内してきた。土石流の発生後、被災した港の再興に向けて懸命に取り組む漁師の姿を見て、「復興に少しでも貢献したい」とカフェ
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熱海土石流警戒区域解除1カ月 6世帯12人が帰還 地域の活力維持課題
熱海市伊豆山の土石流被災地に設定されていた「警戒区域」の解除から1カ月が経過した9月末までに、区域内で倒壊を免れ、ライフラインの復旧した住宅に6世帯12人が帰還した。ライフラインは12月1日までに区域内の全棟で復旧する予定だが、生活基盤となる河川と道路の整備については途上の段階。整備の遅れは帰還率の低下を招く恐れがあり、地域の活力維持が今後の課題になる。 市によると、9月20日現在で避難生活を送るのは89世帯159人で、このうち38世帯76人が帰還を希望。31世帯47人が区域外再建を望み、20世帯36人が未定と回答している。土砂が流れ下った逢初(あいぞめ)川の流域で2024年度中を目標に、
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熱海土石流の判読不能行政文書 静岡県「隠蔽の意図ない」 県議会
静岡県の京極仁志経営管理部長は2日の県議会9月定例会一般質問で、県がホームページ(HP)上で公表した熱海市土石流に関する行政文書の一部が白黒化され、写真が判読できない形で掲載されていた問題について、「作業上のミスであり、反省している」とした上で、「隠蔽(いんぺい)の意図は全くない」と述べた。西原氏への答弁。 京極部長は、不鮮明だった公文書は、県が発災3カ月後の2021年10月に県HPに公表した約4千枚の一部で、個人情報などの非開示情報を確実に黒塗りするために機器の「白黒・文字モード」でスキャンした結果、一部の写真で黒色が強く出たなどと説明。「指摘された文書は速やかにカラーの鮮明なものに差し
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熱海土石流被災地区ライフライン 12月に全棟復旧へ
2021年7月に熱海市伊豆山で発生した大規模土石流を巡り、同市の斉藤栄市長は28日の定例記者会見で、被災エリアの中で倒壊を免れた建物のライフラインが、当初予定より1カ月ほど早い12月1日までに全て復旧する見通しになったと発表した。 市は二次災害の恐れがあるとして、土砂が流れ下った逢初(あいぞめ)川の流域に設定していた立ち入り禁止の「警戒区域」を9月1日に解除した。区域内に残っていた家屋など46棟のうち、同日までに電気、水道、ガスなどのライフラインが復旧したのは32棟にとどまっていた。このほかの14棟については、年内をめどに復旧するとしていた。 ライフラインの復旧は電気の場合、基本的には自
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熱海土石流「盛り土規制区域 砂防法以外で可」 静岡県、再検証せず出先機関に通知
盛り土規制区域の指定に当たり、静岡県が砂防法以外の規制力の弱い法令を優先しても構わないとする内容の通知を今年3月に各土木事務所に送っていたことが26日までの県への取材で分かった。盛り土崩落で28人が死亡した熱海土石流に関する県独自の区域指定の考え方に基づいて通知を出したと説明しているが、県に法的責任はないとしたこの考え方は県議会から再検証を求められ、妥当かどうかの結論が出ていない。 通知は3月9日付で、砂防課が作成した。砂防ダムの上流域が他の法令で規制区域になっている場合、砂防法の盛り土規制区域「砂防指定地」に指定しなくても構わないという内容。 砂防ダム下流域の人家を土石流から守る目的の
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熱海土石流 宅地復旧補助開始へ 熱海市議会了承
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、市は25日の市議会全員協議会で、被災者による宅地復旧費を90%補助する制度について、対象世帯の8割が賛同したとする意向調査の結果を改めて説明し、議会側の了承を得た。庁内手続きを経て、9月中にも運用を開始する方針。5月の制度創設時に被災者や議会から「説明不足だ」と批判されて以降、棚上げ状態だった制度の運用がようやく始まる。 市の意向調査によると、対象の117世帯のうち110世帯と連絡が取れ、内訳は賛成が90世帯、反対が10世帯、不明が10世帯だった。賛成の世帯からは「事業を早く進めてほしい」との意見が上がったという。全員協議会で斉藤栄市長は反対の意向を示す世
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知事、隠蔽否定「差し替えた」 行政文書判読不能問題 職員のミス言及
熱海市伊豆山で盛り土が崩落し、28人が死亡した土石流を巡り、カラーの行政文書を静岡県職員が白黒化して判読できない状態で開示していた問題で、川勝平太知事は22日の定例記者会見で、静岡新聞社の指摘を受けて県のウェブサイトに掲載した白黒文書をカラーに差し替えたことを理由に「隠蔽(いんぺい)とは言えない」と説明した。開示文書を作成する際に複写機の設定を変更した法務文書課の職員2人のミスで、組織的関与はないとする見解も示した。ただ、県によると、関係職員への聴取は十分にできていない段階という。 2021年10月に県のサイトに掲載された約400ファイル、約1100ページ分のカラー文書は全て白黒化されてい
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熱海土石流 担当者、カラー提出指示 判読不能の行政文書 川勝知事の説明と矛盾
熱海市伊豆山で盛り土が崩落し28人が死亡した大規模土石流を巡り、静岡県のカラーの行政文書が白黒化され判読できなくなっていた問題で、県法務文書課(現法務課)の職員が2021年に開示文書を作成した際、文書を保管する関係各課にカラーでの文書提出を指示するメールを送っていたことが21日、複数の県関係者への取材で分かった。 職員が対象の文書にカラーが含まれると認識していたことを示すやりとりで、「職員がカラーだと気付かなかっただけで、隠す意図はなかった」としてきた川勝平太知事の説明と矛盾する。県がカラーではなく白黒で文書を開示する方針をどのように決めたのか、経緯の解明が焦点になる。 関係者によると、
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熱海土石流 静岡県、開発行為の文書提出 地裁沼津支部に 黒塗り一部解除
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り遺族や被災者が土石流起点の土地の現旧所有者や静岡県、市に損害賠償を求めた訴訟の弁論準備手続きが20日、静岡地裁沼津支部であった。協議は非公開。関係者の話を総合すると、原告側が2003年前後の起点部分の開発行為に関する行政文書の提出を県に改めて要請し、県は協議後、ホームページ(HP)に掲載済みの文書の黒塗り部分を一部解除して同支部に提出した。原告側はHP掲載分以外の文書の提出も県に求めている。 県が提出したのは、逢初(あいぞめ)川源頭部の無許可開発区域や03年に発生した土砂崩れ、業者が倒木を谷に集めたとされる写真などを掲載した文書。 これらの文書は県職員が複
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庁内調査ずさんさ露呈 職員聴取の記録なし「推論で報告」 静岡県の開示文書判読不能問題
28人が死亡した熱海市伊豆山の土石流災害を巡るカラーの行政文書が静岡県職員の複写機の設定変更によって白黒化されて判読できない状態で開示された問題で、経緯を調査した県法務課が、開示作業を担当した職員の聴取記録を作成していなかったことが18日までの県への取材などで分かった。同課は担当職員への聴取をしないまま、川勝平太知事に「推論」で文書問題の調査結果を報告したとも説明していて、県による庁内調査のずさんな実態が浮き彫りになっている。 知事は疑問視せず 静岡新聞社が職員の聴取内容を記録した資料を情報開示請求したところ、県は「不存在」と通知した。同課は取材に対し、詳細な記録を残していないことを認め
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熱海土石流 宅地復旧補助「8割賛同」 熱海市の被災世帯調査
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、同市の斉藤栄市長は13日、被災者による宅地復旧費を90%補助する制度について、対象となるのは120世帯で、意向調査に応じた106世帯のうち8割から賛同を得たと明らかにした。市議会9月定例会で越村修氏(熱海成風会)の一般質問に答えた。 宅地復旧の補助制度は当初の宅地買収・分譲方式から方針転換して5月に創設したが、一部被災者や議会から説明不足と反発され、6月定例会で関連予算案を取り下げた経緯がある。以降、斉藤市長は「被災者との面談や電話相談で個別に説明し、理解を得られるよう努めてきた」と語った。ただ、調査対象の残り14世帯については、連絡が取れないなどの理由で
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熱海土石流再検証報告、静岡県が先送りへ 県議会9月定例会 作業完了できず
熱海市伊豆山の土石流災害で、静岡県が内部検証している違法な盛り土造成に関わる行政対応について、県は11日までに、県議会9月定例会で予定していた検証結果の報告を見送る方針を固めた。内部検証は県議会特別委員会の提言を受けて、7月に設置した庁内検証委員会が進めているが、検証作業が終了しない見込みという。関係者への取材で分かった。 庁内検証委員会は対象法令に関係する各課の課長で構成し、週1回程度、各課が保管する公文書を基に協議している。県は県議会6月定例会総務委員会で、9月定例会で関係する複数の常任委員会に報告し、議事録を公開すると説明していた。 関係者によると、内部検証は事実関係の確認や整理に
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熱海土石流 静岡県の開示文書判読不能問題 知事「隠蔽目的ない」 職員調査は言及避ける
熱海市伊豆山で盛り土が崩落し28人が死亡した大規模土石流を巡り、県が開示した行政文書の一部が読み取れなくなっていた問題で、川勝平太知事は5日の定例記者会見で、通常設定の複写機を白黒・高濃度の設定に変えて元のカラー文書から白黒の開示文書を作成した法務文書課(現法務課)職員2人の対応について「(職員が)元の文書がカラーと気付かなかっただけで、隠蔽(いんぺい)目的ではなかった」と釈明した。「邪推はしていない」と組織的関与については否定的な見解を示した。 ただ、関係した職員への事情聴取が不十分ではないかという指摘に対しては論点をずらして答えず、「県の基本方針を共有しているので隠す意図はなかったと確
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静岡県職員、複写機設定変更認める 熱海土石流巡る開示文書の判読不能問題
熱海市伊豆山で盛り土が崩落し28人が死亡した大規模土石流を巡り、静岡県が開示した行政文書の一部が読み取れなくなっていた問題で、発災直後に文書の開示作業を担当した法務文書課(現法務課)の職員2人が県の調査に対し、複写機の通常設定を白黒で濃度が濃くなる設定に意図的に変更し、元のカラー文書から白黒の開示文書を作成したと認めていることが4日までの県への取材で分かった。県法務課は「(職員2人の対応を)不適切だった」と認め、「被災者や開示請求者に申し訳ない」と陳謝した。職員の独断かは分かっておらず、組織的な関与の有無が今後の調査の焦点になる。 法務課「対応は不適切」 同課によると、2021年度の情報
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川勝知事、熱海土石流復興の「スピード感上げる」 警戒区域解除の被災地視察
川勝平太静岡県知事は4日、立ち入り禁止の「警戒区域」が解除された熱海市伊豆山の土石流被災地を視察し、県と市が復旧復興に向けて実施する整備事業の状況を確認した。被災者と対話する機会はなかったものの、視察後の取材に「被災者の生活復興に全力を投じる。スピード感を上げる」と言葉に力を込めた。 土砂が流れ下った逢初(あいぞめ)川の中流域で2024年度末までに、県が河川拡幅を行い、市が両岸に市道を整備する計画。ただ、用地買収は面積ベースで県が3割、市が4割にとどまり、計画通りに完工するかどうか見通せない。整備事業の長期化は帰還率の低下を招く恐れがある。 これに対し、川勝知事は「一日も早く、との思いは
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熱海土石流の教訓胸に対策や提言 日本住宅会議がセミナー
熱海市伊豆山で発生した大規模土石流の問題点や復旧復興の在り方などを考えるセミナー(日本住宅会議主催)が3日、同市昭和町の起雲閣で開かれた。被災者や有識者、静岡新聞記者がパネリストを務め、熱海土石流を教訓とした対策や提言を発表した。 この日は土石流発生から2年2カ月の節目。自宅が全壊した被災者の太田滋さんは市内のホテルで避難所生活を送った当時の状況を振り返った。「住まいと食事は困らなかったが、隣で生活する人が誰か分からなかった。避難者はお客になってしまい、避難所運営を行政に任せてしまった」と述べ、復旧復興に向けて住民の連帯感を早期に醸成すべきだったと悔やんだ。 大規模土石流は逢初(あいぞめ
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【写真特集】熱海土石流 警戒区域解除 一つの節目「先は長い」
電気が復旧していない警戒区域内の自宅で汗を拭う住民=1日午前、熱海市伊豆山 警戒区域が解除され草刈り作業や道路を歩く住民らの姿が見られた熱海市伊豆山の被災地=1日午前(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から) 解除された警戒区域内には被災の爪痕が残る=1日午後、熱海市伊豆山 警戒区域が解除された後も通行止めの道=1日午後、熱海市伊豆山 解除された警戒区域内の自宅跡地を草刈りをする住民=1日午後、熱海市伊豆山 警戒区域が解除され、2年2カ月分の汚れを落とす理髪店の店主=1日午後
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熱海土石流 「長期避難世帯」の認定 静岡県が一部解除
熱海市伊豆山で発生した土石流災害で静岡県は1日、市が警戒区域を解除したのに合わせ、被災者生活再建支援法に基づく「長期避難世帯」の認定を一部解除した。対象は認定を受けていた82世帯のうち、ライフラインが復旧し、区域内に帰宅可能となる44世帯。残る38世帯はライフラインの復旧状況に応じて段階的に解除する。 長期避難は、災害による危険な状態が継続し、住宅に長期間居住できない世帯を県が認定する仕組み。認定を受けると、住宅の被害程度にかかわらず全壊扱いとなり、最大300万円の生活再建支援金が受け取れる。解除によって今後、支援金を申請する場合は被害程度と再建の方法に応じて支給額が変わる。 県は全壊を
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熱海伊豆山の警戒区域解除 「家路自由に」帰還は多難 土石流から2年2カ月
災害関連死を含め28人が犠牲になった熱海市伊豆山の大規模土石流で、市は1日、土砂が流れ下った逢初(あいぞめ)川流域の被災地に設けていた立ち入り禁止の「警戒区域」を解除した。2021年7月3日の発災から2年2カ月。被災者の生活再建と現地の復旧復興を阻んでいた規制が、ようやく取り払われた。 生活基盤 復旧これから 午前9時、斉藤栄市長が「警戒区域を解除します」と宣言し、立ち入り禁止を示すロープを取り外した。被災者は2年余りの不自由な生活を思い返しながら、ゆっくりと区域内に足を踏み入れた。警戒区域が解除されたとはいえ、電気や道路などの生活基盤の復旧が途上で、アパートなどで避難生活を送る被災者の
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熱海土石流 起点の土砂撤去、住民に公開 逢初川源頭部 静岡県、緑化し排水路整備
熱海市伊豆山で2021年7月に発生した大規模土石流の起点となった逢初(あいぞめ)川源頭部について、静岡県は31日、行政代執行に基づき不安定土砂の撤去工事が完了した現場を地元住民に公開した。今年3月には国が逢初川の上流部に砂防ダムを完成させた。安全確保を図る工事が完了したとして、市は1日、逢初川流域の被災地に設定している立ち入り禁止の「警戒区域」を解除する。 県によると、土石流の起点にあった不安定土砂1万9千立方メートルを撤去した。斜面に草木の種子を吹き付ける緑化工事や、雨水を排水する水路の整備を併せて実施した。撤去した不安定土砂は熱海港の仮置き場に運び、来年3月までに千葉県の中間処理施設に
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熱海土石流 警戒区域9月1日解除 順次帰還開始 復興は道半ば
災害関連死を含め28人の犠牲者を出した熱海市伊豆山の大規模土石流で、市は9月1日、土砂が流れ下った逢初(あいぞめ)川流域の被災地に設けていた立ち入り禁止の「警戒区域」を約2年ぶりに解除する。避難生活を送る被災者が順次帰還を開始するが、河川、道路整備を中心とした復旧復興事業は途上の段階で、大部分の被災者が引き続き避難生活を余儀なくされる。 大規模土石流は2021年7月3日に発生。二次災害の恐れがあるとして、市は同年8月16日、土石流の起点となった逢初川源頭部から伊豆山港脇の河口にかけての延長2キロを災害対策基本法に基づく警戒区域に指定した。今年3月に国が砂防ダムを完成させ、今月26日には県が
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河川、市道の用地買収途上 復興へ 対話望む被災者【9・1警戒区域解除 熱海伊豆山㊦】
熱海市伊豆山で2021年7月3日に発生した大規模土石流から1カ月半後、被災地に設定された立ち入り禁止の「警戒区域」。その範囲は土石流の起点になった逢初(あいぞめ)川源頭部から伊豆山港脇の河口にかけての延長2キロに及ぶ。忌まわしい土砂は撤去され、約2年ぶりの警戒区域解除を目前に控えるが、復旧復興のまちづくりは思うように進んでいない。 今年3月に国が逢初川の上流部に砂防ダムを完成させ、今月26日には県が源頭部の不安定土砂を撤去する行政代執行を終えた。避難生活を送る112世帯のうち、帰還希望は41世帯。早期の宅地復旧が求められる一方、24年度末を目標とする県の河川拡幅と、市の道路整備は完了が見通
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土石流被災者 念願の帰還「元の生活一日も早く」【9・1警戒区域解除 熱海伊豆山㊤】
ロープにつるされた「立入禁止」の文字。その奥に見えるわが家を見つめながら、川崎祐輝さん(36)はつぶやいた。「絶対に伊豆山に帰る。その気持ちだけが支えだった」。周辺には屋根や擁壁が壊れた住宅や、空き地が点在し、あの忌まわしい記憶を思い起こさせる。それでも家族全員で伊豆山での生活を取り戻したい-。その思いがもうすぐ実現しようとしている。 災害関連死を含め28人の命を奪った熱海市伊豆山の大規模土石流から間もなく2年2カ月。被災地はその間、原則立ち入り禁止の警戒区域となっていた。9月1日、その規制がようやく解かれる。 逢初(あいぞめ)川中流部に立つ川崎さん宅は、土石流に押し流されてきた建物が直
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土石流被災地の公園緑地整備 熱海で住民ら議論「防災機能や憩いの場を」
熱海市は27日、同市伊豆山の土石流被災地に整備する公園緑地に住民意見を反映させるための第3回ワークショップ(WS)を市役所で開いた。被災者を含む住民10人が参加し、防災機能や憩いの場の確保など、公園緑地のあるべき姿について発表し合った。 市は2026年度までを目途に、逢初(あいぞめ)川流域の計3カ所に公共空間を整備する計画。WSは6月に始まり、求められる機能と施設配置の案を検討してきた。最終回となったこの日は、これまでの検討内容を仮想現実(VR)の手法でイメージ化し、参加者が「防災機能や休憩スペースがあったらいい」などの意見を出した。 土石流被災地に設定されている立ち入り禁止の「警戒区域
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熱海土石流 起点の盛り土撤去終了 静岡県が行政代執行
静岡県は26日、熱海市で2021年に発生した大規模土石流の起点に残った盛り土を撤去する行政代執行が完了したと明らかにした。市は今年9月1日に同市伊豆山地区の警戒区域を解除する方針で、土砂撤去と砂防ダムの建設を条件にしていた。 県は昨年10月に行政代執行を開始。砂防ダムは今年3月に完成している。 大規模土石流は21年7月3日に発生。二次災害の恐れがあるとして、市は同8月、伊豆山地区の一部を警戒区域に指定した。今月18日時点で112世帯計200人が避難生活を送っているが、来月1日以降、順次帰還する予定だ。 県は、起点の土地で違法な盛り土造成を続けたとされる不動産管理会社「新幹線ビルディング
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熱海土石流 復興に支援金5万円寄付 城西大同窓会静岡支部
城西大同窓会静岡支部は26日、熱海市伊豆山の大規模土石流の被災地復興に役立ててもらうため、市に支援金5万円を寄付した。支部長の中沢公彦県議会議長と佐野勝紹支部長代行ら8人が市役所を訪れ、斉藤栄市長に支援金を託した。 支部の発足20周年記念事業として会員から支援金を募った。市役所への訪問に先立ち、土石流の被災地を視察し、県熱海土木事務所から河川整備などの概要について説明を受けた。佐野支部長代行は「現場を見て被害のひどさを改めて知った。支援金を復興に活用してもらいたい」と話した。
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「警戒区域」9月1日解除 熱海土石流被災地 市発表
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、同市の斉藤栄市長は24日の定例記者会見で、災害対策基本法に基づき立ち入り禁止としている被災地の「警戒区域」を9月1日午前9時に解除すると正式に発表した。土石流の起点となった逢初(あいぞめ)川源頭部の不安定土砂を撤去する県の行政代執行が8月26日に完了する見通しが立ったため。 市によると、避難生活を送っているのは8月18日現在、112世帯200人。区域内には46棟が土石流に流されずに残っているが、9月1日時点でライフラインが復旧するのは32棟にとどまる。警戒区域解除を受け、9月中に7世帯13人が帰還を予定する。このほか12月末までに6世帯16人、2023年度
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熱海復興加速へ協力 川勝知事会見で強調 土石流被災地 警戒区域解除契機に
熱海市伊豆山の土石流被災地に設けられている「警戒区域」が9月1日に解除されることに関し、川勝静岡県知事は記者会見で、市の復興まちづくり計画に盛り込まれている逢初(あいぞめ)川拡幅などの事業推進に向けて「アクションを起こす大きな節目になる」と述べ、市と協力して復興の動きを加速させていく考えを強調した。 同計画は、県が行う河川拡幅と川の両岸に幅4メートルの道路を整備する市の工事が柱。県と市は2024年度末までの完成を目指しているが、用地買収率が約3割にとどまっている。川勝知事は「市の動きを支える準備はできている。9月1日以降、現場に入るなどして地元の意見をしっかり受け止めて対応していく」と述べ
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起点の土砂撤去、26日完了へ 熱海土石流 警戒区域解除、条件整う
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点で不安定土砂の撤去などを行う静岡県の行政代執行について、県は18日、起点の工事が26日に完了すると発表した。市は被災地で原則立ち入り禁止にしている「警戒区域」を9月1日に解除する予定で、その前提条件としていた現地の安全確保を図る工事が全て完了することになる。 起点の不安定土砂の撤去は2月28日に始まった。当初は5月末の完了を目指していたが、天候不良などの影響で、7月初旬までずれ込んだ。その後、掘削した斜面の緑化や湧水が流れる2カ所に排水路を整備する工事を行っていた。県盛土対策課によると、今月8日時点で、斜面で緑化が始まっている様子が確認できたという。 ただ
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熱海土石流の復興計画「見直し必要」 熱海市と静岡県に被災者有志ら改定案
熱海市伊豆山で発生した大規模土石流の復旧復興と原因究明を目指す被災者有志と専門家が17日、市役所で市と静岡県の幹部と面会し、市復興まちづくり計画の改訂案を提出した。現行計画では用地買収が難航し、復旧復興に向けた整備事業が進まないとして見直しの必要性を訴えた。 現行計画は、土石流で被災した逢初(あいぞめ)川の中下流域で、県が河川拡幅の工事を行い、市が川の両岸に幅4メートルの市道を整備する事業。用地買収が3割止まりの現状を踏まえ、改訂案では、地下水路となる暗渠(あんきょ)部分を増やしたり、市道の一部を河川の上に張り出す工法を採用したりして、整備事業に必要な用地を最小限に抑えるべきだと主張した。
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熱海土石流の教訓 課題を意見交換 9月3日セミナー
住宅に関するさまざまな問題を研究する組織「日本住宅会議」は9月3日午後1時半から、サマーセミナー「熱海土石流災害の問題性と盛土規制法をめぐって」を熱海市昭和町の起雲閣で開く。8月25日まで参加者を募集している。 2021年7月3日に熱海市伊豆山で発生し、28人の命と住民の日常を奪った大規模土石流を教訓に、建設残土の実態や盛り土規制法の課題などについて、住環境の専門家や熱海土石流の被災者、現場取材に当たってきた本紙記者が意見を交わす。 参加費は県民1500円、同会員は2千円、非会員は2500円。問い合わせは同会議の坂庭国晴理事<電080(6939)5224>へ。
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行政文書白黒コピー問題 判読不明は特定部分 川の濁りや分水嶺付近 熱海土石流
熱海市伊豆山で盛り土が崩落し28人が死亡した大規模土石流を巡る県の行政文書の白黒コピー問題で、静岡県から開示された約400種類の文書のうち、白黒化で判読できなくなっていた文書は特定の内容に限定されることが7日までの本紙の調べで分かった。土石流の前兆とされる川の濁りや、隣接流域の水が流入した可能性のある分水嶺(れい)付近の開発の写真が判読できなくなっていた。全ての文書を同じ方法で白黒化したのではなく、文書の内容に応じて白黒化の方法を変えた疑いが出てきた。 県が本紙の要請に応じて土石流発生後の21年10月以降に開示した文書は、開発業者に対する行政手続きや行政指導の記録。不自然に黒くなり、写真
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警戒区域解除前 最後の黙とう 熱海土石流被災者「元のまちに」「まだ不安」
熱海市伊豆山の大規模土石流は3日、発生から2年1カ月が経過した。土砂が流れ下った逢初(あいぞめ)川沿いに遺族や被災者が集まり、犠牲者に黙とうをささげた。原則立ち入り禁止の「警戒区域」を市が9月1日に解除するのを前に、被災者は「元のまちの姿を取り戻したい」「まだ不安、危険だ」などと複雑な胸中を明かした。 月命日の黙とうは発災2カ月後の2021年9月に始まり、24回目。警戒区域を見下ろす高台を定位置に続けてきた。今回も遺族と被災者ら15人が土石流の発生時刻とされる午前10時28分に合掌した。警戒区域の解除に伴い、一部の被災者は避難先から帰還できることから、この高台での黙とうは最後になった。
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犠牲者慰霊と地域再生に願い込め 熱海市伊豆山で4年ぶり花火大会 土石流災害から2年1カ月
28人が犠牲になった熱海市伊豆山の土石流災害の発生から2年1カ月となった3日、伊豆山温泉観光協会は伊豆山温泉納涼海上花火大会を4年ぶりに開いた。夜空を彩るスターマインなどに先立ち、犠牲者28人に向けた慰霊献発花火が伊豆山港から打ち上げられ、住民や見物客は悲劇を改めて胸に刻みつつ、一日も早い地域の再生を願った。 土石流からの復旧復興が道半ばで、今も避難生活を続けている住民がいる伊豆山。被災者でもある同協会の高橋幸雄会長(68)は「犠牲者の慰霊と、一歩ずつ前に進もうとしている地域の姿を発信したい」と花火に込めた思いを語った。 青色の光を放つ28発の慰霊献発花火が上がると、住民らは夜空をじっと
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熱海土石流発生から2年1カ月 警戒区域解除前最後の黙とう 被災者「元のまちに」「まだ不安」
熱海市伊豆山の大規模土石流は3日、発生から2年1カ月が経過した。土砂が流れ下った逢初(あいぞめ)川沿いに遺族や被災者が集まり、犠牲者に黙とうをささげた。原則立ち入り禁止の「警戒区域」を市が9月1日に解除するのを前に、被災者は「元のまちの姿を取り戻したい」「まだ不安、危険だ」などと複雑な胸中を明かした。 月命日の黙とうは発災2カ月後の2021年9月に始まり、24回目。警戒区域を見下ろす高台を定位置に続けてきた。今回も遺族と被災者ら15人が土石流の発生時刻とされる午前10時28分に合掌した。警戒区域の解除に伴い、一部の被災者は避難先から帰還できることから、この高台での黙とうは最後になった。
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谷に倒木埋めた可能性 熱海土石流の崩落起点、20年前開発の業者 県指導記録なし
熱海市伊豆山で盛り土が崩落して28人が死亡した大規模土石流の起点で、20年前に無許可開発していた業者が大量の倒木を谷に埋めた疑いがあることが26日までの取材で分かった。白黒化して判読できなくなっていた静岡県の行政文書に記されていた。20年前に土砂崩れが起きた箇所とみられるが、県が業者に木を除去させた記録は文書になく、そのまま盛り土が造成された可能性がある。専門家は「土の中から、木のような有機物を取り除くのは常識だ。腐って水が通りやすくなり、崩れやすくなる」と危険性を指摘している。 県が2003年3月に作成した行政文書(D55)の「無許可部現地状況」という項目に「谷状になっている箇所に倒木が
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熱海土石流の遺族、市長と直接面談 被災復興の進め方で意見交換
熱海市の斉藤栄市長は24日、同市伊豆山で2021年7月に発生した土石流の犠牲になった太田和子さん=当時(80)=の長男、朋晃さん(57)が避難生活を送る市内のアパートを訪ね、被災地の復興の進め方などについて説明した。 面談は、朋晃さんを含む遺族被災者6世帯12人が6月下旬、復興計画の見直しや斉藤市長との直接対話などを求める要望書を提出して実現した。 面談は冒頭を除き報道陣に非公開で行われた。斉藤市長は和子さんの仏前で焼香し、住民の生命財産を守れなかったことを改めて陳謝した。その上で、住民や被災者の声を広く聴き、必要に応じて復興計画を修正すると約束した。 市が6月に開いた住民説明会では、
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熱海土石流 静岡県提出文書「不十分」 原告側、弁論準備手続きで
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、遺族被災者が起点となった土地の現旧所有者や県、市に損害賠償を求めた訴訟の弁論準備手続きが19日、静岡地裁沼津支部であった。原告側は、県が裁判所に提出した文書は不十分だとして、起点の周辺を含めた開発の経緯に関する全ての公文書の提出を強く求めた。 協議は非公開。県はこれまでにホームページで公開している公文書のうち、崩落した盛り土部分に関する2006年以降の文書の黒塗りを一部外して提出していた。ただ、2006年以前に行われた崩落部北側の宅地造成などに関する文書は提出していなかった。 原告代理人の加藤博太郎弁護士は協議後の取材に、「県は訴訟が始まる前は被災者に寄
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熱海土石流 静岡県内部検証 訴訟部分を除外 委員会初会合、再発防止は強調
熱海市伊豆山で盛り土が崩落して28人が死亡した大規模土石流を巡り、県所管法令の行政対応の検証が不十分だとして静岡県議会から再検証を求められた静岡県は19日、関係部署の課長らを集めて内部検証する庁内検証委員会の初会合を県庁で開いた。委員長の内藤信一総務局長は再検証の目的として再発防止を強調した一方で、遺族や被災者から起こされた訴訟に関係する部分を再検証の対象から除外する方針を明らかにした。 県に規制権限のあった開発行為などに関係する法令(砂防法、森林法、土砂災害防止法、都市計画法、廃棄物処理法、県土採取等規制条例)について、再検証を求めた県議会の報告書で指摘された論点とともに、その後の報道で
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静岡県53文書未提出 熱海土石流巡り裁判所に 逢初川無許可開発関連
2021年に盛り土崩落に伴い28人が死亡した熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り遺族や被災者が県などを相手に損害賠償請求した訴訟で、県が裁判所に提出していない逢初(あいぞめ)川源頭部の無許可開発に関連する文書が少なくとも53種類に上ることが18日までの取材で分かった。裁判所は盛り土造成の経緯が分かる文書の提出を県に求めたが、県による文書の分類が不正確だったため提出されなかったとみられる。 無許可開発に関連する53文書は03年2月から05年10月にかけて県が作成したり業者から受理したりし、20年前に逢初川源頭部で起きた土砂崩れも記録されていた。複数の専門家はこの土砂崩れと21年の大規模土石流の関
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熱海伊豆山の止まり木に 老舗の鮮魚店「魚久」新装オープン 復興へ奮闘
熱海市伊豆山で63年間、住民の生活を支えている鮮魚店「魚久」が14日、新装開店した。土石流災害からの復旧復興を目指す地域を活気づけたいと話す2代目店主の高橋照幸さん(67)は「住民はもちろん、伊豆山を離れている被災者の皆さんがほっとできる『止まり木』のような店にしていきたい」と話している。 伊豆山神社の近くに立つ同店。周辺はかつて、青果店や酒屋、飲食店などが並んでいたが、少子高齢化が年々進み活気を失っていた。さらに2年前の土石流災害で住民が離ればなれになり、地域コミュニティーの弱体化が加速した。 こうした中、同店は地域の役に立つサービスを提供するため、高橋さんの息子で3代目の一平さん(
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熱海土石流再検証 静岡県、19日初会合 初回のみ公開
熱海市伊豆山で2021年7月に発生した大規模土石流災害で、静岡県は19日、行政対応を再検証する内部組織の初会合を開く。7~8月に数回の会合を開いて報告書をまとめ、県議会9月定例会で報告する。 県の第三者検証委員会の検証結果は不十分として、県議会特別委員会が再検証を求め、県は内部調査を決めた。対象は砂防法や森林法、都市計画法など第三者委で検討されなかった部分となる見通し。県などが被告となっている民事訴訟で争点となる部分を除く。 初会合は報道機関などに公開するが、2回目以降は非開示情報を扱うため公開しない見通し。再検証に用いた資料は、検証報告とともに公開する方針。
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20年前の土砂崩れ「未検証」 知事認める 熱海市伊豆山
熱海市伊豆山で盛り土が崩落して28人が死亡した大規模土石流の起点で20年前に乱開発に伴う土砂崩れが発生していたことに関し、川勝平太知事は11日の定例記者会見で、行政対応と技術的な発生原因に関する二つの検証委員会に情報提供せず、未検証だったことを認めた。20年前の土砂崩れと盛り土崩落の関係については、技術面に関する検証委員の意見を聴取して追加検証する方針を示した。 土砂崩れは業者の無許可開発に関連した2003年の県の行政文書に記載され、土石流最大波のきっかけになった可能性のある盛り土崩落部で発生していた。 川勝知事は会見で「地形改変の情報は検証委員に提供している」といったん説明したが、その
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熱海土石流の行政文書不鮮明 静岡県「出し渋り目的ない」 法務課の関与認める
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する県の行政対応を記したカラー文書が白黒化されて判読できない状態で開示された問題を巡り、森隆史法務課長は5日の県議会総務委員会で、法務課が通常の文書開示作業以上に各関係部署に関与していたことを認めた上で「情報の出し渋りの目的はない」と釈明した。 森課長は、2021年10月に一斉開示された文書に関して「当時の難波喬司副知事(現静岡市長)から、非開示箇所に不整合がないかを確認するように指示があった」と述べ、「確認した結果、(各部署で検討した非開示部分の)当初案より若干、黒いところが増えた部分もあったが、文書全体の統一性や整合性を保つ観点から行った」と説明した。文書
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熱海土石流 静岡県が再検証論点提示 専門家、聴取せず 訴訟関係部分除外
熱海市伊豆山で盛り土が崩落して28人が死亡した土石流に関し、開発行為への県の規制や手続きの検証が不十分だった問題で、県は5日の県議会総務委員会で、再検証する関係法令別の論点表を公表した。京極仁志経営管理部長は、遺族や被災者が原告になっている訴訟の関係部分は論点から除外すると表明した。県によると、具体的な論点は外部の専門家から意見を聴取せずに当事者の県が決めるという。 川勝平太知事は6月27日の記者会見で、行政対応検証委員会(第三者委員会)で未検証のまま裁判所に提出された文書(A283)を含めて再検証する意向を示していたが、論点に関して京極部長は「裁判において事実関係の究明が進められるものを
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熱海土石流 我慢と不満の2年 癒えぬ悲しみ、消えぬ怒り「惨劇決して忘れない」 責任不明確、見えない未来
「ここから見える景色が1年前と何も変わらない」「この先、どうなっていくんだろう」。人々のそんな声を断ち切るように、サイレンが集落に鳴り響いた。3日午前10時28分。災害関連死を含め28人が犠牲になった熱海市伊豆山の土石流災害は発生から2年が経過した。被災地の復旧復興は進むのか。分断された地域コミュニティーの行方は。悲劇の責任の所在は-。被災地には依然、多くの不安と疑問が残されたままだ。 土石流が流れ下った現場付近では遺族、被災者、住民がサイレンに合わせて、静かに手を合わせた。「あの時のことが今でも夢に出る。生き残った自分でさえそうなんだから、遺族の方はもっとつらいだろう」。発生当時、土砂が
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熱海土石流発生2年 全容解明、復興進まず 遺族「真実知りたい」知事に直言
熱海市伊豆山で盛り土が崩落し、災害関連死を含め28人が死亡した大規模土石流の発生から3日で2年がたった。伊豆山小で追悼式が行われたほか、土石流発生時刻とされる午前10時28分に合わせて遺族や地元住民が土石流の流れ下った逢初(あいぞめ)川沿いで黙とうをささげた。未曽有の人災の復旧復興や全容解明は2年を経ても進んでおらず、遺族や被災者の行政に対する不信感は高まっている。 市主催の追悼式には13世帯28人の遺族をはじめ斉藤栄市長や川勝平太知事ら関係者約70人が参列し、献花して犠牲者を悼んだ。斉藤市長は「被災者と対話を重ね、みなさんが抱えるさまざまな不安の解消に努める」と述べ、早期の復旧復興に力を
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伊豆山空撮ルポ 復興、前進と停滞の間で【再生 道半ば 熱海土石流2年】
東海道新幹線が停車中のJR熱海駅の上空から北に視線を振ると、不自然に土がえぐり取られた谷と雑草が生い茂った住宅地が目に飛び込んできた。観光客でにぎわう中心街から直線距離にしてわずか1~2キロ。山の尾根を隔てて広がる小さな集落の景色に、距離以上の遠さを感じた。 28人の命と住民の日常を奪い去った熱海市伊豆山の土石流災害は3日で丸2年。大量の土砂が流れ下った住宅地では、水道やガスなどの復旧工事が急ピッチで進む。9月1日の警戒区域解除と被災者の帰還に向けて、地域は少しずつ前に進んでいるように見える。 だが、細かく見るとシートや板に覆われた住宅や破壊された家の土台があちこちに残る。逢初(あ
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熱海土石流発生から2年 124世帯避難続く 帰還後に不安も
熱海市伊豆山の大規模土石流は3日で発生から2年。いまだ124世帯217人が避難生活を強いられている。市は原則立ち入り禁止としている警戒区域を9月1日に解除する予定で、今月から住宅修繕のための工事業者の立ち入りが可能になった。ただ、9月までにライフラインの復旧箇所は限られ、生活道路の整備もこれから。先が見通せない現状に、被災者からは不安の声が漏れる。 警戒区域への一時立ち入りはこれまで、市が毎月設定する平日の1日と、月命日、第1、3日曜にのみ認められていた。発生から丸2年の前日となった2日、区域内では工事関係者と水道を点検したり、自宅の空気を入れ替えたりする被災者の姿が見られた。 逢初(あ
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行政の検証逃れ 県庁守って人災防げず【再生 道半ば 熱海土石流2年㊦】
ちょうど1年前、熱海市の伊豆山小で行われた土石流災害の追悼式。28人の犠牲者の名前が読み上げられた後、川勝平太知事は参列した遺族を前に意気揚々と誓った。 「いたましい災害が二度と起こらないように、県を挙げて命を守る安全な地域づくりを推進していく」 ところが、トップの発言と裏腹に県の組織で、再発防止に必要な行政対応検証を避ける「検証逃れ」が繰り返されていたことがこの1年に明らかになった。 業者の悪質な開発行為に厳しい規制が可能な砂防法を適用しなかったことに関しては、行政対応検証委員会(第三者委員会)に関連情報が提供されず、ほとんど検証されなかったことが発覚。批判を受けた県は昨年7月末、「
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大自在(7月3日)熱海土石流2年
きのう取り上げた感想文の課題図書「スクラッチ」。絵を黒く塗りつぶした美術部部長の中3、千暁[かずあき]は小4の夏、母の実家がある田舎町に引っ越してきた。「7月に入ってすぐの超大型台風」で自宅が2階まで浸水したためだ。 著者の歌代朔[うたしろさく]さんは愛媛県在住であり、2018年7月の西日本豪雨が頭に浮かぶ。物語の中、避難所で千暁が描いた明るい色のタンポポの絵に、被災以来表情がなくなっていた母親は笑みを浮かべた。災害もコロナ禍同様、心に深い傷を負わせる。 21年7月3日の熱海市伊豆山の大規模土石流から2年。当日東京から静岡市に車で向かっていた知人は東名高速を大井松田インターで出された。一
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犠牲の28人を慰霊 伊豆山小で追悼式 熱海・土石流2年
熱海市は3日午前9時から、災害関連死を含め28人が犠牲になった同市伊豆山の土石流災害の犠牲者を弔う追悼式を伊豆山小体育館で営む。遺族をはじめ、斉藤栄市長、川勝平太知事らが参列し、全員で黙とうをささげた後、それぞれ献花する。一般の献花は午前10時から午後3時まで受け付ける。土石流発生時刻とされる午前10時28分には、市内全域にサイレンを鳴らす。
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熱海土石流 静岡県、20年前の土砂崩れ箇所 不鮮明な白黒文書で開示
1日までの静岡県への取材で確認された、熱海市伊豆山の大規模土石流の起点で20年前に起きた土砂崩れ箇所やその写真は、不鮮明に加工された疑いのある県の行政文書(D55やD64)に掲載されていた。元の文書がカラーだったのに県は当初、白黒化して開示していた。D64の地図上に示された土砂崩れの範囲は元の文書に赤い枠線があったが、白黒文書では目立たず、「崩壊箇所」と書かれた文字も判読しにくくなっていた。 D55やD64の白黒文書に添付され、「雨水流出部」「崩壊箇所」などと説明が付いた無許可開発区域の写真は黒く塗りつぶされたような状態で何が写っているか分からなくなっていた。 県は行政対応検証委員会(第
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迷走する復旧復興 市との合意形成 不十分【再生 道半ば 熱海土石流2年㊥】
今年2月の熱海市議会。斉藤栄市長は2023年度の施政方針演説の中で、伊豆山の復旧復興に対する決意をこう述べた。「復興計画を踏まえた詳細な事業を実行に移す」。一日も早く元の生活を取り戻したい被災者の中には、この言葉を信じた人もいる。 逢初(あいぞめ)川中流部の自宅が半壊した小松昭一さん(92)は、9月1日の警戒区域解除に合わせて自宅に帰還できるよう、家屋や擁壁の修繕の準備を進めてきた。しかし表情は暗い。「家族で絶対に帰ると決めていた。ようやく希望が見えてきたのに、一体どうなってしまうのか」 小松さんの不安の種は、市の宅地復旧補助制度。市は当初、復旧が必要な「事業区域」を決めた上で住宅再建を
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乱開発で20年前土砂崩れ 静岡県は説明せず未検証 熱海土石流起点
熱海市伊豆山で2021年7月に盛り土が崩落して28人が死亡した大規模土石流を巡り、逢初(あいぞめ)川源頭部左岸の土石流起点で20年前に乱開発が理由とみられる土砂崩れが発生していたことが1日までの静岡県への取材で分かった。県はこれまで説明せず、土石流後に設置した二つの検証委員会や裁判所に情報提供していなかった。専門家は「1度崩落した場所で滑りやすくなっていた」と指摘。土砂崩れ箇所にはその後、崩落した盛り土が造成され、この部分の崩落が下流域の多くの住民を巻き込んだとみられる土石流最大波のきっかけになった可能性がある。 土砂崩れの範囲が記載されていたのは03年5月の県の文書(D64)。北側の鳴沢
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こじれる感情 人災の傷 苦しむ被災者【再生 道半ば 熱海土石流2年㊤】
「あの日から時が止まったまま。涙が流れない日はない」 雑草が生い茂る空き地の前で、小磯洋子さん(73)はほおを伝う涙をぬぐいながら声を絞り出した。「家族も精神もバラバラになった。あの人災のせいで」。空き地の草陰には最愛の娘が住んでいたアパートの土台が埋もれていた。 2021年7月3日、熱海市伊豆山を襲った大規模土石流で、洋子さんの長女=当時(44)=は部屋の中に流れ込んできた土砂から当時5歳の娘を命がけで守り、帰らぬ人となった。 アパートもろとものみ込んだ土砂の正体は、土石流の起点となった土地の前所有者が捨て、現所有者が放置したとされる大量の残土だった。「危険な盛り土の存在を娘は知らず
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危険盛り土規制 未然防止を強調 熱海土石流2年で国交相
斉藤鉄夫国土交通相は30日の閣議後会見で、熱海市伊豆山で発生した土石流災害から7月3日で2年となるのを前に「危険な盛り土で人命が失われることがあってはならない」と述べ、災害の未然防止に向けて先月施行された盛り土規制法を運用する意義を強調した。 同法では盛り土の崩落によって人家などに被害が及ぶ恐れがある場所を都道府県などが指定し、許可や監視を担う。斉藤氏は9割以上の自治体が規制区域の指定に向けた基礎調査に着手していると説明し、財政支援を通じて早期指定を後押ししていく考えを示した。
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走り湯の源泉「午の湯」 2年越しの湯煙 「復興の糧に」
2021年7月に発生した熱海市伊豆山の大規模土石流で被災した日本三大古泉の一つ「走り湯」の源泉「午(うま)の湯」の復旧工事が完了し、30日、湯をくみ上げる「通湯式」が行われた。地域の観光と経済を支える重要な資源の復活を関係者が祝った。伊豆山走湯温泉組合によると、早ければ8月中に地域の旅館などに湯が供給される見通し。 走り湯には2本の源泉がある。このうち横穴式源泉の「戌(いぬ)の湯」は辛うじて土石流の被災を免れたが、午の湯は機械設備を含め全て埋まった。十分な湯量が確保できないため、温泉を利用する旅館などは互いに大浴場の営業時間をずらすなど協力しながら苦境を乗り切ってきた。 復旧工事は昨年8
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熱海土石流 他文書も不鮮明加工か 静岡県「白黒コピーの結果」
熱海市伊豆山で盛り土が崩落して28人が死亡した土石流を巡り、情報公開条例に基づき県が開示した行政対応文書が不鮮明に加工されていた問題で、これまでに加工が判明していた2007年4月の文書(A283)以外にも複数の開示文書が不鮮明に加工された疑いがあることが29日までの取材で分かった。土石流起点の分水嶺(れい)付近で03年に明らかになった無許可開発の写真を掲載した文書などで、黒く塗りつぶされて何が写っているか読み取れない状態の文書が21年10月に開示されていた。 県は白黒コピーした結果、判読できなくなったと主張しているが、再現して確認していないという。静岡新聞社が元のカラー文書を通常のコピー機
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熱海市長、市道計画「修正あり得る」 熱海土石流被災者らと対話意向
熱海市伊豆山の土石流災害に関する復旧復興事業で、斉藤栄市長は29日の定例記者会見で、用地買収を伴う市道整備について「まずは計画をしっかり理解してもらうことが大事」としつつ、被災者や住民の意見を反映して計画を修正する可能性があると述べた。 復旧復興事業は、逢初(あいぞめ)川の拡幅と河川両岸への市道整備が柱になっている。県と市は2024年度中の完成を目指しているが、用地買収率は3割にとどまっている。 一部の被災者からは「行政主導の計画であり、地域の声が反映されていない」「道路や河川の規模が必要以上」などと不満の声が聞かれる。斉藤市長は「今の計画を1ミリも動かさないとは考えていない。市道に関
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熱海土石流 汚染土砂、年内搬出目指す 静岡県が作業公開 行政代執行費用11億円見込む
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点付近に残った不安定土砂を撤去する静岡県の行政代執行で、県は28日、起点から撤去し熱海港芝生広場に仮置きしている汚染土砂を千葉県市川市の処理施設に船で運び出す作業を報道陣に公開した。県は年内をめどに搬出作業を完了させたいとしている。 県盛土対策課によると、起点から撤去する不安定土砂は約2万立方メートル。現場の土砂からは土壌汚染の基準を上回るフッ素や鉛が検出されたため、飛散しないよう大型土のうに入れて仮置きしている。処理施設への搬出は今月15日に始まった。28日までに約1万9千立方メートルの汚染土砂を同広場に運び込んだ。この他に、汚染されていない土砂の撤去も行っ
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熱海土石流「検証過程公表」 静岡県議会知事答弁 全関連文書も
静岡県議会6月定例会は28日、自民改革会議の勝俣昇氏(御殿場市・小山町)と、ふじのくに県民クラブの田口章氏(浜松市西区)が代表質問を行った。川勝平太知事は、23日の静岡県議会定例会初日に表明した熱海市伊豆山の土石流災害を巡る行政対応の再検証について、「再発防止に向けて、できることはなかったかとの観点で検証し、検証の過程を含めて公表する」との考えを示した。勝俣氏への答弁。 再検証は、県議会特別委員会が提言で「県第三者委員会の検証は不十分」と指摘した各法令(砂防法、森林法、土砂災害防止法、都市計画法、廃棄物処理法、県土採取等規制条例)について、裁判で係争中の論点を除き、対応状況をあらためて検
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熱海土石流 不鮮明加工の行政文書 川勝知事「注意不足が原因」
熱海市伊豆山で2021年7月に盛り土が崩落して28人が死亡した大規模土石流を巡り、行政対応を記した静岡県の公文書(A283)が行政対応検証委員会(第三者委員会)で検証されず、不鮮明に加工された状態で開示されていた問題について、川勝平太知事は27日の定例記者会見で、現時点で判明した調査結果を踏まえて「(担当職員が)作業に追われていてこうなった。注意不足が原因だ」と述べた。ただ、問題の文書がどの時点で加工されたのかは示さず、調査を継続する方針を明らかにした。 川勝知事は、問題の文書が検証されなかった点に関しては「類似の事実が(検証委に提出された)別の文書で出ている」と説明し、検証結果に影響は与
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熱海土石流の経験「継承」 災害想定、静岡県警が対応訓練
静岡県警は27日、大規模な土石流や水害現場などでの迅速で安全な人命救助につなげる訓練を静岡市駿河区の機動隊グラウンドで行った。発生直後から県内外へ出動する県警災害派遣隊の広域緊急援助隊警備部隊と緊急災害警備隊の計150人が、各種訓練を通じ技能向上と連携強化を図った。 巨大地震に加え、近年全国各地で多発する水害への備えを重点に置き、がれきの下や高所など多彩な場面設定で要救助者を救い出す訓練を重ねた。熱海市伊豆山の大規模土石流発生から7月3日で2年が経過することを踏まえ、各種被災現場での的確な対応手順を把握し、指揮所設置の流れを把握。チェーンソーなど資機材の点検も徹底した。 21日には同所で
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無許可開発、分水嶺改変か 逢初川上流域に及んだ疑い 熱海土石流
熱海市伊豆山で28人が死亡した盛り土崩落に伴う土石流を巡り、20年前に隣接流域で行われた都市計画法違反の無許可開発が分水嶺(れい)を改変し、土石流起点の逢初(あいぞめ)川上流域に及んでいた疑いがあることが26日までの取材で分かった。この無許可開発は、想定を上回る水が逢初川流域に流れ込む流域変更や、崩落した盛り土の造成につながった可能性があるが、当時行政対応した県は土石流後に設置した二つの検証委員会に情報を提供せず、行政対応面でも技術面でも検証されていない。 本紙の指摘を踏まえて県が4月、黒塗りを解除した文書(D27)に無許可開発の区域が記されていた。文書には、県の許可を受けず土地を造成した
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ラーメンで復興支援 飲食店、熱海土石流被災の製麺所とコラボ まもなく発生2年 風化防げ
熱海市伊豆山の大規模土石流の発生から7月3日で2年を迎えるのを前に、同市中央町の飲食店「アンドバルファクトリー」が、土石流で被災した同市の老舗「コマツ屋製麺」とのコラボメニュー「熱海復興夜鳴きラーメン」の販売を始めた。市内でも進みつつある災害の風化を食い止め、少しでも被災者の力になりたいとの思いを込めている。売り上げの一部は伊豆山の復興支援団体に寄付する。 土石流が発生した2021年7月、開業に向けて準備していた同店。当時、市内のさまざまな飲食店が被災者や災害ボランティアなどに食事を提供する支援活動をしていた。三浦渉代表(39)は「自分も何かやりたいと思っていたが、できなかったことが心残り
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熱海土石流 被災地公園緑地WS始まる「住民意見 復興に反映を」 安心安全な交流の場/災害忘れぬ施設
熱海市は25日、同市伊豆山の土石流被災地に整備する公園緑地に関するワークショップ(WS)を市役所で開いた。被災者や地域住民計14人が参加し、安全安心を確保しつつ地域コミュニティーの再生に資する空間の創出に向けて意見を出し合った。 市復興まちづくり計画では、今年9月までに計画、設計を作成する予定になっている。WSは8月までに計3回開催する。市は10月以降、用地測量や買収を進め、2024年冒頭に工事着手し、25年度中におおむねの完成を目指している。 市は逢初(あいぞめ)川上流部と中流部の上部、下部の計3カ所に公共スペースを整備する方針。初回のWSでは「昔ながらの原風景の再建」「災害を忘れな
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熱海土石流巡り、不鮮明な重要文書 第三者委に未提出で検証されず 静岡県「見落とし」主張
熱海市伊豆山で2021年7月に盛り土(残土処分場)が崩落して28人が死亡した大規模土石流を巡り、白黒化して一部判読できない状態で開示された静岡県の行政文書が、県の設置した行政対応検証委員会(第三者委員会)に提出されず、検証されていなかったことが24日までの県への取材で分かった。同文書内では、検証委が重点的に検証した県土採取等規制条例(権限は市)の規制の実効性を疑問視していたほか、より厳しい規制ができる砂防法(権限は県)の開発規制区域「砂防指定地」の標識を撮影した写真も掲載され、黒く塗りつぶすような加工がされていた。文書データを保有していた県の担当者は「(データを保管したパソコンの)フォルダー
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検証結果 文書提出で異なった可能性 熱海土石流【記者の目】
静岡県が行政対応検証委員会(第三者委員会)に提出しなかった文書(A283)は複数の重要な情報を含んでいた。重要情報が欠けたまま検証作業をした影響は大きく、必要な情報を提供されなかった委員、さらには原因究明や再発防止を願う被災者に対する背信行為と言っても過言ではない。 この文書でまず注目すべき点は、検証委が重点的に検証する法令として選んだ県土採取等規制条例に関する記載。規制力の弱い同条例の対応では決め手にならないという文言が繰り返され、当時、他の法令での対応を検討したことが分かる。委員が文書を読んでいれば重点検証の方針が変わっていたのではないか。 文書には、砂防法の開発規制区域「砂防指定地
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二転三転、被災者困惑 熱海土石流被災地 宅地復旧工事費90%補助 市、補正予算案から削除
熱海市は23日夜、同市伊豆山の復旧復興事業に関する住民説明会を市役所で開いた。被災者自身が行う宅地復旧を巡り、方針が二転三転し、説明も不十分なまま事業を進めようとした市の姿勢に、被災者からは怒りや困惑の声が相次いだ。 宅地復旧に対する補助金制度について、斉藤栄市長は同日の市議会で補正予算案の補助金に関する部分をいったん取り下げたことを報告し「しっかりとした過程を踏まず、説明の順番が前後してしまった。申し訳なかった」と謝罪した。 市によると、当初の買収・分譲方式は現地で住宅を建て直すことを希望する10世帯が対象だった。市は124の被災世帯への個別面談後に、その10世帯に方式の見直しについて
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土石流被災地の宅地復旧補助金 熱海市、補正予算案から削除「説明不十分で理解得られず」
熱海市伊豆山の土石流被災地の宅地復旧に関し、市は23日の市議会6月定例会観光建設公営企業委員会で、被災者が行う復旧工事費の90%を補助する予算について、被災者への説明が不十分で理解が得られていないとして同定例会に提出した2023年度一般会計補正予算案から当該部分を削除すると表明した。 市は23年度当初予算に計上した復興推進費4億8500万円のうち、2億6100万円を補助金に組み替える補正予算案を6月定例会に提出していた。斉藤栄市長は削除理由について、「被災者、議員に十分理解されておらず、議員に可否判断をしてもらう状況にない」と説明。「今後、十分理解していただいた上で、改めて審議していただき
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熱海土石流 行政対応「あらためて検証」 川勝知事が正式表明 静岡県議会
静岡県議会6月定例会が23日開会し、川勝平太知事は所信表明で、熱海市伊豆山土石流災害の行政対応の検証を巡り、再検証するよう求めた県議会特別委員会の提言について、「砂防法や森林法などに関し、(静岡県の第三者)検証委員会で取り扱われていない新たな視点に基づく」とし、「重く受け止め、県としてあらためて検証を行う」と再検証する方針を正式に示した。行政文書の管理を巡る指摘を踏まえ、2023年度中に公文書管理条例の制定を目指すことにも言及した。 静岡県議会特別委は、第三者で組織した県の行政対応検証委員会の妥当性などを検証した。22年度末にまとめた提言には、県土採取等規制条例以外の法令に関する検証や関係
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土石流起点周辺の安全性 熱海市長、市独自検証に消極姿勢
2021年7月に熱海市伊豆山で発生した土石流災害の起点周辺の安全性について、斉藤栄市長は22日の市議会6月定例会の一般質問で、県が危険性は低いとの見解を示していることを踏まえ、「われわれとしてもその方向を受け入れていく」と述べ、市独自に安全性を検証することに消極的な姿勢を示した。田中秀宝氏(自民党・女性の会熱海梁山泊=りょうざんぱく=)への答弁。 土石流の起点では、県が6月末までの完了を目指して行政代執行による不安定土砂の撤去を進めている。ただ、起点の隣接地には撤去対象外の盛り土がある。さらに起点の北東側には未完成の宅地があり、崩壊した擁壁や高さ10メートルを超す盛り土が残されている。市は
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熱海・逢初川両岸の市道整備 用地買収3割が契約 熱海市が発表
熱海市伊豆山の土石流災害に関する復旧復興事業で、市は21日、被災地を流れる逢初(あいぞめ)川の両岸に整備する市道の用地買収について、対象者の3割が買収契約を結んだことを明らかにした。道路整備で生じる残地について、程谷浩成観光建設部長は「公共用地としての活用を検討し、できる限り買収する」と述べた。市議会6月定例会で、越村修氏(熱海成風会)の一般質問に答えた。 市は逢初川の拡幅と両岸の市道整備を2024年度末までに完成させたいとしている。市によると、今年3月に最初の土地売買契約が成立した。ただ、被災者の中には用地買収に難色を示す人や、家が再建できないほどの狭い土地が残るため市に買収を求める声も
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熱海市伊豆山・残存盛り土 最終処分場への搬出開始 県代執行
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点付近に不安定な状態で残っている盛り土を撤去する静岡県の行政代執行で、県は15日、起点から撤去し熱海港芝生広場に仮置きしていた土砂を千葉県内の最終処分場に搬出する作業を開始した。 熱海港に横付けされた船に、大型土のうに詰められた大量の土砂がクレーンで次々に運び込まれた。県盛土対策課によると、起点から撤去する不安定土砂約1万9千立方メートルのうち、同日までに約1万8千立方メートルを撤去し、同広場に運んだという。 起点の土砂からは土壌汚染の基準を上回るフッ素や鉛が検出されているため、飛散を防ぐため大型土のうに詰め、シートをかぶせて仮置きしている。 県は6月末ま
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熱海土石流 静岡県が住宅再建の利子負担へ 市と分担
静岡県は、熱海市伊豆山の大規模土石流災害で被災した住宅の再建支援を目的に、借り入れに伴う利子を負担する方針を固めた。2023年度一般会計6月補正予算案に費用を盛り込む方針。9月にも被災地の警戒区域解除が見込まれる中、被災者の利子負担をなくし、市と連携して速やかな再建を下支えする。15日までの関係者への取材で分かった。 県の支援策は、逢初(あいぞめ)川周辺の警戒区域内に家屋の新築や補修、購入する際の借入金(上限1千万円)にかかる借入期間上限35年について利子補給する。熱海市は既に23年度当初予算に、無期限で利子補給する住宅再建利子補給金を計上済み。熱海市の利子補給額の2分の1を県が負う形で分
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熱海土石流の行政対応検証 静岡県内部で再調査へ 条例以外を対象
熱海市伊豆山で起きた土石流災害を巡り、静岡県の行政対応について検証作業が不十分だとして県議会特別委員会が提言していた再検証作業について、静岡県は14日までに、第三者委員会で検証された部分を除いた法令対応などについて、県が独自に内部検証をする方針を固めた。川勝平太知事が県議会6月定例会で表明する見通し。同日までの関係者への取材で分かった。 関係者によると、2023年内に検証作業を終えて検証結果を公表する予定。有識者による検証委員会は設置しない。ただ、内部検証後に、あらためて必要と判断された場合には第三者による検証を行う可能性もあるという。 21年7月3日に発生した土石流災害では、起点となっ
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静岡県、熱海土石流の開示文書に不鮮明加工か コピーだけでは再現不可
熱海市伊豆山で2021年7月に盛り土(残土処分場)が崩落して28人が死亡した大規模土石流を巡り、2007年の行政対応を記したカラー文書を静岡県が白黒化して不鮮明な状態で開示していた問題で、元のカラーの行政文書を白黒コピーしただけでは判読できない状態にならないことが10日までの印刷技術の専門家への取材で分かった。専門家は「手を加えているのは明らかだ」と指摘していて、県が開示に際し文書を加工していた疑いが浮上した。 文書を保管していた県熱海土木事務所は取材に「白黒のコピーを複数回行い、画像処理は一切していないと開示当時の職員から聞いている」と説明した。 問題の文書は、土石流起点の逢初(あいぞ
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静岡県の「盛り土110番」 市民から通報164件 6日までに
静岡県は8日、熱海市伊豆山で発生した大規模土石流を受けて2022年7月に運用を始めた「盛り土110番」の利用状況を発表した。今月6日までに市民らから164件の通報が寄せられ、このうち16件は違法状態が続き、早期の是正が見込めない不適切盛り土として公表した。 22年度中に寄せられた138件については対応状況も示した。公表した16件はいずれも同年度中の通報で、うち3件では行為者に対して県盛り土規制条例に基づく停止・措置命令を発出した。138件のうち、11件は違法性の有無の監視を継続中で、それ以外の111件は違法性がないことや是正完了を確認した。 県は4月、不適切盛り土163カ所の位置情報をホ
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熱海土石流被災者 よみがえる悪夢「震え止まらず」 あの日から1年11カ月
熱海市伊豆山の大規模土石流は3日、発生から1年11カ月が経過した。県内各地に被害を与えた大雨から一夜。被災者は「あの日の雨と非常に似ていた」「悪夢がよみがえり、震えが止まらなかった」と振り返った。伊豆山の復旧復興に向けて、安全確保を強く求める声も聞かれた。 土石流の発生時刻とされる午前10時半ごろ、被災現場付近に集まった遺族、被災者らは雨の中で犠牲者に黙とうをささげた。2日の大雨で市内は目立った被害がなかったものの、国道135号や伊豆山地区の市道が通行止めになった。 警戒区域内に自宅があり、市内で避難生活を送っている50代の女性は「一昨年のことを思い出して体の震えが止まらなかった。どうし
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下多賀の不法盛り土 期限内に撤去せず 熱海土石流の旧所有者
熱海市伊豆山の大規模土石流で崩落した盛り土を含む土地を2011年まで所有していた神奈川県小田原市の不動産管理会社が、熱海市下多賀の保安林に造成した不法盛り土に関して、静岡県の復旧命令に従わず、県の設定した今年3月末の期限内に盛り土を撤去していないことが、1日までの関係者への取材で分かった。県は行政指導や行政処分を繰り返しているが業者側が応じないため、担当者が5月31日に同社の代表に直接会い、早期の履行を改めて要請した。 この不法盛り土は森林法の盛り土規制区域「保安林」に造成された。県が17年1月に許可したが、許可範囲外にも土砂が搬入されていたため、同年4月には行政処分に当たる中止命令を出し
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残土処理、課題なお 熱海土石流教訓の新法「最終処分場確保を」
熱海市伊豆山で2021年7月に盛り土(残土処分場)が崩落し、28人が死亡した大規模土石流を教訓にした盛り土規制法が26日に施行され、残土の流れの把握を目指す国のストックヤード(中間処分場)登録制度も始まった。遺族や被災者は「一歩前進」と捉えて再発防止の徹底を望む一方、建設業界には最終処分場を確保しなければ根本的な問題解決につながらないとする声が相次いでいる。規制が強化される残土処分業者は「規制されるべきなのは土砂を発生させる元請け業者では」と指摘する。 ■「少し報われた」 熱海土石流の遺族、被災者でつくる「被害者の会」の会長で、母親を亡くした瀬下雄史さん(55)は「再発防止策が一歩前進
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熱海の被災宅地復旧工事費90%補助 被災者「説明不足」/市長「不安踏まえた」
熱海市伊豆山の土石流被災地の宅地整備に関し、被災者が復旧工事を行い、市が工事費の90%(上限1千万円)を補助する制度を設けたことについて、斉藤栄市長は26日の定例記者会見で「被災者の不安を踏まえ、より良い方式に変えた。反対の声は聞いていない」との認識を示した。ただ、被災者からは「寝耳に水。もっと丁寧に説明すべきだ」と不満の声が聞かれた。 市はこれまで、避難先から帰還することを前提に被災者の宅地を買収し、一体的な住宅地を整備して分譲する方針だった。しかし被災者から「分譲価格が不透明」「希望する分譲地が他の被災者と重なった場合はどうなるのか」などと不安や疑問が相次いでいた。 市によると、買収
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盛り土規制法施行 危険渓流への適用必須に 熱海土石流教訓
熱海市伊豆山で2021年7月に発生した土石流災害をきっかけに制定された盛り土規制法が26日、施行された。集落の上流域に急勾配のある沢「土石流危険渓流」に造成された盛り土(残土処分場)が崩落して28人が死亡した大惨事を教訓に、従来は自治体の判断に任せていた土石流危険渓流の規制区域設定は必須となり、危険渓流の盛り土に厳しい規制が適用される。山間部以外でも規制区域内は「土砂の仮置き」に許可が必要になり、建設工事の元請け業者は土砂搬出先の許可確認が求められる。 規制区域は山間部を中心にした「特定盛土規制区域」と、平地や市街地が対象の「宅地造成工事規制区域」の2種類で、今後、都道府県や政令市が基礎調
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静岡・杉尾の盛り土 仮設ダム設置へ 代執行には数カ月
静岡県は25日、静岡県庁で開いた盛り土対策会議で、土石流危険渓流に造成された静岡市葵区杉尾地区の無許可盛り土に関し、行政代執行で盛り土を是正するまでの応急対策として、流出土砂を受け止める仮設ダムを設置する方針を明らかにした。行政代執行は県が工事の設計作業を進めていて、是正まで数カ月間かかるとみられる。 仮設ダムは高さ4メートル、幅10メートルで、大型土のうを積み上げて金属かごやシートで覆い、下流側への土砂を食い止める。ただ、行政代執行が終わるまで周辺住民の避難の必要性は変わらないため、盛り土の微妙な動きを感知する地盤傾斜計と、土砂の流出を確認する土石流センサーを5月末までに設置して監視を強
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盛り土規制法施行 24年度末までに区域指定 静岡、浜松市と県
熱海市伊豆山で2021年7月に発生した土石流災害をきっかけに制定された盛り土規制法が26日に施行されたのを受け、県と静岡、浜松両政令市は6月にも、同法に基づき規制区域を指定するための基礎調査に着手する。市町や建設業者などへの周知を経て、24年度末までの法規制開始を目指す。 県は25日に県庁で開いた盛り土対策会議の中で法規制開始までの行程を説明した。委託業者を選定した上で土地の地形や災害履歴を調べる基礎調査を実施し、規制区域案を作成する。同案について関係市町や建設業協会などの関係団体から意見を聴き、パブリックコメントを実施した上で規制区域を公示。周知期間を経て規制を開始する。 県盛土対策課
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宅地整備で方針転換 被災者復旧に90%補助 熱海・伊豆山の土石流被災地
熱海市伊豆山の土石流被災地の復旧復興事業に関し、市が宅地部分の復旧手法を変更したことが23日までに関係者への取材で分かった。これまでは市が宅地をいったん買収し、造成してから住宅再建を希望する被災者に分譲する方針だったが、宅地の復旧工事は被災者が行い、その費用の90%を市が補助する。市は被災者に補助金制度の通知文書を送っていて、説明会も開きたいとしている。 市は昨年5月の住民説明会で、国の交付金を活用して公共施設などを整備する小規模住宅地区改良事業に合わせて被災した宅地を買収、造成、分譲する方針を示していた。ただ、市が買収した時の土地価格よりも整備後の価格の方が高くなるほか、被災者が住んでい
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熱海から静岡へ「被災者と共に」支援のバトン 相談員、経験つなぐ
昨年9月の台風15号の被災者を支援する静岡市地域支え合いセンターが、一昨年の熱海土石流の被災者を見守り続ける熱海市伊豆山ささえ逢いセンターに支援のノウハウや住民の交流施設の運営手法などを学んでいる。災害の性質は異なるが、被災者の生活再建支援や孤立防止など両センターが取り組む課題は重なる。静岡側の「学びたい」思いに、熱海側は「経験を伝えたい」と応える。被災地から被災地へ、支え合いのバトンがつながっている。 支え合いセンターは社会福祉協議会が中心となって被災者の生活相談や心身のケアを行う機関で、各地の被災地で運営されている。熱海市では土石流から3カ月後の2021年10月に設置された。避難生活
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盛り土規制法 自治体へ指針 代執行手続き簡素化 国交省策定
熱海市伊豆山で2021年7月に発生した土石流災害を受けて新たに制定された盛り土規制法の運用方法を議論してきた国土交通省の有識者検討会は17日、都内で会合を開き、不法・危険な盛り土に対応する自治体向けの指針を取りまとめた。26日の法施行を前に、造成業者に対して強制的に是正を求める行政処分や業者に代わって是正する行政代執行を躊躇(ちゅうちょ)なく実施できるように通常の手続きを簡素化する方法を盛り込んだ。 熱海土石流では県や市が盛り土(残土処分場)の違法性や危険性を認識して業者を指導した時期もあったが、行政処分をせず、放置された盛り土が崩落して28人が死亡した。自治体が不適切な盛り土を把握しても
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2011年に違法性認識 熱海市と静岡県、「第三の盛り土」公文書記載 非公表説明と矛盾
熱海市伊豆山の大規模土石流起点近くに残されている「第三の盛り土」が「不適切盛り土」として公表されていなかった問題で、市と県が2011年に盛り土造成の違法性を認識し、行政処分を検討していたことが15日、市や県の当時の公文書の記載で分かった。違法性を認識していなかったために公表しなかったとする市や県の説明と矛盾が生じている。 公文書によると、「第三の盛り土」の造成地は、神奈川県小田原市の開発業者が都市計画法と森林法の許可を受けていたが、09年10月に工期が切れた。その後、切り土の計画地を盛り土したり、大量のダンプが廃棄物交じりの残土を運び込んだりして、市と県は計画通りに施工されていないことを認
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温泉の永続祈願 熱海・伊豆山 走り湯神社で例大祭
熱海市の伊豆山温泉の元湯「走り湯」を守る走り湯神社で14日、例大祭が行われた。走り湯温泉組合の関係者ら約20人が参列し、地域の重要な資源である温泉の永続を祈願した。 境内での神事に続き、湯煙が立ちこめる走り湯の洞窟前で「湯くみ式」を行った。原嘉孝宮司が長い柄の付いたひしゃくで湯だまりから高温の湯をくみ上げ、温泉利用施設が持ち寄った木だるに注いだ。 走り湯は日本三大古泉の一つに数えられ、1300年以上の歴史があるとされる。2021年7月の大規模土石流で2本ある源泉のうちの1本が土砂に埋まり、昨年10月から復旧工事が行われている。 組合によると、既に地下約600メートルまでの掘削工事を終え
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熱海土石流起点付近 第三の盛り土「不適切」箇所に含まれず 擁壁崩壊、土砂流出後も放置
熱海市伊豆山で2021年7月に発生した大規模土石流の起点近くに残されている「第三の盛り土」が、静岡県の公表した「不適切盛り土」163カ所に含まれていなかったことが12日までの市や県への取材で分かった。この盛り土は10年以上前に擁壁が崩れ、土砂流出も発生しながら放置されていたが、市は「不適切」に該当しないとして県に報告していなかった。 県は、許可を受けた際の開発計画と異なっていたり崩壊が発生していたりする盛り土を「不適切盛り土」とし、各市町の把握している情報を集約。4月下旬に地番などの位置情報や位置図をホームページで公表した。各市町は盛り土総点検などで把握した箇所を県に報告。熱海市は21年の
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熱海・伊豆山「警戒区域」 ライフライン復旧工事始まる
熱海市伊豆山の土石流被災地に設けられている立ち入り禁止の「警戒区域」で9日、ライフラインの復旧工事が始まった。市は9月1日に区域解除を予定していて、避難生活を強いられている住民が一日も早く帰還できるよう急ピッチで工事を進める。 区域内の中心を通る市道岸谷本線の約150メートル区間で、土砂が流入した水道とガスの本管を敷設替えする。市は6月下旬までに工事を終える予定で、7月から住宅の修繕工事が行える環境を整える方針。 初日は道路の掘削や損傷した古い管の撤去などが行われた。今後、電気や通信の復旧工事も行い、9月1日までに完了させたいとしている。区域内には46棟が土石流に流されずに残っていて、同
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熱海土石流1年10カ月 警戒区域解除へ 復旧遠く帰還見通せず 被災者嘆き
熱海市伊豆山の大規模土石流は3日、発生から1年10カ月が経過した。市は被災地の「警戒区域」を9月1日に解除する方針だが、同日時点で避難先から帰還できる住民は一部にとどまる。被災者からは「まだ戻れない人は、いつ帰還できるのか」「ただ待つばかりでは心が折れてしまう」と嘆きの声が聞かれた。 警戒区域付近では3日、発災時刻とされる午前10時半ごろに遺族や被災者が犠牲者に黙とうをささげた。母親を亡くし、自宅が土石流で流された太田朋晃さん(57)は「うちがあった場所は道路と川になる計画だが、自宅の代替地がどうなるのか、先のことが見通せない」と不安を口にした。 市によると、警戒区域内に残っている46棟
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不適切盛り土163カ所公表 静岡県、規模は「調査中」 土砂災害警戒区域に16カ所
静岡県は28日、県内にある不適切盛り土の位置情報をホームページで公表した。総数は、熱海土石流後の盛り土総点検や「盛り土110番」への通報で把握した207カ所のうち、同日までに是正措置の完了を確認した44カ所を除く163カ所。危険性を判断する上で重要な情報になる盛り土の規模は「詳細を調査中」(県盛土対策課)として盛り込まなかった。 ※画像タップで拡大してご覧になれます 熱海土石流で崩れ残った伊豆山の盛り土や静岡市葵区杉尾、日向の盛り土など30カ所について安全確保の緊急性が高い盛り土と判断している。28日に県庁で開いた記者会見で同課の担当者は、本年度中に安全性把握調査や盛り土行為
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伊豆山の水道、ガス 5月工事開始 熱海市、警戒区域内復旧へ
熱海市の斉藤栄市長は25日の定例記者会見で、9月1日に予定している同市伊豆山の警戒区域解除に向けて、区域内のライフライン復旧工事を5月8日に開始することを明らかにした。市は6月下旬までに工事を終え、区域内の住宅修繕工事を7月から実施できるようにする方針。 工事は区域内の中心部を通る市道岸谷本線の150メートル区間で行う。市道の地下に埋設されている上水道と都市ガスの本管の敷設替えを先行実施し、住宅の修繕工事などに支障がでないようにする。市は並行して電柱の設置位置を検討していて、9月1日までに水道などの復旧が見込まれるエリアの電気や電話も復旧させたいとしている。 市が土石流被災地に設定してい
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熱海土石流「第二の盛り土」撤去 現所有者、静岡県の指導受け
2021年7月に発生した熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、「第二の盛り土」と呼ばれる土石流起点南側の尾根から投棄された不安定土砂の撤去作業が終了したことが24日、県への取材で分かった。県が現土地所有者に対して森林法違反として行政指導し、現所有者が是正に応じた。 県によると、不安定土砂は起点南側の尾根の斜面に約6千立方メートルあったが、4月中旬に全ての土砂が撤去されたことを現地で確認した。取り除いた土砂は尾根上部の平らな伐採地に運び、植栽のための土壌として再利用する。この伐採地と「第二の盛り土」があった斜面で植栽作業を進め、5月末にも完了させる。 県担当者は「不安定土砂が流出する危険性はな
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行政対応再検証渋る川勝知事 熱海土石流被災者が批判「原因究明、徹底を」 識者からも問題視
熱海市伊豆山で2021年7月に発生した大規模土石流の行政対応検証が不足している問題を巡り、県議会の再検証要請に応じない川勝平太知事に対して、被災者から「原因究明の徹底を」「結論ありきなのか」などと批判の声が上がっている。識者は川勝知事の態度について「妥当ではない」とし、知事の行政執行をチェックする立場の県議会の要請に応じない対応を問題視する。 「これまでの対応で十分だ」―。川勝知事は県議選告示を直前に控えた3月28日の定例記者会見で、県議会特別委員会の再検証要請に見解を示した。各分野の専門家から検証不足の指摘が相次ぐ中、4月の会見では「実施可能性も含めて精査している」と補足したが、県は行
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熱海土石流 盛り土公文書黒塗り外し、一部提供 熱海市が原告側に
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、遺族、被災者が土石流の起点となった土地の現旧所有者や県、市に損害賠償を求めた訴訟の弁論準備手続きが19日、静岡地裁沼津支部であり、市側は関係者の氏名などが伏せられた盛り土に関する一部の公文書について、黒塗りを外した形で原告側に提供したことを明らかにした。原告側は7月19日の次回期日までに、県と市の公文書や独自に集めた証拠を基に主張をまとめて提出する。 協議は非公開。市が提供した公文書は、ホームページで公表している崩落した盛り土に関する部分。当初は被告の現所有者側からの申し立てを受け、同支部が提出を依頼していた。原告側も市に要請していて、市は「土石流発生原因
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盛り土対策兼務職員が研修 静岡県「部局横断で対応を」
静岡県は17日、熱海市伊豆山で発生した大規模土石流を受け、盛り土造成の規制・監視体制を強化するために県内各地の出先機関に配置した盛土対策課兼務職員対象の研修会を県庁で開いた。約130人が参加し、盛り土行政に必要な心構えや知識の習得に努めた。 訓示した森貴志副知事は、熱海土石流の県の検証委員会が「県と市の対応は失敗」と総括したことを踏まえ、「部局を超える(対応が必要な)ものであっても(自分で)最終的な解決を考えるというくせをつけてほしい」と業務に臨む姿勢を説いた。盛り土規制条例に基づく関係箇所への立入検査証を参加者全員に交付した。 盛土対策課のほか、砂防課や廃棄物リサイクル課、県警生活安全
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熱海土石流 知事「判読不能なら問題」公表方法見直し 行政文書白黒化
熱海土石流で崩落した盛り土周辺の開発行為に関するカラーの行政対応文書を静岡県が白黒化して一部が判読できない状態で公表していたことについて、川勝平太知事は13日の定例記者会見で、白黒化する公表方法に関し「知らなかった。(公表した文書の内容が)何か分からないのであれば問題だ。分かるようになっていないといけない」と述べ、内容が分かるように公表方法を見直す考えを示した。白黒化の経緯を調査する方針も明らかにした。 行政対応文書は2021年7月の土石流発生直後に各報道機関などが県情報公開条例に基づき開示請求し、開示文書と同じ文書が約3カ月後に県ウェブサイトに掲載された。しかし、元々はカラーの文書も白黒
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土石流被災地の「警戒区域」 9月1日解除予定 熱海市が方針
熱海市伊豆山の大規模土石流の被災地に設けられている立ち入り禁止の「警戒区域」について、市は11日に市役所で開いた住民説明会で、同区域を9月1日に解除する方針を明らかにした。ただ、同日時点で避難先から区域内に帰還できる被災者は一部にとどまる見込み。被災者からは「大きな一歩ではあるが、先はまだ長い」と不安の声が聞かれた。 市によると、避難生活を送っている住民は11日現在、132世帯、227人。市はこれまで、土石流の起点付近に残る不安定土砂の撤去と新砂防ダムの完成を条件に「夏の終わりごろ」に区域を解除する方針を示していたが、具体的な日程を示したのは初めて。 土石流の起点付近では、県が5月末の完
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被災者「いつ戻れるのか」 熱海市、機構改革で復興目指す 熱海土石流1年9カ月
熱海市伊豆山の大規模土石流は3日、発生から1年9カ月が経過した。新年度に入り、市は本格的な復旧復興を進めるための部署を始動させた。ただ、被災者からは「いつになったら本当に伊豆山に戻れるのか」「市と県は私たちに向き合ってほしい」と切実な声が聞かれた。 「復興なんてしなくていい。復旧して元の生活に戻ることが第一だ」。土石流で母親を亡くした男性(57)は語気を強めた。市は、立ち入り禁止になっている警戒区域を「夏の終わりごろ」に解除する予定だ。しかし女性宅をはじめ多くの住宅が流された場所の景色はなかなか変わらない。避難先からの帰還の日が近づいている実感がわかず、「先が見えない」と嘆いた。 現場付
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盛り土「小規模なら崩れず」 静岡県が解析結果、不確実性も 熱海土石流
熱海市伊豆山で2021年7月に発生した大規模土石流を巡り、静岡県は29日、土石流の起点で造成された盛り土の大きさが実際よりも小さければ崩落しなかったとする解析結果を発表した。盛り土に影響を与える地下水量の推定値などは根拠が乏しいまま解析に使っていて、県は「不確実性がある」としている。 解析では盛り土などの土質は均質化し、降水量も平均化した上で隣接流域からの表流水の流入は前提にしなかった。ジオアジアと呼ばれる解析方法で計算し、盛り土の高さが15メートルで崩落箇所下端部に土砂がない場合、水や土の圧力で盛り土が軟らかくなる現象は見られないとした。 実際の盛り土は高さが約50メートルあったが、解
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静岡県の対応 再検証応じず 知事、県議会要求に 熱海土石流
熱海市伊豆山で2021年7月に発生した土石流を巡り、川勝平太知事は28日の定例記者会見で、県議会から求められていた行政対応の再検証に応じない方針を明らかにした。県が設置した検証委員会(第三者委員会)から県に再検証を直接要請されていないことを理由に挙げ、今後については「訴訟の場に委ねていい」と説明した。 検証委は県職員OBで構成される事務局の意向によって、検証対象を限定したり、議事録のない会合を開いたりしていて、県所管法令の検証が不十分だと県議会から指摘を受けていた。 川勝知事は、再検証が行われるべきだとした県議会の報告書の内容を確認したとした上で、「これまでの対応で十分だと考えている。検
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待望の「36人目の仲間」 新ポンプ車を配備 土石流で被災 熱海市消防団第四分団
熱海市伊豆山の大規模土石流で消防ポンプ車が被災した市消防団第四分団(押田貴史分団長、団員35人)に26日、新たなポンプ車が配備された。熱海消防署で行われた式典で、団員は「36人目の仲間」として待望の新車両を歓迎し、地域の安全安心の確保に向けて決意を新たにした。 第四分団の旧ポンプ車は2021年7月の土石流に襲われた市道伊豆山神社線沿いの詰め所で大破した。配備してまだ5年目だった。以来、市消防本部から代替車を借りて活動していた。 新ポンプ車は伊豆山の狭い道を走行できるコンパクトな車両に、タッチパネルで水圧などを自動調整できる最新機能を搭載。仮詰め所の伊豆山コミュニティ防災センターに配備する
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函南無許可盛り土 2男性不起訴処分 地検沼津支部
函南町丹那の山中に無許可で大規模な盛り土が造成された事件で、静岡地検沼津支部は23日までに、同町条例違反の疑いで逮捕・送検された沼津市の会社役員の男性(47)と御殿場市の建設業の男性(41)をともに不起訴処分とした。22日付。同支部は処分理由を明らかにしていない。 男性2人とともに同事件で逮捕された清水町のソーラー設営会社社長の被告(53)=沼津市=は同条例違反の罪で起訴されている。
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土砂対策に一定評価 熱海土石流、警戒区域解除向け 静岡県検討委見解
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、有識者や国、市と構成する県災害対策検討委員会は23日、最終会合を県庁で開き、逢初(あいぞめ)川上流域の土石流起点付近で進む土砂崩落対策に関し「ハード面では十分な対策が取られつつある」との見解を示した。市が「今夏の終わりごろ」をめどとする警戒区域の解除に向けて一定の技術的評価を与えた。 上流域は盛り土(残土の投棄)や切り土(地盤の掘削)が行われ、盛り土崩落に伴う土石流発生後も不安定になった盛り土の一部が残る。このため、市は立ち入りを制限する警戒区域を下流域に設け、県が行政代執行で残った盛り土の一部を撤去している。 委員長の今泉文寿静岡大教授は「ハード、ソフ
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滞る残土処分 ゆがんだ静岡県条例、足かせに【統一地方選 地域課題を考える 記者からの提言㊤】
谷に不法投棄された残土(盛り土)が崩落し、28人が死亡した熱海土石流。その教訓として作られた静岡県盛り土規制条例が昨年7月に施行された後、皮肉にも県内で適正な残土処分が滞っている。熱海土石流の被害とは関係ない土壌汚染調査が条例で求められるようになり、各地の適正な業者が残土の受け入れを拒んでいる。このままでは残土の不法投棄を助長しかねない。 「出所の分からない土砂は怖くて受け入れられないよ」。県東部で残土処分場を運営する担当者がぼやく。広さは東京ドーム1・5倍の約7ヘクタール。周囲に人家のない採石場跡地に造成され、沈砂池を設けるなど管理を徹底し、土石流は発生しない構造だ。 しかし、条例で義
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新砂防ダム完成 熱海・逢初川上流部に国交省建設
国土交通省熱海緊急砂防出張所は20日、熱海市伊豆山の大規模土石流が流れ下った逢初(あいぞめ)川上流部に建設していた新砂防ダムが完成し、県に引き渡した。新砂防ダムの完成は、立ち入りを制限している被災地の警戒区域を解除するための条件の一つ。伊豆山の復旧復興に向けた準備が一歩進んだ。 新砂防ダムは土石流の起点から約800メートル下流に完成。高さ13メートル、幅59メートル。容量は約1万800立方メートルで、土石流の起点周辺に残る盛り土が仮に崩れても受け止めることができるという。 同出張所は国の直轄事業として、2021年12月までに既存の砂防ダムにたまった土砂を除去し、22年3月から新砂防ダムを
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静岡県見解「崩落可能性低い」 逢初川源頭部北側隣接地の盛り土 熱海市が説明会
熱海市は19日、同市伊豆山の大規模土石流の起点付近に残る不安定土砂の撤去工事の進捗(しんちょく)や隣接地の盛り土についての説明会を市役所で開いた。県は逢初川源頭部北側隣接地の盛り土に関し、崩落した盛り土と同様の崩壊の可能性は低いとする見解を伝えた。 県は2月末、行政代執行で起点付近の不安定土砂の撤去・搬出を開始した。北側隣接地には届け出のない盛り土がある。県担当者は、同隣接地の標高が比較的高く、盛り土内に地下水や表流水が集中しやすい場所ではない▽土砂が水を通しやすく、土石流災害を起こした土砂とは明らかに異なる―などと説明した。 2回の説明会に、住民や被災者ら計約50人が集まった。出席者か
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熱海土石流 各戸回り「とにかく逃げろ」と叫んだ 命守る署員91人の実録、熱海署が文集
2021年7月3日に熱海市伊豆山で発生し、28人の命を奪った大規模土石流で、住民の避難誘導や行方不明者の捜索、遺体の検視などに奔走した熱海署員が、災害から学んだ教訓や警察官としての使命感、犠牲者への思いをつづった文集を作製した。今春、同署を離任する本間章浩署長は「熱海の安全安心を守るための道しるべ」として、未来の署員にも読み継いでもらいたいとしている。 「伊豆山」と題した文集には本間署長をはじめ、発災当時に同署に在籍していた91人の思いを収録している。一般向けに公開しておらず、同署の“財産”として残している。 発災直後を振り返った本間署長は、二次災害の恐れがある現
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熱海土石流 静岡県検証の問題指摘 専門家有志、書籍出版へ
熱海土石流の発生原因を巡り、専門家有志が3月下旬、静岡県による技術面の検証の問題点を取り上げた書籍「熱海土石流の真実静岡県調査報告書の問題点」(白順社)を出版することになった。流域変更(他流域からの表流水の流入)の影響を否定した県の検証を問題視し土石流の引き金になった盛り土崩落の真相に迫った。 執筆するのは、県議会の検証作業でも参考人として証言した地質専門家の塩坂邦雄さんと土木設計エンジニアの清水浩さん。県は地盤工学などの学者と副知事(当時)による「発生原因調査検証委員会」を設置。盛り土内部に他流域から地下水が流入したとする報告書をまとめたが、書籍では土石流発生直後の現地調査を踏まえ、科学
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熱海土石流教訓に 静岡県警が救助服製作
静岡県警は16日、災害現場での安全かつ効率的な救助活動に向け独自に作った災害救助服を披露した。耐熱、耐摩擦の繊維で丈夫に仕上げたほか、従来の災害活動服よりスリム化して動きやすくし、反射材で夜間でも安全に活動できるようにした。 熱海市伊豆山で2021年7月に起きた大規模土石流では、静岡県内部隊は延べ約1万9800人が現場で活動した。全国統一で整備されている災害活動服の用意が足りない状況の中、隊員らは比較的破けやすい警備服を代用するなどして真夏の作業も乗り越えたという。 災害救助服は静岡県になじみ深い青とオレンジでデザイン。反射材は両胸部分に加えて背面にも使った。ボタンをなくすなどして軽量化
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熱海市 法的責任改めて否定 盛り土対応反省も 土石流百条委の報告書 市長に提出
28人が死亡した熱海市伊豆山の大規模土石流に関し、同市議会は15日、「市長と行政当局はしかるべき責任を負うべきだ」とする市議会調査特別委員会(百条委員会)の調査報告書を斉藤栄市長に提出した。盛り土を巡る行政対応の不備を指摘し、再発防止の徹底を求めた議会側の申し入れに対し、斉藤市長は「改善すべき点は改善する」としつつ、「法的責任があるとまでは言えない」と従来の主張を繰り返した。 市は昨年11月に公表した行政対応に関する総括でも、同様の見解を示している。百条委が指摘した「責任」の在り方について、斉藤市長は「被災者の生活再建と復旧復興を進めることが行政の責任だと思う。法的責任は司法の場で明らかに
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熱海・下多賀の海岸埋め立て 土石流土砂 搬入完了
静岡県熱海土木事務所は15日、熱海市伊豆山の大規模土石流で発生した土砂などを活用して昨年9月から進めていた同市下多賀の海岸埋め立て工事の土砂搬入作業が完了したと発表した。 埋め立て工事の現場は、国道135号沿いの長浜海浜公園に隣接する海岸で、延長266メートル、面積約1万平方メートル。同事務所によると、熱海港芝生広場などに仮置きしていた約4万立方メートルを使用した。覆土の一部には他の工事現場で出た建設残土約5千立方メートルを使った。 県は今後、津波対策として護岸整備や覆土工事を進めるとともに、地元と協議しながら緑地などを整備する。全体の工事完了は2024年度末を目指している。
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熱海土石流「市は責任負うべき」 市議会百条委の報告書可決
熱海市議会は15日、同市伊豆山の大規模土石流に関する市議会特別委員会(百条委員会)の調査報告書案を全会一致で可決した。被害を拡大させた盛り土を巡る市の一連の対応は「最善ではなかった」と批判し、28人が犠牲になった重大な事実に対し、「市はしかるべき責任を負うべきだ」と総括した。 報告書は、土石流起点の旧土地所有者である不動産管理会社(神奈川県小田原市)が提出した盛り土造成の届け出書に不備があるのに熱海市が受理した点や、同社に措置命令を出さなかった市の判断とその後の対応など8項目を問題点とし、参考人や証人の発言内容と市議の意見をまとめた。 本会議で、調査結果を報告した稲村千尋委員長は、市が条
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熱海土石流百条委 最終報告書案「可決すべき」 市長などの責任指摘
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)は9日、土石流の被害を拡大させた盛り土を巡る市の一連の対応が「最善ではなかった」として、斉藤栄市長と市当局の責任を指摘する最終報告書案を全会一致で可決すべきだと決めた。15日の2月定例会最終本会議で可決する見通し。 報告書案では、前土地所有者の不動産管理会社(神奈川県小田原市)が提出した盛り土造成の届け出書や変更届に不備があったのに受理したり、行政指導に従わない前所有者に措置命令を出さなかったりした市の対応を批判。森林法に基づく開発許可権限がある県の対応が不十分だった可能性も指摘している。 百条委は同日をもって調査を終了
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静岡放送が特別番組賞 熱海土石流テーマ JNNネットワーク協議会賞
TBS系列の全国28テレビ局でつくるJNNネットワーク協議会賞の表彰式が8日、都内で開かれ、静岡放送が制作した「SBSスペシャル 熱海土石流-なぜ盛り土崩落は防げなかったのか」が特別番組賞を受賞した。 番組は2021年7月に熱海市伊豆山で発生した大規模土石流をテーマに、甚大な被害をもたらした盛り土の造成から崩落までの経緯に迫った。22年の「地方の時代」映像祭でグランプリを受賞し、国際的な映像コンテストなどで優れた成績を収めた番組をたたえる部門で選出された。 表彰式では番組を担当した報道制作局の和田啓記者が「遺族の『真実が知りたい』という声があったからこそ取材ができた。盛り土という&ldq
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熱海土石流 開発行為完了促す 現所有者に市方針 起点近くに盛り土
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点北側にある宅地造成地に崩壊した擁壁や盛り土がある問題について、窪田純一観光建設部理事は8日の市議会2月定例会で「直ちに危険な状態ではない」としつつ、現土地所有者に開発行為を完了させるよう協議する方針を示した。米山秀夫氏の一般質問に答えた。 現地には工事中に崩壊した擁壁や高さ12メートルの盛り土があるとされる。市によると、擁壁は2007年に築造されたとみられ、開発許可申請を出した事業者の業績悪化に伴い工事が中断された。申請者の地位は20年に現所有者に承継された。窪田理事は「開発行為の再開に向けて協議していたが、21年7月の土石流で遅れた。今は現所有者との協議を
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自宅跡で女性の遺族慰霊「一つの区切り」 熱海土石流、最後の死亡確認
熱海市伊豆山の大規模土石流で最後の行方不明者となり、1月に土砂仮置き場から腕の骨が見つかった女性=当時(80)=の葬儀が5日、市内で行われた。遺族は葬儀後、女性の遺骨や位牌(いはい)などを胸に抱いて警戒区域内の自宅跡を訪れ、女性の霊を慰めた。 女性の遺骨は同日、荼毘(だび)に付された。1年8カ月の月日を経て、無言の帰宅をした。土石流に流された自宅の周りには、今も崩れた石垣やシートに覆われた被災家屋など痛ましい爪痕が残る。 時折冷たい風が吹き付ける中、遺族は女性に花を手向け、静かに手を合わせた。長男(57)は「やっと家族と共に母を自宅に連れて帰ってくることができた。本当に『お帰りなさい』と
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最後の不明者の遺族、一歩前へ「やっと来られた」 熱海土石流1年8カ月
熱海市伊豆山の大規模土石流は3日、発生から1年8カ月が経過した。最後の行方不明者で、1月に土砂仮置き場で骨が見つかり28人目の犠牲者となった女性=当時(80)=の長男(57)が初めて月命日に現場付近を訪れ、近所づきあいのあった被災者とともに黙とうをささげた。 「ご心配をおかけしました。やっと来ることができました」。20回目の月命日。これまで欠かさずに現場付近で慰霊に訪れていた被災者の太田滋さん(66)と久々に再会した男性の目から涙がこぼれ落ちた。「(女性が)帰ってきてくれて本当に良かったね」。滋さんの目にも光るものがあった。 発災時刻とされる午前10時半ごろ、男性は現場方向に向かって深く
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熱海建設業協会に捜索尽力で感謝状 静岡県公安委員会
静岡県公安委員会は3日、熱海市伊豆山の大規模土石流の現場で被災者の救助や行方不明者の捜索などに尽力した熱海建設業協会に感謝状を贈呈した。熱海署で外山弘宰委員長が大舘節生会長(76)に手渡した。 同協会の加盟業者は、土石流発生当初から二次災害の恐れがある現場でほぼ休みなく活動を続けた。一昨年9月には、土砂の搬出作業を行っていた建設作業員が川に転落して死亡する悲劇もあった。最後の行方不明者で、今年1月に骨の一部が見つかった太田和子さん=当時(80)=の捜索にも大きく貢献した。 大舘会長は「皆が本当に頑張ってくれた。被災地は復興の段階に入ってきている。協会一丸となって今後も作業に取り組みたい」
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熱海土石流 川勝知事「罰則弱いから起きた」 静岡県条例改正、強化を検討
盛り土が崩落した熱海土石流の行政対応に関し、川勝平太知事は28日の定例記者会見で「(盛り土を規制する関係法令の)罰則が弱いから熱海の土石流が起きた」と述べ、静岡県砂防指定地管理条例を改正して罰則強化を検討する考えを示した。同条例の盛り土規制区域「砂防指定地」で巨大盛り土が無許可造成された問題を踏まえ「検討する余地がある」と答えた。 砂防条例の罰則は「懲役1年以下または2万円以下の罰金」で、川勝知事は藁科川上流域(静岡市葵区)の無許可盛り土を視察した後、技術面の規制が厳しい砂防条例の罰則が弱いことを問題視していた。 2014年に盛り土(積み上げた残土)崩落事故が起きた大阪府は当時、府内全域
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熱海土石流 起点の残存土砂撤去開始 静岡県代執行、5月完了目指す
静岡県は28日、熱海市伊豆山の大規模土石流の起点付近に残る不安定土砂の撤去、搬出作業を開始した。前土地所有者の不動産管理会社(神奈川県小田原市)に代わり行政代執行として実施し、5月末ごろまでに撤去完了を目指す。土石流から間もなく1年8カ月。被災地の復旧復興の前提となる工事がようやく本格的に動き出した。 県によると、撤去する土砂は約2万立方メートル。行政代執行は昨年10月に始まり、これまで現場の伐採や測量、崩落箇所の上部と谷底に進入する2本の工事用道路を整備してきた。現場は土質が悪く足場が弱いため、工事計画の変更や調整に時間を要した。 28日は、起点の上部から掘削した土砂を大型土のうに詰め
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「公正性などに問題」 行政対応検証委の報告書巡り論戦 静岡県議会
24日の一般質問では、県議会特別委員会が「再検証すべき」とまとめた熱海市伊豆山土石流災害の行政対応検証委が作成した報告書の評価を巡って論戦が繰り広げられた。地元選出の藤曲敬宏氏が「検証委の運営や報告書は公正性などに問題があった」と疑問を投げかけたのに対し、川勝知事は「検証は適正であり、尊重する。『再検証が行われるべき』との特別委の議論の結果も重く受け止める」と述べた。 再検証について、知事は「特別委の報告書を精読したい。検証委報告書と比較・精査し、損害賠償請求訴訟との関係を整理して慎重に対応を検討する」と具体的な言及を避けた。 「川勝知事が報告書の取りまとめを急がせたことが検証過程に影響
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県の再建支援策、期間延長を検討 静岡県議会 熱海土石流
高畑英治くらし・環境部長は、熱海市伊豆山土石流災害の被災者への再建支援策について、県独自の県営住宅家賃免除などで期間延長を検討していることを明らかにした。藤曲氏への答弁。 現在も被災者のうち14世帯は県営住宅で避難生活を送る。家賃免除は、災害救助法の適用が終わる8月以降も自宅に戻ることができない場合、戻れるまで必要な期間延長できるよう検討する。熱海市が実施を表明している住宅再建支援への参画や、被災から3年間としていた不動産取得税減免の適用期間延長も検討する。 住宅が警戒区域にあることで、被災者生活再建支援制度の支援金支給に必要な解体作業を実施できない場合も、被災者の実情に合わせ期限を柔軟
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「開発規制目的でない」 砂防指定問題巡り静岡県部長 熱海土石流
熱海土石流の発生源になった逢初(あいぞめ)川上流域に関し、砂防法の規制区域「砂防指定地」の指定を国から求められたのに静岡県が指定しなかった問題で、県交通基盤部の太田博文部長は24日の県議会2月定例会で、「砂防指定地は国土保全の観点から指定するもので、開発行為を規制する目的で指定しないと認識している」との考えを示した。自民改革会議の藤曲敬宏氏(熱海市)の一般質問に対する答弁。 主張の根拠を示さないまま、国からの通達や複数の専門家の見解と大きく異なる県独自の解釈を維持した。 国は過去の土石流災害を教訓に1989年に指定基準を定め、「開発が行われ、または予想される区域で、その土地の形質を変更し
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伊豆山港に沈む災害廃棄物 地元漁師とダイバーが回収 熱海土石流
熱海市伊豆山の土石流災害で大量の土砂が流れ込んだ伊豆山港で21日、地元漁師とボランティアのダイバーが港内に残る災害廃棄物などを回収した。海底には折れ曲がった電柱や建物の柱などが沈んでいて土石流の爪痕が残っていた。漁師らは今後も回収作業を続け、港をよみがえらせたいとしている。 都内のダイバーを含め15人が参加し、茶わんなどの食器や折り畳みいすなどを次々に回収した。土石流で流されたとみられる金属製の電柱や配管類なども引き上げた。土石流の直後から被災者の思い出の品などを港で回収してきた漁師の金子友一さん(57)は「まだ細かい物が残っている。全部取るとなると大変な量」と話した。 ただ、海底には砂
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「おかえり、寒かったね」 熱海土石流最後の不明者 遺骨、家族の元に
熱海市伊豆山で2021年7月に発生した大規模土石流で行方不明になり、今年1月に市内の土砂仮置き場で発見された女性=発生当時(80)=の骨が20日、女性の長男(57)の元に帰った。「おかえり、寒かったね。出てきてくれてありがとう」。市内で記者会見した長男は涙をこらえながら、風呂敷に包まれた遺骨と優しくほほえむ女性の遺影に語り掛けた。 女性の骨は20日午後、熱海署から引き渡された。家族らと会見した長男は県警をはじめ消防、自衛隊、土木関係者など多くの関係者に感謝し、伊豆山の住民にも「ご心配をおかけしました。本当にありがとうございました」と深々と頭を下げた。 同席した女性の幼なじみの女性(82)
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地域防災計画修正案 市が承認 熱海土石流 教訓踏まえ
熱海市は20日、市防災会議を市役所で開き、2021年7月に伊豆山で発生した土石流災害の教訓を踏まえた地域防災計画の修正案を協議し、承認した。災害時に公表することを前提にした安否不明者などの情報収集や住民の早期避難を促すための「わたしの防災計画」作成の推進などを盛り込んだ。 伊豆山の土石流は起点の盛り土が被害を拡大させた。計画案では、危険が確認された盛り土について、各法令に基づき速やかに是正させるために行政指導、行政処分を実施することを明記した。 災害時の人命救助を迅速に行うため、県や警察と連携して安否不明者などの情報を収集し、関係機関と調整しながら名簿を作成する。県内外から救助活動などで
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土石流被災者 心に寄り添う 多角的に支援 熱海市伊豆山ささえ逢いセンター長/原盛輝氏【本音インタビュー】
2021年7月に熱海市伊豆山で発生した大規模土石流の被災者の見守り支援を続けている。被災者の悩みは多岐にわたり、時間とともに変化もする。現地のインフラの復旧工事が本格化する中、一人一人に寄り添いながら、分断された地域コミュニティーの再生を目指している。 -被災者と接して感じることは。 「センターは発生3カ月後に開設し、保健師や社会福祉士など6人の相談員が被災した127世帯を訪問したり、電話したりして悩みや不安を聞いてきた。少しずつ前に進もうとしている人もいれば、まだ誰とも話したくないという人もいる。先日、最後の行方不明者の太田和子さん=当時(80)=の骨の一部が発見された。良かったと思
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不適切盛り土196カ所 静岡県、場所黒塗り非公表 所有者特定、訴訟懸念を理由に
熱海土石流後の盛り土総点検で判明した静岡県内の不適切な盛り土196カ所に関し、静岡新聞社が具体的な場所の情報を開示するよう県に求めたところ、県は16日までに、「土地所有者が特定される」ことを理由に非公表とした。所有者や開発業者から訴訟を起こされる恐れもあるとするが、熱海土石流では盛り土の存在が下流域の住民に事前に知らされず、逃げ遅れた27人と関連死1人の犠牲につながった。国土交通省は「自治体には公表をお願いしている」としている。 盛り土総点検は一昨年の土石流後に全国で実施。本県は排水施設の不備や届け出と異なる造成などの盛り土が196カ所あるとし、関係法令別と地域別(東中西部と伊豆)の箇所
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不正盛り土の監視強化 熱海市、衛星画像で地形変化察知
熱海市伊豆山の土石流災害を教訓に、同市は2023年度、不正な盛り土造成を防ぐための監視体制を強化する。昨年11月に公表した土石流に関する行政対応の総括に盛り込んだ再発防止策の一つで、23年度当初予算案に、衛星画像で不審な伐採や地形変化を察知した際、現場に通じる道路に監視カメラを設置する経費1200万円を計上した。 衛星による検知は外部機関に委託し、監視カメラの画像は市が遠隔で確認する。市は23年度当初から開始し、監視情報を県と共有する。職員のパトロールや市民からの情報収集も強化する。 法令違反への是正や特殊な土地利用に対する許可判断などを適正に行うために、専門知識のある技術者などに助言を
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熱海土石流 静岡県の対応「再検証を」 県議会特別委、議長に報告書
熱海市伊豆山で一昨年、盛り土(積み上げた残土)が崩落して28人が死亡した土石流災害に関する県議会特別委員会(竹内良訓委員長)は14日、県が設置した行政対応検証委員会(第三者委員会)による県所管法令の行政対応検証が不十分だったとして「公正・中立な立場から改めて再検証が行われるべきだ」とする報告書を薮田宏行議長に提出した。 提言として「行政対応に関する再検証作業の実施」「復興に向けた被災者支援策」など5項目を盛り込み、再検証すべき県所管法令には砂防法、都市計画法、廃棄物処理法などを挙げた。地下水を発生原因と結論付けた県の技術検証に関しても「表流水が原因で、周辺の開発行為も検証すべきとする専門家
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安全安心 持続可能で豊かな地域へ【2023年度 静岡県予算案特集】
静岡県が10日に発表した一般会計1兆3703億円の2023年度当初予算案は、新型コロナウイルス感染症対策が大きな転換期を迎える中、本格的なウィズコロナ社会の実現や持続可能な開発目標(SDGs)の達成をけん引する事業に重点を置いた編成となった。東アジア文化都市事業など本県独自の取り組みを契機に観光や地域経済の回復を図る一方で、エネルギー価格高騰など情勢の変化に対応できる社会基盤の構築も目指す。22年度に県内を襲った台風災害からの早期復興や、不安が増す保育環境整備も進める。(表の※は新規事業) 県土強靱化 盛り土対策 28倍21億円超 台風にらみインフラ整備 安全・安心な地域づくりを進め
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80歳女性、市が災害死認定 熱海土石流、死者28人に
2021年7月3日に発生した熱海市伊豆山の大規模土石流で行方不明になり、同市内の土砂仮置き場から骨の一部が発見された太田和子さん=発生当時(80)=について、市は10日、太田さんを災害死に認定した。土石流の死者は関連死1人を含め28人になった。 太田さんの骨は今年1月18日、土石流で発生した土砂を仮置きしていた同市の熱海港芝生広場で捜索していた県警機動隊員が発見した。県警が親族からDNA型の提供を受けて鑑定した結果、太田さんの前腕の骨であると判明していた。 市は10日、医療機関から出た死体検案書を確認し、太田さんが土石流による災害死であると認定した。
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熱海土石流 最後の不明者の骨発見 捜索1年7カ月、死者28人に
静岡県警は9日、熱海市伊豆山の大規模土石流で唯一行方不明になっている太田和子さん=発生当時(80)=の捜索活動で、熱海港芝生広場の土砂仮置き場で骨片を1月に見つけ、DNA型鑑定を経て同日までに太田さんの骨と断定したと発表した。前腕部とみられる。骨の発見で太田さんは近く災害死に認定される見通しで、土石流での死者は28人になる。 県警は2021年7月3日の土石流発生から原則毎日捜索を続け、延べ2万4千人(県外部隊4200人を含む)が現場で活動した。骨片の発見は1月18日午後1時半ごろで、仮置き場にある全ての土砂の確認作業が完了するわずか2日前だった。 磐田署所属の関東管区機動隊員(23)が、
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熱海土石流 行方不明者の骨片発見
静岡県警は9日、2021年7月3日に発生した熱海市伊豆山の大規模土石流で行方不明になっていた太田和子さんの腕の骨が、今年1月18日に熱海港の土砂仮置き場で見つかったと発表した。
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熱海土石流 静岡県の技術検証結果に疑念 逢初川流域変更、議論不十分 国資料に「切り土」明記
静岡県議会特別委員会が砂防法などの県所管法令の行政対応を再検証すべきだとした一昨年の熱海土石流を巡り、県による技術面の検証結果にも疑念が生じている。静岡新聞社が入手した国土交通省の資料に、逢初(あいぞめ)川上流域の流域変更がうかがえる「切り土」の断面図などが見つかった。県による技術面の検証では、この切り土の土石流への影響についてはほとんど議論されておらず、複数の専門家は再検証するよう求めている。 国交省資料は昨年3月、逢初川の新砂防ダムを整備する際の設計資料として、委託を受けた建設コンサルタント会社が作成した。2008年と19年の地形変化を表す上流域の断面図に「切り土」と記載。この切り土に
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熱海土石流 市議会百条委 最終報告書案、おおむね合意 3月正式決定へ
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)は8日、会派代表者らによる小委員会を開き、起点の盛り土を巡る行政対応などの検証結果をまとめる最終報告書の内容を協議し、おおむね合意した。3月9日の百条委で正式決定し、15日の2月定例会最終本会議で議決する見通し。 小委員会は非公開。終了後の取材に応じた稲村千尋委員長によると、全委員から「行政に対し、もう少し厳しい意見を」との指摘があり、報告書に反映することで一致した。市議会は15日の最終本会議で議決後、斉藤栄市長に報告書を手渡す。 百条委は昨年3~8月、斉藤市長をはじめ県や市の職員、起点の現旧土地所有者ら延べ39人を参考
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逢初川の改修 関係者、安全を祈願 熱海土石流 3月から本格工事
熱海市伊豆山の大規模土石流が流れ下った逢初(あいぞめ)川の改修工事の安全祈願式が8日、現地で行われた。事業主体の県をはじめ、市や工事関係者ら約30人が神事に出席し、一日も早く地域の安全安心が確保されるよう願った。 工事は逢初川の中下流部の約650メートル区間で実施する。30年に1度の大雨に耐えられるよう川幅を広げるほか、河川の勾配を緩やかにして水流の勢いを抑える。中流部では地下水路部分を開水路にして維持管理をしやすくする。 県は今月中に地元説明会を開き、3月から本格的な工事を始める。最初に市道伊豆山神社線の地下を通る水路を拡幅するために道路の付け替え工事を行う。全体の完成は2年後を目指
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ダイビング客向けシャワー室再建 伊豆山港復興へ大きな一歩 地元漁師「笑顔集まる場所に」 熱海土石流
熱海市伊豆山の大規模土石流で全壊し、再建工事が進められていた伊豆山港のシャワー室が4日、完成した。主にダイビング客が利用する施設で、漁師らが港の復旧復興の象徴にしようとクラウドファンディング(CF)で資金を募り、再建にこぎ着けた。土石流で倒壊した施設が復活した初の事例で、漁師は「大きな一歩」と喜びをかみしめた。 2021年7月3日の土石流は、起点から約2キロ離れた伊豆山港にまで到達した。シャワー室は土砂が直撃し、壊滅的な被害を受けた。港内に堆積した土砂の撤去は行われたものの、ダイビング客を迎えられない状況が長く続いていた。 地元漁師でつくる伊豆山漁業会は昨年、「元の港に戻して笑顔が集ま
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熱海土石流百条委 最終報告原案「最善策余地 十分あった」 市の対応を批判
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)が、起点の盛り土を巡る市の対応について「最善の対応となるための手続きを行う余地は十分にあった」と批判し、法令を順守しない事業者に毅然(きぜん)と対応するよう求める最終報告書の原案をまとめたことが3日、関係者への取材で分かった。 市は2007年、起点の旧土地所有者が提出した盛り土造成の届け出書に複数の空欄があったにもかかわらず受理。11年には図面が添付されていない変更届を受理した。ずさんな盛り土造成に対し、一度は措置命令を出すことを決めたが、旧所有者側が防災工事を始めたことを理由に見送った。結局、工事が未完のまま盛り土は崩落
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熱海土石流「自宅解体、決められない」 悩み尽きない被災者 発生から1年7カ月
災害関連死を含め27人が死亡し、1人が行方不明になっている熱海市伊豆山の大規模土石流は3日、発生から1年7カ月が経過した。現場付近で犠牲者に黙とうをささげた被災者は、被害を受けた自宅の公費解体や市の生活再建支援の在り方に複雑な思いを口にした。 土石流の発生時刻とされる午前10時半ごろ、被災者や住民、近くの福祉施設の利用者らが現場に向かって黙とうした。行方不明になっている太田和子さんの自宅跡周辺では、熱海署員が太田さんの手掛かりを求めて捜索活動を行った。 市は2023年度当初予算案に、これまで公費解体の対象外になっていた半壊未満の家屋の解体費用を半額補助するほか、被災地で生活再建する人のリ
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半壊未満の家屋 熱海市が解体を半額補助 リフォーム費も支援 新年度予算案に計上へ
熱海市伊豆山の大規模土石流に関し、市は被災した家屋のうち公費解体の対象外になっている半壊未満の建物の解体費用を半額補助する方針を固めた。警戒区域内での生活再建に向けた自宅リフォームなども補助する。23年度当初予算案に関連予算を計上する。2日までの関係者への取材で分かった。 土石流で被災した135棟のうち、公費解体の対象になっている半壊以上は89棟。市によると、申請のあった63棟(2日現在)のうち21棟が既に解体済み。半壊未満の準半壊や一部損壊の計46棟は解体する場合、現状は所有者が費用負担しなければならない。 土石流発生から3日で1年7カ月。被災地は今も立ち入り禁止の警戒区域になっていて
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熱海・伊豆山 消防団詰め所解体へ 新たな拠点模索
2021年7月に発生した熱海市伊豆山の大規模土石流で被災した市消防団第四分団の詰め所の解体工事が1日、始まった。初日は足場や幕に囲まれた建物に資機材が運び込まれた。市は新たな詰め所の建設場所を同分団の意見を聞きながら検討している。 土石流が流れ下った場所に立つ詰め所は、鉄筋コンクリート造り地上3階、地下1階建て。市によると、解体工事は3月中旬までに完了する予定。解体費は約1200万円。 土石流の際、詰め所は大量の土砂をかぶり、ポンプ車が廃車になるなど甚大な被害を受けた。そんな中、団員は命がけで住民の避難誘導に当たった。外壁に残った泥の跡や割れた窓ガラスは当時のすさまじい状況を物語っていた
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熱海土石流 盛り土条例改正先送りへ 静岡県、5月以降に
土壌汚染に関する調査の負担が重すぎるとして業界団体から求められている県盛り土規制条例の改正に関し、静岡県は31日、盛り土規制法が施行される5月26日以降に先送りする方針を示した。島田市内で開かれた条例運用見直しの説明会で県担当者が明らかにした。 熱海土石流を受けて県が制定した盛り土規制条例は昨年7月に施行したが、厳しい基準を設定した土壌汚染の調査を巡って混乱が生じ、業界団体が適用除外の拡充などを求めていた。 県盛土対策課の担当者は改正先送りの理由について、同法の詳細な運用方針が示されていないことや規制区域の指定に期間がかかることを挙げて「法律と条例の整合をどう図るのかは未定だ」と説明した
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熱海土石流 県所管法令運用「総合的に検証を」 熱海市長
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する県議会特別委員会が、県所管法令の運用について再検証すべきだとする報告書をまとめたことについて、同市の斉藤栄市長は27日の定例記者会見で「(県が設置した行政対応検証委員会の検証は)県土採取等規制条例に重きが置かれていた。他の法令も重要であり、総合的な検証が必要」と特別委と同様の認識を示した。 斉藤市長は昨年5月、行政対応検証委の最終報告の内容について「全体的にバランスを欠いていて納得しかねる」と主張。同11月公表した土石流に関する行政対応の総括でも、市に権限のある県土採取等規制条例だけでは再発防止が果たせないと指摘し、県所管の森林法、砂防法、廃棄物処理法など
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熱海土石流 県所管法令の検証不十分 砂防法「下流域の安全考慮を」 静岡県議会特別委が報告書
熱海市伊豆山で2021年7月に発生した大規模土石流に関する県議会特別委員会は26日、最終会合を開き、県が設置した行政対応検証委員会(第三者委員会)による県所管法令の検証が不十分だったとして再発防止のため再検証すべきだとする報告書をまとめた。第三者委で論点外とされた砂防法に関しては、規制による下流域の住民の安全を考慮した場合、土地所有者の私権を優先して上流域の規制を見送った県の判断が妥当だったのか、再検証するよう提言した。 報告書は第三者委の検証について「複数の法令に土石流災害防止の論点が存在するにもかかわらず(市に権限のある)県土採取等規制条例の運用に観点を絞った」と指摘。検証が不十分な県
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熱海土石流 第三者委の検証体制を問題視 委員への資料提供「不十分」 県議会特別委報告書
熱海土石流に関する県議会特別委員会が26日にまとめた報告書は、県が設置した行政対応検証委員会(第三者委員会)の検証体制を問題視した。第三者委の事務局から委員への資料提供が不十分だった点などを指摘し、「十分な検証が行われる環境が整っていたのか」と疑問視した。 第三者委は県職員OBで構成する事務局が委員に資料を提供し、その資料に基づいて2021年12月から22年5月まで検証が行われていた。ところが、県議会に参考人として招いた委員への聴取で、事務局からの提供資料が一部の法令や一定の期間に限定されていたことが判明した。 県議会特別委の報告書は、県所管法令が十分に検証されなかった背景として、こうし
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熱海土石流 土砂撤去後の伊豆山港で不明者捜索 静岡県警
静岡県警は26日、熱海市伊豆山の大規模土石流で行方不明になっている太田和子さんの捜索活動を同市の伊豆山港で実施した。県が12日に土砂の撤去作業を行った船揚げ場付近の約800平方メートルを機動隊水難救助部隊が潜水して捜索したが、この日は太田さんの手掛かりは見つからなかった。 冷たい風が吹き付ける中、隊員ら13人が声を掛け合いながら捜索に当たった。県警はこれまでも港内を入念に捜索してきたが、12日に行われた土砂の撤去作業を受け、改めて港内を隅々まで調べた。 12日の撤去作業では約200立方メートルの土砂が取り除かれた。県警は後日、この土砂をふるいにかけて再度、太田さんの手掛かりがないかどうか
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不安定土砂の搬出、5月完了めど 静岡県が撤去用道路の整備着手 熱海土石流
静岡県は23日、熱海市伊豆山の大規模土石流の起点付近で不安定土砂を撤去する行政代執行に必要な工事用道路の整備に着手した。冷たい雨が降る中、作業員が重機を搬入し本格的な工事に向けて準備した。県は5月ごろまでに不安定土砂の撤去完了を目指している。 工事用道路は、起点の崩落部分の上部を横断する延長約130メートルと、隣接する宅地エリアから谷底に進入する約240メートルの道の2ルートを造る。谷底に土砂流出を防ぐための土留めを設置する。道路整備に伴う現場外への土砂搬出は行わない。 23日は崩落部分上部の道の整備に着手した。午前8時半ごろからショベルカーなどの重機が現場に入り、工事用道路の入り口付近
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熱海土石流 盛り土造成前の砂防ダムに泥水 専門家は「表面浸食」指摘 砂防法基準に該当
2021年7月の大規模土石流の発生前から、熱海市の逢初(あいぞめ)川の砂防ダムに上流域の流出土砂がたまっていたとされる問題で、盛り土が造成される前の07年4月、砂防ダムに土砂交じりの泥水が流れる様子を撮影した写真が市の公文書に掲載されていたことが20日までに分かった。専門家はこの写真から、上流域で自然堆積土砂が崩れる「表面浸食」が起きていたと推定。砂防法適用の基準に該当していて、県が適切に適用していれば盛り土の造成そのものを防げていたとみられる。 市の公文書には、同年4月25日付の砂防ダム直下で撮影した5枚の写真が掲載され、濃い茶色の泥水や土砂が写っていた。泥水が流れた河口付近の写真もあっ
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森林法規制「県に一本化を」 熱海市長、農水省に改正要望 熱海土石流
熱海市の斉藤栄市長は17日、農林水産省に勝俣孝明副大臣(衆院静岡6区)を訪ね、同市伊豆山で発生した土石流災害の再発防止策の一環として森林法の改正を要望した。開発面積に応じた手続きの権限について、都道府県に一本化するよう提案した。 現在は開発面積が1ヘクタール以下で市町村の伐採届、1ヘクタール超ではより厳しい県の許可が必要となる。斉藤市長は許可規制を逃れようと、面積を小分けにして届け出る業者がいると指摘し「悪質・脱法的な開発行為が行えないような制度設計にするべきだ」と訴えた。 勝俣氏は規制区域内の造成を許可制とする5月施行の盛り土規制法が問題解決策になるとの農水省の立場を示し「まずは法施行
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他法令代用の静岡県主張否定、下流被害の責任問えず 熱海土石流・砂防法規制放置問題/北村喜宣上智大教授(行政法学)
熱海市の逢初(あいぞめ)川で2021年7月に起きた土石流の砂防法規制放置問題を巡り、不法盛り土対策の国土交通省作業部会委員を務める北村喜宣上智大教授(行政法学)が15日までにインタビューに応じた。下流域への土石流を防ぐ砂防法の代わりに県土採取等規制条例(手続きの権限は市)や森林法で上流域の開発に対応できたとする県の主張を否定し「法令ごとに目的は異なる。(県条例や森林法は)制度上、下流域の土石流防止まで具体的に想定していない」とする見解を示した。 土石流は最上流部の盛り土崩落が原因とされるが、大量の土砂は急勾配の逢初川を約2キロ流れ下り、途中の砂防ダムで止まらずに下流域の集落を襲った。 北
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砂防ダムに土砂「同様事例、チェックへ」 再発防止に向け川勝知事
熱海市の逢初(あいぞめ)川で2021年7月に発生した大規模な土石流を巡り、砂防ダムに上流域から流出した土砂が土石流の起きる前からたまっていたとされる問題を受けて、川勝平太知事は11日の定例記者会見で、県内の他の場所で同様の事例がないかチェックする方針を明らかにした。 再発防止に向けた取り組みに関し「他の所で似たようなことがあるかは当然、チェックポイントになるだろう。(本紙報道で)さまざまな論点が提起されているので、謙虚に学んで政策に生かしていきたい」と述べた。 県の公文書によると、土石流の起点になった盛り土が造成されていた09年11月、県熱海土木事務所が河口に泥水が流出したことを受けて開
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伊豆山の豊かな海「取り戻す」 地元漁師と水技研 海藻「カジメ」増殖プロジェクト再始動
熱海市伊豆山の漁師でつくる伊豆山漁業会と静岡県水産・海洋技術研究所は10日、特産のアワビやサザエの餌となる海藻「カジメ」を増やす取り組みを伊豆山港で始めた。一昨年の土石流災害で大量の土砂が流入し、海藻がほぼ全滅した同港。しかし昨年からカジメが芽生え始め、復活の兆しを見せている。漁師は「豊かな漁場を取り戻し、支援してくれた人たちに恩返ししたい」と話している。 伊豆山近海では数年前から広範囲で海藻がなくなる「磯焼け」が深刻化していた。そこに土石流が追い打ちをかけ、漁業に打撃を与えた。同会は昨年6月、カジメの幼体が付いた石を沈めて藻場造成を試みたが、思うように生育しなかった。一方で、港内の消波ブ
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熱海土石流 「復興麺」で被災地の姿発信 創業80年のコマツ屋製麺、工場再建しふるさと納税返礼品に出品
熱海市伊豆山の大規模土石流で被災した創業80年以上の老舗「コマツ屋製麺」が、再建した工場で製造した商品を同市のふるさと納税の返礼品として出品している。発災からまもなく1年半。中島秀人社長(54)は「諦めずに頑張る被災地の姿を発信し、災害の風化を防ぎたい」と話し、地域再生に協力を呼びかけている。 昨年7月3日、中島さんの自宅兼工場は大量の土砂が流れ込み、機械類や冷蔵庫が損壊した。建物は立ち入り禁止の警戒区域内にあり、事業再開のめどが立たない。それでも中島さんは「絶対に工場を畳みたくない」との思いで工場再建を決意。クラウドファンディングで募った資金を活用して同市上多賀に新工場を設け、今年7月に
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熱海市側、初弁論欠席 遺族批判に市長釈明「弁護士の助言受け」 熱海土石流損賠訴訟
熱海市伊豆山の大規模土石流の遺族らが県と熱海市に計約64億円の損害賠償を求めた訴訟で、市側が第1回口頭弁論に欠席したことについて、斉藤栄市長は23日の定例記者会見で「出席したかったが、弁護士の助言を受けてやむを得ず欠席の判断をした」と述べた。市の対応に遺族から批判が出ていて、今後の復旧復興事業に影響を与えかねないとの声も上がっている。 第1回口頭弁論は今月14日、静岡地裁沼津支部であり遺族が意見陳述を行った。県側は代理人が出廷していたが、市側は弁護士と市職員計13人の代理人全員が欠席した。 斉藤市長は会見で「原告と裁判所が決めた弁論期日に顧問弁護士の予定が合わなかった」と釈明。指定代理人
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熱海土石流 逢初川、拡幅や勾配緩和 静岡県が河川整備計画策定
静岡県は21日までに、熱海市伊豆山で大規模土石流が発生した逢初(あいぞめ)川について、おおむね20年間の整備方針を盛り込んだ河川整備計画を策定した。30年に一度の豪雨が発生した際に被害を防げるよう、河川を拡幅したり勾配を緩やかにしたりして安全性確保につなげる。 2級河川の逢初川は急勾配で普段から流れが速い。計画は、市道伊豆山神社線付近から国道135号までの中流部で流下能力が低いとし、河川断面を確保して流下能力を増やす必要性を指摘した。川底を深くするほか、段差を設けて勾配を緩やかにする。用地取得終了後に工事を実施する。 一方、気候変動の影響で甚大な浸水被害が相次いでいる状況を踏まえ、防災情
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熱海土石流/損賠訴訟併合審理へ 責任追及、当事者そろう【追跡2022③】
14日、静岡地裁沼津支部の法廷。「住民の生命財産を守る責務を全うするために、行政はやるべきことをやってきたのか。到底そうは思えない」。熱海市伊豆山の大規模土石流の遺族、被災者でつくる「被害者の会」の瀬下雄史会長(55)の怒りを帯びた低い声が響いた。 未曽有の「人災」の責任追及を巡り、遺族らが県と熱海市に計約64億円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論。被告席で瀬下会長の意見陳述に耳を傾けたのは県の代理人のみで、熱海市の代理人の姿はなかった。 事前に答弁書を提出した市が初弁論を欠席することは法的に認められている。ただ、遺族からは「不誠実だ」「私たちと向き合う気がないのか」と怒りや嘆きの声
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熱海土石流 静岡県対応、再検証必要 県議会特別委、提言に反映へ
熱海市伊豆山で昨年7月に起きた大規模土石流に関する静岡県議会特別委員会が20日、県庁で開かれ、砂防法や森林法、廃棄物処理法など県の行政手続きに関して再検証の必要があるとの見解で一致し、今後まとめる提言に盛り込むことになった。 県と市の行政手続きをチェックした県行政対応検証委員会を巡っては、事務局が委員に提供する情報を限定したり、報告書の調整段階で議事録を作らなかったりしたことなどを問題視し、検証が不十分だとする指摘が上がった。委員ではなく事務局に問題があったという意見も出された。 報告書の一部に当たる県土採取等規制条例の対応に関する部分を「妥当」とする県議もいたが、不十分な検証の報告書を
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流れ下る土砂、上流域で増加 砂防ダム1基分と推定 堆積土砂の撤去記録、県に残らず廃棄か 熱海土石流・崩落盛り土
昨年7月に土石流が発生した熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川流域の地形データ分析資料で、源頭部の崩落した盛り土(残土処分場)から流れ下った土砂が上流域の途中で約4千立方メートル(砂防ダム1基分)増加したと推定されることが19日までに分かった。上流域に堆積した流出土砂の撤去記録が静岡県に残っていないことも判明。県は「記録文書を廃棄した可能性がある」と説明している。 地形データ分析は、土石流発生前の2019年12月と発生3日後の標高差から土砂量を計算した。測量会社が実施し、盛り土崩落の発生原因を調べる県の検証委員会の資料に掲載されていた。 分析によると、源頭部の崩落土砂は約5万8千立方メートル
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伊豆山の被災現場 自民議員が視察 熱海
自民党熱海市支部の市議や藤曲敬宏県議(同市)が19日、同市伊豆山の大規模土石流の被災現場などを視察した。必要に応じた県や市への予算要求を念頭に、現地での対応の進捗(しんちょく)状況を確かめた。 甚大な被害を受けた岸谷地区では、市まちづくり課や県熱海土木事務所の担当者がパネルで説明した。参加した議員はまちづくりに向けた方向性や逢初(あいぞめ)川の復旧計画などを聞き、質疑・応答を行った。 視察はほかに、源頭部や土砂の埋め立てを行っている長浜海浜公園に隣接する海岸などを回った。
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熱海土石流 砂防指定地申請で国が見解 「県が対象地の情報把握」
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点付近を開発が規制できる砂防指定地として県が過去に指定してこなかった問題で、政府は16日、砂防指定地に関しては都道府県が「指定すべきと考えられる区域」の情報を把握した上で国に指定申請しているとする見解を示した。神谷宗幣参院議員の質問主意書に対する答弁書で明らかにした。 土石流が発生した逢初(あいぞめ)川では1998年に上流全体の砂防指定地の指定を求めた国に対し、県が「今後、流域の状況を勘案し、指定を進めたい」と回答。しかし、その後も県の砂防担当者は周辺の開発情報を把握していなかった。 政府は今回の答弁書で、「指定に際し勘案すべき土地」では、地形や地質、他法令
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熱海土石流 損賠2訴訟併合審理へ 遺族ら真相究明期待「全ての被告そろった」
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、遺族ら111人と3法人が県と熱海市に計約64億円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が14日、静岡地裁沼津支部であり、古閑美津恵裁判長は、遺族らが土石流の起点の現旧土地所有者らを相手取り起こした損害賠償請求訴訟と併合審理すると決めた。原告側の代理人弁護士は全ての被告がそろうことで「真相究明に近づいた」と期待感を示した。 県、熱海市を被告とした訴訟と現旧所有者らに対し計約58億円の損害賠償を求めた訴訟が併合され、来年1月11日には非公開の弁論準備手続きが行われる。「被害者の会」会長の瀬下雄史さん(54)は「今まで責任のたらい回しが現旧所有者、県、市の間で行
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熱海土石流 遺族「行政 責務全うせず」 県と市、争う姿勢 静岡地裁沼津支部 損賠訴訟初弁論
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、起点となった土地で違法な盛り土造成を黙認したなどとして、遺族と被災者が静岡県と熱海市に計約64億円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が14日、静岡地裁沼津支部(古閑美津恵裁判長)であり、県と市は請求棄却を求めて争う姿勢を示した。 原告の「被害者の会」会長で、母陽子さん=当時(77)=を亡くした瀬下雄史さん(54)は意見陳述で、不正に盛り土を造成し、長年放置した現旧土地所有者の悪質性を指摘し、「管理責任者として不適切な対応を続けた行政も許せない」と強調。被害の結果責任に触れない姿勢に怒りをにじませ「住民の生命財産を守る責務を全うする努力をしたのか。到底そう
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熱海土石流 静岡県の行政対応検証委「独立性なし」 出石委員、県議会で見解 「県の中に事務局」問題視
熱海市伊豆山の大規模土石流災害に関する静岡県議会特別委員会が13日開かれ、県行政対応検証委員会の委員を務めた出石稔関東学院大教授(行政法)が参考人として出席した。出石氏は、県と市の行政対応に関する報告書をまとめた検証委について「(県から)独立していなかった」との見解を示した。報告書の内容は「適正だった」としながらも、県が所管する法令などの追加検証を提案した。 検証委に関して「県の中に事務局が置かれ、知事から要請されて議論されていること自体、独立と言えるのか」と独立性を否定。県主導だったのかという質問には「われわれに分からない。(県職員OBで構成する)事務局主導とは言える」と答えた。 盛り
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逢初川の砂防ダム 2009年時点で機能不全か 盛り土造成時協議、職員「土砂で埋まっている」 熱海土石流
熱海市伊豆山で昨年7月に発生した大規模土石流を巡り、静岡県熱海土木事務所の職員が2009年11月の盛り土造成時の協議で、逢初(あいぞめ)川の砂防ダムに関し「(土砂で)かなり埋まっている」と発言した記載が県の公文書に残されていることが12日までに分かった。少なくとも当時、下流域の人家を土砂から守る砂防ダムが機能不全に陥っていた疑いが浮上した。 職員が発言した09年11月4日の協議は、同年10月に河口の伊豆山港に泥水が流出したことを受けて関係する行政機関で対策を検討した。当時、上流域に大量の残土が搬入され始めていた。熱海土木の各担当者のほか、森林法を所管する県東部農林事務所や県土採取等規制条例
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熱海土石流「これからも発信続ける」 横浜で新聞協会賞受賞講演
2022年度新聞協会賞の受賞記者講演会が10日、横浜市のニュースパーク(日本新聞博物館)で開かれた。熱海土石流を巡るキャンペーン連載「残土の闇 警告・伊豆山」と一連の関連報道で受賞した静岡新聞社取材班代表の豊竹喬熱海支局長が登壇し「これからも伊豆山の復興や被害の責任追及の動きを追いかけ、発信を続けていきたい」と述べた。 豊竹支局長はまず、地図や写真、動画を使って昨年7月3日の土石流発生当日の様子を振り返った。全8章36回の連載では被害者遺族の心情から始まり、伊豆山の歴史や現旧土地所有者の実像と不適切な盛り土が造成された経緯、行政の不作為、残土ビジネスの実態などを浮かび上がらせたことを説明。
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熱海土石流 起点上部の盛り土 市「県に撤去要望」
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点付近に残っている盛り土を巡り、同市の窪田純一観光建設部理事は9日、県が行政代執行で撤去する不安定土砂の上部にある盛り土について「県に撤去の要望を行っていきたい」と述べた。市議会11月定例会で米山秀夫氏の一般質問に答えた。 県の行政代執行では、起点付近の不安定土砂約2万立方メートルを来年5月ごろまでに撤去する予定。現在は工事用道路の整備に向けた伐採作業を行っている。 一方、不安定土砂の上部には廃棄物が埋められている約1万立方メートルの盛り土がある。県は「安定している」として、今回の行政代執行の対象外としている。ただ、一部住民から崩落を心配する声が上がっている
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修繕費用補助を検討 警戒区域内の住宅支援 熱海市長、議会答弁
熱海市伊豆山の大規模土石流の被災者支援に関し、斉藤栄市長は8日の市議会11月定例会で、警戒区域内の自宅を修繕して生活再建を希望している被災者に対し「引っ越し費用に上乗せして、何らかの支援ができないか検討している」と述べた。高橋幸雄氏(熱海成風会)への答弁。 市は来年8月ごろに警戒区域の解除を目指している。市はこれまで、避難生活を送っている被災者が恒久的な住居で生活再建ができるようになるまでみなし仮設住宅などの家賃補助を継続し、引っ越し費用も支援する方針を示していた。 立ち入りが原則禁止の警戒区域内には、一部損壊の家や直接被害を受けていない住宅が残っている。ただ、発災から1年5カ月の間に壁
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損害賠償請求訴訟 市と県、争う姿勢 違法盛り土「黙認」法的責任を否定 熱海土石流
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、起点となった土地で違法な盛り土造成を黙認したなどとして、遺族らが同市と県に計約64億円の損害賠償を求めた訴訟で、市と県が請求棄却を求める答弁書を静岡地裁沼津支部に提出したことが7日、原告への取材で分かった。一連の行政対応について、市と県は違法な権限不行使には当たらないと主張している。 遺族らは、市が前土地所有者の不動産管理会社(神奈川県小田原市)の届け出書に不備があったにもかかわらず受理したことや、市が県条例に基づく措置命令を見送った際に、県が市に行政対応の是正を求めなかったのは違法と訴えている。 市は答弁書で、再三にわたり同社に行政指導を行ったが、県条
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生活再建へ支援訴え 土石流発生から1年5カ月 熱海・伊豆山
災害関連死を含め27人が死亡した熱海市伊豆山の大規模土石流は3日、発生から1年5カ月が経過した。被災現場付近で犠牲者に黙とうをささげた被災者からは、生活再建に向けた行政の支援の必要性を訴える声が聞かれた。 立ち入りが原則禁止の警戒区域には、公費解体の対象にならない半壊未満の住宅が数多く残っている。長い月日の間に家の傷みが進んでいるため、避難先からの帰還を諦めている住民も少なくない。 市は土石流の起点付近に残る不安定土砂の撤去と新たな砂防ダムの完成を前提に、来夏に警戒区域を解除する方針だ。ただ、それまでの間、半壊未満の住宅を維持管理するための補助制度はない。 全壊した自宅の公費解体が終わ
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熱海土石流 半壊以下住居「支援薄い」 被災者、公費負担制度訴え 静岡県議会特別委
熱海市伊豆山で2021年7月に発生した大規模土石流に関する県議会の特別委員会が2日開かれ、被災者でつくる「警戒区域未来の会」の中島秀人代表が参考人として出席した。中島代表は半壊以下の住居に対する公的支援が手薄だとし、住居解体やリフォーム、壊れた電化製品購入などの費用を公費負担する制度の必要性を訴えた。 盛り土(積み上げた残土)の崩落が被害を招いた土石流について「天災ではない人災に対する強い憤りが被災者の共通した感情になっている」と説明。人災が前提になっている中で「自分のお金を使って壊れた住居を整備し、避難先から戻ろうと思わない」と災害の特殊性に触れ、全壊以外の住居に対する支援を要請した。
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熱海土石流行政検証 関係職員への県聴取 検証委に詳細提出せず 抜粋「概要」のみ
熱海市伊豆山の土石流災害の行政対応検証を巡り、静岡県が検証委員会に対し、危険の予見性などを記した関係職員への詳細なヒアリング資料を提出していなかったことが1日までの県への取材で分かった。県の判断で聴取内容を部分的に抜粋した「概要」に基づき、検証委は行政手続きを検証していた。 ヒアリングは委員ではなく県が昨年11月、退職者を含む関係職員39人を対象に実施。詳細なヒアリング資料も県が作成し、聴取内容を箇条書きにして「危険の予見」「業者の態度」「上司等への報告」にまとめ、職員の当時の役職名とともに記載した。検証委の検証作業が終わった後の今年5月に県が公表している。 ただ、県が検証委に提出したヒ
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公文書原本中心に押収 熱海土石流 市と県への家宅捜索
熱海市伊豆山で2021年7月に起きた大規模土石流で、静岡県警が17日に実施した熱海市役所と県庁への家宅捜索は、遺族らが市と県を相手取った民事訴訟の進展などを見据え、公文書の原本の押収作業を中心に行われていたことが30日、関係者への取材で分かった。同市は、土石流への行政対応に関する総括を16日に公表していた。 家宅捜索は容疑者不詳のまま業務上過失致死の疑いで実施した。県警本部と熱海署から捜査員各40人が市役所と県庁を訪れ、担当職員ら立ち会いの下、必要な資料を差し押さえた。捜索した部署は計20カ所に及んだという。 市と県を相手取った損害賠償請求訴訟は、12月14日に静岡地裁沼津支部で初弁論が
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伊豆山復興に即戦力を 任期付き土木職員 熱海市、12月から募集
大規模土石流に見舞われた熱海市伊豆山の復旧復興事業が本格化するのを前に、市は12月1日から任期付きの土木技術職員を募集する。民間や自治体で土木事業の経験がある即戦力を求め、早ければ来年1月にも採用する。 土木工事の設計、施工管理、構造物の維持管理に関する業務に5年以上従事し、コンピューター利用設計システム(CAD)を使って設計ができる人が対象。任用期間は原則3年、最大5年。採用予定人数は若干名。 同市の土木技術職員は現在21人。過去2年間は採用ゼロで人材不足に陥っている。伊豆山の復旧復興に向けて県や他市から4人の応援職員が派遣されているが、用地交渉などを含めた業務を進める上で態勢が不十分
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残土問題「関心を」 熱海土石流災害、再発防止へ課題探る 静岡で静岡新聞記者講演・座談会
静岡新聞社・静岡放送は26日、熱海市伊豆山で2021年7月に発生した大規模土石流を考える特別企画「記者が語る熱海土石流」の第3回講演を静岡市駿河区登呂の静岡新聞放送会館で開いた。本年度日本新聞協会賞を受賞した本紙連載「残土の闇 警告・伊豆山」の取材に携わった4記者が講演や座談会を通じ、再発防止への課題を探った。 豊竹喬熱海支局長は発災直後の伊豆山や行方不明者の捜索活動の様子を動画と写真を交えて紹介。土石流から1年以上経過する中で、生活再建に向かう人がいる一方、立ち直れずに苦しんでいる人もいるとし「住民の声に耳を傾け、伊豆山が再生する姿を追い続けたい」と述べた。 連載のデスクを務めた鈴木誠
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熱海土石流 盛り土造成会社に措置命令見送り 「市の法的責任」指摘 県検証委の出石氏/関東学院大法学部長
熱海市伊豆山の大規模土石流で、盛り土を造成した神奈川県小田原市の不動産管理会社「新幹線ビルディング」(天野二三男代表取締役)に対して安全対策を講じる措置命令の見送りに関し、市が「法的責任はない」と総括したことについて、県行政対応検証委員会の委員も務めた行政手続きの専門家が25日、静岡新聞社の取材に応じ、市は法令に基づく必要な手続きを踏んでいないとして「法的責任がある」との見解を示した。同市と県は、遺族らから損害賠償を求める訴訟を起こされていて、命令見送りの経緯は重要な論点の一つ。 総括批判、基準未作成など問題視 県検証委委員で関東学院大法学部長の出石稔教授(行政法)が見解を述べた。市
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熱海土石流災害振り返る 盛り土、避難生活「問題今も」 浜松で静岡新聞記者講演・座談会
静岡新聞社・静岡放送は23日、熱海市伊豆山で2021年7月に発生した土石流災害を振り返る特別企画「記者が語る熱海土石流」の第2回講演を浜松市中区のプレスタワーで開いた。取材を担当した記者による講演や座談会、パネル展示を通じて教訓を探った。 講演は豊竹喬熱海支局長が行った。土石流の発生直後に撮影した土砂が商店街の道路に流れ込んでくる様子の動画や、捜索活動の写真を示しながら、被害の規模を説明した。 現在も避難生活を送っている世帯があることや、盛り土の責任を巡って裁判を控えていることを紹介し、「まだ問題が山積み。今後も熱海市の動きや住民の声を伝え続けることで、教訓を探っていく」と強調した。
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島田 大雨のたびに前兆 「危険の芽」小さいうちに【絶えぬ残土崩落 熱海の教訓から㊦】
記録的豪雨により、静岡県内の中山間地で土砂崩れが相次いだ9月の台風15号。大井川中流の島田市福用でも、川沿いを通る国道473号と大井川鉄道の線路が土砂に埋まった。ただ、通常の土砂崩れとは状況が異なる。土砂の発生源をたどると、面積約17ヘクタール(東京ドーム3・6個分)の巨大な採石場跡地が広がっている。崩れ落ちたのは、採石用に切り崩した山腹にうずたかく積まれ、長年放置されていた残土の山だった。 「2年くらい前から大雨のたびに泥水や石が流れ出してきた。放っておくと危ないと思っていた」。近くに住む男性(74)は通行止めが続く国道に目を向けて当時を振り返った。今回の大崩落に至るまでに“
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函南 見えない盛り土「だまされていた」 官民監視へ早期公表を【絶えぬ残土崩落 熱海の教訓から㊥】
「盛り土はあの森の向こうにある。下からは見えないね」―。函南町の丹那盆地西側にある小高い山。丹那区の溝田正吾区長(60)が指をさした先には、地元で「危険な盛り土」と呼ばれる残土が急斜面に積まれている。雑木林に囲まれ、麓にある集落からはうかがい知れない。 住民が異変を感じ始めたのは昨年の春ごろだった。同区によると、業者は地元向け説明会を開き、2019年の台風で崩れた斜面を復旧すると伝えた。以後、朝から夕方まで作業音が集落に響いていたが、住民はその作業は災害復旧工事と信じていた。 ところが、集落と反対側にある搬入口には1日数十台のダンプカーが行き交っていた。「何かおかしい」。森林に囲まれた現
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熱海土石流 課題や教訓を議論 沼津で静岡新聞記者座談会
静岡新聞社・静岡放送は19日、熱海市伊豆山で2021年7月3日に発生した土石流災害から学ぶべき教訓を探る特別企画「記者が語る熱海土石流」を沼津市のサンフロントで開いた。本年度の日本新聞協会賞を受賞した本紙の連載「残土の闇 警告・伊豆山」など、土石流災害の取材に携わった記者による講演や座談会で議論を深めた。 豊竹喬熱海支局長は講演で、発生の一報を聞き、現地に駆け付けた際に撮影した土砂が道を流れる緊迫した動画を上映した。警戒区域内では、今も家屋に直接被害がない世帯も避難を余儀なくされている現状も紹介した。「取材に応じてくれた方からは切実な思いを感じた。そういった声を大切にしたい」と今後も被災者
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盛り土撤去命令 取り消し訴訟 静岡県、請求棄却求める
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点で不安定な状態で残っている盛り土を巡り、今年7月施行の県盛り土規制条例に基づき、県から土砂撤去の措置命令を受けた不動産管理会社「新幹線ビルディング」(神奈川県小田原市)が命令の取り消しを求めた訴訟の第1回口頭弁論が18日、静岡地裁(増田吉則裁判長)であった。県は請求棄却を求めて全面的に争う姿勢を示した。 同社は2006年から11年まで起点を含む土地を所有し、07年に当時の県条例に基づき盛り土造成を熱海市に届け出た。土石流では約5万5千立方メートルの土砂が流出したとされ、約2万立方メートルの土砂が不安定な状態で起点に残っている。 訴状で同社は、この土砂を搬入
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ダム9倍の土砂搬入計画 静岡県はなぜ砂防法適用を見送ったか… 担当部署、積極関与せずか 熱海土石流
熱海市で昨年7月に発生した土石流で砂防法の規制区域「砂防指定地」が長年放置されていた問題。静岡県はなぜ、下流域の人家を守る目的のある砂防法の適用を見送り、規制力の弱い別の法令によって残土処分場を造成する開発業者に対応したのか。砂防法以外の法令で対応できたと主張する県だが、砂防ダムの容量を大幅に上回る残土が上流の急傾斜地に積み上げられる計画があったにもかかわらず、当時の砂防関連部署が積極的に関与していなかった可能性が浮き彫りになっている。 逢初(あいぞめ)川上流域を神奈川県小田原市の不動産管理会社が開発目的で取得したのは2006年9月。崩落した盛り土(残土処分場)が造成される前から上流域は土
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遺族「素直に認めて」 熱海市土石流総括 責任否定の姿勢に憤り
「やるべきことをやっていなかったと素直に認めるべきだ」。熱海市伊豆山の大規模土石流への対応に関する市の総括が公表された16日、遺族や被災者からは、法的責任を否定した市の姿勢に憤りの声が相次いだ。遺族らが市と県を相手取って損害賠償請求訴訟を起こしているだけに、「裁判対策の言い訳に過ぎない」と厳しい声も聞かれた。 遺族、被災者でつくる「被害者の会」の会長で、母親の陽子さん=当時(77)=を亡くした瀬下雄史さん(54)は、「盛り土造成時や発生当時の判断に問題は無かったというが、結果責任を論じていないのはおかしい。判断ミスがあったから被害が出たのではないのか」と訴えた。 斉藤栄市長は当初、市議
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土石流発生時に避難指示なし 熱海市長「法的責任ない」 市が行政対応総括
熱海市は16日、同市伊豆山の大規模土石流について市の行政対応の総括を公表した。土石流発生時、市が避難指示を出していなかったことについて「法的責任はない」との見解を改めて示した。崩落した盛り土を造成した神奈川県小田原市の不動産管理会社「新幹線ビルディング」への措置命令を見送った対応についても同様の見方を示した。 斉藤栄市長が記者会見し、それぞれの対応について「裁量権を逸脱した行政権限の不行使には当たらない」と述べた。避難指示を出さなかった対応を妥当と結論付けた理由について、発災当日は既に高齢者等避難を発令していたことや、天気が回復する予報だったことなどを挙げた。措置命令の見送りに関しても、同
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熱海土石流、静岡県は争う方針 盛り土措置命令取り消し訴訟
静岡県熱海市で昨年7月に発生した大規模土石流の起点に残った盛り土に関し、2011年まで起点の土地を所有し、今年7月施行の県条例に基づき措置命令を受けた不動産管理会社「新幹線ビルディング」(神奈川県小田原市)が静岡県に命令の取り消しを求めた訴訟で、県が請求棄却を求め争う方針であることが14日、県関係者への取材で分かった。 新幹線ビルディングは、起点に残った約2万立方メートルの盛り土は、11年に土地を取得した現所有者が搬入したものだと主張している。 訴訟の第1回口頭弁論は18日に静岡地裁で開かれる。
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熱海土石流題材 静岡放送がグランプリ受賞 「地方の時代」映像祭
全国各地の優れたドキュメンタリー作品を表彰する第42回「地方の時代」映像祭の贈賞式が12日、大阪府吹田市の関西大で開かれ、応募273作品の中からグランプリ(最優秀賞)に静岡放送の「SBSスペシャル 熱海土石流-なぜ盛り土崩落は防げなかったのか」が選ばれた。 2021年7月に熱海市伊豆山で発生した大規模土石流を題材に、違法に造成された盛り土の崩落が甚大な被害を招いた経緯に迫った。同社のグランプリ獲得は09年、13年に続き3回目。 高校生・中学生部門では、静岡大成高の「富士山噴火に係(かか)わる火山防災は今」が優秀賞を受けた。同大で18日まで、入賞作品などの上映会が開かれる。
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起点周辺の盛り土、開発行為 専門家「行政や所有者 早急な対策を」 熱海土石流
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点となった盛り土と周辺の開発行為の問題点について学ぶ勉強会が11日夜、現地の集会場で開かれた。土石流の原因究明を続ける土木設計エンジニアで、市議会調査特別委員会(百条委員会)に参考人として出席した清水浩さん(54)が現場の状況を解説し、行政や土地所有者が適切な対策を早急に講じる必要があると指摘した。 県は行政代執行で起点付近の不安定な土砂約2万立方メートルを撤去する一方、周辺の約1万立方メートルの盛り土は「安定している」として撤去しない方針を示す。ただ、清水さんは「試掘するなどして本当に安全だという根拠を示すべきだ」などと、県の姿勢を疑問視した。 崩落部北側
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熱海土石流被災 「午の湯」復活へ掘削進む 年度末の完了目指す
熱海市の伊豆山温泉組合は10日、日本三大古泉に数えられる「走り湯」の源泉のうち、昨年7月の大規模土石流で被災した「午(うま)の湯」の復活に向けて進めている掘削工事の現場を視察した。組合員は伊豆山のシンボルである走り湯の早期復旧を願った。 走り湯には2本の源泉がある。このうち横穴式源泉の「戌(いぬ)の湯」は被災を免れたが、伊豆山港近くの午の湯は機械設備も含めて全て土砂に埋まった。現在は戌の湯のみを利用施設に供給しているが、湯量が足りないため観光スポットの足湯は休止したままだ。 午の湯の復活に向けた掘削作業は10月中旬に開始。被災前の源泉から約1・2メートル離れた場所を600メートル掘る計
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砂防法の検証不足認める 委員長「適用で防げた」 熱海土石流
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、静岡県と熱海市の行政手続きを検証した「県行政対応検証委員会」の委員長を務めた青島伸雄弁護士が11日、県議会特別委員会に出席し、下流域の人家を土砂災害から守る目的がある砂防法の適用を県が見送っていたことに関し「(検証の)論点外だった。ちゃんと適用すれば事件(土石流災害)は起きるはずがない」と述べた。検証委は報告書で砂防法に関する県の対応を「妥当」としていたが、青島氏は検証不足を事実上認めた。 県議会特別委は検証委員や別の専門家に対する質疑を踏まえ、砂防法を含む関係法令の対応について再検証する方針で一致した。既存の検証委とは別の検証方法を検討する。 青島氏は
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熱海土石流 行政対応検証、独立性に疑問 議事録取らぬ会合/県任せのヒアリング…事務局主導の運営浮き彫り
残土の山が崩落して未曽有の「人災」となった熱海市伊豆山の大規模土石流に関する行政手続きの検証に独立性はあったのか。11日の県議会特別委員会では、関係した県職員へのヒアリングを県に任せたり、議事録を作成しない会合を開いたりした県行政対応検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)に厳しい目が向けられた。質疑を通し、検証委が県職員OBで構成された事務局主導で運営されていたことが浮き彫りになった。 県議側がまず問題視したのは検証期間の短さだった。検証委は昨年12月に初会合を開いたが、県は今年3月に検証結果をまとめるよう委員に求めた。「(検証期間が)短かった。県から言われたのでやらざるを得ない」と参考人と
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熱海土石流の支援活動紹介 浜松市中区で講座
昨年7月に熱海市伊豆山で発生した大規模土石流に関する学習講座「熱海市土石流災害の支援活動にみる市民の力」(静岡新聞社・静岡放送後援)がこのほど、浜松市中区の市防災学習センターで開かれた。 静岡市の「災害対応NPO MFP」の松山文紀代表が講師を務め、聴講した約20人に当時の支援活動を紹介した。松山代表は現地の災害ボランティアセンターで窓口業務を担当した。その際、ボランティア登録に同じ熱海市民から多数の申し込みがあったことから、「市民で市民を支える持続可能な支援体制を目指すことにした」と振り返った。 地元の消防士らが土砂撤去などを行った事例を紹介し、「地元の力を生かすことができた。災害時に
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伊豆山「安全なまちに」 熱海土石流 発生1年4カ月を前に法要
熱海市伊豆山の大規模土石流の発生から1年4カ月が経過するのを前に、地元の主要団体でつくる「熱海伊豆山で心をつなぐ集い」は2日、被災現場近くの寺院「般若院」で法要を営み、犠牲者の冥福と地域の復興を祈った。 同団体は今年2月から毎月、慰霊行事を行っている。この日は町内会や観光関係団体の役員ら約20人が出席し、読経に合わせて焼香した。 被災現場は今も立ち入りが規制されている警戒区域。泥をかぶったまま公費解体を待つ被災家屋が多く残っている。県と市は、河川改修や道路整備に向けて地権者と用地交渉を進めているが、本格的な工事が始まるまでにはまだ時間を要する。 市は逢初(あいぞめ)川源頭部の不安定土砂
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遺族訴状受け、川勝知事「内容を精査」 熱海土石流損賠訴訟
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、遺族らが市と県に約64億円の損害賠償を求めた訴訟で、県は28日、訴状が届いたと発表した。川勝平太知事は「訴状の内容を精査し、主張内容を検討していくが、ご遺族や被害者の気持ちを真摯(しんし)に受け止め、誠実かつ適切に対応していく」とコメントした。 一方で県は、遺族らが土石流の起点を含む土地の現旧所有者らを相手取って起こした損害賠償請求訴訟について、原告側への補助参加は「困難となったと考える」との見解を示した。
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熱海土石流 砂防指定「再検証必要」 静岡県の対応に疑問や批判 県議会特別委
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する県議会の特別委員会は28日、行政手続きに関わった部署の県担当者に出席を求め、質疑を行った。県議からは県行政対応検証委員会の第三者性や、関係法令に基づく県のこれまでの対応に疑問や批判が相次いだ。熱海市の幹部も参考人として招致され、検証の在り方に疑問を呈したが、県側は「法的瑕疵(かし)はなかった」などと従来の主張を繰り返した。 「自然の斜面が崩れるかもしれない所に(人工的な)盛り土が造成された」。県議からは当時の危険性の認識をただす質問が矢継ぎ早に飛んだ。西原明美県議は開発が始まる前の県の上流域調査で、斜面の崩壊が想定されていたのではと問題提起。砂防法の規制区
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国「山肌露出で規制区域に指定必要」見解 熱海・伊豆山の逢初川開発初期に該当 静岡県の砂防指定放置問題
熱海市の逢初(あいぞめ)川で昨年7月に発生した土石流の起点で残土投棄を制限する砂防法の規制が放置されていた問題で、国土交通省の砂防担当者が27日までに静岡新聞社の取材に応じ、同法の規制区域「砂防指定地」の指定方法に関し、一般論としては砂防ダム上流域で山肌がむき出しになった段階で上流全域を規制区域に指定する必要があるとする見解を明らかにした。 砂防指定地は県が規制区域を国に申請し、国が指定する。土石流危険渓流の逢初川は上流全域を申請するよう国に促されていた上、盛り土(積み上げた残土)造成前の開発初期に上流域の山肌が露出し、国の示す見解に該当していた。県が規制区域を申請していれば、崩落した盛り
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熱海土石流の残土撤去 静岡県が住民説明会 対象外盛り土に不安の声
静岡県は26日夜、熱海市伊豆山の大規模土石流の起点付近で不安定土砂を撤去する行政代執行に関する住民説明会を伊豆山地区で始めた。28日までに計3カ所で行う。初日は仲道公民館で行われ、住民からは警戒区域内の生活道路の早期開通を願う声や、撤去対象外になっている盛り土への不安の声が聞かれた。 行政代執行は11日に始まった。県は工事用道路の整備や土留め工を行った後、起点付近の3カ所の土砂計約2万立方メートルを来年5月ごろまでに撤去する。土砂の一部から土壌汚染対策法の基準を超えるフッ素や鉛が検出されたため、運搬時にこぼれ落ちないよう大型土のうに入れて熱海港の仮置き場に搬入する。 運搬は原則として平日
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熱海・逢初川上流域 盛り土前に大規模崩落 市の公文書開示で判明
熱海市伊豆山の大規模土石流で起点になった逢初(あいぞめ)川上流域の開発を巡り、市は26日までに、静岡新聞社の情報開示請求に応じて昨年10月の一斉公表に含めていなかった行政手続きに関する公文書を開示した。盛り土(積み上げた残土)が造成される前の開発初期の文書には、土石流起点付近の斜面で地山が大規模崩落した状況を捉えた写真が掲載されていた。 開示されたのは2004~18年に市に権限のあった県風致地区条例や市まちづくり条例などに基づく開発業者との協議や対応状況を職員が記録した文書。隣の鳴沢川流域と一体的に行われた開発状況の写真も多数含まれる。市は「(土石流起点の)崩落地に関する届け出と直接関係な
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知事「細かなこと」 熱海土石流、砂防規制放置問題で見解
川勝平太知事は25日の定例記者会見で、熱海市の逢初(あいぞめ)川で昨年7月に発生した土石流の起点で残土投棄を制限する砂防法の規制が放置されていた問題について、当時の砂防担当者が開発状況を確認しなかったとみられる対応について「細かなことだ」と述べた。 砂防法適用見送りの経緯について県は関係職員に詳細なヒアリングを実施していないが、知事は「特段、間違ったことをしたとは思っていない」と強調。砂防担当者がその後、上流域の開発状況を確認した記録がないことに関し「その時までさかのぼってしっかり検証していない」と釈明した。 川勝知事はこれまで砂防法で規制をかける際に土地所有者の同意が必要だと主張してき
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砂防規制放置問題 静岡県担当者の確認記録なし 開発初期の2007年頃 上流域では伐採、山肌露出
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、残土投棄を制限する砂防法の規制が長年放置されていた問題で、砂防ダム上流域で開発が始まった2007年頃、静岡県の砂防担当者がダム上流域の状況を確認した記録がないことが21日までの県への取材で分かった。 国はダム上流域に開発が及ぶ場合、規制区域「砂防指定地」の早急な追加申請を求めている。県は山腹の状況を勘案して上流全体の規制を進めると国に説明していたが、説明通りの対応をしていなかった疑いが強まった。 県は1998年、砂防ダムの設置に当たり、土石流危険渓流の逢初川は基準に該当するとして国から上流全体の指定を求められた。ただ、土地所有者の同意が得られず、当面の指
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熱海土石流 残存盛り土の一部から鉛検出 水質に異常なし
静岡県熱海土木事務所は21日、熱海市伊豆山の大規模土石流の起点周辺に残る不安定土砂の一部から、土壌汚染の基準値を超える鉛が検出されたことを明らかにした。水質に異常はなかった。県は不安定土砂を撤去する行政代執行に着手していて、汚染土壌は県外の処理施設で処分するとしている。 県によると、鉛は崩落部分の南西側の1カ所で、1リットル当たり0・029ミリグラム(基準値0・01ミリグラム以下)が検出された。周辺の土砂からはこれまでに基準値を超えるフッ素が検出されている。 県は11月以降に土砂搬出用の道路を2本造る。来年5月ごろまでに約2万立方メートルを撤去し、大型土のうに入れて熱海港に仮置きする。土
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静岡新聞「残土の闇」に新聞協会賞 取材班代表が受賞スピーチ「疑問晴らすことが地方紙の使命」
山梨県富士吉田市で18日に開かれた第75回新聞大会(日本新聞協会主催)で、熱海土石流を巡るキャンペーン連載「残土の闇 警告・伊豆山」と一連の報道で本年度の新聞協会賞を受賞した本紙取材班代表の豊竹喬熱海支局長が受賞スピーチに臨んだ。「不適切な盛り土が引き起こす人災をなくすために、伊豆山の悲劇を忘れてほしくない。連載を機に全国にその思いと行動の輪がさらに広がってくれれば」と願った。 新聞協会の丸山昌宏会長から賞状とメダルを贈られた豊竹支局長はスピーチで「なぜ悲劇が起きてしまったのか、なぜ悲劇の芽を摘むことができなかったのか。その疑問を晴らすことが地方紙の使命であり、全国で同様の被害を繰り返さな
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熱海土石流で失われた住宅の復元図を無償提供する建築イラストレーター 阿部雅治さん 被災者が前を向く力に【とうきょうウオッチ/インタビュー】
災害で消失した住宅の復元図を作る「想い出パース」と名付けた活動を続け、熱海市の被災者への協力も申し出ている。本業の経験を生かし、コンピューターグラフィックスでかつての姿をよみがえらせる。武蔵野市在住、72歳。 ―6月に熱海へ向けた活動を始めた。現在の実績を。 「土石流で家を流された家族からの依頼が1件あった。まず、発生前のグーグルアースの航空写真を使って住宅の寸法を割り出し、図面を立ち上げた。ストリートビューを参考にして外観を描き、依頼者からの写真などを基にペットや愛車、庭木も入れた。修正を重ね、8月にA3判のカラー印刷にして届けた」 ―完成した復元図に対し、依頼者からはどのような反応
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「隠す意図なかった」 熱海土石流、盛り土隣接の宅地造成部分 市が文書開示巡り釈明
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、市が昨年10月に公表した公文書のうち、崩落した盛り土部分に隣接する宅地造成部分に関する文書が公開されていなかったことについて、同市の窪田純一観光建設部理事は12日、「開発された時期や流域が異なっていたことから公表を見送った。情報を隠す意図はなかった」と釈明した。市議会9月定例会で米山秀夫氏の一般質問に答えた。 昨年10月に市が公表した文書は、崩落した盛り土部分と近接する太陽光発電施設、緊急伐採部分、「第2の盛り土」と呼ばれる土砂投棄された箇所の文書のみだった。県が公表した文書には宅地造成部分も含まれていた。 宅地造成部分は盛り土の北側と北東側に位置する。
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熱海土石流 静岡県検証委の議事内容、全面公開方針撤回 知事「判断委ねる」
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、川勝平太知事は11日の定例記者会見で、県が設置した行政対応検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)の議事内容を報告書作成後に全面公開するとしていた方針を事実上撤回し、議事の透明性確保について「全て検証委の判断に委ねる」と述べた。 検証委に関しては、県職員OBの事務局員が各委員の意見書を公表せずに廃棄したり、議事録を残さない会合を開いていたりした問題が分かっていて、議事の全面公開を約束した知事の方針との整合性が問われていた。 川勝知事は2月の記者会見で記者側に「結論が委員全員一致か一部から異論が出たかでは意味合いが違う」と指摘された際、「ありていに全ての事実を
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熱海土石流 市長個人への損賠請求 訴訟費用は公費負担せず 市議会一般質問
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点を含む土地の現所有者が斉藤栄市長に損害賠償を求めた訴訟について、同市の中田吉則経営企画部長は11日、「市長個人に対する訴訟であり、訴訟費用などは市として特段の対応はしない」との方針を明らかにした。市議会9月定例会で竹部隆氏(熱海成風会)の一般質問に答えた。 現所有者は9月6日、土石流で土地の資産価値が失われたなどとして、斉藤市長に10万円の損害賠償を求めて静岡地裁沼津支部に提訴した。中田部長は、遺族らが市と県、現旧所有者らにそれぞれ損害賠償を求めた訴訟と市長の訴訟が併合される可能性に触れ、「市の顧問弁護士と協議しながら状況を注視する」と述べた。 遺族らが市
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残存盛り土 静岡県が代執行開始、2023年5月末までに撤去 熱海土石流
静岡県は11日、熱海市伊豆山の大規模土石流の起点付近で不安定な状態で残っている盛り土を撤去する行政代執行を開始した。土石流発生から1年3カ月余り。被災地の安全を確保する上で最大の懸案がようやく動きだす。県は来年5月末までに撤去完了を目指す。 県によると、撤去する盛り土は約1万6千立方メートル。工事費用は、土砂の撤去や仮置き場への運搬といった本年度分だけで4億円を見込む。処分費を含んだ総額は未定で、土砂に有害物質が含まれていた場合は費用が大きく膨らむ可能性がある。県は全体の費用が確定した後に、2011年まで起点を含む土地を所有した不動産管理会社「新幹線ビルディング」(神奈川県小田原市)に請
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グッズで「伊豆山、忘れない」 ピクニックシート販売 熱海
熱海市など伊豆地域を中心に活動する函南町のデザインユニット「BACCO(バッコ)」が10日まで、同市伊豆山の復興支援グッズとして製作したピクニックシートをJR熱海駅ビル「ラスカ熱海」で販売している。土産物を通じて観光客にも伊豆山を応援してほしいとの願いが込められている。 バッコは同市のボランティア団体「テンカラセン」と地元アーティストによる復興支援ブランド「is3(イズサン)」に参加している。シートは電線や鋼鉄コイルの包装に使う紙でできていて、強度や耐水性に優れる。伊豆山神社や逢初(あいぞめ)橋、伊豆山の山々をイメージした模様がプリントされている。売上金はテンカラセンの復興支援活動に役立て
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委員や市の意見書、公表しないまま廃棄 「全て公開」知事説明と矛盾 熱海土石流・静岡県検証委
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、静岡県が設置した行政対応検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)が報告書を取りまとめた際、複数の委員や市から送られてきた意見書を事務局が公文書として保管せず、公表しないまま廃棄していたことが9日までの県などへの取材で分かった。報告書作成の経緯が不透明になり、議論した全ての内容を事後に公開すると約束していた川勝平太知事の説明と矛盾する対応になっている。 複数の関係者によると、意見書は、検証委の事務局によって4月末に作成された報告書の原案に対し、各委員や市が修正を求める点を記載した内容で、事務局にメール送信されていた。県の行政対応に関して批判的な意見が含まれていた
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熱海土石流 土砂の最終処分、23年度末までに 静岡県代執行
静岡県は6日の県議会9月定例会危機管理くらし環境委員会で、熱海市伊豆山の土石流起点付近で県が11日に開始する行政代執行について、2022年度中に撤去した土砂を熱海港に仮置きし、23年度末までに最終処分場へ運ぶ方針を示した。22年度の代執行費用に4億円を想定していることを明らかにし、23年度にかかる費用は精査中だとしつつも、「概算で10億円程度」との見方を示した。県は代執行費用を前土地所有者に請求する。 県によると、起点付近で落ち残った盛り土のうち、撤去が必要な不安定な土砂は約2万立方メートル。事前の調査で土砂の一部から基準値を超えるフッ素が検出されたため、撤去した土砂も一部は県外の汚染土壌
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島田商高生が伊豆山支援 文化祭で熱海の産品販売 売上金届ける
大規模土石流に見舞われた熱海市伊豆山と竜巻被害に遭った牧之原市の復興支援に取り組んでいる島田商高(島田市)のボランティア委員会は5日、熱海市田原本町のパン店「パン樹 久遠」を訪れ、文化祭で販売した熱海産レモン入りのスコーンの売上金1万7500円を届けた。同店は市に復興支援金として寄付する。 同委員会は商業高校の特性を生かして、商品販売による被災地支援を続けている。文化祭で販売したスコーンは熱海産レモンを活用した地域活性化策として熱海高生と同店が共同開発し、2年前に商品化した。文化祭では40個を用意し、完売したという。 柴本楓葵(ふづき)委員長(3年)から売上金を預かった武山陽司社長は「熱
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熱海土石流 放置の砂防規制ヒアリングせず 静岡県、熱海土木歴代幹部に
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、逢初(あいぞめ)川上流域で急斜面への残土投棄を制限する砂防法の規制が長年放置されていた問題で、県が規制を所管する熱海土木事務所の歴代の幹部職員に対し、砂防規制に関するヒアリングを実施していなかったことが4日、静岡県への取材で分かった。当時の幹部職員が他法令による規制で十分と判断して砂防規制を見送った可能性があるが、意思決定過程が検証されていないことが明らかになった。 県は昨年11月と今年5月、熱海土木事務所長ら幹部職員を含めてヒアリングや聞き取り調査を実施したが、県によると、砂防規制に関する内容は聞いていない。また、今年7月に同事務所の歴代担当職員にヒアリ
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熱海土石流の行政対応検証へ 静岡県議会特別委が初会合
熱海市伊豆山の大規模土石流災害の行政対応などを検証する県議会の逢初(あいぞめ)川土石流災害検証・被災者支援特別委員会の初会合が3日開かれた。県や熱海市の担当者、県の行政対応検証委員会の委員、被災者などの参考人から意見聴取する日程や、調査の実施方針などを決めた。2023年初めまでに計7回開いて報告書をまとめ、県議会2月定例会中に委員長報告をする見通し。 同特別委は、土石流発生や被害甚大化の原因とされる盛り土の造成に対する県の行政対応の妥当性を調査する。初会合では、県の行政対応検証委員会の最終報告書を検証し、事故の再発防止や、被災者が安心して生活できる環境整備や支援に向けて提言するとの調査方針
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「悔しいが前へ」 わが家解体に被災者複雑 熱海土石流発生1年3カ月
熱海市伊豆山の大規模土石流は3日、発生から1年3カ月が経過した。土石流の起点で崩れずに残っている盛り土を撤去する県の行政代執行が11日に始まるのを前に、被災者は地域の安全が一日も早く確保されるよう願った。警戒区域内の自宅が公費解体される被災者は「悔しいが、前に進まなければいけない」と複雑な心境を吐露した。 発生時刻の午前10時半ごろ、現場付近に集まった被災者が犠牲者に黙とうをささげた。土石流で全壊した太田滋さん(66)宅はこの日、解体作業が始まった。太田さんは「これで少し前に進むのかな。でも、納得しているわけではない。なぜこんなことになったのか、まだ解明されていない」と述べ、盛り土に関与し
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熱海土石流の被災者「恩返し」 静岡市清水区に物資届ける 熱海市伊豆山のNPO法人「テンカラセン」
昨年7月に大規模土石流で被災した熱海市伊豆山のNPO法人「テンカラセン」が30日、台風15号により被害を受けた静岡市清水区に大量の飲料水などを届けた。「恩返しをしたい。ただそれだけ」-。支援の輪が被災地から被災地へつながった。 同NPOは伊豆山の被災者や高齢者などの支援を続けているボランティア団体。台風15号で県内に甚大な被害が出た直後から「今度は自分たちの番」と支援に乗り出した。現地で必要とされる物資をSNSで募り、4日間で県内外から約300ケースの飲料水や赤ちゃん用のおしりふきなどが集まった。 現地では地元住民の案内を受けた。同日午前、物資を詰め込んだトラックなどに乗り込み、甚大な被
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熱海土石流 落ち残り盛り土撤去 行政代執行11日着手
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、静岡県は30日、土石流の起点付近で落ち残った盛り土を撤去する行政代執行を11日に始めることを明らかにした。来年6月の梅雨期までに完了させる方針。 県によると、起点付近には約3万立方メートルの落ち残った盛り土があるとみられ、このうち不安定な約1万6千立方メートルを撤去する。土砂は大型の土のうに入れて熱海港に運んだ上で仮置きする。最終的な処分場所は未定。 県は8月1日、盛り土を造成した前土地所有者の不動産管理会社「新幹線ビルディング」(神奈川県小田原市、天野二三男代表取締役)に対し、県盛り土規制条例に基づき撤去を求める措置命令を出した。9月5日までに着手する
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熱海土石流損賠2訴訟 併合審理 土地現旧所有者と県・市 静岡地裁沼津支部
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、静岡地裁沼津支部は28日、原告の遺族らが崩落した盛り土を含む土地の現旧所有者らに損害賠償を求めた訴訟と、市と県に対する損害賠償請求訴訟を併合審理する方針を示した。同日行われた弁論準備手続き後、原告と現旧所有者の代理人弁護士がそれぞれ明らかにした。 弁論準備手続きは非公開。原告側は昨年9月、違法な盛り土を造成したなどとして現旧所有者や関連会社などに計約58億円の損害賠償を求めて提訴。今月5日には、盛り土の危険性を認識しながら必要な措置を怠ったとして市と県に計約64億円の損害賠償を求める訴えを起こしている。 原告側の加藤博太郎弁護士は取材に、11月にも市と県
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熱海土石流復興「住民意見実現を」 まちづくりワークショップ最終回
大規模土石流に見舞われた熱海市伊豆山の復興まちづくりワークショップ(WS)の最終回が25日、市役所で行われた。被災者や住民計19人が参加し、伊豆山での生活再建に必要な具体的な施策について話し合った。 WSは5月から毎月1回開催してきた。市は9月2日に策定した復興まちづくり計画の実施方針にWSなどで上がった住民の意見を盛り込んだ。 最終回のWSでは、交通弱者支援や避難路整備、住民同士が日常的に集まれる場所づくりなど住民が求めている具体的な施策に向けて住民、行政の役割について意見を交わした。被災者の一人、中島秀人さん(53)は「今後も被災者がまちづくりに関わっていくことが大事。要望したことが
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熱海土石流を検証 特別委委員が内定 静岡県議会
静岡県議会の議会運営委員会は21日、熱海市伊豆山で発生した土石流災害の行政対応などを検証するために設置される「逢瀬川土石流災害検証・被災者支援特別委員会」の委員を内定した。26日の9月定例会本会議で正式に決まる。 委員は9人。委員長に竹内良訓氏(自民改革会議、浜松市中区)、副委員長に相坂摂治氏(同、静岡市駿河区)と阿部卓也氏(ふじのくに県民クラブ、浜松市浜北区)がそれぞれ内定した。
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土石流被災の消防団詰め所 解体費を計上 熱海市補正予算案
熱海市は21日、市議会9月定例会に提出する議案を発表した。一般会計補正予算案には、昨年7月に伊豆山地区で発生した大規模土石流で被災した市消防団第四分団詰め所の解体費など計2億4500万円を計上した。 第四分団詰め所の解体費は1200万円。詰め所の屋上に設置されていた同報無線の移設工事に990万円も計上した。市消防総務課によると、詰め所の解体は年内を目指して調整を進めている。新たな詰め所の建設予定地は未定という。 また、新たな観光戦略として、首都圏の企業からのビジネス誘客や、宿泊施設以外での食事を楽しむ「泊食分離」を推進するモニターツアーの経費として2700万円を盛り込んだ。市は、週末や繁
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熱海市下多賀 海岸埋め立て着工 土石流の土砂活用
静岡県は21日、熱海市伊豆山の大規模土石流で発生した土砂などを活用して同市下多賀の海岸を埋め立てる工事を開始した。工期は来年3月末までを予定し、約4万立方メートルの土砂が運び込まれる。 埋め立て工事の現場は長浜海浜公園に隣接する海岸で、延長約250メートル、面積約1万平方メートル。県は7月上旬までに、土砂の海洋流出を防ぐための鋼矢板を海岸に設置した。 埋め立てに使用する土砂は、熱海港芝生広場や旧小嵐中の仮置き場でふるい分けした土石流の土砂のほか、県内の道路工事などで発生した残土で、最終的に海岸沿いの国道135号とほぼ同じ高さにする。21日は、熱海港芝生広場から大量の土砂が次々に運び込まれ
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虚偽証言、告発見送り 熱海土石流百条委「裏付け困難」
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)の小委員会は20日、崩落した盛り土を含む土地の現旧所有者が証人尋問で虚偽の証言をした疑いがあるとして、刑事告発するかどうかを協議したが、偽証の裏付けが困難などとして告発を見送ると決めた。 小委員会は非公開。5月の証人尋問で旧所有者の不動産管理会社(神奈川県小田原市)の代表は、盛り土造成業者から残土搬入の報酬を受け取っていないと証言し、盛り土への関与も否定した。一方、造成業者は同社の指示で盛り土を造成し、複数回にわたり計約150万円を支払ったと主張している。 県の公文書には造成業者と旧所有者との間で金銭の授受があったことが
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熱海土石流「県の対応、検証不十分」 出石稔氏に聞く
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、静岡県行政対応検証委員会の委員を務めた出石稔関東学院大法学部長(行政法)が17日までにインタビューに応じ、検証委の報告書に関し「結果的に市の対応に焦点が当たり過ぎ、県への検証が不十分だった。十分な対応ができず個人的には悔いが残っている」との認識を明らかにした。 ■委員主導のヒアリングできず 検証委は昨年12月から今年5月にかけて非公開で4回開催。行政法に詳しい出石氏は、担当職員へのヒアリングを当事者の県や市が行ったことについて「県から早期に報告書をまとめるように求められ、検証期間が限られた」と委員主導でヒアリングを実施できなかった理由を釈明した。 県
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熱海土石流 盛り土に水通す隙間四層発見 崩落何度も誘発か 静大教授分析
熱海市伊豆山で昨年7月に発生した大規模土石流の発生原因を調べている静岡大の北村晃寿教授(古生物学)が16日、土石流起点付近に残った土砂のボーリング調査の分析で、水を通す隙間になる四つの層が見つかったと発表した。崩落した盛り土がミルフィーユ状の重層的な構造だったという根拠になるとし、時間差で何度も流れ下った土石流を誘発したと結論付けた。同様に発生原因を調べた県の検証委員会の見解を補足する内容だと位置付けた。 分析したのは、逢初(あいぞめ)川上流の盛り土崩落現場西側の縁で県がボーリングした地質試料。土砂の粒がそろい、水を通しやすい層が4~19センチの厚さで4層確認された。 北村教授のこれま
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9月定例会に42件 静岡県議会議運
静岡県は14日の県議会議会運営委員会で、21日開会の9月定例会に提出する一般会計補正予算案など28議案と報告14件を説明した。 公務員の定年を引き上げる地方公務員法改正に伴い、関連する17条例を改正する議案のほか、教育委員を任命する人事案を提出する。 議運では、熱海市伊豆山の土石流災害の行政対応を検証する特別委員会「逢初川土石流災害検証・被災者支援特別委員会」の設置を了承した。同特別委は第2会派ふじのくに県民クラブの提案で被災者支援策に関する調査も目的にしている。 9月定例会の会期は21日から10月14日までの24日間。代表・一般質問は9月26、28~30日と10月3日に行い、計15氏
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盛り土条例改正へプロジェクトチーム 県議会自民が設置方針
静岡県議会最大会派の自民改革会議は13日、熱海市伊豆山の大規模土石流を受けて7月に施行された県盛り土規制条例の改正を検討するプロジェクトチーム(PT)を設置する方針を固めた。規制の厳格化に伴う工事の遅れなどを懸念する声が相次いでいるため。来年の県議会2月定例会に条例改正案を提出することも視野に入れる。 条例は伊豆山の土石流災害の原因とされる盛り土を規制するため、一定規模以上の盛り土造成を届け出制から許可制に変更し、罰則を強化した。 条例施行後、自民会派には県行政書士会や県宅地建物取引業協会などが相次いで要望に訪れ、「県内一律の規制は過剰で、県民に大きな負担となる」などと適用除外を求めてい
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熱海土石流 大量地下水で盛り土軟化が原因 静岡県検証委結論、近く最終報告書
熱海市伊豆山の土石流で、盛り土崩落の発生原因を調べる静岡県の検証委員会は8日、最終会合を開き、崩落のメカニズムについて、締め固めが不十分な盛り土内部に大量の地下水が流入し、軟化して大災害につながったと結論付けた。県は近く最終報告書としてまとめる。県の難波喬司理事は、適切な工法で盛り土を造成していれば崩落が防げたかどうか県が検証する必要があるとの認識を示した。 検証結果によると、逢初(あいぞめ)川源頭部には、地山の上に水を通しやすい「渓流堆積物」がある。ここに周辺流域を含めて地下浸透した水が集まり、堆積物の上に積まれた盛り土に浸透した。水圧で土がどろどろになる「吸水軟化現象」が発生し、盛り土
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熱海土石流 崩落現場20度超の傾斜「発生条件満たしていた」
熱海市伊豆山の大規模土石流を招いた盛り土崩落の発生原因を調べる静岡県の検証委員会は8日に提示された報告書案で、逢初(あいぞめ)川上流域の地形が急傾斜だったことを盛り込んだ。土石流に詳しい今泉文寿委員(静岡大教授)は会合後の記者会見で、上流域に造成された盛り土の地盤は勾配が20度を超えていたとし、「土石流の発生条件を満たしていた」と説明した。 土石流の主な発生要因は、①勾配②堆積した土砂量③降水量(湧水を含む)―とされている。報告書は盛り土造成前の1967年の地形に基づいて傾斜の度合いを色分けした地図を掲載し、崩落現場付近の大半は20~30度の区分とした。 今泉委員によると、土石流は一般的
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知事「再検証しない」 熱海土石流、砂防規制放置問題で見解
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、逢初(あいぞめ)川上流域で砂防規制が放置されていた問題で、川勝平太知事は8日の定例記者会見で、県行政対応検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)が報告書をまとめた後に新たに分かった事実を踏まえても、砂防規制を放置した行政対応を再検証する必要はないとする考えを示した。 砂防規制の県の対応に関しては、検証委が「妥当」と判断した報告書をまとめた後に、検証委で県側の説明が不十分だったことや砂防担当職員へのヒアリング結果が判明した。 川勝知事は砂防規制について「検証委で一段落した。新たに検証する動きはない」と述べた。砂防規制しなかった理由に関しては「砂防法を導入するに
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熱海土石流、不明女性の免許証発見 静岡県警「手掛かり」
静岡県警は8日、熱海市伊豆山の大規模土石流で行方不明になっている太田和子さんの捜索活動で、太田さん名義の運転免許証と会員証、金融機関のキャッシュカードを発見したと発表した。 県警災害対策課によると、発見場所は熱海港芝生広場の土砂集積所。管区機動隊などの警察官約10人が7日、被災現場から撤去している土砂を、大型重機のふるいにかける作業の中で見つけた。 免許証と会員証は、トートバッグの中にあった長財布から、キャッシュカードは折りたたみ財布内でそれぞれ発見。いずれも太田さんが住んでいた自宅1階にあったとみられる。汚れを取り除き、後日家族に返還する。 県警は大規模土石流発生後、1日も休まず捜索
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熱海土石流報道 静岡新聞社に新聞協会賞 キャンペーン連載「残土の闇 警告・伊豆山」など
日本新聞協会は7日、2022年度の新聞協会賞を発表した。静岡新聞社のキャンペーン連載「残土の闇 警告・伊豆山」と一連の関連報道(熱海土石流取材班 代表・豊竹喬熱海支局長)など6件が選ばれた。授賞式は10月18日、山梨県富士吉田市で開かれる第75回新聞大会で行われる。 「残土の闇」は、21年7月3日に熱海市伊豆山で発生し死者27人、行方不明者1人を出した大規模土石流災害に関し、信仰の地だった伊豆山に土砂が盛られた経緯や土地所有者の業者と行政の“攻防”、土石流を目の当たりにした発災当日の住民や行政の動き、犠牲者遺族の苦しみ、復興を目指す被災者らの取り組みなどを全36回
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熱海土石流「残土の闇 警告・伊豆山」【連載全記事まとめ読み】
静岡新聞社のキャンペーン連載「残土の闇 警告・伊豆山」は、2021年7月3日に熱海市伊豆山で発生した大規模土石流災害に関し、歴史ある信仰の地だった伊豆山に土砂が盛られていった経緯や土地所有者の業者と行政の〝攻防〟、土石流を目の当たりにした発災当日の住民や行政の動き、犠牲者遺族の苦しみ、復興を目指す被災者らの取り組みなどを全36回の連載で追いました。 画像をタップ/クリックすると各記事に移動します。 序章 子恋の森の叫び ①わが子守り 命落とした娘 奪われた「家族の未来」 「娘は殺された。母親と過ごせたはずの孫の未来も奪われた」。悲しみ、怒り、疑念-。複
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問題ある開発他にも 残存盛り土撤去 住民、一定評価も是正求める 熱海土石流
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、静岡県は6日、落ち残り盛り土を撤去する行政代執行の方針を決定し、昨年7月の発災から1年2カ月を経て、伊豆山の復興に向け大きな一歩を踏み出した。ただ、土石流起点の崩落現場周辺には、他にも問題を指摘される開発行為が現存し、住民や関係者から「行政はしっかり対応してほしい」と是正を求める声が上がっている。 伊豆山地区連合町内会の当摩達夫会長(76)は「ありがたい」と安堵(あんど)しつつ、「台風が多くなる9月までに少しでも撤去を進めてほしかった」と本音を漏らす。 落ち残り盛り土以外にも、ずさんな開発行為は確認されている。崩落現場南側の太陽光発電施設(②)や緊急伐採
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現所有者が市長提訴 熱海土石流
熱海市伊豆山の大規模土石流により土地の価値が失われたとして、土石流の起点を含む土地の現所有者の男性(86)が6日、同市の斉藤栄市長に10万円の損害賠償を求め、静岡地裁沼津支部に提訴した。代理人の河合弘之弁護士は「訴訟の目的は金銭ではない。因果関係の最後の引き金を引いた市長個人の責任が問われるべきだ」と主張した。 訴状によると、斉藤市長は違法状態の盛り土の危険性を認識しながら、旧土地所有者に安全対策を講じさせる措置命令を見送ったほか、土石流の発生前日から災害の危険が迫っていたのに避難指示を出さなかったとして、国家賠償法に基づく賠償責任を負うと主張。土石流により、3億円で購入した土地が利用でき
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規制放置、再検証せず 静岡県行政対応委 熱海土石流
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、静岡県が逢初(あいぞめ)川上流域で砂防法に基づく盛り土の規制を地権者の反対を理由に放置していた問題で、県と市の行政手続きを評価した県行政対応検証委員会の青島伸雄委員長(弁護士)は6日までに、報告書をまとめた後に県が実施した砂防担当職員のヒアリング結果を確認せず、砂防法に関する手続きを再検証しない意向を明らかにした。青島委員長のコメントを公表した県によると、「検証委は既に役割を終えた」などと理由を説明したという。 県は6月から7月にかけて熱海土木事務所と本庁砂防課の歴代の砂防規制担当者にヒアリングし、国が規制に必要とする同意取得のために地権者と接触したかとい
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「地下水で崩落」結論へ 複数発生の要因不明 静岡県検証委 熱海土石流
熱海市伊豆山の土石流を巡り、盛り土崩落の原因を探る静岡県の検証委員会が、大量の地下水の流入によって盛り土内部が泥状になって崩落に至ったと結論付けることが、6日までに関係者への取材で分かった。県が数値解析に基づき前回会合で示した地下水による崩落の推定を検証委委員が実験で裏付けた。8日に開く最終会合で取りまとめる。ただ、土石流が時間差で何波も発生した要因は特定できていないなど、全容解明と言えるかは疑問も残る。 県は逢初(あいぞめ)川源頭部でさまざまな調査を行い、地形や地質、地上と地下での水の流れ、不適切に造成された盛り土の状態などを調べた。それらのデータを基に外部の専門家が崩落のメカニズムを解
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残存盛り土撤去 10月にも代執行 前所有者応じず 熱海土石流
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、静岡県は6日、関係部局長による対策会議を県庁で開き、土石流の起点付近に落ち残る盛り土を撤去する行政代執行の手続きに入る方針を決めた。前土地所有者の不動産管理会社(神奈川県小田原市)が不安定な土砂の撤去を求める措置命令に応じなかったため。県は緊急性が高いと判断して撤去を代行し、費用を同社に請求する。 県盛り土規制条例に基づく措置命令を8月1日に出し、9月5日までの撤去着手を同社に要請したが、応じていないことを現場で確認した。早ければ10月中旬にも代執行に踏み切り、来年の梅雨までに撤去を完了させたい考え。同社は落ち残った部分の盛り土行為をしていないとして、措置
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真相究明の進展期待 遺族ら提訴「行政不作為問う」 熱海土石流
災害関連死を含め27人が死亡し、1人が行方不明になっている熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、国家賠償法に基づき市と県に約64億円の損害賠償を求める訴えを静岡地裁沼津支部に起こした遺族ら原告団は5日、沼津市内で記者会見を開いた。土石流の起点となった土地の新旧所有者らを相手取った先行訴訟と併合して審理される見通しで、原告団は「真相究明が進むことを期待し、責任を追及していく」と強調した。 遺族と被災者ら110人と3法人が原告に名を連ねた。元都庁職員でもある代理人の加藤博太郎弁護士は「まさに今回、行政庁の事なかれ主義が出てしまったと考える。危険性を認識しながら先送りした結果、甚大な被害を生じさせた
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熱海土石流1年2カ月 迫る市長選、被災者「住民の声聴いて」
熱海市伊豆山の大規模土石流は3日、発生から1年2カ月が経過した。被災地の土地利用方針や地域の将来像などをまとめた「復興まちづくり計画」が策定され、市長選の告示が4日に迫る中、被災者は「住民が何を本当に求めているのか自ら耳を傾けてほしい」と次期市長に求めた。 発生時刻の午前10時半ごろ、現場付近に集まった被災者が黙とうをささげた。被災者が現場付近で月命日の黙とうを初めてちょうど1年。毎月欠かさずに参加してきた太田滋さん(66)は「亡くなった人を悼むと同時に、未来に向けてみんなで地域のことを考えたい」と語った。 復旧復興の動きが本格化しようとしている中で迎える市長選には、現職の斉藤栄氏(59
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熱海土石流 行政対応検証、特別委設置を提案へ 静岡県議会自民
静岡県議会最大会派の自民改革会議は31日までに、熱海市伊豆山の大規模土石流を巡る県の対応を検証する特別委員会の設置を9月1日の会派代表者会議で提案する方針を固めた。 自民改革会議は土石流を巡る県の行政手続きに疑義があるとしてプロジェクトチーム(PT)を設置し、独自に検証作業を進めてきたが、県議会としてさらなる調査が必要だと判断した。 県行政対応検証委員会など関係者への聞き取りを通じ、不適切に造成された盛り土に関する行政手続きなどを検証する。被災者支援策についても協議する見通し。 各会派の了承を得た上で、21日開会予定の県議会9月定例会に関連議案を提出する。土石流を巡っては第2会派のふじ
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熱海土石流総括 市長選前の公表困難「作業に時間要す」
熱海市の斉藤栄市長は31日、市長選(9月4日告示、11日投開票)前までに公表を目指していた同市伊豆山の大規模土石流に関する総括について「作業に時間を要し、公表が困難な状況」とのコメントを発表した。公表は選挙後となる見通しで、時期については「準備ができ次第、お知らせする」としている。 総括は土石流被害を拡大させた盛り土に関する行政対応、発災前後の避難指示の在り方、再発防止策が中心とみられる。 斉藤市長は5月の定例記者会見で、市議会調査特別委員会(百条委員会)の調査結果を踏まえ、市としての総括を公表する考えを示した。7月の会見で「市長選前に出せるよう努力する」と発言したものの、8月に「精査に
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前所有者に残土搬入対価 造成業者から、公文書に記載 熱海土石流
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点となった盛り土を巡り、盛り土造成業者が建設残土を受け入れて得た収入の一部を、前土地所有者の不動産管理会社(神奈川県小田原市)に支払っていたと静岡県の公文書に記載されていたことが30日までに、関係者への取材で分かった。 公文書は個人名などが黒塗りになっている。関係者によると、2011年6月の公文書には、残土搬入のダンプ1台あたり1500~2千円を造成業者が不動産管理会社に支払う契約を交わしていたと記されていた。工事を開始してから半年から8カ月ぐらいは、業者が3万~10万円ぐらいを支払い、多い時は30万円に上ったとされる。公文書には、記載内容を認める前所有者の署
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熱海土石流 復興計画案ほぼ了承 検討委、住民と協議継続へ
熱海市は29日、大規模土石流に見舞われた伊豆山地区の復興計画検討委員会を市役所で開き、現地の具体的な土地利用の方針などを定めた復興まちづくり計画案をおおむね了承した。市は計画の進捗(しんちょく)状況の点検、評価を繰り返しつつ、地域の意見を踏まえた施策の追加、修正を行うため、今後被災者や住民による協議組織を設置する。計画は9月上旬の市復興推進本部会議で正式決定する。 計画案に示された工程では、本年度中に宅地や被災者向け賃貸住宅の整備に向けた調査、計画を行う。来年度以降に工事着手し、2025年度中に分譲や住宅再建の開始を目指している。 土地利用の方針として、住宅地は低層住宅を基本とし、従来の
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熱海土石流百条委 市長「法的責任は司法判断」 申請受理「不適切」も
不適切に造成された盛り土が被害を拡大させた熱海市伊豆山の大規模土石流。26日の市議会調査特別委員会(百条委員会)で、2度目の参考人招致に応じた斉藤栄市長は、盛り土に関する一部の行政対応が不適切だったと認めたものの、「法的責任は司法の判断に委ねざるを得ない」と従来の主張を繰り返した。終了後の取材に「最大の問題はそこではない」と強調し、森林法などの法適用の在り方を検証する必要性を訴えた。 これまでの百条委などで、市は前土地所有者の不動産管理会社(神奈川県小田原市)が提出した盛り土の申請書類に不備があったまま受理していたことが明らかになっている。 斉藤市長は6月下旬、遺族らでつくる「被害者の会
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太陽光施設は「違法」 市職員証言 熱海市議会百条委
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)は26日、土石流の起点周辺で行われた土地改変行為への行政対応にあたった市職員らを招致し、事実関係を聴取した。現土地所有者が設置した太陽光発電施設について、市職員は、排水設備に採石が埋まっていてのり面には大型土のうが積まれているだけの状態であることから「宅地造成規制法に基づく許可基準に沿ったものではない」とし、違法状態であると認めた。 土石流の起点の近接地には、現土地所有者側が設置した太陽光発電施設やグラウンド整備を目的に伐採、造成した平地、急斜面に土砂が投棄された「第二の盛り土」がある。 現所有者側は県と市の指導に従い、
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自治体の盛り土対策 国交省が支援策拡充 概算要求で交付金増
国土交通省は25日、熱海市伊豆山の大規模土石流と同様の被害を防ぐため、危険な盛り土への安全対策を実施する自治体の支援策を拡充すると公表した。来年5月までに施行される盛り土規制法を見据え、定期的な盛り土調査や新たに発覚する危険な盛り土の撤去も支援対象とする。 国交省は2023年度予算概算要求で、盛り土の撤去や擁壁の設置などの対策工事に活用できる防災・安全交付金に関し、22年度当初予算比1・19倍の9677億円を盛り込んだ。 法施行後も既存盛り土の分布や安全性の調査の継続が必要と判断し、既に対象となっている規制区域の指定に関する調査に加えて支援する。 法施行により規制区域内の盛り土は許可制
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土石流 総括遅れ示唆 熱海市長「公表 選挙後も」
熱海市の斉藤栄市長は24日の定例記者会見で、昨年7月に同市伊豆山で発生した土石流に関する市の総括について「事実関係の整理や再発防止策などの検討を鋭意進めているが、難航している」と述べた。先月の定例記者会見では、9月4日告示の市長選前に総括の公表を目指すとしていたが、間に合わない可能性を示唆した。 市は昨年から退職者を含め職員にヒアリングを行うなどして、崩落した盛り土の経緯や発災前後の対応について検証してきた。斉藤市長は「(盛り土造成が)10年以上前のことであり確認事項も幅広く、精査に時間がかかっている」と説明。その上で「現時点で総括の公表時期は示せない。選挙前の公表を目標にしているが、選挙
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盛り土対策推進盛り込む 静岡県地域防災計画、修正を了承
静岡県や国、県内の関係機関でつくる県防災会議(会長・川勝平太知事)は22日、静岡市駿河区で本年度の会議を開き、盛り土対策の推進や災害時の安否不明者の氏名公表を県地域防災計画に盛り込む修正を了承した。 不適切な盛り土事案の課題解決を図るための「県盛土等対策会議」の設置に関する項目を新たに追加した。国の防災基本計画の修正を踏まえ、市町が行政指導や行政処分などを行う際、県が適切な助言、支援をする点も反映した。 災害時の安否不明者などの氏名公表は、熱海市伊豆山で発生した大規模土石流を受け、県が昨年11月に指針を策定した。県地域防災計画に公表を明記することで市町や関係機関との連携を図り、円滑で迅速
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熱海市長を告訴・告発 被災者・遺族ら「盛り土を放置」 熱海土石流
熱海市伊豆山で昨年7月に発生した大規模土石流の遺族ら4人が16日、斉藤栄市長(59)を業務上過失致死の疑いで熱海署に告訴・告発状を提出した。土石流の起点となった盛り土の危険性を認識しながら長年放置し、住民の生命を守るための措置を怠ったために災害関連死を含め27人を死亡させたと主張している。未曽有の「人災」は行政のトップが訴えられる異例の事態に発展した。 告訴、告発したのは、土石流で死亡した小川徹さん=当時(71)=の弟で東京都在住の小川泉さん(68)、自宅が全壊し神奈川県湯河原町で避難生活を送っている太田滋さん(66)と、別の遺族夫妻の計4人。 告訴・告発状によると、斉藤市長は違法状態の
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残った盛り土 前所有者、撤去計画書提出せず 熱海土石流
熱海市伊豆山の大規模土石流で、崩落現場の起点付近にある落ち残った盛り土を撤去するよう県から措置命令を受けた神奈川県小田原市の不動産管理会社は15日、撤去の工程表を示す計画書を提出しない意向を静岡県に伝えた。 同社の代理人弁護士によると、同日午前にファクスで通知した。措置命令を不服として県を提訴する準備を進めていることも伝えた。 同社は崩落した盛り土の前所有者。県は、県盛り土規制条例に基づき15日までに計画書を作成した上で、9月5日までに撤去に着手し、2024年3月5日までに撤去を完了するよう命じていた。同社が命令に応じない場合、県が行政代執行で撤去し、費用を同社に請求する方針。 県によ
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熱海市と県を9月提訴へ 熱海土石流被害者の会 損賠訴訟説明
熱海市伊豆山の大規模土石流の遺族や被災者でつくる「被害者の会」は14日、市と静岡県への損害賠償請求訴訟の提起に向けた被災者対象の説明会を市内で開いた。同会は当初、8月中の提訴を目指していたが、原告に加わる意向を示す複数の被災者がいるため説明や手続きの期間延長を決めた。代理人弁護士は「9月中に提訴する」との考えを明らかにした。 同会は既に、土石流の起点となった土地の現旧所有者らに約58億円の損害賠償を求める訴訟を起こしている。代理人弁護士の加藤博太郎弁護士は「全ての当事者がそろわないと責任の所在が明らかにならない。損害賠償は被害者の救済だけでなく、後世に再発防止を発信するためにも必要」と強調
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静岡県盛り土規制条例 川勝知事が改正検討 施行わずか1カ月
川勝平太知事は9日の定例記者会見で、7月に施行したばかりの静岡県盛り土規制条例について「正当な工事を邪魔することがあってはならない。どういうものが適用除外できるのか、意見をまとめたい」と述べ、条例改正に向けて検討する方針を示した。 同条例は熱海市伊豆山の土石流災害を機に、盛り土を規制する目的で制定された。公共工事を除いて面積1千平方メートル、土量1千立方メートルを超える盛り土造成が一律、許可申請対象となる。県行政書士会や県宅建協会が「県内一律の規制は過剰」などと、適用除外を求めて自民党県連などに要望していた。 会見で川勝知事は「規制に注力したことは否めない。人を守るための法令。法にのっと
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森林法の解釈「信頼」 伊豆山砂防規制放置で川勝氏、認識示す
熱海市伊豆山の砂防規制の検証を巡り、森林法の解釈を県が林野庁に照会せず発表したことについて、川勝平太知事は9日の定例記者会見で「(県の)担当部署を全面的に信頼している」との認識を示した。森林法の解釈は静岡県が逢初(あいぞめ)川上流域で砂防規制の必要がなかったと主張する根拠の一つ。 上流域に関し、県は森林法の効力が及ぶため砂防規制の必要はないと主張しているが、同法を所管する林野庁の担当者は取材に「砂防規制との重複を避けるように求める規定はない」と答え、県の主張を否定している。 川勝知事は国の見解を紹介した森林法に関する静岡新聞報道に関して「かなり解釈の違いがあるというか、事実の認識が違うと
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建築法などの許可地「除外を」 静岡県宅建協会、盛り土条例で自民に要望
静岡県宅地建物取引業協会は8日、7月に施行された県盛り土規制条例を巡り、既存法の許可を受けた物件については適用除外を求める要望書を自民党県連に提出した。 同条例は、熱海市伊豆山の土石流災害の原因とされる盛り土を規制するため、面積1千平方メートル以上か土量1千立方メートル以上の盛り土造成に一律で適用され、許可が必要になる。 要望書は、土地の区画や形質の変更許可を定めた都市計画法29条や建築確認申請に関する建築基準法6条に該当する宅地開発などの条例適用除外を求め、「条例は不適正な盛り土の発生を抑止するためのもので、(二つの条文の)許可を受けたものは該当しない」とした。90日とされる標準審査処
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熱海土石流 警戒区域、2023年夏解除へ 市が被災者説明会
熱海市は7日、同市伊豆山の大規模土石流の被災者向け説明会を市役所で開いた。斉藤栄市長は、立ち入りが規制されている警戒区域について「来年の夏ごろには解除できる」との見通しを示し、みなし仮設住宅などの家賃補助は「被災者が恒久的な住まいでの生活再建に進める状況になるまで支援する」と明言した。土石流発生から1年1カ月余り。避難生活が続いている市民にようやく生活再建の道筋が示された。 警戒区域内の住民60人が参加し、国、県、市の担当者が復旧工事のスケジュールなどを説明した。警戒区域の解除は、国が建設する新砂防ダムの完成と土石流の起点に残る不安定な盛り土の撤去が前提。県は前土地所有者の「新幹線ビルディ
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熱海土木、歴代担当を県聴取 地権者交渉「記憶ない」多数 砂防規制放置問題
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡る砂防規制放置問題で、静岡県は4日までに、熱海土木事務所で逢初(あいぞめ)川の砂防規制を担当していた歴代職員12人へのヒアリング結果を明らかにした。国が規制に必要とする同意取得のために地権者と接触したかという問いに10人が「記憶にない」と答え、2人は接触していないとした。県の調査では地権者との交渉記録も残されておらず、県が地権者の意向を確認しないまま規制を放置していた疑いが強まった。 ヒアリング結果によると、上流全体の規制に向けて地権者と接触していたかという質問に対し、過去約20年間に担当した大半の職員が「記憶にない」「引き継ぎもない」と答えた。県は具体的なヒ
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「風化させない」 被災者ら決意新た 熱海土石流発生1年1カ月
熱海市伊豆山の大規模土石流は3日、発生から1年1カ月が経過した。土石流が流れ下った被災地付近では、被災者らが集まり犠牲者を慰霊しながら、悲劇を風化させない決意を新たにした。復旧復興に向けた動きが本格化しつつある中、伊豆山を離れて暮らす被災者は「安全が確保された古里にいつ帰れるのか、早く知りたい」と切望した。 炎天下、被災者らは発生時刻の午前10時半ごろに現場付近で手を合わせた。立ち入りが規制されている警戒区域には雑草が生い茂り、月日の流れを物語っていた。損壊した住宅は応急的な修理しか認められていないため、屋根や壁の傷みも目立ち始めていた。 自宅が全壊し、神奈川県湯河原町のみなし仮設住宅で
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災害関連死防止へ 「伊豆山ささえ逢いセンター」住民交流に尽力 熱海土石流発生1年1カ月
熱海市伊豆山の大規模土石流は3日、発災から1年1カ月が経過する。復興に向けた動きが本格化する中、被災者の生活再建を支援する「熱海市伊豆山ささえ逢いセンター」は災害関連死を防ぐ活動に注力している。2011年の東日本大震災などでは、長期避難者が生活環境に慣れず持病が悪化して死亡したり、孤独感を抱いて自殺に追い込まれたりするケースがあった。過去の災害を教訓に被災者が集まる催しや仮設住宅への戸別訪問を行い、心身ケアや生活課題の解決に取り組んでいる。 「リズムに合わせて腕を曲げ伸ばし、数字が3の倍数の時は手をたたきましょう」。7月下旬、同センターが市内の交流施設で開いた健康体操教室。講師の号令に合わ
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熱海・伊豆山復興、将来像は 被災者らワークショップ3回目
熱海市は7月31日、大規模土石流に見舞われた同市伊豆山の復興まちづくり計画策定に向けた3回目のワークショップ(WS)を市役所で開いた。被災者ら26人が参加し、地域の将来像について意見を交わした。 生活道路や避難所、被災者への補助支援策などをテーマに八つの小グループに分かれて議論した。参加者からは道路の新設や拡幅などで「住宅を建てられるスペースがどのくらい残るのか心配」「安全安心を確保するためには避難路、避難所の確保は不可欠」などの意見があった。 市は今月末までに、まちづくり計画の策定を目指している。29日の復興計画検討委員会で、計画の最終案を提出する方針で、WSで挙がった意見をできるだけ
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静岡県、行政代執行も検討 残存盛り土、撤去を命令
熱海市伊豆山の大規模土石流で静岡県は1日、崩落の起点になった土地の前所有者に出した県盛り土規制条例に基づく初の措置命令で、周囲で崩れ残っている盛り土について9月5日までに撤去に着手するよう命じた。条例に基づき、前所有者の会社名と代表者名も公表した。命令に応じなければ、行政代執行の検討に入る。 県が命令を出したのは、神奈川県小田原市の不動産管理会社「新幹線ビルディング」(天野二三男代表取締役)。撤去に関する計画書を8月15日までに作成して県の承認を得た上で、9月5日までに撤去に着手し、2024年3月5日までに完了するよう命じた。 県は、同社が命令に応じない場合、行政代執行で同社に代わって撤
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旧土地所有者に盛り土撤去命令 静岡県、新条例初適用 熱海土石流
熱海市で昨年7月に発生した大規模土石流を巡り、起点となった土地を2011年まで所有した不動産管理会社(神奈川県小田原市)に対し、静岡県は1日、崩落せずに残った約2万立方メートルの盛り土を撤去するよう求める措置命令を出した。7月に施行された新しい盛り土規制条例に基づく初の発令。 同社の元代表取締役は取材に「命令が出れば県を提訴する」と説明。二次被害の恐れがあると判断された場合、県は強制的に盛り土を撤去するなどの行政代執行を検討する。 同社は07年、旧条例に基づき盛り土造成を届け出て認められた。11年に起点の土地を売却したが、造成の完了届が提出されなかったため、県は、残った盛り土の管理責任は
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土砂採取地「有力」 神奈川・中村川下流 熱海土石流起点盛り土
北村晃寿静岡大教授(古生物学)らの研究グループは29日、熱海市伊豆山の大規模土石流で崩れた盛り土(積み上げた残土)の土砂採取地の一つとして、神奈川県小田原市と二宮町の境付近を流れる中村川下流域が有力になったと発表した。土石流で落ち残った黒色の土砂を分析したところ、中村川下流域に分布する軟らかい岩石と一致したという。 北村教授は昨年11月、盛り土付近の残土に含まれた貝殻を調べた結果、中村川下流域に広がる7千年前の地層「下原層」の貝殻と一致したと発表済み。今回分析した軟らかい岩石については「分布が限られるため、採取地の可能性を絞り込める」としている。 軟らかい岩石は「軟質泥岩礫(れき)」と呼
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森林法「開発規制できず」 林野庁、静岡県の主張否定
熱海市伊豆山の大規模土石流の砂防規制に関する行政対応を巡り、林野庁は27日までに、森林法に基づき面積1ヘクタール以下の場合に提出される伐採届では、残土投棄や盛り土造成などの開発行為を規制できないとする見解を静岡新聞社の取材に対して明らかにした。静岡県の「森林法で規制されていたため、砂防法で規制する必要がなかった」とする主張が否定された形になる。 県行政対応検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)で林野庁の見解は説明されておらず、一部の関係法令に検証を重点化した報告書の内容に影響を与えた可能性がある。 逢初川上流域は森林法に基づく「5条森林」という規制区域で、1ヘクタール以下の開発をする場合に
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熱海土石流 前土地所有者に措置命令へ 静岡県、新条例初適用
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点で崩れ残っている盛り土を巡り、県が土地の前所有者の不動産管理会社(神奈川県小田原市)に対し、新設した県盛り土規制条例に基づき、撤去を求める措置命令を出す方針を固めたことが27日、関係者への取材で分かった。新条例に基づく措置命令は初となる。 同社は19日、措置命令を視野に県が設けた弁明の機会に「(崩れずに落ち残った箇所の)盛り土行為を行った事実はない」などとして、命令は認められないとする回答書を提出した。関係者によると、県は内容を精査しているが、予定通り措置命令を8月に入って出す見通し。 県によると、土石流の起点の崩落現場付近には3万立方メートル以上の土砂が
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熱海土石流 県検証委の対応、知事容認「優先順位付けた」
熱海市伊豆山の大規模土石流で崩落した盛り土(積み上げた残土)を巡り、川勝平太知事は26日の定例記者会見で、一部の関係法令以外の検証に「手が回らなかった」としている県行政対応検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)の対応について「(関係法令の)優先順位を付けながら検証した」と評価し、報告内容を尊重する方針を堅持した。 川勝知事は、検証委の対応について「検証すべき法令を第三者の目で見た」と述べた上で、青島委員長が一部法令に検証を重点化した理由を手が回らなかったと説明したことについては「一つの言い方だが、一応、最終報告だ」として検証委の対応を容認した。 検証委は、川勝知事が議事内容を公開すると表明
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1年1カ月ぶり読経 熱海土石流被災の地蔵堂、修復完了
熱海市伊豆山で昨年7月に発生した大規模土石流で被災した逢初(あいぞめ)地蔵堂の修復が完了し、24日、地元の女性らが地蔵堂で1年1カ月ぶりに念仏を唱えた。心のよりどころの復活を喜んだ女性らは、犠牲者の冥福を祈りながら地域の一日も早い復旧復興を願った。 国道135号に架かる逢初橋近くに立つ地蔵堂は、土石流で大量の土砂が流入した。外壁などが大きく損傷したものの、堂内に安置されていた逢初地蔵は奇跡的に無事だった。 発生から2カ月後、災害で心を痛めた住民を励まそうと、同市のNPO法人「熱海キコリーズ」と「アタミスタ」が地蔵堂の修復プロジェクトに乗り出した。地元の間伐材を利用して床を張り替えたり、泥
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市長ら8人参考人招致、8月26日 熱海土石流百条委が決定
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)は25日、斉藤栄市長ら計8人を8月26日に参考人招致することを決定した。県の担当職員と土石流の起点となった盛り土を含む土地の前所有者の関係者に文書で質疑を行うことも決めた。 参考人の内訳は、斉藤市長のほか金井慎一郎副市長、退職者を含む市職員3人と、盛り土の現所有者の関係者3人。2度目の参考人招致となる斉藤市長には、不適切に造成された盛り土に関する行政対応や土石流被害の責任についてただすとみられる。 金井副市長に対しては、「県と市の対応の失敗」と総括した県の行政対応検証委員会の協議内容について確認する。現所有者の関係者らに
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熱海土石流 警戒区域解除のスケジュール 市、8月上旬説明会
熱海市は22日、大規模土石流に見舞われた熱海市伊豆山の復興計画検討委員会を市役所で開いた。市は、立ち入りが規制されている警戒区域の解除スケジュールや被災者の生活支援策に関する説明会を8月7~9日に開くことを明らかにした。 説明会は被災者や応急仮設住宅で暮らす住民が対象。土石流の起点に残る不安定土砂の撤去や、国の砂防ダムの建設スケジュールを示した上で警戒区域解除の考え方を説明する。原則2年とされている応急仮設住宅の家賃補助の方向性も示す。 検討委では、市の担当者が被災地の模型を使いながら、被災者向けの公営住宅や集会所、公園などを配置するイメージを説明した。委員からは、狭い道路の拡幅を求める
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熱海土石流百条委 市長ら7人参考人招致 8月下旬、工事関係者も
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)は20日、各会派の代表者らによる非公開の会合を開き、斉藤栄市長や被害を拡大させたとされる盛り土の工事関係者ら計7人を8月下旬に参考人招致する方針を固めた。7月25日の百条委で正式に決定する見通し。 会合後に取材に応じた稲村千尋委員長によると、6月末までに各市議から13人を証人または参考人として呼びたいとの申し出があったが、盛り土の現旧所有者らへの損害賠償請求訴訟が始まっている状況を踏まえ、対象者を絞り込んだ。 斉藤市長は4月に続き2度目の参考人招致になる。このほか退職者を含む市職員4人、盛り土の工事関係者2人も招致する。
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熱海土石流 前所有者「措置命令認めず」 発出手続きの静岡県に回答
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点で崩れずに残っている盛り土を巡り、前の土地所有者の不動産管理会社(神奈川県小田原市)は19日、撤去を命じる措置命令発出に向けた手続きを進めている県に対して「(崩れずに落ち残った箇所の)盛り土行為を行った事実はない」とする回答書を提出し、措置命令は認められないとの見解を示した。 県は「盛り土の造成を届け出の範囲外で行っていて条例違反」などとして、同社に対し1日に施行した盛り土規制条例に基づき措置命令発出の検討を進めている。19日を期限に弁明の機会を設けていた。 回答書では、2011年2月に現土地所有者に土地を売却して以降、造成工事は行っていないなどとして「新
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堆積土砂の上に盛り土 研究グループ「湧水が崩落引き金」【熱海土石流】
熱海市伊豆山で昨年7月に起きた大規模土石流を巡り、千木良雅弘京都大名誉教授(深田地質研究所理事長)や静岡大などの研究グループは15日、発生源になった逢初(あいぞめ)川上流域の地質などを調べたところ、上流側にある岩戸山(標高734メートル)で過去に発生した土石流の堆積土砂の上に盛り土が造成されていたと発表した。堆積土砂から湧き出た水が引き金になり、盛り土が崩壊したと推定した。 発生原因を究明するため、国土地理院が1962年に撮影した上流域の航空写真を分析したほか、盛り土付近の地質調査や地形観察などを実施した。 千木良名誉教授によると、約1万年以上前から岩戸山の斜面が崩れて土石流が繰り返し発
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議事録ない「検討会」開催 県検証委、周知せず2回【熱海土石流】
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、県と市の行政手続きを検証した行政対応検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)が正式な会合とは別に議事録を残さない「検討会」を2回開催していたことが14日までの県関係者への取材で分かった。川勝平太知事は検証の過程を全面的に明らかにすると表明していたが、検証委は「検討会」の存在や議事内容を説明していない。 県関係者によると、「検討会」と称した会合は4月28日と5月11日に開催。4人の委員全員と県職員OBの事務局員が対面やリモートで参加し、委員同士が意見交換して最終報告案の文面を調整したという。青島委員長と事務局が相談して開催を決めたとされるが、青島委員長は5月の最
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98年「今後規制」方針、検証委で説明なし 逢初川の砂防規制放置【熱海土石流】
熱海市伊豆山の大規模土石流で逢初(あいぞめ)川上流域の砂防法に基づく規制が放置されていた問題で、上流全体の規制について1998年に県が「今後進めていきたい」と国に方針を示していた経緯が、県の行政対応検証委員会で説明されていなかったことが、11日までに公表された議事録で分かった。重要な情報が行政対応の検証の俎上(そじょう)に載っておらず、検証委の報告書の信ぴょう性が問われそうだ。 検証委は砂防法以外の関係法令に検証を重点化した。砂防法に関しては「問題意識を持たなかった。手が回らなかった」(委員長の青島伸雄弁護士)としてほとんど議論していないが、上流全体を規制しなかった県の対応を「妥当」と判断
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川勝知事「報告を尊重」 逢初川の砂防規制放置で見解【熱海土石流】
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、盛り土(積み上げた残土)のあった逢初川上流域で砂防法に基づく規制が放置されていた問題で、川勝平太知事は11日の定例記者会見で、上流全体を規制しなかった県の対応を「妥当」とした県行政対応検証委員会の報告内容を尊重するとし、県に法的問題はなかったとする認識を明らかにした。 検証委は砂防法関連の検証について「手が回らなかった」(青島委員長)とし、他の関係法令を重点化して議論していた。 川勝知事は会見で「今から思えば適用すれば良かったという法令は他にもある」とした上で「結果論から言うのではなくて検証委の検討結果を最大限尊重するのが県の立場だ」と述べた。 地権者
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逢初川上流の砂防規制見送り 静岡県、地権者と交渉記録なし
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り逢初(あいぞめ)川上流域で砂防法に基づく規制が放置されていた問題で、砂防ダム設置後の1999年以降に上流の地権者と交渉した県の記録文書が存在しないことが、7日までの県への取材で分かった。県は地権者の不同意を規制見送りの理由だと説明しているが、地権者の意向を確認しないまま、規制を放置していた疑いが出てきた。 国は都道府県に砂防ダムの上流全体を規制するよう促し、規制の際は地権者の同意を得るよう求めている。 県によると、逢初川上流の砂防ダムの管理を担当している県熱海土木事務所内に当時の文書が残されていないか探したが、見つからなかったという。 上流の地権者は99
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熱海土石流「発生者に責任」「追跡を」 砂防法には触れず 8候補アンケート【参院選しずおか】
参院選静岡選挙区(改選数2)の候補者8人に、熱海市伊豆山の大規模土石流の教訓を踏まえて、盛り土(積み上げた残土)崩落事故の再発防止と復興支援の観点から必要だと考える施策をアンケートした。再発防止としては残土を発生させる業者の責任に着目した対応を求める回答が多かったが、砂防法の問題はどの候補も取り上げていない。 山崎真之輔氏(無所属現)は盛り土規制法制定後も残された課題として、土砂の発生者責任が明記されていないことや土砂の環境基準が定められていないことを挙げた。 残土を追跡できる仕組みの必要性に言及したのは平山佐知子氏(無所属現)。公共事業や民間事業に関係なく残土を最終処分まで把握す
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上流域砂防規制「地権者の同意必要」 土石流で露呈「開発優先」残る矛盾【参院選しずおか】
昨年7月に起きた熱海市伊豆山の大規模土石流で、崩落した盛り土(積み上げた残土)のあった逢初(あいぞめ)川上流域の現旧土地所有者はともに開発に意欲的だった。国や静岡県は残土搬入前の1999年、上流の地権者の「私権」を優先して砂防法に基づく残土搬入や盛り土の規制を見送り、放置していた。国は発災後も地権者の意向を重視する方針を変えていない。「開発が優先される規制」という国政の矛盾は残ったままだが、参院選で取り上げられていない。 「法的要件としていないが、(上流域の地権者の)同意を得ることが望ましい」。斉藤鉄夫国土交通相は6月下旬の記者会見で、砂防規制しようとする場所の地権者同意取得の考えを問われ
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盛り土旧所有者 請求棄却求める 損賠訴訟で準備書面【熱海土石流】
熱海市伊豆山の大規模土石流の遺族ら計84人が、崩落した盛り土を含む土地の現旧所有者らに計約58億円の損害賠償を求めた訴訟の弁論準備手続きが6日、静岡地裁沼津支部であり、旧所有者側が初出廷した。終了後の取材に、代理人の大森一志弁護士は、同日までに請求棄却を求める準備書面を同支部に提出したことを明らかにした。 準備書面では、原告側の指摘が具体性に欠け、どの行為に違法性があるのか「理解できない」と訴えた。盛り土造成と土石流の因果関係も明らかにしていないとした。 大森弁護士は「責任の押し付け合いをするつもりはない。責任の所在が誰にどの程度あるのかはっきりさせたい」と述べ、「被害弁償には誠実に対応
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知事、市長「遺族の気持ち受け止める」 被害者の会、県と市提訴へ【熱海土石流】
熱海市伊豆山の大規模土石流の遺族や被災者でつくる「被害者の会」が県と同市を相手取り損害賠償を求める訴訟を起こす方針を表明したことについて、川勝平太知事、斉藤栄市長は4日、それぞれ「ご遺族、被害者の皆様のお気持ちを真摯(しんし)に受け止めたい」とするコメントを発表した。 土石流の起点となった前・現土地所有者に対する損害賠償請求訴訟の補助参加について川勝知事は「新しい状況変化等も踏まえてさらに検討していく」と明言を避けたが、「原告側に寄り添った対応として最もよい方法を検討していくというスタンスに変わりはない」とした。 一方、市は6月28日、静岡地裁沼津支部に原告側で補助参加することを申し入れ
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熱海土石流1年、現場は今 理不尽な悲劇、それでも前へ【残土の闇 警告・伊豆山㊱完/終章 めぐる7・3㊦ 】
3日午前10時28分。あの大規模土石流の発生から丸1年が経過したことを告げるサイレンが熱海市内に鳴り響いた。最愛の人への追悼、理不尽な悲劇や進まない復興への怒り、そして地域再生への決意-。流された家の土台や泥がかぶったままの家屋が残る伊豆山地区の被災地には、土ぼこりを舞い上げるほどの強い風とともに、さまざまな人々の願いと誓いが渦巻いていた。 「まだ気持ちの整理ができない」。跡形もなくなった母陽子さん=当時(77)=の自宅跡に向かって手を合わせた瀬下雄史さん(54)はそう言葉を絞り出した。 逢初(あいぞめ)川源頭部に捨てられた大量の土砂にのみ込まれた母。その苦しみを想像するといたたまれなく
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残る1人「絶対に見つけ出す」 県警など一斉捜索 熱海土石流1年
熱海市伊豆山の大規模土石流発生から1年が経過した3日、県警は行方不明になっている太田和子さんの一斉捜索活動を伊豆山港周辺や撤去した土砂の仮置き場などで行った。県警170人に加え、関係機関と民間団体から30人が協力した過去最大の規模で臨み、発見につながる手掛かりを懸命に探した。 参加者は活動に先立って黙とう。山本和毅本部長は民間団体などへの謝意を伝えた上で「遺族の思い、地域の思いを胸に刻み、一刻も早くご遺族の元に帰す。見つけるその日まであきらめない。必ず見つけ出す」と改めて決意を述べた。 県警は1年間、1日も欠かさず捜索を続け、月命日の毎月3日には人員を増やし陸、海、空で大規模な活動を展開
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伊豆山小で追悼式 熱海土石流1年 行政手続き、謝罪の言葉なく
災害関連死を含めて27人が死亡し、1人が行方不明になった熱海市伊豆山の大規模土石流の発生から1年を迎えた3日、市主催の追悼式が伊豆山小で行われ、17世帯44人の遺族を含めて約90人が参列し、犠牲者の氏名が読み上げられた。消防に第一報のあった午前10時28分に合わせ、土砂が流れ下った逢初(あいぞめ)川沿いで関係者が黙とうした。 追悼式では斉藤栄市長と川勝平太知事が哀悼の意と復興への意欲を口にしたが、不適切な対応と指摘される行政手続きについて謝罪の言葉はなかった。 斉藤市長は「災害の経験や教訓を後世に伝え、歴史ある美しい伊豆山を取り戻さないといけない」とし、川勝知事は「新条例で危険な盛り土の
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遺族覚悟 責任と真相求め、県と市を提訴へ 熱海土石流1年
災害関連死を含め27人が亡くなり、1人が行方不明となっている熱海市伊豆山の大規模土石流は3日、発生から1年を迎えた。遺族や被災者らでつくる「被害者の会」(瀬下雄史会長)は、同市と県を相手取り損害賠償を求める訴訟を起こすことを明らかにした。変わらぬ苦しみや悲しみを抱えながら、市と県が盛り土の崩落を食い止められず、甚大な被害につながった法的責任を追及する。 「発生から1年が経過したが、誰も救済されていない」。被災の跡が生々しく残る現場近くで記者会見した弁護団の加藤博太郎弁護士は、強調した。同市は不適切な盛り土の造成を許し、長期間放置した。「過失は免れない」と厳しく非難。市に是正を求めず、森林法
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無責任体質に被災者憤り 熱海土石流1年 関係者核心語らず【残土の闇 警告・伊豆山㉟/終章 めぐる7・3㊤ 】
災害関連死を含めて27人が死亡し、1人が行方不明になった熱海市伊豆山の大規模土石流は3日で発生から1年。逢初(あいぞめ)川上流の盛り土(積み上げた残土)が崩落して下流の集落を襲った未曽有の「人災」。盛り土の現旧土地所有者や造成業者、行政の対応が厳しく問われたが、関係者は核心を語らず、誰も法的責任を認めていない。再び「7・3」はめぐる。真相解明を望む被災者の思いを置き去りにしたまま-。 発災から10カ月が過ぎた今年5月、熱海市議会の調査特別委員会(百条委員会)。盛り土の現旧所有者が初めて公の場で証言に立った。うそをつけば罰せられる証人尋問。大量の残土が搬入され、盛り土が造成された2009~
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社説(7月3日)熱海土石流1年 全容解明と支援 確実に
熱海市伊豆山の大規模土石流はきょう、発生から1年。災害関連死を含む27人が犠牲となり、いまだに1人の行方が分かっていない。県や市は「人災」との指摘が強まる大災害の全容解明とともに、被災者と信頼関係を築きながら、生活再建への支援を確実に進めてほしい。 土石流災害を受け、1日に県盛り土規制条例が施行され、5月には全国一律基準による包括規制を目的に盛り土規制法が成立した。実効性を高めるため、周知徹底や関係機関の連携、監視の強化などが今後の鍵となる。 盛り土規制条例は、広さ千平方メートル以上か、土砂量千立方メートル以上の盛り土を行う場合は県の許可制になり、違反者には最長2年の懲役を科す。従来、盛
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岐阜の小学4年生 路上ライブで被災者応援 熱海土石流1年
熱海市伊豆山の大規模土石流の発生から3日で1年。家族を亡くしたり、自宅を失ったりした被災者の心の傷は癒えていない。そんな地域を応援する声は今も全国から届いている。地元でも、住民の力になろうと1年の節目に合わせて一歩を踏み出す被災者もいる。 岐阜県高山市の小学4年生森安ひばりさん(10)が2日、大規模土石流からの復興を目指す熱海市伊豆山を応援しようと、JR熱海駅前で路上ライブを行い、駅前を行き交う観光客や市民に募金を呼びかけた。「熱海をずっと応援したい」。伸びやかな歌声とともに伝えたメッセージに多くの観客が共感した。 森安さんは昨年7月、土石流被害を伝える報道を見て「自分にできることはな
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節目の日 伊豆山に薬局開業 被災の千葉さん 熱海土石流1年
熱海市伊豆山の大規模土石流の発生から3日で1年。家族を亡くしたり、自宅を失ったりした被災者の心の傷は癒えていない。そんな地域を応援する声は今も全国から届いている。地元でも、住民の力になろうと1年の節目に合わせて一歩を踏み出す被災者もいる。 熱海市伊豆山の大規模土石流の発生から1年を迎える3日、被災者の一人で薬剤師の千葉久義さん(49)が地域で唯一の薬局「123(いずさん)」を開業する。高齢化が著しく、人口減少が進む地域を支えようと、新たな一歩を踏み出す。 国道135号沿いの千葉さん宅は、土石流による断水が解除された際、水道管が破損し水浸しになった。当時は避難生活中で、近所の住民から自宅
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静岡新聞社 熱海土石流取材班座談会【残土の闇 警告・伊豆山】
災害関連死を含め27人が犠牲になった熱海市伊豆山の大規模土石流は、盛り土の崩落が被害を拡大させたとされる。防げたはずの人災はなぜ起きたのか、行政の対応はどこに問題があったのか、再発防止には何が必要か―。長期連載「残土の闇 警告・伊豆山」の取材に当たった記者たちが、連載を振り返りながら思いを語った。 序章・1章 地域のアイデンティティー喪失 停止命令の経験 継いでいれば A)伊豆山は、1300年前に発見されたとされる日本三大古泉の一つ「走り湯」があり、熱海の中でも特に歴史を有する原点のような場所。平安時代から山岳修験の場として信仰も集めた。そんな由緒ある地域で土石流は発生した。 B)遺族
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静岡県 逢初川整備計画の原案提示、年内策定目指す 熱海土石流
静岡県は1日、昨年7月3日に大規模土石流が流れ下った熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川流域の防災強化や魅力的な地域づくりに向けた「逢初川水系流域委員会」の初会合を同市の県熱海総合庁舎で開き、川幅の拡幅などを盛り込んだ河川整備計画の原案を示した。 整備対象区間は河口から約1・3キロとし、うち4区間で川幅を広げたり、なめらかな河道に是正したりする。全体の計画期間は20年間で、総費用は約7億円を見込む。 県によると、逢初川は川幅が狭く流下能力が不足しているため、川幅を3・4メートルに広げて30年に1度降るレベルの雨量を安全に流せるようにする。地形的に制約がある区間を除き開水路構造にする。 被災
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熱海土石流 回答期限、前所有者反応なし 残存盛り土に市措置命令
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点で崩れずに残っている盛り土を巡り、市が前土地所有者の不動産管理会社(神奈川県小田原市)に出した措置命令について、市は30日、同社から回答期限の同日までに安全対策の計画書が提出されなかったことを明らかにした。県盛り土規制条例が施行される7月1日から指導権限は市から県に移るが、斉藤栄市長は30日の定例記者会見で、引き続き県と連携して対応していくと強調した。 土石流の起点の崩落現場付近には、推定2万立方メートルの土砂が不安定な状態で残る。市は今年3月、大雨で崩れる可能性を指摘した県の調査結果を踏まえ、同社に対策を求め行政指導を行った。しかし回答がなかったため、5月
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土石流教訓「風化させない」 熱海市消防長、伊豆で講演
熱海市消防本部の植田宜孝消防長が28日、伊豆山地区で発生した土石流の教訓などを語る防災講話を伊豆市の修善寺生きいきプラザで行った。元自衛官で、発生直後から警察や自衛隊との調整役を担った植田消防長は「みなさんと教訓を共有し、風化させてはいけない」と強調した。 発生直後に次々と入る情報や通報から「当初は何が起きたか分からなかったが、ただごとではないと思った」と語り、写真を使いながら時系列で救助活動の様子を説明した。熱海市特有の急坂や狭い道、二次災害の危険性など活動を難航させた原因や問題点を示し「当時はだれがいないのか、何人探せばいいのか全く分からなかった」と混乱した状況を振り返った。教訓として
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熱海土石流 行政が防げた「人災」 住民の生命最優先せよ【残土の闇 警告・伊豆山 取材班提言】
2021年7月3日に熱海市伊豆山で発生し、災害関連死を含め27人が死亡、1人が行方不明になっている大規模土石流。被害を拡大したいわゆる「盛り土」問題について、静岡新聞社熱海土石流取材班は同年12月から展開してきた長期連載「残土の闇 警告・伊豆山」の取材を基に三つの提言をまとめた。二度と悲劇を繰り返さないために、国、県、市町、そして地域は何をすべきか-。現場から浮かび上がったそれぞれの在り方を提言する。 ①新法だけでは不十分だ 伊豆山の大規模土石流災害は「盛り土」ではなく「急斜面への残土投棄」の問題だと捉えるべきだ。逢初(あいぞめ)川上流域の急斜面に残土処分場が造成されたこと
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熱海土石流 市長、自宅再建支援を約束 復興基本計画を公表
熱海市は29日、大規模土石流に見舞われた伊豆山地区の復興計画検討委員会を市役所で開き、復興の理念や方向性を定める基本計画を公表した。被災者が求めていた住宅の自力再建に対する公的な資金援助などを検討し、明らかにすると明示した。斉藤栄市長は8月上旬に具体策を説明するとし、「市としてしっかりと被災者を支える」と約束した。 基本計画は、これまで4回開かれた検討委で上がった意見や学識経験者の助言を踏まえ、斉藤市長が本部長を務める庁内組織「市伊豆山復興推進本部」が28日に決定した。 安全・安心の確保▽速やかな生活再建▽創造的復興-を基本方針の柱に据え、短期(3年)、中期(5年)、長期(10年)に分け
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熱海盛り土、地下水圧で軟化 静岡県検証委「解析で一定の裏付け」
静岡県は29日、熱海市伊豆山の大規模土石流の発生原因を技術的に調べる検証委員会の第4回会合を県庁で開き、逢初川源頭部に造成された盛り土内部に周辺から地下水が集まり、盛り土(積み上げた残土)が軟らかくなって崩落した可能性を最終報告案として示した。委員はその可能性が解析(シミュレーション)で一定程度裏付けられたとする見解で一致した。 県の調査によると、源頭部には元々、水を通しやすい自然の土砂がたまっていて、地下水が湧き出る場所だった。その上に盛り土(残土処分場)が造成され、水を通しにくい残土が外部から持ち込まれて積み上げられた。 県は会合で、大雨の影響で残土の下部に地下水がたまって水圧が高ま
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盛り土規制 国の有識者検討会 砂防法を含めず議論 逢初川上流の課題、検証されず 熱海土石流
熱海市伊豆山の大規模土石流災害で、盛り土規制の在り方を提言した政府の有識者検討会が、逢初(あいぞめ)川上流域の規制見送りが問題になっている砂防法を議論の対象にしていなかったことが28日までの取材で分かった。事務局の内閣府が会議資料として提示した七つの関係法令に砂防法を含めていなかった。地権者の私権制限の在り方など砂防規制を巡る課題が検証されておらず、同じ問題が繰り返される恐れがある。 有識者検討会は盛り土の災害防止を目的に昨年9月から12月にかけて非公開で4回開催。事務局は第1回会合で「盛り土等に関する規制について」と題した会議資料を配布していた。資料は、規制に関係する法律別に規制対象や罰
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心の復興目指して 人々の思い、点から線へ【残土の闇 警告・伊豆山㉞/第6章 逢初川と共に⑤完】
梅雨の晴れ間がのぞいた6月中旬、熱海市立伊豆山小の教室で山本直子養護教諭は児童に問いかけた。「みんなの心は今、何色ですか」。ピンク、ブルー、半分半分。思い思いの答えが飛び交う中、こう続けた。「7月が近づき、暗い気持ちになる人もいると思う」。和やかだった教室は一瞬、静まり返った。 土石流の現場が近い同校で行われた山本教諭とスクールカウンセラーによる「心の授業」の一こま。つらい出来事から節目を迎える時期に感情が揺れる「アニバーサリー反応」を説明し、「怖い、不安と思うことは自然な感情。その気持ちは一人で抱え込まなくていいんだよ」と、優しく呼びかけた。 グループに分かれて素直な気持ちを伝え合う児
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熱海市長 土石流遺族らに直接謝罪 「被害者の会」と会談
熱海市の斉藤栄市長が27日夜、同市伊豆山の大規模土石流の遺族、被災者でつくる「被害者の会」の会長で母親を亡くした瀬下雄史会長(54)らと市役所で会談し、行政として被害を防げなかったことについて直接謝罪していたことが分かった。発生から間もなく1年たつが、両者が面会し、斉藤市長が謝罪したのは初めて。 会談は非公式。斉藤市長の呼び掛けで行われた。28日に取材に応じた斉藤市長は、土石流の起点となった盛り土を含む現旧土地所有者らへの損害賠償請求訴訟に関し、市が原告である同会の補助参加人として協力していくことを改めて伝えたとし、「多くの住民の生命財産を守れず、大変申し訳なかったと申し上げた」と明かした
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失われた家、CGで復元図作成 熱海土石流被災者に無償提供へ
東京都武蔵野市の建築イラストレーター阿部雅治さん(72)が、熱海市伊豆山の大規模土石流で失われた住宅の復元図を無償提供する活動を始める。被災者らからの希望を受けてコンピューターグラフィックス(CG)で作製し、A3判のカラー印刷にして届ける。わが家の姿とそこで過ごした家族のさまざまな思い出をよみがえらせることで「被災した方々の心を少しでも温められれば」と願う。 東日本大震災を機に2012年から続ける「想い出パース」と名付けた取り組み。阿部さんは本業で約50年間、建物の完成予想図(パース)を作っている。震災後に「これからできる建物が描けるなら、なくなってしまったものも描けるのではないか」と、自
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復興、再発防止へ 発生1年を前に閣僚ら決意【熱海土石流】
熱海市伊豆山の大規模土石流の発生から7月3日で丸1年となるのを前に、28日の閣議後会見で被災地の復興支援や盛り土による災害の再発防止に向けて決意を示す関係閣僚の発言が相次いだ。 二之湯智防災担当相は、政府として昨年7月末にまとめた支援策に基づき、逢初(あいぞめ)川上流部への砂防ダムの新設や被災した事業者への補助金の特例措置など「災害復旧に精力的に取り組んでいる」と強調した。一方で、県営、市営住宅や賃貸アパートに入居している被災者が今月1日時点で依然72世帯、142人いると説明。「大変不自由を強いられていると思う」と指摘し、早期の生活再建が重要になるとの認識を示した。 斉藤鉄夫国土交通相は
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“分断”克服するには 主体は住民、尽くす議論【残土の闇 警告・伊豆山㉝/第6章 逢初川と共に④】
災害は生命財産を奪うだけでなく、時に地域を分断する。被害の重さや世代、家族構成などによって復興の考え方は違い、住民が一方向にまとまって歩み出すのは容易ではない。大災害を経験した地域は苦悩とどう向き合ったのか。ヒントを求めて熊本県を訪ねた。 阿蘇の雄大な田園風景が広がる人口約6700人の熊本県西原村。6年前の熊本地震で震度7を観測し、5人が死亡、約1800人が避難生活を強いられた。特に被害が大きかった布田川断層沿いの六つの集落は、家屋の約9割にあたる計295棟が全半壊した。 「こんな怖い所にはもう住めない」。発災当初、多くの住民は集団移転にかじを切ろうとしていた。一方で、愛着のある地域に残
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非公式の意見交換 議事録公表せず 熱海土石流・行政対応検証委
静岡県経営管理部総務課の佐野綾課長は27日の県議会総務委員会で、熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り県と市の行政手続きを検証した県行政対応検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)が正式な会合とは別に、委員同士の非公式の意見交換会を開いていたことを明らかにした。川勝平太知事は「検証の過程を明らかにしたい」として正式会合の議事録を公表したが、意見交換会は対象外になっている。 同委員会は昨年12月から今年5月にかけて正式会合を4回開催。県によると、その合間に委員同士が意見交換して報告書の文言調整などを行った。また、県職員の退職者2人が同委員会の事務局員だったとも説明。公募したが、2人しか応募がなかったと
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静岡県砂防課長 盛り土対応は所管外 規制放置巡り見解
熱海市の大規模土石流を巡り砂防ダムよりも上流域で砂防法に基づく規制が放置されていた問題で、静岡県砂防課の杉本敏彦課長は27日の県議会建設委員会で「盛り土という人工物の土砂流出に関しては開発行為を規制する(砂防法関連以外の)法令で対応すべきだった」と述べ、盛り土への対応は砂防部門の所管ではないとの考えを示した。 ただ、他県では砂防法関連の法令で残土の崩落に対応した事例が複数あり、国も開発区域や開発予想区域を規制の範囲とするように基準を示している。県の見解は整合性が問われそうだ。 国は1998年、上流全体を規制するよう県に求めたが、県は地権者の反対を理由に砂防ダム付近に限定したまま上流全体に
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行政と被災者に隔たり 対話乏しく描けぬ復興【残土の闇 警告・伊豆山㉜/第6章 逢初川と共に③】
「こんなの納得できない。計画の中身が空っぽだ」。5月下旬、市役所で開かれた熱海市伊豆山の土石流災害に関する伊豆山復興計画検討委員会。復興の方向性を示す市の基本計画案に対し、委員の1人で被災者の中島秀人さん(53)は憤った。市はこの日、11人の委員から了承を得て、次の段階に議論を進めようと考えていた。緊迫した会議室の奥で傍聴していた被災者も、中島さんの訴えに大きくうなずいた。 中島さんの自宅は逢初川中流域の警戒区域内にあり、現在は伊豆山を離れて暮らしている。同じ境遇の住民でつくる「警戒区域未来の会」の代表として、被災者の生活再建に向けた経済的支援などの必要性を何度も訴えてきたが、計画案にその
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熱海復旧復興へ 2回目の意見交換 被災者らワークショップ
熱海市は26日、大規模土石流で被災した同市伊豆山の復興まちづくり計画策定に向けた2回目のワークショップ(WS)を市役所で開いた。市内外で避難生活を送る被災者や被災地区の住民ら計27人が参加し、復旧復興に必要な施策やインフラなどについて意見を交わした。 前回のWSで挙がった意見を基に、避難所や生活道路などのハード面や、補助・支援制度、子育て支援策といったソフト面の課題を提示した。参加者は関心のあるテーマに分かれて語り合った。 街並みに関する議論をした男性は「道幅が狭く坂が多い地域なので、カーシェアなど住民が移動しやすくする施策を取り入れてほしい」と話した。補助・支援制度について意見交換した
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警戒区域の内外で 帰るべきか自問の日々【残土の闇 警告・伊豆山㉛/第6章 逢初川と共に②】
熱海市伊豆山の国道135号に架かる逢初(あいぞめ)橋。2021年7月3日、逢初川源頭部から流れ下った土砂やがれきは約1・7キロ下流にも襲いかかった。逢初橋の周辺には生々しい爪痕が今も残る。 そのわずか15メートルほど脇に今井秀和さん(60)が妻と暮らしていた築70年ほどの木造2階建て住宅がある。辛うじて無事だったが、今井さんが訪れるのは週2、3回程度。空気を入れ替えたら1、2時間で自宅を後にする。向かうのは隣町の神奈川県湯河原町。ホテルでの避難生活を終えた昨年8月から、夫婦の暮らしはアパートの一室に移った。 「日常がなくなってしまった。夜中にふと目が覚めてしまうことがあって」-。逢初橋周
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逢初川砂防 国「上流全体の規制を」 98年申請時、静岡県放置
熱海市伊豆山の大規模土石流の発生源となった逢初(あいぞめ)川上流域で残土投棄などを制限する砂防規制が見送られていた問題で、県が1998年に上流の一部に規制範囲を限定して国に申請した際、国が上流全体を規制範囲に含めるよう再検討を求めていたことが、24日までの静岡県への取材で分かった。県は上流域の地権者の反対を理由に規制範囲を限定する方針を変えず、上流全体の規制は「今後進める」と国に回答していた。 しかし、県はその後、規制範囲を砂防ダム付近に限定したまま放置した。国の要請に応じて上流全体を規制していれば、昨年7月の土石流で崩落した盛り土(残土処分場)が規制対象に含まれ、搬入の初期段階で残土投棄
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異なる境遇 擦れ違う思い 「分断」に苦しむ被災地【残土の闇 警告・伊豆山㉚/第6章 逢初川と共に①】
“あの日”から、毎月3日は熱海市伊豆山にとって特別な日になった。土石流が流れ下った逢初(あいぞめ)川流域。地元住民や被災者らは犠牲者を悼み、悲劇が繰り返されないように祈る。しかし同時に、境遇が異なる人々の心理的な隔たりが浮き彫りになる日でもある。復旧復興を目指す上で乗り越えなければならない「分断」という障害に地域は直面している。 11回目の月命日の6月3日。被災現場に近い寺院では、地元主要団体でつくる「熱海伊豆山で心をつなぐ集い」が発災時刻の午前10時半に合わせ慰霊法要を営んでいた。「被災者は今も大変な思いをしている。伊豆山の安心安全なまちづくりをお手伝いしたい」。
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不適切盛り土 静岡県内193カ所 県対策会議発足【熱海土石流】
熱海市伊豆山の大規模土石流を受け、静岡県は24日、全庁挙げて盛り土に関する情報共有や意思決定を行う盛土等対策会議(座長・出野勉副知事)を発足させた。初会合で不適切な盛り土が県内に193カ所あり、8割が県東部に集中していることを明らかにした。 県盛り土規制条例が7月1日に施行され、盛り土に関する規制権限が市町から県に移るのを前に設置した。県によると、不適切な盛り土は排水施設の不備や届け出と異なる造成などで、幹線道路沿いに集中している。193カ所のうち28カ所は是正済みで、141カ所が指導中、残る24カ所が指導予定。 今後、安定性を評価しランクに応じて定期巡回を行う。行政処分に関するノウハウ
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最下部の土砂「崩落しやすい性質」 静岡大教授ら調査【熱海土石流】
静岡大とふじのくに地球環境史ミュージアムなどの研究グループは24日、熱海市伊豆山で発生した大規模土石流で崩落した盛り土の最下部に位置していた土砂の調査結果を公表した。県庁で記者会見した同大の北村晃寿教授(古生物学)は「水を通しやすく崩落しやすい性質だった」と指摘。最下部の土砂は大規模な崩落が起きる前に流れ始め、下流側の砂防ダムにたまった可能性があるという。 研究グループは崩落した盛り土の最下部付近の試料を採取し、分析した。土砂を構成するのは10センチ前後の石を含む砂の層(含れき砂層)と丸みを帯びた石の層(亜円れき層)であることが判明した。北村教授によると、亜円れき層は沿岸由来で崩落しやすく
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熱海土石流 警戒区域の部分解除否定 斉藤市長、議会答弁
熱海市の斉藤栄市長は23日の市議会6月定例会の一般質問で、同市伊豆山の大規模土石流の被災地に設定されている警戒区域について「区域全体の安全確保が解除の要件だと考えている。部分的な解除は想定していない」と述べた。橋本一実市議への答弁。 警戒区域は災害対策基本法に基づき、市が昨年8月16日に設定した。区域内は原則立ち入り禁止で、市によると132世帯が応急仮設住宅などで避難生活を送っている。 解除時期は被災者の生活再建を大きく左右する。斉藤市長は8月上旬に説明会を開き、逢初(あいぞめ)川上流部の新砂防ダム、源頭部に残った不安定土砂の除去、河川改修といった安全確保に必要な工事のスケジュールなどを
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熱海土石流被災者「戻りたい」5割 避難世帯に意向調査
熱海市市伊豆山の大規模土石流で被災し、市内外で避難生活を送っている世帯に対し、市が行った意向調査で「伊豆山に戻りたい」と答えた世帯が約5割、「戻らない」が約3割、考えがまとまっていない世帯が約2割だった。22日の市議会6月定例会で、斉藤栄市長が高橋幸雄市議の一般質問に答えた。 調査は4月から個別面談で実施し、避難世帯130世帯のうち109世帯から回答を得た。「戻りたい」と答えた約5割のうち4割は自宅の修繕などにより帰宅が可能で、残りの1割は住宅を再建する必要があるという。 被災現場は立ち入りが規制される「警戒区域」に指定されている。市は8月に区域解除の見通しを示す予定。斉藤市長は、202
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前所有者、売却後も土砂搬入 現所有者「地位承継」拒否【熱海土石流】
熱海市は22日の市議会6月定例会一般質問で、同市伊豆山の大規模土石流の起点となった周辺に前土地所有者が土地売却後も土砂を搬入していたことを明らかにした。現所有者に県土採取等規制条例上の「地位承継」を求めたが、拒否されたことも明かした。 市議会調査特別委員会(百条委員会)の証人尋問で、現所有者は盛り土への関与を否定したが、斉藤栄市長は「前所有者だけでなく、現所有者にも責任がある」と米山秀夫市議に答弁した。 前所有者は2011年2月に土地を売却。市によると同年3月、現所有者の関係会社から、前所有者が土砂搬入を再開したとの連絡があった。市は翌月、前所有者に土砂搬入の中止を要請した。市観光建設部
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難波理事 静岡県の責任言及「根底に組織文化」 熱海土石流
難波喬司静岡県理事は熱海市伊豆山で発生した大規模土石流災害を巡る県の行政対応について「県民の生命、財産を守るため、ありとあらゆる方法を尽くすという行動に至らなかった」と述べ、県の責任に改めて言及した。相坂氏への答弁。 難波県理事は県職員が災害を未然防止できなかった要因として「最悪の事態を想定できなかったこと」と「自分が所管する法令の権限範囲内での事務にとどまったこと」の2点を上げ、「根底にはこういう行動となってしまう組織文化がある」と述べた。 その上で最悪の事態を想定し、組織として共有、対処することが重要だとし「職員研修や日常業務などさまざまな機会を捉え、土石流災害の事例を教訓とした意識
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静岡県盛り土規制、周知期間短く混乱 7月1日施行、相談殺到
盛り土(積み上げた残土)の崩落が被害を拡大させたとされる熱海市伊豆山の大規模土石流を受け、7月1日に施行される県盛り土規制条例。3月の県議会で制定されたが、周知期間が短いことや制度の複雑さから県に相談が殺到し、関係業者から事業の遅れを懸念する声が上がっている。県は他県にも同様の規制があるとして粘り強く協力を求める方針。混乱の中での“船出”となる新条例は、野放図な残土投棄の歯止めになるのか。=関連記事26面へ 「工事が新条例の対象かはっきりしない」「他の法令との関係は」―。施行まで1カ月を切った6月上旬。静岡市葵区で開かれた新条例の説明会の終了後、会場に残った建設業
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赤いビル解体始まる 濁流直撃、被害の象徴 熱海土石流
熱海市伊豆山で昨年7月に発生した大規模土石流で、濁流が直撃する動画が交流サイトで拡散され、土石流被害の象徴的な存在となっていた「赤いビル」の解体工事が21日、本格的に始まった。住人で市議の高橋幸雄さん(66)は「悲しさや悔しさはあるが、どうあがいても残せない。今は前向きに考えるしかない」と言葉を絞り出した。 ビルは鉄筋コンクリート造り4階建て店舗兼住宅の「丸越酒店」。昨年7月3日午前10時55分ごろ、逢初(あいぞめ)川上流部から流れ下った大量の土砂が直撃し、3階以下に土砂が流入。「大規模半壊」と判定された。解体費用は公費で賄われる。 高橋さんは現在、神奈川県湯河原町のみなし仮設住宅で暮ら
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盛り土の安全対策規定 政府、防災基本計画を修正
政府の中央防災会議(会長・岸田文雄首相)は17日、国や自治体の災害対応の柱となる防災基本計画を修正した。昨年7月に熱海市伊豆山で起きた大規模土石流の教訓を踏まえ、盛り土の災害防止対応を新たに規定した。大規模災害時の安否不明者の氏名公表に備え、都道府県と自治体が事前から連携に努める方針も盛り込んだ。 全国の盛り土総点検の結果を受け、国が都道府県や自治体が行う安全性把握の詳細調査をサポートするほか、人家・公共施設に被害を及ぼす危険性が高いと判断された盛り土の撤去を支援する。自治体が所有者や開発行為者らに撤去命令などの是正指導をすることも明記した。 熱海の土石流では県が安否不明者の氏名公表にい
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熱海土石流 百条委の成果聴取 静岡県議会自民PT
熱海市伊豆山で発生した大規模土石流の行政対応を検証するため県議会最大会派の自民改革会議が立ち上げたプロジェクトチーム(PT)のメンバー5人が15日、土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)の稲村千尋委員長と市役所で面会し、百条委の成果などをヒアリングした。 稲村委員長は、崩壊した不適切な盛り土の造成に関わったとされる業者や土地の現旧所有者ら計8人の証人尋問を14日までに行ったことを説明。盛り土が違法に造成された過程の中で、さまざまな課題を時系列に浮き彫りにすることができたと伝えた。PTのメンバーは盛り土の崩落現場なども訪れ、県が行った応急工事の状況を視察した。 熱海土石流災害を巡
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砂防規制 地権者同意の必要性 川勝知事「一概に言えず」【熱海土石流】
熱海市伊豆山の大規模土石流で県が地権者の不同意を理由に逢初(あいぞめ)川上流域の砂防規制を見送っていた問題を巡り、川勝平太知事は15日の定例記者会見で、砂防規制する際の地権者同意の必要性について「ケース・バイ・ケースだ。一概に同意は要らないとか、同意を得るべきだとかは言えない」との考えを示した。 土地所有者が開発行為をしようとする場合は、同意が得られずに砂防規制できない可能性がある。川勝知事は「地形も場所も違うし、(同意を得ないで)規制をすぐかけなくては危ない所と、私権に関することになると同意を得た方がいい所もある」と説明した。 地形など現場の危険性を考慮して同意取得の必要性を判断すべき
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熱海土石流 基本方針案、9月公表 盛り土規制法施行へ国交省
熱海市伊豆山の大規模土石流を踏まえて5月に成立した盛り土規制法を巡り、国土交通省の宇野善昌都市局長は15日、法律で定められた基本方針や基礎調査の実施要領の案を9月中に公表する考えを示した。盛り土の防災対策を協議するために設置した有識者検討会の初会合で言及した。 規制法は来年5月までに施行されるが、宇野局長は実務を担う都道府県などの円滑な準備に向け「施行前からさまざまな情報を公開していく必要がある」と強調した。 検討会に対しては、工事許可に当たっての技術的基準▽規制区域指定の考え方▽基礎調査の在り方▽強制力のある命令の発出や行政代執行など不法盛り土への自治体の対応方法―の4項目を主に議論す
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逢初川上流域の砂防規制見送り 県の説明、信ぴょう性疑念【熱海土石流】
昨年7月、盛り土崩落に伴い土石流が発生した熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川上流域で盛り土などの砂防規制が約20年間見送られていた問題で、静岡県が地権者の同意取得が必要だと判断した根拠と説明していた行政手続きの解説書に、同意取得が必要だとする文言が記されていなかったことが、14日までの取材で分かった。地権者の不同意を理由に砂防規制を見送ったと主張してきた県の説明の信ぴょう性が揺らいでいる。 県が根拠としてきた解説書は、国土交通省砂防部が監修した「砂防指定地実務ハンドブック」。地権者の同意について「得られるよう努める必要がある」と記述している。県はこの解説書を引用し、同意が取れないから規制を見
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太陽光発電施工業者 盛り土への関与否定 熱海土石流百条委
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)は14日、盛り土の崩落現場南側の太陽光発電施設などを施工した業者の男性に対する証人尋問を行った。男性は発生残土を盛り土崩落現場に投棄していないと証言。盛り土そのものへの関与も否定した。 男性は2016年、盛り土を含む土地の現所有者からの依頼で、太陽光発電施設を施工した。現所有者がグラウンドを整備しようとしていた隣接地の伐採や造成も行った。 男性は太陽光発電施設の現場で発生した残土は「場内処理した」と述べた。隣接地では大雨の影響で崩れていた小山を崩し、隣の沢を埋め立てたと説明。土石流の起点となった逢初(あいぞめ)川源頭部に
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政府・国会の不作為 法規制 教訓生かせるか【残土の闇 警告・伊豆山㉙/第5章 繰り返す人災⑥完】
熱海市伊豆山の大規模土石流を踏まえ、2022年5月に国会で成立した盛り土規制法が審議されていた4月1日の衆院国土交通委員会。建設残土による不適切な盛り土造成が各地で相次ぎながら、全国一律の法規制をしてこなかった国の責任を野党議員がただした。当初はかわした斉藤鉄夫国交相だったが、重ねての追及を受けて最後に一歩踏み込んだ。 「十分でなかったところがある。そのことは認めたい」 残土を巡る問題は以前から政府も把握していた。例えば、03年の国交省の「建設発生土行動計画」。施策の一つに法的対応の検討を掲げた。しかし、計画は達成状況の評価もなく08年度に「建設リサイクル推進計画」と統合された。環境政策
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盛り土規制条例7月施行 静岡県の担当者が解説
熱海市伊豆山の大規模土石流を受けて7月1日に施行される静岡県盛り土規制条例の説明会(建通新聞社主催)が10日、静岡市内で開かれ、県盛土対策課の担当者が新条例の概要を説明した。 条例の施行により、盛り土造成時に搬入される土砂が汚染されていない証明の提出や、工事中に半年に1度、土壌・水質調査の実施などが求められる。担当者は条例の要点を解説し「業者には非常に重い負担となるが、熱海の問題があったのでぜひ協力をお願いしたい」と呼びかけた。 県によると、新条例の概要や手引きは盛土対策課のウェブサイトに掲載しているが、複雑な仕組みのため電話での問い合わせが多く寄せられているという。8、9日に三島、浜松
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防災白書 熱海土石流に重点 政府閣議決定「政策検討契機に」
政府は10日、2022年版の防災白書を閣議決定した。21年度の主な災害で熱海市伊豆山の大規模土石流を中心に取り上げた。盛り土の法規制や災害時における安否不明者の氏名公表、避難の在り方など浮き彫りになった課題への政府の対応も重点的に記載。大規模災害から命を守る観点で、幅広い防災分野の政策的な検討が進む契機になったと位置付けた。 7月3日の土石流発生後の官邸対策室設置から同日中の内閣府調査チームの県庁派遣や特定災害対策本部会議の開催、12日の菅義偉首相(当時)の視察、30日の支援策のとりまとめまで、一連の政府の動きを振り返った。 起点部の盛り土により被害が甚大化したのを受け、全国約3万6千カ
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大阪・崩落事故の後始末 「13億円」回収めどなく【残土の闇 警告・伊豆山㉘/第5章 繰り返す人災⑤】
大阪市旭区の幹線道路沿いに立つ茶色いマンション。この一室が、大阪府豊能町で2014年に建設残土の崩落事故を起こした建設業者の所在地になっている。インターホンを押しても反応はない。管理会社に問い合わせると、「個人しか入居していない。法人の契約はない」といぶかしむ女性の声が返ってきた。 府によると、業者は残土を取引するためだけの会社だったとみられ、マンションに登記が残るだけ。既に実体はない。同社や経営者は当時、府砂防指定地管理条例違反で摘発された。不正口座に3億円あったとも報道されたが、府が金融機関に照会したところ残金は数百円だったという。 経営者は名義を貸していただけとみられる。実質的な経
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森林法適用 議論尽くされず 熱海土石流、静岡県検証委議事録
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り静岡県が設置した行政対応検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)で、森林法を適用し逢初(あいぞめ)川源頭部の開発行為を規制しなかったことに対する議論が十分尽くされないまま最終報告がまとめられたことが9日、分かった。県が同法を適用していれば開発行為に強い規制がかけられたとみられるが、適用しなかった判断の妥当性は吟味されないままだった。県が同日、議事録を公表した。 開発面積が1ヘクタールを超えれば、同法に基づく林地開発許可の対象になり、県が可否を判断する。1ヘクタール未満は、県土採取等規制条例に基づき市町に届け出る。伊豆山の土石流では、神奈川県小田原市の不動産管理会
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熱海土石流 市県職員に証人尋問 市議会百条委、追加実施で合意
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)は9日、各会派の代表者らによる非公開の小委員会を開き、土石流の起点になった盛り土の行政手続きや指導に関わった市と県の職員に対する証人尋問を追加して実施することで合意した。期日は未定で、7月以降になる見通し。 百条委はこれまでに、退職者を含む県と市の職員延べ10人を参考人招致した。小委員会では、委員から疑問点が残るとして再度2~3人を証人として質疑したいとの意見があったという。百条委の稲村千尋委員長は取材に、具体的な人選や日程調整などを踏まえ「早くても1カ月は先になる」との見方を示した。 小委員会は、追加の証人尋問後に調査
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損賠訴訟 市の補助参加を可決 熱海市議会、全会一致で
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、遺族、被災者が起点の盛り土を含む土地の現旧所有者らに約58億円の損害賠償を求めた訴訟で、市は9日、原告側の補助参加人として裁判に参加するための議案を市議会6月定例会に提出し、全会一致で可決された。市は訴訟の次回期日に向け、原告側と調整に入る。 斉藤栄市長は議会後の取材に「百条委員会などで被告側が事実と異なることを発言していると感じている。市として原告側を支えていきたい」と述べた。 被告の現所有者側は5月、県と市、斉藤市長に訴訟への参加を促す訴訟告知を行った。原告側も県と市に参加を要請していた。県は争点が明確になった段階で判断するとしている。
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静岡県の主張迷走 砂防規制放置問題 「他の法令と重複」に疑問の声【熱海土石流】
昨年7月に土石流が発生した熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川の上流域で砂防法に基づく規制区域を砂防ダム付近に限定し、上流域全体の「面指定」をしないまま約20年間放置していた問題を巡り、県の主張が迷走している。県は放置した理由に「他の法令との規制重複」を挙げるが、砂防法以外の法令は土砂投棄や盛り土造成が一定の面積を超えるまで規制の対象にならず、重複しない。面積に関係なくこれらの行為を制限できる砂防規制が適用されていれば、土砂搬入の早い段階から強い規制力をもって対応できていた可能性がある。 ■「管理された植林」 県は砂防ダムを設置した1999年に「渓流の荒廃は進んでいるものの流域上部は管理さ
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2014年大阪の「事件」でも… 「行政の性」宝刀抜けず【残土の闇 警告・伊豆山㉗/第5章 繰り返す人災④】
残土に関する国や県の規制強化が進まず、県内では東部の市町が独自に悪質な業者との対決姿勢を強めていた頃、大阪府の小さな町で「事件」が起きた。2014年2月、府北部に位置する豊能(とよの)町で、府道沿いに盛られた大量の土砂が崩落し、府道や棚田になだれ込んだ。幸い、人的被害はなかったが、もし近くに民家があったり、車両が走っていたりしたら、ひとたまりもなかったであろうことが容易に分かる惨状だった。 「そそり立つ壁のようだった」。同町希望ケ丘の藤高治生さん(76)は、土砂が積み上げられていた当時を振り返る。崩落する数日前には、土砂がぽろぽろと府道にこぼれ落ち、町役場に複数の通報があったという。府には
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違反“やり得” 追跡限界 矢面に立つ東部市町【残土の闇 警告・伊豆山㉖/第5章 繰り返す人災③】
未舗装の細い道を進むと、木立の奥に高さ十数メートルの残土の壁が見える。今月1日、富士山麓の富士市大淵。重機を操作する作業員は、訪れた市職員を「依頼されているだけ。何も分からない」とあしらった。市職員は「捜査権限のない僕らをなめている」と怒りをこらえた。 首都圏から本県に押し寄せる残土の矢面に立ったのは県東部の市町だった。1997年に小山町が許可制と罰則を盛り込んだ県内初の土砂条例を施行すると、同様の動きは富士山麓に広がった。現在は9市町に条例がある。法制化や県の規制強化が進まない一方、2010年代以降、市町の行政処分だけが急増した。 主戦場の一つは富士市。11年の条例施行後、市内の許可事
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盛り土情報 静岡県、一元管理へシステム構築
静岡県は熱海市伊豆山の大規模土石流災害で崩落した盛り土の造成を巡り、関係部局の情報共有が不十分だった問題を改善するため、部局横断で情報をオンラインで共有する「盛り土管理システム」を新たに構築する。7日に発表した県の2022年度一般会計6月補正予算案に事業費450万円を計上した。22年度中の運用開始を目指す。 システムには、県民から通報を受けた不審な盛り土に関する情報を入力する。情報を基に、県盛土対策課のパトロール班「盛土監視機動班」が現地確認し、ドローンなどで撮影した写真や動画を登録する。盛り土の違法性の有無などを関係部局間で確認するとともに、その後の定期的な監視情報もシステム上で一元的に
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土石流被災地で活動の鈴木さん 災害協定の事例、課題紹介
静岡県は6日、災害時応急対策協定を結んでいる事業者を対象にした研修会を静岡市葵区で開いた。熱海市伊豆山で発生した土石流災害で県被災者支援コーディネーターとして活動した鈴木まり子さん(62)が、行政と企業が結ぶ協定が機能した事例や課題を紹介した。 鈴木さんは避難所となったホテルで、避難所に入るボランティア団体の管理の仕組みづくりや女性限定の情報交換会の運営に携わった。事業者や団体の連携では、地元の公民館に避難している被災者への弁当提供や段ボールベッドの配送など、市との災害時の協定が生きた事例があったと説明した。 一方、協定先の定期的な見直しがされず、発災時に具体的にどのような手順で支援する
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首都圏発展の陰で 副産物、条例逃れ地方へ【残土の闇 警告・伊豆山㉕/第5章 繰り返す人災②】
東京に隣接し、ベッドタウンとして発展してきた千葉県市川市。江戸川河口に広がる平野の一角、ダンプカーや大型トラックが音を立てて行き交う湾岸道路沿いに小高い丘がある。木々がうっそうと茂る標高37メートルの山は地域名を冠して「行徳富士」と呼ばれるが、その正体は名称に似つかわしくない残土の山だ。 近くを散歩していた70代男性は「この地域に住み始めて40年。当時から山はあった」と振り返った。周囲にあるのは人家ではなく産業廃棄物の処分場。「今では木が生えて自然の山に見えるでしょ。危険性もないし、『行徳富士』が残土の山だと知る人はもう地元に少ないよ」と気に留めた様子はない。 残土は高度経済成長に伴う首
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熱海土石流 伊豆山復旧、復興へ 県と市が国に要望
静岡県と熱海市は6日、昨年7月の大規模土石流で甚大な被害を受けた同市伊豆山地区の復旧・復興に向けた要望書を国に提出した。出野勉副知事と斉藤栄市長が国土交通省で中山展宏副大臣と面会し、復興まちづくりや住宅再建への国庫補助、技術的助言を求めた。 逢初(あいぞめ)川上流部で行われている砂防ダムの新設など国直轄緊急事業の早期完成、護岸復旧や治水安全度の向上を目的とした県の逢初川改修事業に対する防災・減災対策等強化事業推進費の採択も盛り込んだ。 冒頭を除き非公開。斉藤市長は終了後の取材に「市道整備や今後進めていく宅地造成への財政、技術面の支援をお願いした」と述べた。中山氏からは建物に関しても国の制
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熱海土石流 損賠訴訟補助参加 静岡県「現時点で難しい」
静岡県は6日、熱海市伊豆山で発生した大規模土石流災害の損害賠償請求訴訟を巡り、現時点で「補助参加人」として裁判に参加するのは難しいと発表した。「訴状に対する被告側の答弁書が出そろっておらず、争点が整理されていないため」としている。争点が明確化した段階で補助参加するかどうか判断する。 補助参加は民事訴訟法上「訴訟の結果について利害関係を有する」ことが要件とされる。県は訴状や現所有者の答弁書を精査し「現時点では裁判の結果で利益、不利益を受ける利害関係者にあたらない」と判断した。川勝平太知事は「遺族や被害者に最も良い方法で協力していく」とのコメントを出した。 現所有者側は5月の第1回口頭弁論で
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土砂は神奈川から 規制緩く「捨て賃」に差【残土の闇 警告・伊豆山㉔/第5章 繰り返す人災①】
「伊豆山赤井谷残土処分場」。大規模崩落によって土石流を引き起こし、熱海市伊豆山の集落をのみ込んだ「盛り土」は県や市の行政担当者の間でこう呼ばれていた。残土は工事で発生する土砂。残土処分場には2009年から10年にかけて膨大な量がダンプカーで運び込まれ、表面上は「盛り土」に成形された。しかし、問題の本質は「盛り土の実態が、捨てるだけの残土だったこと」(静岡産業大の小泉祐一郎教授)だった。では、残土はどこから持ち込まれたのか。 小田原、二宮、平塚、茅ケ崎、藤沢、横浜…。工事関係者への当時の聴取内容が残る静岡県や熱海市の公文書をたどると、搬入元として神奈川県の複数の地名が登場する。
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不明女性名義の診察券 熱海土石流、土砂集積所で発見
静岡県警は3日、熱海市伊豆山の大規模土石流で行方不明になっている太田和子さんの一斉捜索活動を行い、太田さん名義の病院診察券2枚を発見したと発表した。 県警によると、発見場所は旧小嵐中敷地内の土砂集積所。被災現場から撤去した土砂を大型重機のふるいにかけて遺留品を捜索していたところ、隊員が見つけたという。診察券は後日、遺族に返還する。 県警は「今後も捜索活動に力を入れていく」としている。
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落ち残り東側「崩れやすい」 神奈川東部から搬入か 静大教授が土砂分析【熱海土石流】
静岡大とふじのくに地球環境史ミュージアムの研究グループは3日、熱海市伊豆山の大規模土石流の起点付近で落ち残った盛り土のうち、東側の土砂を分析した結果を発表した。県庁で記者会見した同大の北村晃寿教授(古生物学)は、西側で落ち残った盛り土と比べて粒子が細かいため、比較的崩れやすい土砂の可能性があると指摘した。搬入元はこれまで分析した土砂と異なり、神奈川県東部が有力という。 北村教授は3月30日と5月2日、崩れずに残った盛り土の一番東側に当たる斜面で土砂を採取し、残った盛り土の西側部分の土砂と比較した。共に県外から持ち込まれたとされる黒色の土砂。 分析の結果、土砂に含まれる貝殻の種類や鉱物など
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応急の排水設備公開 被災者「まだ不安ぬぐえない」【熱海土石流】
静岡県は3日、熱海市伊豆山の大規模土石流の起点で崩れずに残っている盛り土の崩落を防ぐために応急的に整備した排水設備を被災者や住民に公開した。土砂災害の危険が高まる出水期を前に、初めて起点に立ち入った被災者からは「まだ不安がぬぐえない」との声や「悔しさがこみ上げてきた」と、ずさんな盛り土を造成した業者への怒りの声が聞かれた。 起点には、約2万立方メートルの盛り土が不安定な状態で残っている。県は4月28日から今月2日まで、崩落部分に排水路などを設ける工事を行った。県熱海土木事務所の杉本文和所長は「雨水の流入と地下水位の上昇を抑え、一定の安定性を確保した」と説明。一方で「豪雨による崩壊の恐れは
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熱海土石流発生から11カ月 被災者ら現場付近で黙とう
熱海市伊豆山の大規模土石流の発生から11カ月が経過した3日、被災者らでつくる「被害者の会」は発生時刻の午前10時半ごろ、被災現場付近で慰霊集会を開き、犠牲者に黙とうをささげた。 現場の「警戒区域」には雑草が生い茂り、大きく損壊したままの住宅が何軒も残っている。同会の副会長で自宅が全壊した太田滋さん(65)は「なぜこんなことになってしまったのかと毎日思っている。11カ月たっても目に見える変化はない」と話した。 市内外の応急仮設住宅で暮らす被災者の多くは、生活再建の見通しが立たずに苦しんでいる。市は現場を用地買収し、宅地造成した後に住民に分譲する「小規模住宅地区改良事業」を採用する方針を示し
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行方不明の太田さん 静岡県警が一斉捜索 熱海土石流11カ月
関連死を含めて27人が死亡した熱海市伊豆山の大規模土石流は3日、発生から11カ月を迎えた。県警は同日午前、行方不明になっている太田和子さんの一斉捜索活動を約100人態勢で行い、被災現場から撤去した土砂の集積所や伊豆山港の周辺海域などで太田さん発見につながる手掛かりを探した。 熱海港芝生広場の土砂集積所では、高く積まれた土砂を大型重機のふるいにかけ、埋もれた石やがれきを選別。強い日差しに照らされながら、機動隊員は遺留品が紛れ込んでいないか手作業で慎重に調べた。 別の隊員らは太田さんの自宅付近や消波ブロックが並ぶ海岸沿いを見て回り、海難救助隊の潜水士による海中捜索も実施した。県警の高橋誠警備
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伊豆山港、アワビ漁復活へ海藻移植 県水技研と地元漁業者
静岡県水産・海洋技術研究所伊豆分場と熱海市伊豆山の漁業者でつくる伊豆山漁業会は2日、同市の伊豆山港内で藻場造成のための海藻移植作業を行った。伊豆山近海では5年ほど前から、広範囲で海藻がなくなる「磯焼け」が深刻化し、特産のアワビなどの成育に影響を与えている。昨年7月の大規模土石流の打撃も受けている地元漁業者は「漁場が復活してほしい」と願った。 同分場から運び込まれたカジメの幼体やアカモクの母藻が付いた計30個の石を、地元の漁師が港内の水深2~3メートルの海底に沈めた。 カジメなどの海藻はアワビの主食になる。しかし近年は魚の食害や黒潮の大蛇行などの環境異変により藻場が激減し、アワビの漁獲量に
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熱海土石流 砂防規制放置、県「地権者の同意得にくいと判断」
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、土石流危険渓流の逢初(あいぞめ)川上流域で盛り土を規制する区域「砂防指定地」の拡大を見送り、約20年間放置していた問題で、静岡県は2日、規制拡大を見送った理由に関し「(地権者の)同意を得にくいと判断した」と推測する見解を発表した。ただ、当時の関係職員にヒアリングは実施しておらず、地権者との交渉記録など具体的な根拠は示さなかった。 関係職員に聴取していない理由について、県庁で記者会見した難波喬司理事は「当時の担当者の判断というよりも、われわれが一般的にどのような事務をやっているかを考えれば、なぜ、このように指定(申請)したか分かる。ヒアリングするまでもない事
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JR、運転規制に「土壌雨量指数」 東海道新幹線で導入開始
昨年7月に熱海市伊豆山で発生した大規模土石流を受け、JR東海は雨による東海道新幹線の運転規制基準を見直し、1日から気象庁が発表する「土壌雨量指数」の導入を始めた。 土壌雨量指数は、降った雨が水分量として土壌にどれだけたまっているかを示す。気象庁が土砂災害警戒情報などの発表基準としている。 東海道新幹線ではこれまで、沿線59カ所(県内は18カ所)に設置した雨量計で1時間雨量、10分間雨量、降り始めから降り終わりまでの連続雨量を測り、規制値を超えた場合に徐行や運転見合わせをしていた。今後は従来の3基準に加え、土壌雨量指数も活用する。 対象となるのは、土石流などが発生した際に運行に影響が出る
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残存盛り土の安全対策 前所有者「受け入れられず」【熱海土石流】
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点で崩れずに残っている盛り土を巡り、斉藤栄市長は1日、県土採取等規制条例に基づき前土地所有者の不動産管理会社(神奈川県小田原市)に安全対策を命じる措置命令を発出したことについて「前所有者が誠実に対応することを求める」とのコメントを発表した。一方、同社の代表(72)は取材に「命令を受ける立場になく、受け入れられない」と主張した。 熱海市によると、措置命令は県との協議の上、5月31日付で出した。崩落防止などの安全対策が必要として、6月30日までに実施計画を市に提出するよう命じている。 これに対し、同社の代表は「土地の管理権は現所有者にあり、安全対策も現所有者が行
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残存盛り土の安全対策 熱海市、前所有者に措置命令 熱海土石流
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点に残っている盛り土を巡り、市は1日までに、県土採取等規制条例に基づき、盛り土造成計画を届け出た前土地所有者の不動産管理会社(神奈川県小田原市)に盛り土の安全対策を命じる措置命令を発出した。関係者への取材で分かった。市が同社に措置命令を出したのは初めて。 命令は5月31日付。6月30日までに安全対策工事の計画を市に提出するよう求めている。市は2011年にも措置命令を出す方針を固めたが、同社側が防災工事に着手し、一定の安定性が確保されたとして命令を見送った。しかし工事は未完のまま放置されていた。 市は今年3月末、大雨で崩れる恐れがあるとした県の盛り土安定性調査
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難波副知事退任で余波 土石流、陣頭指揮は誰? 遺族ら不安の声
任期満了に伴い難波喬司氏(65)が副知事を退任し、熱海市伊豆山の大規模土石流の対応について、県として誰が権限を持って陣頭指揮を執るのかあいまいになっている。川勝平太知事は県理事となった難波氏に従来通りの役回りを求めるが、県理事は部長級の一般職。難波氏も「副知事とは権限が異なる」との認識を示す。後任の副知事は空席のままで、遺族からは不安の声も漏れる。 「部長、副知事、知事に一つ一つ丁寧に相談する必要がある。これまでとはやり方がだいぶ違うと思う」。難波氏は副知事退任日の5月17日、記者会見で語った。 会見は、県の行政対応検証委員会の最終報告に対する県の見解を表明する場として設けられた。最終報
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熱海土石流 市の損賠訴訟参加 6月定例会に議案提出へ
熱海市伊豆山の大規模土石流の遺族らが起点の盛り土を含む土地の現旧所有者らを相手取った損害賠償請求訴訟を巡り、斉藤栄市長は30日の市議会議会運営委員会で、市が原告側の補助参加人として訴訟に参加するための議決を得るため、6月定例会に関連議案を提出することを明らかにした。議会側は同議案を6月9日の定例会初日に先議することで了承した。 土石流を巡る訴訟では、被告の現所有者側が18日の第1回口頭弁論で県、市、斉藤市長に訴訟への参加を促す訴訟告知を申し立てた。市は既に原告側に補助参加の意向を伝えていて、原告側も市と県に補助参加を求める文書を送付している。 斉藤市長は「被災者のために何かできることがな
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助かったはずの命 迷いと混乱の果てに…【残土の闇 警告・伊豆山㉓/第4章 運命の7・3⑤完】
熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川源頭部に端を発した黒い土砂の波は、集落を襲い続けた。伊豆山が阿鼻(あび)叫喚の現場と化す中、市役所には親族や知人の安否を気遣う問い合わせが全国から殺到していた。だが、現地の被害情報は断片的にしか入らず、対応した職員は「調査中です」としか答えられない。混乱と焦りの中で時間だけが無情に過ぎ、被害はさらに拡大していった。 発生の第1報から1時間半が経過した正午ごろ、斉藤栄市長は、川勝平太知事を通じて自衛隊に派遣要請をした。既に土砂は起点から約1・7キロ離れた国道135号にまで達し、逢初橋のたもとの住宅を破壊。住人の女性が亡くなった。 国道から山側の状況は見えず、
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伊豆山再生へ語り合う 復興計画に被災者の声反映へ【熱海土石流】
熱海市は29日、大規模土石流で被災した伊豆山地区の復興まちづくり計画に、被災者や住民の意見を取り入れるためのワークショップ(WS)を市役所で初めて開いた。市内外の応急仮設住宅で避難生活を送っている被災者や、伊豆山に残って暮らしている住民が、生活再建やコミュニティーの再生に必要な視点について意見を出し合った。 初回は応急仮設住宅で暮らす14人と被災した岸谷、仲道、浜の3地区の住民11人が小グループに分かれて意見を交わした。 自宅が全壊した志村信彦さん(41)は「安全が確保されていないと伊豆山に戻れない」と話し、被災者の視点に立った計画をつくるよう求めた。自身も被災者でありながらボランティア
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突然迫る 生と死の「境」 下流域へ新たな大波【残土の闇 警告・伊豆山㉒/第4章 運命の7・3④】
熱海市伊豆山の逢初川上流域で大惨事が起きていたころ、数百メートル下流の多くの住民は、まだその事実を知らなかった。SNSで映像が拡散され、社会に衝撃を与えた午前10時55分の大波は、そのまま一気に海まで流れ下ったわけではなく、狭い谷筋にひしめき合う住宅にいったんせき止められていた。そこに後続の土砂やがれきが堆積し、新たな大波となってさらに下流域の住宅地に襲いかかろうとしていた。 午前11時15分ごろ。ガラガラ-。市道伊豆山神社線から約200メートル下った場所に住んでいた小磯尚子さん=当時(61)=は妙な物音に気づいた。兄の智さん(66)=仮名=と共に2階の窓から外の様子をうかがった。野球ボー
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伊豆山地区、市が宅地再分譲案 6月から用地買収交渉【熱海土石流】
熱海市は28日、昨年7月に大規模土石流に見舞われた同市伊豆山地区の復興まちづくり説明会を市役所で開いた。復興事業の手法として、行政が用地買収を行い宅地や道路整備する「小規模住宅地区改良事業」を採用し、最終的に宅地を再分譲する案を示した。県と市は早ければ6月から地権者と用地買収交渉を始め、まずは土砂が流れ下った逢初(あいぞめ)川の拡幅工事に着手する。 市が復興事業の軸に据えるのが逢初川中流域の河川両側に整備する幅4メートルの道路。地域の幹線道路「市道伊豆山神社線」に接続することで緊急車両が通行可能になり、生活環境の向上を目指す。再分譲エリアは河川道路沿いに造成する予定。具体的な区画数や公共施
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発生から25分後の衝撃 街襲う黒波「地獄絵図」【残土の闇 警告・伊豆山㉑/第4章 運命の7・3③】
熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川源頭部から流れ下った土石流は、約1・3キロ下流の市道伊豆山神社線の手前でいったん止まったかのように見えた。しかし、避難誘導していた消防団員の耳に飛び込んだのは住民の悲鳴。山を見上げると、黒い土砂が津波のように押し寄せてきた。市道沿いの赤れんが色の建物に激突した土砂は、周辺の家を次々になぎ倒し、現場は「地獄絵図」と化した。 午前10時55分。発生の第一報から25分ほど後の出来事だった。住民がその瞬間を捉えた動画はSNSで拡散され、日本中を震撼(しんかん)させた。 「何が起きたのか受け止められなかった」。当時、鉄筋コンクリート造りの建物の陰に隠れて九死に一生を
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熱海土石流 搬入県外土砂、崩落発端か 砂防ダム堆積物を分析
静岡大の北村晃寿教授と矢永誠人准教授は27日、昨年7月に発生した熱海市伊豆山の大規模土石流の際に逢初(あいぞめ)川上流域の砂防ダムにたまった土砂を分析した結果、関東方面の県外から搬入されたとみられる黒色の土砂が多く堆積していたと発表した。北村教授は「(土石流起点付近の)盛り土崩落の始まりは黒色の土砂だった可能性が極めて高い」としている。 盛り土崩落に伴う土石流は、複数回にわたって下流域を流れ下ったことが住民の証言などで確認されている。特に大規模崩落に至る直前に最初に流れ始めた土石流は「第0波」とされ、盛り土の約400メートル下流側にあった砂防ダムでせき止められた可能性が高い。そのため、ダム
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午前10時28分 第一報 直感「あれが崩れたか」【残土の闇 警告・伊豆山⑳/第4章 運命の7・3②】
7月3日朝、熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川上流域では道路に泥水があふれ、町内会役員が土のう積みに追われていた。市は午前9時ごろ、静岡地方気象台から「雨は小康状態になるが、既に土砂災害の危険性が高い状態にある」と厳重警戒を促された。市役所に詰めていた危機管理課の職員が斉藤栄市長に電話で現状を説明し、「総合的な判断」でこの時点の避難指示を見送った。 「午前中に予報通りに天候が改善しなければ、午後に避難指示を出すことを検討していた」。高久浩士危機管理監が当時の議論を明かす。しかし、午後を待たず、わずか1時間後には市内の72時間雨量が461ミリに達し、逢初川源頭部に盛り土が造成された2009年以
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下流域被害まで1時間半 証言や専門家分析で判明 熱海土石流
2021年7月3日に熱海市伊豆山で発生した大規模土石流は、上流域で発生を知らせる第一報の後、下流域に被害が及ぶまで約1時間半かかっていたことが25日までに、専門家の分析や住民の証言などで分かった。 下流域の住民ほど避難する時間があった可能性がある一方、「土石流に気が付かなかった」との証言も多い。専門家は「避難すべき人がリスクを確信できなければ時間的猶予に意味はない」と指摘し、特に土砂災害警戒区域は上流の異変を下流の住民が察知できる仕組みが必要だと提言する。 京都大防災研究所の竹林洋史准教授(砂防工学)は伊豆山の住民が撮影した動画や証言、地形データなどから土石流の過程を分析し、少なくとも第
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熱海土石流 検証委“行政失敗”総括 川勝知事「受け止める」
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、静岡県の行政対応検証委員会が「県と市の対応は失敗だった」と総括したことについて、川勝平太知事は25日の定例会見で「正面から受け止める」と述べ、全面的に受け入れる考えを示した。同市の斉藤栄市長は検証委の結果に「県所管の関係法令に踏み込んでおらずバランスに欠ける」との認識を示していて、両トップで見解の違いが鮮明になった。 川勝知事は遺族や被災者に「申し訳ない気持ちでいっぱい」と謝罪した。その上で、県と市の連携不足や当事者意識の欠如など検証委による総括について「短期間で膨大な資料を検証してもらった。指摘はもっともだ」と語った。 遺族らが崩落した盛り土の現旧所有
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「被災者現実 反映を」 熱海市の復興計画案、委員から疑問の声
熱海市は25日、大規模土石流で被災した伊豆山地区の復興計画検討委員会を市役所で開いた。復興の理念や施策の方向性を示す市の基本計画案を巡り、委員からは「被災者の現実を反映していない」との意見や復興の工程に対する疑問の声が相次いだ。市は5月中に基本計画を策定する方針だったが、内容を修正する。策定は6月にずれ込む見通し。 基本計画案の主要施策として盛り込まれた「住宅の自力再建希望者の支援」について、被災者の中島秀人委員は「被災者が向き合う金銭面の課題に触れられていない。具体的な支援策を示すべきだ」と訴えた。工程表では基盤整備に3年、住宅地造成に7年と記載されたが、高見公雄委員(法政大教授)は「東
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危機感と楽観のはざまで 見送られた「避難指示」【残土の闇 警告・伊豆山⑲/第4章 運命の7・3①】
窓の外は激しい雨が降っていた。2021年7月2日午前、熱海市役所の会議室。斉藤栄市長はある決断を迷っていた。避難指示を出すべきか、このまま状況を見守るべきか-。そして、この部屋にいた誰もが、翌日の悲劇など想像していなかった。 午前10時半に開かれた大雨対策に関する臨時会議。市幹部約10人が顔をそろえた。直前に静岡地方気象台から連絡を受けていた高久浩士危機管理監が冒頭、報告した。「もうすぐ熱海市にも土砂災害警戒情報を出すと気象台から打診が来ています」。連続雨量は200ミリに迫っていた。 会議の30分前、熱海市は大雨警報を受けて5段階の警戒レベルのうち上から3番目の「高齢者等避難」を発令した
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被災現場を視察 ふじのくに県民クラブ 熱海土石流
静岡県議会会派ふじのくに県民クラブの県議8人が24日、昨年7月に大規模土石流に見舞われた熱海市伊豆山の被災現場を視察した。復旧の進捗(しんちょく)状況や、崩れず谷に残っている盛り土の場所などを確認した。 市危機管理課の轡田敏秀課長の説明を受けながら、不適切盛り土が崩落した逢初川の源頭部や下流域を見て回った。視察に先立って市役所で行われた市へのヒアリングでは、発災後の初動対応や県と市の連携体制の課題などを聞き取った。 佐野愛子会長は「同じような土砂災害を繰り返さないためにも会派として原因究明していく」と述べた。
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熱海土石流 損賠訴訟参加「議会の了解必要」市長会見
熱海市伊豆山の大規模土石流の遺族、被災者が土石流の起点となった盛り土を含む土地の現旧所有者らに損害賠償を求めた訴訟で、斉藤栄市長は24日の定例記者会見で、市が原告側の補助参加人として訴訟に参加するかどうかについて「議会の了解が必要」と述べ、現時点では決まっていないとした。被告の現土地所有者側が県、市、斉藤市長に訴訟への参加を促す訴訟告知を申し立てたことについては「困惑を禁じ得ない」と述べ、「市として被災者のために何かできないか考えたい」と話した。自身の参加については「市の立場と相反することはないだろう」との認識を示した。
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熱海土石流 盛り土対応総括、百条委の結果待ち 市長会見
熱海市の斉藤栄市長は24日の定例記者会見で、同市伊豆山の大規模土石流の起点になった盛り土に関する行政対応について、市議会調査特別委員会(百条委員会)の調査結果を踏まえて総括する考えを示した。ただ、百条委の結論が出る時期は不透明で、9月には市長選が控えている。行政手続きの改善策や不適切な盛り土造成の防止策が求められる中、市議の一人は「行政と議会は別。百条委を待つのはおかしい」と批判した。 「責任を感じている」-。斉藤市長は会見で、不適切な盛り土造成や土石流が自身の任期中に起きたことについて、はっきりとした口調で謝罪した。盛り土造成計画を届け出た神奈川県小田原市の不動産管理会社が提出した書類に
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熱海土石流踏まえ災害防止連携確認 治水砂防協県支部が総会
静岡県内35市町の首長らでつくる全国治水砂防協会県支部はこのほど、静岡市葵区で通常総会を開き、熱海市伊豆山で発生した土石流災害を踏まえ、関係機関が連携して土砂災害の防止に取り組む方針を確認した。 支部長を務める須藤秀忠富士宮市長は土石流災害を機に盛り土規制の議論が進んでいることに触れ「土砂災害の危険性や防災・減災対策の重要性を伝える支部の取り組みを一層発展させることが重要だ」と述べた。 砂防事業や地すべり対策事業の促進を求める国への要望、土砂災害被災地への視察研修の実施などを盛り込んだ2022年度の事業計画を承認した。 国土交通省の担当者らによる講演会もあり、土砂災害に対する最新の取り
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熱海土石流損賠訴訟 遺族ら原告側、静岡県と市に補助参加要請
熱海市伊豆山で昨年7月に発生した大規模土石流を巡り、遺族や被災者が土石流の起点となった盛り土を含む土地の現旧所有者らに損害賠償を求めた訴訟で、原告側は23日、静岡県と市に対し原告側を補助する「補助参加人」の立場で参加するよう要請した。 県には原告の1人で被害者の会の瀬下雄史さん(54)が難波喬司理事に電話で参加を求めた。県は「まだ訴訟告知書が届いていないのでコメントできない」とした。原告側は、市から補助参加の意向があったことを明らかにしているが、市幹部は取材に、県と同様に告知書が届いていないとした上で「まだ決まっていない」と話した。 現所有者側は第1回口頭弁論が行われた18日、県と市、斉
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伊豆山土石流 静岡県と熱海市、損賠訴訟に参加へ 遺族ら補助
熱海市伊豆山の土石流災害を巡り、遺族ら84人が起点の盛り土部分を含む土地の現旧所有者らに計約58億円の損害賠償を求めた訴訟で、県と同市が、原告側を補助する立場で訴訟への参加意向であることが21日、関係者への取材で分かった。 土地の現所有者側は18日の第1回口頭弁論で県と同市、同市の斉藤栄市長に訴訟への参加を促す「訴訟告知」を申し立てた。県の関係者は21日、取材に「参加するかどうか、正式には内部で検討するが、訴訟告知を受けて参加しないことは考えられない。現所有者側の主張には疑問があり、県の立場を主張したい」と話した。 原告団は同日、訴訟告知を受け、訴訟に補助参加したいとの意向が同市から伝え
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盛り土規制法 自治体用指針策定へ 国交省が検討会
熱海市伊豆山の土石流災害を踏まえた盛り土規制法が20日に成立したことを受け、国土交通省は、実務を担う自治体用の指針策定に向けた有識者検討会を設置する方針を決めた。6月にも初会合を開き、規制区域の指定や造成を許可する際の基準について議論する。 同法では、盛り土で住宅に被害を及ぼす可能性がある場所を都道府県や政令市、中核市が規制区域に指定し、区域内の造成を許可制にする。 土石流の起点となった熱海市伊豆山の盛り土に関する公文書によると、盛り土造成を届け出た業者が、静岡県より規制の厳しい神奈川県から土砂を搬入する旨を市や県の担当者に複数回告げている。実際、盛り土の崩落現場からは神奈川県二宮町の指
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熱海市長「対策の進展期待」 盛り土規制法成立
熱海市の斉藤栄市長は20日、「全国的に問題となっている違法盛り土への対策が進むことを期待する。法律の運用や体制の整備などが図られるよう、さらなる対応を願いたい」とのコメントを発表した。
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川勝知事「実効性ある規制を」 盛り土規制法成立
熱海市伊豆山の大規模土石流を受けた盛り土規制法が20日、国会で成立したことを受け、川勝平太知事は同日、「法律と条例により実効性のある盛り土規制の実現を図っていく」とのコメントを発表した。 県は一定規模以上の盛り土について届け出制から許可制に変更し、罰則を強化した盛り土規制条例を3月に制定。来年夏までに施行される盛り土規制法に先立ち、今年7月1日に施行する。
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熱海土石流盛り土 関東から土砂搬入「可能性高い」 静岡大など分析
熱海市伊豆山の大規模土石流で被害を拡大させたとされる盛り土の土砂分析を進めていた静岡大などの研究グループが20日、崩落した土砂から堆積岩「チャート」が見つかったと発表した。県庁で記者会見した同大防災総合センター長の北村晃寿教授(古生物学)は「チャートの分布する関東から土砂が運び込まれた可能性が高まった」とした。 北村教授によると、チャートとはプランクトンの死骸が海底に堆積して固まった岩で、熱海市付近や伊豆半島には存在しない。分析した土砂には特殊な鉱物も含まれ、秩父帯という関東南西部の山地や千葉県中部の地質と推定されるという。土砂運搬距離を踏まえて神奈川県西部の土砂の可能性が高いとした。
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川勝知事「行政対応改善に全力」 熱海土石流巡り 静岡県議会臨時会
川勝平太知事は20日の県議会5月臨時会の所信表明で、熱海市伊豆山の大規模土石流に関し「甚大な災害の発生、多くの方々の生命・財産を守ることができなかったことを深く反省する」と述べ、行政対応の改善に全力を挙げる考えを示した。 被害を拡大させた盛り土を巡り、県の行政対応検証委員会が「県と市の対応は失敗」と結論づけた最終報告を踏まえた発言。今後に向けて「現場で生じるさまざまな課題について、現場に赴き、現場に即して積極的に課題解決を図るよう、県庁内の組織文化や職員の意識改革を進める」と強調した。 盛り土規制の新条例を制定し、くらし・環境部に盛土対策課を設置したことも説明した。逢初(あいぞめ)川の災
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一歩前進/運用体制の構築重要 静岡県内国会議員が評価 盛り土規制法成立
熱海市伊豆山の大規模土石流を受けた盛り土規制法が20日成立し、与野党の静岡県内国会議員は不適切な盛り土の発生抑止へ「一歩前進」と受け止めた。ただ、実務を担う自治体が規制区域指定や監督処分を適切に実施するための指針の策定作業はこれから。来夏の施行に向けて政府の監視を続け、自治体と一体となった体制整備を求める。 地元選出の勝俣孝明氏(自民、衆院静岡6区)は、違反した法人に最高3億円の罰金を科す罰則の強化を挙げ「不適切な盛り土を造らせないために一定の効果がある」と評価。全国の総点検で確認された危険な盛り土の対応も同時に進めていくことが大事だと強調した。 同選挙区の渡辺周氏(立憲民主、衆院比例東
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工事発注段階で残土搬出先指定、不適切盛り土防止 政府が指針変更
熱海市伊豆山の大規模土石流を受け、政府は20日、入札契約適正化法に基づく指針の変更を閣議決定した。公共工事の建設発生土の適正処理を徹底するため、発注段階での搬出先の指定を新たに盛り込んだ。 熱海市の土石流災害では、起点部に造成された盛り土が被害を甚大化させたとされる。新たな指針では、発生段階で土砂の行き先を明確化させ、盛り土規制法と合わせて不適切な盛り土を防ぐ。 予定価格の設定時に積算すべき例として、建設発生土の運搬や処分に関する費用も加えた。
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盛り土規制法成立 一律基準、罰則強化 2023年夏までに施行
熱海市伊豆山の大規模土石流を受けた盛り土規制法が20日午前の参院本会議で全会一致により可決、成立した。宅地、森林、農地など土地の用途にかかわらず、危険な盛り土を全国一律の基準で包括的に規制するのが柱。無許可造成や是正命令違反をした法人には最高3億円の罰金を科すなど、罰則も強化した。来年夏までに施行される。今後は実効性の確保が課題となり、政府は実務を担う自治体向けのガイドライン整備などを急ぐ。 宅地造成等規制法を法律名や目的を含めて抜本的に改正した。知事などが盛り土の崩壊で人家に被害が出る恐れのあるエリアを規制区域に指定し、区域内での盛り土工事を許可制とする。許可基準に沿った安全対策が実施さ
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熱海土石流義援金 総額10億2137万5945円
熱海市は19日、同市伊豆山の大規模土石流で市に寄せられた義援金の最終的な配分総額が10億2137万5945円に確定したと発表した。未配分だった5256万円を遺族や被災者らに第4次配分として配分。残金と県義援金の残金計102万411円を伊豆山地区連合町内会に配分し、地域の復興まちづくりに活用してもらう。 第4次配分では、死亡者と行方不明者1人当たり46万円を配分する。災害弔慰金制度に定められた遺族がいない場合は、同居していない兄弟姉妹などに23万円を配分する。 このほか重傷者1人、罹災(りさい)証明で全壊から一部損壊までの認定を受けた127世帯、警戒区域内に無被害の住家がある38世帯に9万
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熱海土石流訴訟、争点は 審理長期化の見通し、弁護士が解説
18日に第1回口頭弁論が行われた熱海市伊豆山の土石流災害を巡る損害賠償請求訴訟の争点となりそうなポイントについて、日本弁護士連合会災害復興支援委員会副委員長の永野海弁護士(静岡県弁護士会)に解説してもらった。 盛り土の施工事業者に対しては、民法709条の不法行為責任追及となり、施工に問題があったことの立証だけでなく、盛り土が土石流として流出することを予見できたかが大きな争点となります。 過去の裁判例(飛騨川バス転落事故、名古屋高裁判決1974年)では、当該災害の具体的な発生予測ができたかどうかまでは求めておらず、予見可能性の立証のレベルを緩和していることも参考になります。また、自然災害の
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被告は行政の責任指摘 熱海土石流損賠訴訟、初弁論
熱海市伊豆山の土石流災害を巡り、遺族ら84人が起点の盛り土を含む土地の現旧所有者らに計約58億円の損害賠償を求めた訴訟は18日、静岡地裁沼津支部で審理が始まった。熱海市議会の調査特別委員会(百条委員会)では関係者による証言の食い違いが際立つ中、原告団は訴訟を通じた真相解明に期待を掛ける。一方、被告の現所有者(85)は同日、行政の責任を指摘して訴訟への参加を促す「訴訟告知」を行った。 被告は土地の現旧所有者のほか、盛り土の造成工事に関わった業者ら計13個人・企業。このうち訴状が送達できていない2被告を除き、いずれも請求棄却を求め争う姿勢を示した。現所有者が訴訟告知を行ったのは県と熱海市、同市
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原告涙の訴え「悪質な人災、責任を転嫁」 熱海土石流訴訟初弁論
熱海市伊豆山の土石流災害を巡り、遺族と被災者らが起点の盛り土部分を含む土地の現旧所有者らに総額約58億円の損害賠償を求めた訴訟の18日の静岡地裁沼津支部初弁論。遺族や被災者でつくる「被害者の会」会長の瀬下雄史さん(54)=千葉県=が意見陳述し「違法盛り土の土石流は悪質な商行為による人災。被告たちは全員、責任転嫁論を展開している」と現旧所有者の責任を指摘した。 瀬下さんは法廷で、事前に用意した意見陳述書をはっきりとした口調で読み上げた。20年ほど前、瀬下さんの両親は風光明媚(めいび)な伊豆山の景色に引かれ移り住んだが、穏やかな生活は突然の災害により奪われた。土石流に巻き込まれた母陽子さん=当
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初弁論 現旧所有者ら争う姿勢 熱海土石流損賠訴訟
熱海市伊豆山の土石流災害を巡り、遺族と被災者ら84人が、起点の盛り土部分を含む土地の現旧所有者らに計約58億円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が18日、静岡地裁沼津支部(古閑美津恵裁判長)であり、現旧所有者ら被告側は請求棄却を求めて争う姿勢を示した。現所有者側は「盛り土が崩落して土石流が生じる危険性を予見することなどできず、過失は認められない」と強調した。 旧所有者らは詳しい主張を追って行うとしている。 土石流災害は2021年7月3日に起きた。災害関連死を含め27人が死亡し、1人が行方不明になっている。遺族ら70人が同9月、違法な盛り土が原因の「人災」だとして、起点部分の土地の現旧
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盛り土の現旧土地所有者、争う姿勢 熱海土石流・損害賠償訴訟
熱海市伊豆山の土石流の遺族と被災者ら計84人が、盛り土部分を含む土地の現旧所有者らに損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が18日、静岡地裁沼津支部であり、現旧所有者らは請求棄却を求めて争う姿勢を示した。
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難波喬司・静岡県副知事退任 理事としてリニア、土石流担当継続
難波喬司副知事(65)が17日、2期目の任期満了を迎え、退任した。18日付で一般職任期付職員の県理事として県に採用され、引き続きリニア中央新幹線と熱海市土石流災害の二つの県政課題を担当する。 任期最終日の17日は副知事として最後の会見に臨み、約2時間にわたって土石流災害を巡る県の対応などを説明した。2期8年の所感を問われ、「最後の日なので笑顔で退任したいところだが、この問題を考えると会見の場で振り返ることはしたくない」と胸の内を明かした。 一方で「副知事と県理事の立場は全然違う」と述べ、「県理事になってからでは踏み込んだ発言ができない可能性があり、任期中に記者会見をしたいと思っていた」と
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未公表盛り土2カ所 新たに1万立方メートル超 静岡県が撤去へ【熱海土石流】
熱海市伊豆山の大規模土石流で崩れずに落ち残った盛り土のうち、県がその存在を把握していながら公表していない箇所がある問題で、県は17日、未公表の盛り土は2カ所に推定計1万1800立方メートルあることを明らかにした。一方の約1800立方メートルは崩落の危険があり、撤去する。ガラスやコンクリートなど産業廃棄物の混入も確認された。 県がこれまで、4カ所に計約2万立方メートルあるとしていた落ち残りの盛り土は、6カ所計約3万1800立方メートルになった。盛り土が行われる前の測量データが不十分で正確な量が分からず、未公表だったと説明した。 県によると、調査して崩落した盛り土の北東側で、新たに崩れる危険
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逢初川上流の盛り土 11年度末以降「引き継ぎ」確認できず 熱海土木職員聴取
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、静岡県は17日に公表した関係職員の電話聞き取り調査結果で、逢初川の河川管理を担当していた熱海土木事務所内の「懸案事項としての盛り土の引き継ぎ」が2011年度末以降、確認できなかったことを明らかにした。 昨年11月に行ったヒアリングとは別に、電話聞き取り調査は今年4月に実施した。 08~16年度に本庁や出先機関の関係部署に在籍した職員約150人に引き継ぎや盛り土の危険性の認識などを聞いた。 調査結果によると、08、09、10年度末は熱海土木事務所長の引き継ぎ文書の中に「逢初川上流域における民間事業者の開発計画」という件名の概要説明文書が含まれていた。11
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逢初川上流の「砂防規制」拡大見送り、20年放置 静岡県が再検証の方針【熱海土石流】
熱海市伊豆山の大規模土石流で被害を拡大させた盛り土を巡り、難波喬司副知事は17日、県行政対応検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)の最終報告を受けた記者会見で、土石流危険渓流の逢初(あいぞめ)川上流域で盛り土の規制区域「砂防指定地」の拡大を見送り、約20年間放置した問題について、関係職員のヒアリングを含めて再検証する方針を明らかにした。 県検証委は最終報告で、森林法や県土採取等規制条例などに検証対象を重点化し、砂防指定地内の盛り土を規制できる砂防法に関しては関連文書を確認せず職員へのヒアリングをしないまま、国と県で定めた規制区域を「妥当」と結論付けた。市は「検証のバランスを欠いている」と反発
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熱海土石流、静岡県が責任認める 検証委報告を受け入れ意向
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、静岡県の行政対応検証委員会が最終報告をまとめたことを受け、県は17日、見解を明らかにした。検証委が「県と市の対応は失敗」とした総括を全面的に受け入れる考えを示した。不適切な盛り土の崩落で関連死を含め27人が犠牲となった土石流の原因について、県が責任の一端を認めた格好だ。 難波喬司副知事が会見し「失敗」との結論について「異論はない」と述べた。検証委の見解と同様、最悪の事態への想定や関係機関との連携が不足していたとの認識を示した。難波副知事は「土石流が防げなかったことは深く反省しなければならない」とした一方、「法的な瑕疵(かし)や不作為はなかった」とし、違法性
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熱海土石流集団訴訟 18日初弁論 主張対立、長期化か
熱海市伊豆山の土石流災害を巡り、遺族と被災者ら計84人が、起点の盛り土部分を含む土地の現旧所有者らに計約58億円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が18日、静岡地裁沼津支部で行われる。現旧所有者は請求棄却を求めて争う方針。被告の間でも主張や利害が対立するため、審理が長期化する可能性がある。 土石流災害は昨年7月3日に起きた。災害関連死を含め27人が死亡し、1人が行方不明になっている。遺族ら70人が同9月、違法な盛り土が原因の「人災」だとして、起点部分の土地の現旧所有者や造成に関わった事業者ら12の個人・企業を提訴した。今年2月、さらに遺族14人が原告に加わり、現所有者が設立した企業1社
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伊豆山復興と温泉永続祈願 熱海・走り湯神社で例大祭
熱海市の伊豆山温泉の元湯「走り湯」を守る走り湯神社で14日、例大祭が行われた。地元の走り湯温泉組合の関係者15人が出席し、昨年7月に伊豆山で発生した大規模土石流からの復旧復興と、天与の恵みである温泉の永続を祈願した。 境内での神事に続き、湯煙が立ちこめる走り湯の洞窟前で湯くみ式を行った。原嘉孝宮司が長い柄の付いたひしゃくで湯だまりから高温の湯をくみ上げ、木のたるに注いだ。湯は伊豆山温泉の宿泊施設などに持ち帰った。 走り湯は全国でも珍しい横穴式の源泉で、1300年の歴史がある日本三大古泉の一つ。伊豆山地区には100本の源泉があるが、土石流の影響で13本が被害を受けた。走り湯は2本のうち1本
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県と市の対応「失敗だった」 熱海土石流・検証委最終報告
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、静岡県と同市の行政対応を検討してきた県の検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)は13日、最終報告をまとめた。悪質な開発行為を繰り返す業者に適切な処置を行う機会は何度もあったとして、県と市の対応は「失敗だった」と結論付けた。不備がある申請書類を受理するなど、同市の初期対応のまずさが失敗の最大の要因だと指摘した。 同市は、盛り土の元所有者である神奈川県小田原市の不動産管理会社から2007年3月に盛り土造成の申請があった際、重要事項の未記載が多数あるにもかかわらず、是正を求めず受理した。検証委は「厳しい対応を取らなかったため、違法や不適切な行為が繰り返され、市は受
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斉藤市長「納得しかねる」 熱海土石流・行政対応検証委最終報告
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点となった盛り土に関する行政対応の検証委員会の最終報告を受け、同市の斉藤栄市長は13日、市役所で報道陣の取材に応じ、「反省すべき点は真摯(しんし)に受け止めるが、報告書全体としてはバランスを欠き、納得しかねる」と不満を口にした。 不適切な盛り土造成を阻止できず、甚大な被害が出た結果については、「被災者には大変申し訳なく思っている」と謝罪した。 斉藤市長は報告書に関し、県土採取等規制条例が中心で「県が所管し規制力の強い森林法や砂防法、廃棄物処理法などは簡潔な記載にとどまっている」と指摘。これらの法律が効果的に運用されなかった問題を深掘りすることが「再発防止につ
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問題浮上の「砂防法」に踏み込まず 熱海土石流・検証委最終報告
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、半年間にわたって静岡県と熱海市の行政対応を検証してきた県の委員会(委員長・青島伸雄弁護士)。13日にまとめた最終報告は森林法や県土採取等規制条例といった一部の関係法令に検証対象を重点化し、県が砂防規制の拡大を約20年放置していた問題が浮上した砂防法に深く踏み込まなかった。検証に協力した市は、規制区域の地権者調整など幅広い課題が検証されていないとの認識を示し、再発防止につながるのか疑問視した。 「短い時間の中で資料を検討した。他の法令までは手が回らなかった」。青島委員長は最終会合後の記者会見で、検証が不十分ではないかという指摘に対し、膨大な資料を精査する必要
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盛り土条例巡り静岡県に質問状提出 函南の住民グループら
函南町軽井沢のメガソーラー計画に反対する住民グループ「軽井沢メガソーラーを考える会」などは13日、静岡県が制定した盛り土規制条例に「住民が不利益を被る」規定があるとして川勝平太知事宛ての公開質問状を県に提出した。 他法令で既に許可された盛り土が許可の範囲内で行われる限り、条例適用外になるという付則規定について、グループの山口雅之共同代表は「条例が規制するのは盛り土を行う行為。工事に着手していなければ規制対象にするべきだ」と主張し、川勝知事に付則規定の法的根拠などを示すよう求めている。 熱海市伊豆山の大規模土石流の被災者らでつくる「被害者の会」も質問状の提出団体に名前を連ね、太田滋副会長(
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熱海土石流 盛り土対応「県の関与、不十分」 検証委最終報告
熱海市伊豆山で発生した大規模土石流を巡り、崩落した盛り土造成に関する県と市の行政対応を検証する委員会(委員長・青島伸雄弁護士)が、最終報告に「県の関与が不十分だった」と厳しく指摘する内容を盛り込むことが13日、関係者への取材で分かった。盛り土を造成する際に適用した県土採取等規制条例よりも規制が厳しい森林法の適用を県が検討すべきだったという内容も入るとみられる。 市は4月、「同条例での対応では限界があり、県に積極的な関与を求めたが対応してもらえなかった」とする職員へのヒアリング結果をまとめた。最終報告では、こうした内容を踏まえるとみられる。 盛り土造成を巡っては、盛り土の元所有者である神奈
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土石流起点 現旧土地所有者、盛り土責任どちらも否定【熱海百条委・証人尋問】
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)は12日、土石流の起点となった盛り土を含む土地の現旧所有者への証人尋問を行った。2011年まで土地を所有していた不動産管理会社(神奈川県小田原市)代表(72)は「土地を別の業者に貸しただけで、盛り土の行為者ではない」とし、現所有者(85)は「現地に行ったことがなく、危険の認識がなかった」と、どちらも違法状態の盛り土の管理責任を否定した。 現旧所有者が公の場で発言したのは初めて。旧所有者は盛り土造成を市に届け出た2007年以降、法令違反を繰り返し、市や県から何度も行政指導を受けた。盛り土は県土採取等規制条例の基準の高さ15メ
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現旧土地所有者「分からない」「記憶にない」 議会関係者ため息、実態解明は遠く【熱海百条委・証人尋問】
「分からない」「記憶にない」―。熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、虚偽の証言をすれば罰せられる証人尋問が12日に行われた市議会調査特別委員会(百条委員会)。崩落して被害を拡大したとされる盛り土が造成された現場の現旧土地所有者が、初めて公の場で証言に立った。民事訴訟を控えて慎重な姿勢を強める証人から実態解明につながるような説明は引き出せず、議会関係者からはため息が漏れた。 「10年前のことなので記憶違いがあることに了解を」。旧所有者の神奈川県小田原市の不動産管理会社代表(72)は発言の冒頭、被災者遺族への追悼の言葉より先に記憶違いの断りが口をついて出た。県土採取等規制条例に違反した盛り土に話
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崩落盛り土造成の工事関係者 3人証言に食い違い 経緯明らかにならず【熱海百条委・証人尋問】
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)で12日に行われた証人尋問には、崩落した盛り土の造成に関わったとされる工事関係者3人が出席した。3人とも旧土地所有者の造成責任を示唆したものの、県土採取等規制条例に違反する高さに誰が積み上げたのかに関しては証言が食い違い、盛り土造成の経緯は明らかにならなかった。 公文書によると、崩落した盛り土の場所には2009年3月ごろから10年10月ごろにかけて残土が運び込まれた。 盛り土造成業者の幹部は、造成が旧土地所有者の指示だったのかという質問に「間違いない」とし、自らの土砂搬入は09年5~12月ごろと10年3~5月ごろだったと
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リニア土石流担当理事に難波氏 川勝知事「副知事と同権限」
静岡県の川勝平太知事は、17日の任期満了に伴い退任する難波喬司副知事について、18日付でリニア中央新幹線と熱海市土石流災害担当の県理事に就任すると正式に発表した。任期は1年。 難波副知事はこれまで県中央新幹線対策本部長を務め、リニア関係の諸課題について先頭に立って対応してきた。土石流についても原因究明や行政対応検証の責任者を担ってきた。 川勝知事は県理事の立場を「リニアと土石流に関しては副知事と同じ権限」とし、「(リニアの)本部長を引き続き務め、土石流災害については専門的技術的な観点から助言役になってもらう」と述べた。 後任の副知事については、20日開会の県議会臨時会に人事案を提出しな
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盛り土造成、関与否定 現旧所有者の関係者 百条委・証人尋問【熱海土石流】
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)は12日、前日に続き証人尋問を行った。土石流の起点となった盛り土を含む土地の現旧所有者ら計6人が呼ばれていて、午前は現所有者(85)の関係会社の従業員と、公文書で盛り土造成に関与したとされている業者の幹部が出頭した。両者は違法状態にあった盛り土の造成や防災工事への関与を否定した。 2010年夏ごろから盛り土造成に関わったとされる業者の幹部は、前所有者である不動産管理会社の代表(72)の依頼で残土を運搬したと証言。ただ、別の業者が既に盛り土を施工していて、起点の北側の土地に運ぶよう指示されたと証言した。10年7月ごろには「盛
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副知事「森林法で規制可能と判断」 逢初川「砂防規制」指定範囲拡大見送り【熱海土石流】
大規模土石流が発生した熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川上流域における「砂防指定地」の指定を巡り、国と県が範囲を砂防ダム周辺に限定し、上流全域での指定を見送っていた問題で、難波喬司副知事は11日、上流域は森林法に基づく規制が既に及んでいて開発行為が制限されるため、砂防指定地としなくてもよいと判断したとみられると説明した。 ただ、土石流の要因になった盛り土の造成が始まる際、同法は適用されていない。上流全域での指定見送りや指定区域を拡大しなかった妥当性については「県と市の行政対応を検証している第三者委員会の検証結果を踏まえて、県の見解を示したい」とした。検証委は13日に最終報告をまとめ、県は17
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逢初川上流の「砂防規制」 申請書確認せず「妥当」 静岡県検証委【熱海土石流】
熱海市の大規模土石流で県と市の行政対応が適切だったのかを検討する行政対応検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)が、逢初(あいぞめ)川上流域で盛り土などの行為を規制する区域「砂防指定地」の指定範囲を検証した際、県から国に提出された指定申請文書を確認しないまま、指定範囲を「妥当」と結論付けていたことが11日までの取材で分かった。判断の参考にしたとされる関係職員へのヒアリング結果も該当部分を公表しておらず、検証の信頼性が問われそうだ。 県は1998年、逢初川上流への砂防ダム設置に伴い、砂防指定地の範囲をダム付近に限定して申請した。上流域全体に指定を拡大する「面指定」を目指す方針も記載していたもの
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盛り土前所有者の防災工事「ひどい」 措置命令見送りに疑問 熱海土石流百条委
「どう見ても安全が確保されたとは言えない」-。熱海市伊豆山の大規模土石流の起点となった盛り土について、市が2011年に土地の前所有者に対して防災工事の実施を求める措置命令を発出しなかった問題。11日の市議会調査特別委員会(百条委員会)では、市が判断の根拠とした前所有者側の防災工事の内容に疑問を呈する声が上がった。 百条委に参考人として出席した退職者を含む市職員らは一様に、措置命令の発出を見送った理由について、前所有者側が盛り土の防災工事に着手し、一定の安定性が確保されたと説明。当時の判断は「間違っていなかった」と述べた。 しかし、同年8月に防災工事の施工者が市に提出した工事写真では、パワ
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熱海土石流「第二の盛り土」対策実施へ 現所有者、5月中にも
熱海市は11日、同市伊豆山の大規模土石流の起点となった逢初(あいぞめ)川源頭部の南側隣接地に確認されている通称「第二の盛り土」について、現在の土地所有者が5月末までに一時的な安全対策を行うことを明らかにした。本格的な出水期を前に、土砂流出を防ぐための応急措置を講じる。 市によると、現土地所有者側は既に盛り土への表流水の流入を防ぐ小堤を設置した。今後、泥水をためる沈砂池や大型の土のうを設置するほか、のり面を緑化するための種子吹き付けを行う。 第二の盛り土は土石流発生直前の昨年6月、市民からの通報がきっかけで発覚した。源頭部の南側隣接地にあたる太陽光発電施設付近の斜面に、コンクリート殻などが
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熱海土石流 前所有者ら廃棄物搬入か 百条委、証人尋問で関係者証言
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)は11日、起点の盛り土部分を含む土地の前所有者の関係者に対する証人尋問を行った。同百条委が法的拘束力のある証人尋問を行ったのは初めて。 同日の証人は、前所有者が関わった解体現場で発生した木材などの産業廃棄物の仮置き場を貸した人物。証人は「廃棄物を置かせてあげただけで前所有者に片付けるように言った。金をもらったわけでもない」と述べた。廃棄物は前所有者らが伊豆山に運んだとの見方を示した。 「建設残土を伊豆山に運んだことはあるか」との質問には、自身の関係先を含め「ありません」と答えた。 百条委員会の証人尋問 地方自治法第10
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熱海市の対応厳しく指摘へ 静岡県の第三者委員会【熱海土石流】
熱海市伊豆山の大規模土石流で、崩落した盛り土の造成に関する県と市の行政対応について検証する県の第三者委員会が、同市の手続きを厳しく指摘する内容を13日までに取りまとめる最終報告に盛り込む方向で最終調整していることが、11日までに関係者への取材で分かった。関係者によると「市に対して相当厳しい内容が多く含まれている」としている。 同市の手続きを巡っては、起点の土地の前所有者である神奈川県小田原市の不動産管理会社から2007年に盛り土造成の届け出を受けた際、書面に不備がある状態で受理していたことが既に判明。不適切な開発を繰り返す同社に対し、防災工事を求める措置命令を出す方針を固めながら、最終的に
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盛り土、森林法抵触か 熱海市と静岡県、認識に差 土石流百条委
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)で11日に開かれた参考人招致では、被害を拡大させたとされる盛り土の行政手続きに関係した市と静岡県の職員計7人が出席し、当時の状況を明らかにした。県に権限のある森林法に盛り土の面積が抵触していたのかが焦点の一つになったが、市と県の主張は平行線をたどり、両者の認識の違いが浮き彫りになった。 見解が大きく分かれたのは、盛り土の造成に当たって神奈川県小田原市の不動産管理会社が2009年に造成面積「1・2ヘクタール」と記載し、熱海市に提出した測量図面の捉え方。公文書によると、県と市は当時、対応を協議し、信ぴょう性に欠けると判断して正
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措置命令見送り「盛り土安定確保と判断」 熱海土石流百条委 参考人招致で市職員認識
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)で11日、参考人招致と証人尋問が始まった。午前の参考人招致に出席した市職員は、起点の土地の前所有者である神奈川県小田原市の不動産管理会社に対し、市が盛り土の防災工事を求める措置命令を出す方針を固めながら見送った経緯について、「一定の安定が確保されていたと判断した」との認識を示した。 市は2011年6月、土地の前所有者に、盛り土の防災工事を求める措置命令を出す方針を固めたが、5カ月後に見送った。命令を見送る直前に、盛り土は小規模な崩落を起こしていたが、市職員は「のり面の表面が崩れた。深層崩壊ではないと判断した」と述べた。
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代執行なら「国費で支援」 残存盛り土撤去で国交相
熱海市伊豆山の大規模土石流を受けた盛り土規制法案は11日、参院で審議入りした。斉藤鉄夫国土交通相は土石流の起点に残っている盛り土を行政代執行により撤去する場合、国が財政面で支援する考えを示した。本会議で自民党議員などの質問に答えた。 推定2万立方メートルの残存盛り土を巡っては、市が造成を届け出た前土地所有者に対し、県条例に基づいて安全対策を求める行政指導をしている。斉藤氏は「元の土地所有者が応じず、自治体による代執行が行われる場合、撤去費用などを国費で支援する」と述べた。 残存盛り土については「降雨などが浸透して不安定化することが懸念され、下流の人命や財産を保護するための対策が必要になっ
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熱海・逢初川上流の砂防規制拡大見送り 国の解説書に「地権者同意に努めて」記載、静岡県配慮か
昨年7月、盛り土崩落に伴い土石流が発生した熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川で1999年に砂防ダムが設置された際、国と県が盛り土などを規制する区域「砂防指定地」の指定をダム付近に限定し、上流全域の指定を見送っていた問題で、国土交通省が指定申請を担う都道府県向けの実務解説書で、指定時は地権者の同意取得に努めるよう求めていたことが、11日までに分かった。 同省は取材に対し、法律上は同意が不要だが、運用面で必要との見解も示している。こうした同省の対応を踏まえて、県が指定に地権者の同意が必要だと判断していた可能性がある。 国交省砂防部の監修で2001年に発行された解説書「砂防指定地実務ハンドブッ
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砂防規制、上流拡大見送り 国と県、地権者反対理由に 熱海土石流
昨年7月に盛り土の崩落に伴い大規模土石流が発生した熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川で1999年に砂防ダムが整備された際、盛り土などの規制区域の指定が求められる「土石流危険渓流」だった上流全域について、国と県が地権者の反対などを理由に指定を見送っていたことが、10日までに分かった。国に指定を申請した県は範囲をダム付近に限定。その後、上流域全域に区域を広げる方針だったが、約20年間放置していた。 上流域に造成された盛り土は砂防法の規制区域「砂防指定地」の対象にならず、昨年の大規模土石流で土砂をダムで止められなかった。砂防指定地では土砂投棄や盛り土に許可を必要とし、実際に適用された県土採取等規制
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国、砂防規制範囲拡大促す 逢初川の対応と矛盾 熱海土石流
昨年、盛り土が崩落して土石流が発生した熱海市の逢初(あいぞめ)川に砂防ダムを設置した1999年、国と静岡県が盛り土などを規制する「砂防指定地」をダム付近に限定していた問題で、国はこれまでに都道府県に出した通達で、土石流発生の恐れがある「土石流危険渓流」では規制範囲をダム付近に限定しないよう繰り返し促していた。ただ、逢初川のダム設置時の審査では、限定して指定するとした県の申請を容認し、国の対応の矛盾が浮き彫りになっている。 旧建設省は89年に示した砂防指定地の指定基準で「土石流危険渓流等による土石流の発生の恐れのある区域」と明記。「砂防設備(砂防ダム)を要する土地に限らず治水上砂防のため一定
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逢初川の整備方針策定 30年に一度の大雨対応【熱海土石流】
静岡県は9日までに、熱海市伊豆山で大規模土石流が発生した逢初(あいぞめ)川の河川整備基本方針を策定した。30年に一度の大雨による洪水を安全に流すことができる治水施設の整備を目指すと明記。県は具体的な改修内容を盛り込んだ河川整備計画を年内をめどに取りまとめ、復旧の加速化を図る。 基本方針は長期的な河川整備の考え方を示し、水系ごとに定めている。昨年7月の土石流被害の教訓を踏まえ、基本理念には「流域の土地利用状況を注視しつつ、洪水や土石流などの災害による被害の防止または軽減を図る」と掲げた。 水位データのモニタリングや水害リスク情報の住民への周知といったソフト対策も関係機関と連携して進める。気
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熱海伊豆山 1都6県消防が激励寄せ書き 千葉の中1生寄贈
大規模土石流に見舞われた熱海市伊豆山を励まそうと、千葉県柏市の中学1年生、渡辺祐輝さん(12)がこのほど、熱海市に捜索の応援で駆けつけた各地の消防隊員からの激励メッセージを寄せ書きした日の丸の旗を同市に寄贈した。旗は市役所1階ロビーに展示している。 渡辺さんは幼い頃から消防の大ファンで、災害現場で活動する消防を応援する活動を自主的に行っているという。熱海市に贈った旗には、昨年7月3日に発生した土石流災害で、緊急消防援助隊として駆けつけた1都6県の17消防本部を訪ね、隊員からメッセージを寄せてもらった。 「一日も早い復興を」「頑張れ熱海」-。各地の隊員が寄せ書きした日の丸の中心に、渡辺さん
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行方不明者を一斉捜索 熱海土石流、発生から10カ月
関連死を含め27人が死亡した熱海市伊豆山の大規模土石流は3日、発生から10カ月が経過した。県警は行方不明になっている太田和子さんの一斉捜索を伊豆山港周辺や撤去した土砂の仮置き場などで実施した。強い日差しが照りつける中、機動隊員らは太田さんの手掛かりを懸命に探したが、この日は有力な情報が得られなかった。 県警はこの10カ月間、1日も欠かすことなく捜索を続けてきた。月命日の毎月3日には人員を増やして陸、海、空で大規模な活動を展開している。この日は約90人態勢で臨んだ。 被災地から搬出した土砂を仮置きしている熱海港芝生広場では、機動隊員がスコップで土砂を慎重に掘り起こした。隊員の一人は「見つか
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被害者の会 現場付近で黙とう 熱海土石流10カ月
熱海市伊豆山の大規模土石流の被災者らでつくる「被害者の会」は3日、住宅が押し流された被災現場付近で慰霊集会を開き、発生時刻の午前10時28分に合わせて黙とうした。犠牲者の冥福を祈り、行方不明になっている太田和子さんの早期発見を願った。 土石流では住宅被害を受けた多くの世帯が伊豆山を離れ、市内外の応急仮設住宅での生活を余儀なくされている。自宅が全壊し、神奈川県湯河原町で暮らす田中均さん(65)は「今年は例年と違い、子どもや孫が実家に帰省できる楽しいゴールデンウイークではない。古里を奪われて悔しい」と苦しみを明かした。 土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)は12日に崩落起点となっ
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開発に“お墨付き” 雨水流入を市も軽視か【残土の闇 警告・伊豆山⑱/第3章 放置された10年⑤完】
水や湯が豊富で、急峻(きゅうしゅん)な地形の山肌を湯が勢いよく流れることから「走り湯」の言い伝えも残る熱海市伊豆山。逢初(あいぞめ)川の源頭部は、地形や歴史を重んじているとは言いがたい開発が行われ、さらに水が集まりやすい地形に改変されていった。地域を守るべき行政も水の流れを甘くみていたのか、疑問の残る手続きを行っている。 「宅地造成地に降った雨水が道路や側溝を通じて盛り土の流域へと流れ込んだ可能性がある」。土石流発生から9カ月後に市内で開かれた原因究明に関する有志の勉強会。講師を務めた土木設計エンジニアの清水浩氏(54)は強調した。 問題視した宅地は崩落した盛り土の北側隣接地にある。約5
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相次ぐ無届け開発 行政指導は再び後手に【残土の闇 警告・伊豆山⑰/第3章 放置された10年④】
熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川源頭部で崩落した盛り土から南に300メートルほど離れたエリアにある太陽光発電施設と森を切り開いた平地。どちらも土地の所有権が事業家の男性(85)に移ってから開発された。行政の対応はここでも後手に回っていた。 2016年6月。現所有者側が森林を伐採し、幅3メートル、延長400メートルほどの道を造っていたのを市職員が発見し、太陽光発電施設の建設計画があることが分かった。市はすぐに伐採届を提出するよう指導したが、現所有者側が届け出たのは半年後。その後も施工者が発生残土を近くの沢に捨てるなどの問題行為が判明し、市は対応に追われた。 隣接する平地も同じ頃に無届けで造
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渡辺周氏(立民、衆院比例東海) 盛り土規制の実効性を【とうきょうウオッチ/永田町便り】
熱海市の大規模土石流を受けた盛り土規制法案が衆院を通過した。国土交通委員会で政府に対し、実効性確保に向けた質問、提案をした。野党提出の修正も実現して一定の成果を得たものの、ここからが重要だと指摘する。 「成立すれば半歩前進。ただ、課題は残る。例えば施行までの期間。政府は1年とするが、この間に駆け込みの盛り土が増える懸念がある。短縮を求めたい。国交委は13項目もの付帯決議を全会一致で可決した。異例の数で、この法案で全て満足しているわけではないという意識の表れだ。国会の場で引き続き政府の取り組みをただす」
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現所有者、住職の顔 信心期待も対策進まず【残土の闇 警告・伊豆山⑯/第3章 放置された10年③】
後に崩落することになる熱海市伊豆山の盛り土付近一帯を購入した事業家の男性(85)は、近隣に寺院を建立し、県内にある他の寺院でも住職を務めている。住まいは県外だが、足しげく自らの寺院に通ってきた。取材に「信仰がなきゃできない」と自負した。 「仏門の出自」を名乗る。男性から渡されたパンフレットによると、伊豆山の寺院は鉄筋コンクリート造り瓦ぶき。4層に分かれ、延べ床面積は約1580平方メートルに上る。正面は石積みが施され、まるで城のよう。男性の強いこだわりがうかがえる。2020年の男性の誕生日に「完成」したと書かれていた。関係者の話では、工事中も頻繁に指示を出しに来たという。 寺院の敷地内には
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“山林王”の利用策 市に無償貸与実現せず【残土の闇 警告・伊豆山⑮/第3章 放置された10年②】
熱海市伊豆山の盛り土崩落現場を含む土地の所有権は2011年2月、売買契約により、造成した神奈川県小田原市の不動産管理会社から事業家の男性(85)に移行した。男性は一帯で50万坪以上所有しているとささやかれる。 山林王―。現所有者と同社を仲介した不動産業者は熱海市議会の調査特別委員会(百条委員会)で、現所有者が周囲からそう称されていたと言及した。代理人の河合弘之弁護士は取材に「彼にとって良い土地とは広くて木が生えている場所」と解説。本当かどうかは分からないとしつつ、現所有者が国内有数の大手不動産会社の名前を出して同社以上に「土地を持っている」と話していたと補足した。 「きれいな公園を整備し
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熱海土石流「落ち残り盛り土」1万立方メートル存在か 静岡県、公表せず
熱海市伊豆山の大規模土石流で、崩落した盛り土の起点付近で崩れずに残っている盛り土が、静岡県が公表した約2万立方メートルとは別に少なくとも約1万立方メートルあり、県も存在を把握していることが29日までに県などへの取材で分かった。県は、この1万立方メートルの盛り土について、神奈川県小田原市の不動産管理会社が盛り土の造成を届け出た範囲外になっていることなどを理由に公表しておらず、撤去の対象にも含めていない。 県によると、崩れずに残っていながら公表されていない盛り土は起点の北西側に約7700立方メートル、北東側に約2700立方メートルの2カ所あるとみられる。航空写真やレーザー測量技術を活用し、19
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防災工事、未完のまま 所有権移転で監視緩む【残土の闇 警告・伊豆山⑭/第3章 放置された10年①】
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点となった盛り土と周辺の開発に関する公文書は4千ページを超える。大半は盛り土造成計画を届け出た神奈川県小田原市の不動産管理会社と行政のやりとりで、法令違反を繰り返す同社に苦悩する行政の姿が浮かび上がる。だが、その記録はある時から減り、やがて途絶えることになる。 転機は2011年2月。リーマン・ショックで経営が悪化していた同社は既に清算していた。高級分譲地の開発を夢みた約35万坪(1・2平方キロメートル)の土地は、建設業や不動産業などを手掛ける企業グループの元会長の男性(85)に売り渡されていた。 土地売買契約書によると、売却額は3億円。契約には「県土採取等規
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熱海土石流 新砂防ダム30日本格着工 国交省、逢初川上流部に
国土交通省富士砂防事務所は28日、熱海市伊豆山で昨年7月に大規模土石流が流れ下った逢初(あいぞめ)川上流部に新設する砂防ダムのコンクリート施工を30日に着工すると発表した。本年度中の完成を目指している。 同事務所によると、新設ダムは高さ13メートル、幅59メートル、容量1万800立方メートル。既存のダムの下流約320メートルに設置する計画で、これまでは立木伐採や掘削作業などを行っていた。 逢初川上流部の砂防工事は国直轄の事業。昨年12月までに土石流で既存のダムに堆積した土砂約7200立方メートルを除去したほか、コンクリートブロックを積んだ仮設ダムをその上流に設置した。 砂防工事は被災地
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難波副知事 熱海土石流、遺族に謝罪 訴訟に協力意向
熱海市で昨年7月に発生した大規模土石流の犠牲者遺族らでつくる「熱海市盛り土流出事故被害者の会」の瀬下雄史会長(54)=千葉県=が28日、静岡県の難波喬司副知事と県庁で面会した。難波氏は「亡くなられた方々には本当に申し訳ない」と謝罪。県設置の第三者委員会が、崩落の起点での盛り土造成に関し、県職員の監視が不十分だったと認定したことが念頭にあるとみられる。 難波氏は、遺族らが起点の土地の現旧所有者らに損害賠償を求めた訴訟に協力する意向も示した。瀬下さんは「真相究明にお力添えをいただいた。率直に感謝したい」と述べた。面会は瀬下さんの希望で実現した。 訴訟では、遺族や被災住民ら計84人が総額約58
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熱海市伊豆山 残った盛り土の排水対策 静岡県が前倒し着工へ
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点付近で崩れずに残っている盛り土の一部について、県は28日から排水対策工事に着手する方針を固めた。27日までの県関係者への取材で分かった。当初は5月の大型連休明けの着工予定だったが、梅雨入り前の早期完成に向けて前倒しし、同月中の完成にめどが立ったとしている。 排水対策は崩落部分の西側に残った盛り土に施工する。深さ2、3メートルの地中に、小さな穴の開いた排水管を南北40メートル、東西30メートルの丁字形に埋設し、地下に浸透した水を排水管に集める。集まった水は既設の水路を使って源頭部の南側にある別の沢に流し、残った盛り土に水が流入するのを抑制する。 集まった水を
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「県の関与不十分」複数 熱海土石流、市職員ヒアリング結果公表
熱海市は26日、同市伊豆山の大規模土石流の起点となった盛り土の行政手続きに関わった市職員(退職者を含む)17人に行ったヒアリングの結果を公表した。盛り土を造成した不動産管理会社(神奈川県小田原市)の開発面積について、知事の許可が必要な1ヘクタールを超えていた可能性があったにもかかわらず県が積極的に関与しなかったとの意見が複数あり、行政間の連携不足が改めて浮き彫りになった。 市は2007年、同社の盛り土造成計画を受理した直後、開発面積が1ヘクタールを超えている疑いがあると県に通報した。県は森林法の林地開発許可違反に当たるとして、すぐに同社に現状復旧などを指導した。 ただ、同社は09年以降も
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川勝知事「検証委の判断」 熱海土石流、関係職員の証言一部公表巡り
熱海市伊豆山の大規模土石流の行政対応に関わった職員への聴取内容に関して静岡県内部で情報公開の対応が食い違っている問題で、川勝平太知事は25日の定例記者会見で、県の行政対応検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)が関係職員の証言の一部だけを公表したことについて「青島委員長の判断に異論はない」として、検証委の判断だったとする認識を示した。証言全体を非開示とした県の決定は「(自身が)直接判断しているわけではない」と述べた。 一方、検証委側は概要をまとめた資料を作って一部公表を判断したのは聴取を担当した県法務課だったとしており、川勝知事の認識を否定している。同課は情報開示請求に対し、検証委の結論まで証
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警戒区域住民、新委員に 復興計画の検討委が会合【熱海土石流】
熱海市は22日、大規模土石流に見舞われた同市伊豆山の復興計画策定に向けた検討委員会の3回目の会合を市役所で開いた。立ち入り禁止の警戒区域内に自宅があり、長期避難を余儀なくされている住民1人が新たに委員に加わり、被災者の声が計画に反映されるようヒアリングを徹底するよう求めた。市は復興の理念や取り組むべき施策を掲げる基本計画を5月中に策定することを目指している。市が同日示した計画案では、主要施策として防災意識づくりの推進や生活道路、避難所などの整備、被災者向け住宅の整備などが盛り込まれた。 これに対し警戒区域の住民でつくる団体の代表で、新たに委員になった中島秀人さん(53)は「警戒区域が解除さ
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静岡県、結論まで非開示 行政対応検証の職員聴取録【熱海土石流】
熱海市伊豆山の大規模土石流で崩落した盛り土の行政対応検証を巡り、県は22日までに、関係職員への聴取結果について「断片的な情報を開示すると誤解を招く恐れがある」として検証の結論が出るまで開示しないと判断した。静岡新聞社の情報開示請求への対応で明らかにした。ただ、検証作業を進める県の行政対応検証委員会は3月、参考資料として聴取結果の一部を公表していて、検証に関わる部署によって開示の判断が異なる状況になっている。 職員らによる内部検証チームは昨年11月、崩落した盛り土の行政手続きに関わった関係職員39人(退職者を含む)に対し、非公開で聴き取りを実施。県によると、担当者が手書きでメモを作り、録音は
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盛り土法案審査へ被災現場を視察 参院国土交通委員会
参院国土交通委員会は21日、熱海市伊豆山の大規模土石流を踏まえた国の盛り土規制法案の審査に向け、市役所で斉藤栄市長や県、国交省中部地方整備局の担当者らと意見交換した。 会合は非公開。斎藤嘉隆委員長(立憲民主党)は終了後の取材に、被災地の再建や土石流の起点に残っている盛り土の安全対策の工程などについて意見を交わしたと説明し「今後も地元と意見交換を続けて、法案審査に生かしたい」と述べた。会合後、委員は被災現場を視察した。 同日は、市内の観光関係者らとも意見交換した。新型コロナウイルス禍と土石流で観光客が激減している現状を踏まえ、観光関係者からは観光支援事業「Go To トラベル」の再開や雇用
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盛り土規制法案 衆院国交委可決 野党提出、修正案も
衆院国土交通委員会は20日午前、熱海市伊豆山の大規模土石流を踏まえて政府が提出した盛り土規制法案と、立憲民主党など野党6会派が提出した同法案の修正案を全会一致で可決した。21日の本会議で可決され、参院に送付される見通し。 与野党7会派が提案した付帯決議も全会一致で可決した。日本維新の会が提出した2法案は採決を見送った。 政府案は土地の用途にかかわらず、危険な盛り土を全国一律の基準で包括的に規制するのが柱。都道府県知事などが盛り土により人家などに被害の出る恐れがあるエリアを、規制区域に指定。区域内での盛り土工事を許可制とし、災害防止に必要な基準を設定する。 委員会審議で野党側は、区域外で
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静岡県・難波副知事 2期8年の実績 後任難航、1人体制も
2014年から2期8年務め、5月の退任が決まった難波喬司副知事は19日、報道陣の取材に「リニアと土石流の問題はまだ区切りがついていない。責任というか、自分のこれまでやってきたことから考えて、何らかの形で関わっていかなければいけない」と述べ、職位は変わってもこれまで陣頭指揮を執ってきたリニア水問題と熱海市土石流災害には関わる姿勢を示した。 難波副知事は退任について川勝平太知事とまだ話をしていないとし、「人事は知事が決めること。2期目の任期が切れ、自然の流れとして受け止めている」と述べた。川勝知事が(難波氏に)何らかの形で今後も関わってもらいたい意向を持っていると出野勉副知事から聞いているとし
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副知事退任の難波氏、理事起用へ 静岡県 リニア、土石流担当継続
5月17日付で副知事を退任することが明らかになった難波喬司氏(65)について、県は19日、任期付き職員として採用し、リニア中央新幹線水問題や熱海市の土石流災害を担当する県理事として起用する方針を固めた。リニアと盛り土という県が抱える難題に引き続き関わる。難波氏の後任の副知事人事については6月定例会以降にずれ込む見通しで、当面は副知事1人体制になる公算が高まった。関係者への取材で分かった。=関連記事4面へ 難波副知事は同日、報道陣の取材に応じ、「任期の5月17日までに区切りができるようにやってきた」とさばさばとした様子で退任を認めた。退任後の具体的な職務は未定としながらも「リニア、あるいは熱
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処分型盛り土想定なく 熱海土石流、崩落現場に適用の条例 静岡産大・小泉教授が論文
熱海市伊豆山の大規模土石流で崩落した盛り土に適用された県の条例は別の目的で作られていた―。静岡産業大の小泉祐一郎教授(公共政策学)がこのほどまとめた研究論文で、1975年の県土採取等規制条例制定時に“土砂処分型”の盛り土の規制を想定していなかったことを明らかにした。残土処分が社会問題化した後も条例を見直さず、不十分な行政対応を招く一因になったと分析した。 小泉教授は、当時の関係者への聴取や過去の資料の精査によって条例制定の経緯をたどった。 論文によると、条例は74年に就任した山本敬三郎知事の意向で、当時問題になっていたゴルフ場や分譲地などの乱開発を防ぐ目的で制定さ
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盛り土所有者ら8人、5月証人尋問 熱海土石流百条委、元県職員らも参考人招致
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)は15日、5月11、12の両日に行う証人尋問に土石流の起点となった盛り土部分を含む土地の現旧所有者ら計8人を呼ぶことを決めた。市議会は地方自治法100条1項に基づき、出頭請求書を対象者に通達する。証人は正当な理由がなく出頭を拒否したり、虚偽の証言をしたりすると禁錮刑や罰金刑が科せられる可能性がある。 現旧所有者のほか、これまでの参考人招致に応じなかった盛り土の土砂搬入に関わったとされる業者や現所有者の関係者も証人とした。参考人として事情を聴いた工事関係者2人も双方の主張に食い違いがあったため、証人として呼び、当時の事実関係
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熱海・伊豆山にカフェ「あいぞめ珈琲店」開店 地域の交流、再生への一歩
大規模土石流に襲われた熱海市伊豆山に15日、住民同士の心をつなぐコミュニティーカフェ「あいぞめ珈琲店」がオープンした。運営する地元ボランティア団体「テンカラセン」の高橋一美代表(45)は「誰でも気軽に立ち寄れる友達の家のような場所にしたい」と話し、多くの人の交流により地域を再生させたいとしている。 カフェは住民はもちろん、観光客など伊豆山を応援する人たちの交流拠点。コーヒーやフレンチトーストなどを提供するほか、購入した人が他の客に贈る「つながるチケット」(1枚500円)を販売する。チケットは店内で使える金券。利用者がお礼のメッセージを裏に書き込み、店内に掲示することで、人と人のつながりを実
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熱海土石流 現旧所有者、5月証人尋問 市議会百条委、工事関係者2人も
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)は13日、各会派の代表者らによる小委員会を開き、5月11、12の両日に行う証人尋問に、土石流起点の盛り土部分を含む土地の現旧所有者のほか、既に参考人として事情を聴いた盛り土の工事関係者2人を呼ぶ方針を固めた。 百条委はこれまでに斉藤栄市長や市の元職員、現旧所有者の関係者ら計19人を参考人招致した。このうち2007年に旧所有者が盛り土造成を市に届け出た際に「現場責任者」とされた男性は「盛り土に関わっていない」と述べた。しかし他の複数の参考人はその発言を否定した。 09年3月~10年7月に造成したという業者の幹部は「自分が関
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盛り土規制で各地に部会 県、市町、警察の連携組織設置 現場情報を共有
熱海市伊豆山の大規模土石流を受け、静岡県は12日までに、市町や警察との連携を強化するために部局横断的な「土地利用対策会議」を設置するとともに、下部組織として同会議の地域部会を県内各地に配置すると発表した。熱海市の土石流を巡る県の行政対応検証委員会の中間報告では、県市連携の不足を指摘されていて、地域部会を通じて現場レベルの情報共有を図る。 地域部会は、県内に8カ所ある土木事務所単位の設置を想定している。違法性が疑われる盛り土事案をケースごとに管理し、初期段階から関係機関で情報共有することで迅速、的確な対応につなげる。 中間報告で指摘された職員の意識改革についても、地域部会を通じて職員の法令
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土石流支援金22万円を寄託 磐田法人会青年部会
磐田市の磐田法人会青年部会は10日、熱海市の熱海伊東法人会を訪ね、同市伊豆山の大規模土石流の復旧復興に役立ててもらおうと支援金22万2270円を同会青年部会に寄託した。同部会は後日、熱海市に届ける。 浄財は、チャリティーオークションなどで集めた。磐田法人会青年部会の畑中貴博部会長は「一日も早く観光地熱海に元気が戻ることを願っている」と話した。
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義援・支援金計20億円超え 熱海土石流
熱海市は11日、同市伊豆山の大規模土石流に伴い全国から寄せられた義援金、支援金の総額が20億4426万円になったと発表した。 被災者に直接配分される義援金は3月末で受け付けを終了していて、県からの配分額を含め、14億6644万円が寄せられた。このうち9億6835万円が既に被災者に配分されている。残りは市災害義援金配分委員会が被災状況などに応じて近く配分額を決める。 災害復旧に充てられる支援金は5億7782万円。市はふるさと納税などによる支援金の受け付けを引き続き実施している。 問い合わせは市企画財政課財政室<電0557(86)6133>へ。
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盛り土のみ検証「妥当」 副知事が見方示す 周辺の開発は対象外【熱海土石流】
難波喬司副知事は11日、熱海市伊豆山の大規模土石流に関する行政手続きを巡り、県の第三者検証委員会が検証の対象を崩落した盛り土の箇所に絞り、周辺での開発は対象外とした判断について「妥当」との見方を示した。 検証委の中間報告に対する県の見解について同日会見し、「周辺での開発行為が盛り土の安全性や崩落に影響を与えたとは考えられない」と述べた。 県や市が公開した文書によると、盛り土の造成が行われた同時期、北側隣接地では宅地造成が進められた。県や市は、事業者が異なることなどから別々の開発と判断した。 盛り土は県土採取等規制条例に基づき工事が行われたが、宅地開発との一体的な大規模開発と捉えるべきだ
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静岡県、措置命令見送り確認せず 副知事「市に働き掛け必要だった」【熱海土石流】
熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、難波喬司副知事は11日、静岡県庁で記者会見し、県の行政対応検証委員会の中間報告を踏まえた県の見解と今後の対応について説明した。盛り土を造成した神奈川県小田原市の不動産管理会社に対し措置命令を熱海市が見送ったことに関し、県が確認していなかったとした上で「確認して、後任者に引き継ぐべきだった」と職員間の引き継ぎが不十分だったとの認識を示した。 市は2011年6月、県土採取等規制条例に基づく措置命令を視野に対応することを決めたが、それ以降、同条例を所管する県の担当部署は市と協議せず、市は措置命令を出さなかった。難波副知事は「(県は)少なくとも市が措置命令の発出を
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市長「盛り土は安定」 危険認識なし、現地足に運ばず 熱海土石流
熱海市の斉藤栄市長は8日、熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)に参考人として出席し、起点の盛り土が違法状態だったことを知りながら「一定の安定性が確保されている」として神奈川県小田原市の不動産管理会社への措置命令を見送り、「人身災害が起きるとは考えていなかった」と述べた。災害が起きるまで現地に一度も足を運ばなかったことも明らかにした。=関連記事26面へ 斉藤市長は2011年6月、同社に措置命令を出すことを決裁したが、「(同社が)防災措置を講じると約束し、実際に着工し、一定の安定性が確保されたため」命令を見送ったと説明した。防災工事はその後中止されたが、市と県が
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盛り土造成業者幹部「不動産会社代表の指示」 百条委で証言 熱海土石流
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)は8日、起点の盛り土を造成した業者の幹部が参考人として出席し、神奈川県小田原市の不動産管理会社の代表から指示を受け、2009年3月から10年7月までに2万~3万立方メートルの土砂を搬入したと証言した。 同社代表はこれまでの取材に「土地を業者に貸しただけであり、盛り土の実行者ではない」と関与を否定していた。幹部は同社代表から費用を受け取っていたことも明かした。 同社は09年12月に市に提出した工法の変更届で、盛り土の流出を防ぐ設備として強固な「ロックフィルダム」から規模の小さい「土えん堤」に変えるとともに、現場責任者もこの
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盛り土「県、積極的関与避けた」 市元担当課長が証言 熱海土石流・市議会百条委員会
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会調査特別委員会(百条委員会)で7日、参考人として出席した市の元担当課長は、2009年11月、神奈川県小田原市の不動産管理会社の申請した造成面積が、知事の許可が必要となる1ヘクタールを超えているとして県に主体的な対応を求めたが、「県は積極的な関与を避けた」と証言した。当時の行政間のやりとりに不満があったことを明らかにした。 不動産管理会社は07年3月、県土採取等規制条例に基づき、市に許認可権限がある1ヘクタール未満の盛り土造成計画を届け出た。5月、無許可で1ヘクタール超に広げたため、森林法の林地開発許可違反に当たるとして県が行政指導した。 同社は是正
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盛り土変更届「市指導に従い提出」 熱海百条委で不動産元幹部
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点となった盛り土を巡り、神奈川県小田原市の不動産管理会社が2011年7月に提出した工法などの変更届に、静岡県土採取等規制条例で義務づけられた設計図が添付されていなかった問題で、同社の元取締役は7日の市議会調査特別委員会(百条委員会)で、市の指導に従い書類に記入し、そのまま提出したと証言した。 同社は07~11年に計3回の変更届を提出していて、問題の変更届はその3回目。図面は「別紙計画図の通り」と記されていたが、添付されていなかった。 元取締役は、市役所で「(職員に)この通り書いてと言われて書いた。その時点で図面は持っていなかった」と述べた。こうした経緯に対し
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元市職員ら参考人招致 盛り土手続きの経緯質疑 熱海土石流
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会の調査特別委員会(百条委員会、稲村千尋委員長)は7日、土石流の起点となった盛り土が造成された当時、行政手続きに関わった市の元職員らを参考人として招致し、事情を聴いた。 盛り土造成計画は2007年3月、県土採取等規制条例に基づき、神奈川県小田原市の不動産管理会社が市に届け出た。計画書には複数の空欄があったが、市はそのまま受理していた。計画の工期は08年4月までだったが、同社はこの後も無届けの状態で残土を搬入した。 同社が09年12月に提出した計画の変更届では、盛り土の量が現場の地形の許容量を上回っていた。また11年7月に出された変更届には、条例で義務
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県と市の緩い法令適用 大規模開発と判断せず【残土の闇 警告・伊豆山⑬/第2章 赤井谷の“攻防”⑤完】
熱海市伊豆山で崩落した盛り土。その北側で進められていた宅地造成地も一体的な大規模開発と県や市が判断していれば、より強い規制が適用され、盛り土が造成されることはなかったかもしれない-。そんな見方がある。大規模開発と判断できなかった一因として当時、開発許可の権限が県から同市に移譲された直後だったことが浮かび上がる。 「一体的な開発と捉え、関係法令を適用できなかったか」。3月、熱海市役所。市議会の調査特別委員会(百条委員会)に参考人として出席した土木設計エンジニアの清水浩氏(53)はそう指摘した。 神奈川県小田原市の不動産管理会社は2007年3月、県土採取等規制条例に基づき、熱海市に届け出て盛
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熱海土石流 盛り土規制巡り意見交換 法案審査へ衆院委、市長らと
衆院国土交通委員会は4日、熱海市伊豆山の大規模土石流を踏まえた政府の盛り土規制法案と、建設残土の追跡管理や置き場の確保を目的とした日本維新の会が提出した2法案の審査に向けて、市役所で斉藤栄市長や静岡県、国交省の担当者と意見交換した。 会合は非公開。中根一幸委員長(自民)は終了後の取材に、「(伊豆山と同じような)災害を二度と起こしてはならない。意見交換で得た知見を生かし、法案審査を充実させたい」と述べた。 盛り土を規制する都道府県の条例にはばらつきがあり、規制の緩い地域に土砂が投棄されやすいとの指摘がある。斉藤市長は「悪徳業者に対する抜け穴がないよう厳しい制度にしてほしい」と要望した。同委
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熱海土石流9カ月「気持ち変わらず」 犠牲者の冥福祈り、黙とう
熱海市伊豆山の大規模土石流の発生から9カ月を迎えた3日、被災者らでつくる「被害者の会」は土石流が流れ下った現場付近で慰霊集会を開いた。遺族ら約20人が雨の中、発災時刻の午前10時半に黙とうし、犠牲者の冥福を祈りながら土石流の原因究明や被害の責任追及を求めていくことを誓った。 母の陽子さん=当時(77)=を亡くした瀬下雄史会長(54)=千葉県=は「時間が経過しても被災者の気持ちは変わらない」と強調した。伊豆山の復興基本計画の策定作業を進めている市に対しては「逢初川の上流部に(崩れず残った)土砂がある状態では復興に進めない」と訴え、二次災害を防ぐための安全対策を早急に講じるよう訴えた。市は3月
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心つなぐカフェ、伊豆山に 地元団体が4月15日開店
熱海市伊豆山の大規模土石流は3日、発生から9カ月が経過した。多くの被災者が伊豆山を離れて暮らし、地域力の弱体化が懸念されている中、地元ボランティア団体「テンカラセン」が開設準備を進めてきたコミュニティーカフェ「あいぞめ珈琲店」が15日にオープンする。高橋一美代表(45)は「みんな心のつながりを求めている。そのよりどころになれば」と言葉に力を込めた。 カフェは同市伊豆山の国道135号「逢初(あいぞめ)橋」近くに立つ伊豆山浜会館の4階の空きスペース(約60平方メートル)を活用する。クラウドファンディングで資金を募ったり民間団体の支援を受けたりしながら、約3カ月かけて工事してきた。 障害者や高
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見誤った大崩落のリスク 措置命令、直前で見送り【残土の闇 警告・伊豆山⑫/第2章 赤井谷の“攻防”④】
神奈川県小田原市の不動産管理会社による違法な盛り土造成は2010年になっても続いた。入れ代わり立ち代わり複数の業者が木くずや廃棄物が混ざった土砂を運び込んだ。当時、本庁の森林部局や東部農林事務所にいた県職員は「県も熱海市も、これ以上、土砂を搬入させてはいけないと共通認識があった」と語る。関係機関で協議し、中止要請などの行政指導を行ったが改善は見られなかった。 県によると、残土搬入には少なくとも8業者が関与していた。当時、現場での指導に当たった元熱海市職員は「(業者は)交代で対応し、『私たちに言われても』が決まり文句だった」とやり口を説明する。11年2月、所有権が現所有者に移ると、指導はより
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港に異様な濁り 土砂流出、高まる危機感【残土の闇 警告・伊豆山⑪/第2章 赤井谷の“攻防”③】
大型の台風18号による大雨が峠を越した2009年10月8日の朝。熱海市伊豆山の伊豆山港の周りに、どんよりとした濃い濁りが漂っていた。「泥がばーって広がってた。『何だこれ、すげえな』って」。地元で漁業を営む男性(46)は、仲間の漁師と目の当たりにした13年前の光景を今でも鮮明に記憶している。 「すぐに見に来てほしい」。漁師たちは港を管轄する県熱海土木事務所に一報を入れた。濁りの原因を確かめようと駆け付けた職員らと逢初(あいぞめ)川をさかのぼり、行き着いたのは源頭部にある神奈川県小田原市の不動産管理会社が盛り土を造成した現場だった。 同社の盛り土計画が熱海市に受理されて間もない07年4月下旬
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盛土対策課が始動 静岡県、規制・監視体制強化
静岡県は1日、熱海市伊豆山で昨年発生した大規模土石流を受け、盛り土造成の規制・監視体制を強化するために、くらし・環境部に「盛土対策課」を新設した。13人体制で、これまで他部署に分散したり、市町が担っていたりした業務を一元的に担う。 県庁で発足式を行い、望月満課長は「不適切な盛り土にはちゅうちょなく指導、行政処分を行う。熱海のような災害を二度と起こさせない」と決意を述べた。 盛り土規制に関する県の新条例が3月に成立し、7月1日に施行される。一定規模以上で盛り土造成を行う場合、許可制とし、違反者には最長2年の懲役刑を科す。同条例の運用を所管する同課では、既存の盛り土と許可を受けた盛り土を定期
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張りぼてのリゾート構想 違反重ねた末「夢」頓挫【残土の闇 警告・伊豆山⑨/第2章 赤井谷の“攻防”①】
盛り土が崩落した熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川源頭部は、同地域に立地する別荘地の“北限”に当たる。その先もしばらくは雑木林を縫うように舗装道が続く。ただ路上には折れた木枝や石が散乱し、開発の滞りを物語っていた。さらに進むと山肌を切り開いて平らにした場所が広がった。ここも宅地造成されるはずだったのか。眼下には崩落した「赤井谷」。はるか先には相模湾の青い海がきらめいていた。 崩落現場の盛り土を造成した神奈川県小田原市の不動産管理会社は、この一帯に高級リゾート建設を夢見ていた。「1区画2千万円以上で分譲する計画だった。すべて売れれば90億円以上になる試算だった」。同社代
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管理会社に行政指導 市、残存盛り土対策要求 熱海土石流
熱海市は31日、同市伊豆山の大規模土石流の起点で崩れずに残った盛り土について、県土採取等規制条例に基づく盛り土造成計画の届出者である神奈川県小田原市の不動産管理会社に安全対策を求める行政指導文書を発出した。市が同社に行政指導を行ったのは、昨年7月3日の土石流発生以降、初めて。 県が29日に発表した土砂の安定性調査の結果を踏まえた措置。同社に具体的な対策計画の提出と実行を求めた。起点には推定2万立方メートルの盛り土が残っていて、県は今後の大雨で盛り土が崩れる可能性があり、土砂の撤去や排水対策を行う必要があるとしている。 斉藤栄市長は取材に「市として厳しい態度で臨む。事業者には誠実に対応して
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熱海土石流起点 大量地下水「集まりやすい可能性」 静岡県検証委
熱海市伊豆山の大規模土石流で、県は29日、技術面から発生原因を調べる検証委員会の第3回会合を県庁で開き、土石流起点の逢初川源頭部は隣接する鳴沢川の流域から大量の地下水が流入し、水が集まりやすい環境だった可能性があるとする中間報告をまとめた。土石流発生時にどれくらいの地下水量があったかを確認するのは難しいとしつつ、現地調査のデータを使って崩落を再現するシミュレーションを行う方針を確認した。 県は地下水の流れを確認するため、逢初川上流部で、流量計測や地下水が流れる方向を確認する流向計測、地下の水分量を把握する電気探査を行った。 中間報告や県によると、調査の結果、逢初川は北側に位置する鳴沢川よ
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土石流起点に残存の盛り土 熱海市、業者に是正指導へ 静岡県と連携、梅雨前に排水対策
熱海市の斉藤栄市長は29日、同市伊豆山の大規模土石流の起点で崩れずに残った盛り土について、県土採取等規制条例に基づき、盛り土造成を市に届け出た神奈川県小田原市の不動産管理会社に対し近く、安全対策を求める行政指導を行う意向を明らかにした。同社が応じない場合も県と連携し、梅雨の前の5月ごろまでに雨水の流入を防ぐ排水対策を講じる方針。 市は文書で行政指導を行い、安全対策の計画を提出するよう同社に求める。これに応じない場合は措置命令を出し、さらに従わなければ行政代執行を想定している。 斉藤市長は「住民の命につながること。事業者にしっかりと指導していきたい」と述べた。 土石流起点付近に残った盛り
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盛り土規制法案審議入り 維新も独自2法案を提出
熱海市伊豆山の大規模土石流を踏まえた盛り土規制法案は29日、衆院本会議で審議入りした。土地の用途に関わらず危険な盛り土を全国一律の基準で包括的に規制するのが柱。斉藤鉄夫国土交通相は規制の実効性を確保するため、実務を担う自治体を手厚く支援していく方針を示した。 斉藤氏は「地方自治体でノウハウの獲得や人員、予算の確保、関係部局間の連携体制整備などの対応が必要」と指摘。国として自治体の基礎調査の経費を補助したり、地方整備局などから個別に職員を派遣したりするとした。公明党の大口善徳氏(比例東海)の質問に答えた。 規制区域の考え方については「盛り土が崩落した場合に土砂が流下して下方の人家などに危害
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熱海土石流 第三者委、最終報告は市の作業完了待ち 遺族「早く検証結果を」
熱海市伊豆山の大規模土石流で、静岡県や同市の行政手続きのあり方を検証している第三者委員会。28日に開かれた第3回会合では、同市による内部調査が遅れていることが影響し、県土採取等規制条例など多くの個別具体的な検証結果の報告は先送りされた。市の検証作業が完了し、委員会の最終報告が出るのは5月以降になりそうで、遺族からは早期の取りまとめとともに、災害防止などにつながる具体的内容の提示を求める声が上がった。 県は2021年12月末の初会合時までに、検証結果の取りまとめ時期の見通しを21年度内としたが、熱海市の調査作業が復興や市議会が設けた百条委員会への対応のために遅れた。中間報告では、県土採取等規
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盛り土対応「大規模崩落予想できず」 熱海土石流、第三者委が中間報告
熱海市伊豆山で発生した大規模土石流災害を巡り、県と市の行政対応の在り方を検証する第三者委員会(委員長・青島伸雄弁護士)は28日、中間報告書を公表し、源頭部の盛り土崩落について、「県と市は危険性を認識していたが、大規模崩落の予想はできなかった」との結果を示した。ただ、熱海市の内部検証が完了していないため、県土採取等規制条例や森林法に基づく対応の検証結果は盛り込まれなかった。 会合後に記者会見した青島委員長の説明や報告によると、県と市は前土地所有者によるずさんな施工状況を現認し、崩落の危険性については共通認識があったが、昨年7月に発生したような大規模崩落を予想した関係者はほとんどいなかった。
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熱海土石流 中間報告まとめへ議論 行政対応検証の第三者委員会・第3回会合
熱海市伊豆山で発生した大規模土石流災害を巡り、県や市の行政対応が適切だったかどうかを検証する第三者委員会(委員長・青島伸雄弁護士)は28日午前、第3回会合を開き、中間報告書の取りまとめに向けて議論した。 会合は冒頭以外は非公開。難波喬司副知事は冒頭のあいさつで、中間報告案の作成に尽力した委員らに謝意を示した。熱海市職員への聞き取りが終了していないため、最終報告書の取りまとめが5月以降となる見通しになっていることなどを受け、同市の金井慎一郎副市長は「市として事実関係の確認が遅れ、申し訳ない。速やかに市の見解を出せるように努力する」と述べた。 第三者委員会はこれまでに2回の会合を開催。当時の
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熱海土石流「県の関与、不十分」 第三者委、中間報告へ最終調整
熱海市伊豆山の大規模土石流で、静岡県の行政手続きのあり方を検証する第三者委員会が、県が市に対し助言や指導をより積極的に行うべきだったとの内容を中間報告に盛り込む方向で最終調整していることが、27日までに関係者への取材で分かった。 土石流の起点となった盛り土の崩落を巡っては、難波喬司副知事がこれまでに行政にも責任の一端があるとの認識を示していて、第三者委も改めて指摘する形となる。第三者委は28日に会合を開いて議論した上で、中間報告を取りまとめる。ただ、熱海市職員への聞き取りは終わっておらず、最終報告の取りまとめは5月以降になる見通し。 一方、県による県職員へのヒアリングでは、県の部署間の連
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熱海・伊豆山地区の支援へ223万円寄付 地元観光団体など
大規模土石流に見舞われた熱海市伊豆山地区を支援しようと、同地区や隣の泉地区、神奈川県湯河原町の観光関連団体など計6団体がこのほど、伊豆山地区連合町内会に223万円余りを寄付した。 伊豆山温泉旅館組合・観光協会と湯河原温泉観光協会の代表者が市内のホテルで、連合町内会の当摩達夫会長に寄付金を贈呈した。浄財は団体加盟の宿泊施設に設けた募金箱などに寄せられた。 湯河原温泉観光協会の石田浩二会長は「少しでも被災者のためになればと思い、募金活動を行った。有効に活用してほしい」と話した。当摩会長は多くの団体からの寄付に感謝し、「発生から8カ月がたち、伊豆山に戻りたいと願う被災者の声は増えている。復興に
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熱海土石流 残存盛り土「県と対応」 市長、旧所有者指導も視野
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点となった逢初(あいぞめ)川源頭部で崩れずに残っている盛り土について、斉藤栄市長は25日の定例記者会見で「すぐに崩れる状況ではないが、安全を確保したい」と述べ、近く公表される県の安定度調査の結果を踏まえ、県と連携して対応する考えを強調した。 源頭部には、推定約2万立方メートルの盛り土が残っていて、二次災害を心配する住民は少なくない。斉藤市長は「工学的な調査結果が出ないとどうすべきか判断できない」としつつ、「残った盛り土を取り除いた方が良いということになれば(盛り土を造成した旧土地所有者に)指導する必要がある」と述べた。 難波喬司副知事は3日の県議会一般質問で
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元社員証言「現所有者、危険認識」 熱海土石流百条委、産廃の埋め戻し指示
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会の調査特別委員会(百条委員会、稲村千尋委員長)は18日、前日に続き参考人招致を行った。起点になった盛り土を含む土地の現所有者が経営するグループ会社の元社員は、現所有者が盛り土崩落の危険性を認識していたと証言し、起点付近に産業廃棄物を埋めるようグループ会社の従業員に指示していたことを明かした。 現所有者は2011年2月、盛り土を造成した神奈川県小田原市の不動産管理会社から約35万坪(約1・2平方キロ)の土地を3億円で購入。元社員は盛り土の崩落対策について行政と協議し、その内容を現所有者に伝えていたという。しかし「全く聞く耳を持たなかった」と述べた。
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悲しみ越え卒業式 熱海・伊豆山小7人門出 2カ月間他校に通学
大規模土石流に見舞われた熱海市伊豆山の伊豆山小で18日、卒業式が行われ、児童7人が学びやを巣立った。「勉強して頼りになる大人になりたい」「中学ではスポーツにも挑戦したい」-。被災地の復興とともに未来に向けて新たな一歩を踏み出した。 式は校舎内のホールで行った。教員や保護者が見守る中、卒業児童は名前が読み上げられると一人ずつ壇上に進み、国原尋美校長から卒業証書を受け取った。国原校長は昨年7月に起きた土石流に触れ、「悲しみに包まれたが、みんなは地域に勇気を与える存在になる。自分を信じて人生を歩んでほしい」とエールを送った。 同校の児童は土石流の影響で昨年8月末から約2カ月間、約7キロ離れた市
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盛り土造成の「現場責任者」、関与を否定 熱海土石流百条委
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点となった盛り土に関する静岡県や市の公文書で、盛り土造成の現場責任者とされている男性が17日、市議会の調査特別委員会(百条委員会、稲村千尋委員長)の参考人招致に応じた。男性は当時土地を所有していた不動産管理会社(神奈川県小田原市)に勝手に名前を使われ、造成工事には関与していないと主張した。また、現土地所有者に盛り土の防災工事を依頼され、一部を施工したが、工事代金が支払われていないことも明かした。 男性はビデオ会議システムで質疑に応じた。2007年3月に不動産管理会社が市に提出した盛り土造成の届出書で、男性は現場責任者と記載されていたが、「自分の名前が記載されて
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警戒区域、早期解除を 熱海土石流の被災者団体 市長に要望
熱海市伊豆山の大規模土石流で、長期避難する被災者団体「警戒区域未来の会」のメンバー約20人が17日、市が災害対策基本法に基づき設定した警戒区域の早期解除などを求める要望書を斉藤栄市長に提出した。中島秀人代表は「復興に向けて早く元通りの生活に戻してほしい」と訴えた。 主な要望内容は警戒区域の早期解除のほかに、復興計画に被災者の声を反映する組織体制の構築、帰宅するまでの補償制度の拡充の3項目。被災者の中には家屋被害を免れたが、自宅が警戒区域内にあるため帰宅できない人も少なくない。市は現在、警戒区域の解除時期を示していないため、被災者は避難生活長期化に伴い経済的負担が増大することを不安視している
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盛り土規制条例可決 許可制、懲役刑も 静岡県議会、7月施行
熱海市伊豆山の大規模土石流を受け、静岡県が制定を目指していた盛り土規制条例案について、県議会は17日、全会一致で可決した。一定規模以上で盛り土を行う場合、県の許可が必要となり、違反者には最長2年の懲役刑を科す。土石流発生から1年となる直前の7月1日に施行する。 盛り土の面積が千平方メートル以上か、盛り土量が千立方メートル以上が対象。盛り土量を記載した管理台帳の作成や、土壌、水質の定期的な検査などを求める。無許可や命令違反の盛り土をした場合、地方自治法上限の「懲役2年以下または100万円以下の罰金」を科す。 従来、盛り土に関する規制は県土採取等規制条例に基づく届け出制だった。罰金も20万円
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盛り土隣接の分譲地「前所有者指示で産廃」 元従業員男性が証言 熱海土石流百条委員会
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会の調査特別委員会(百条委員会、稲村千尋委員長)は17日、土石流の起点周辺の開発などに関わった参考人を招き、当時の事情を聴いた。崩落した盛り土部分に隣接する分譲地の造成を行った業者の元従業員の男性は、産業廃棄物を現場に埋めていたことを証言で明らかにした。 元従業員は盛り土部分を含む土地を2011年まで所有していた不動産管理会社(神奈川県小田原市)の代表に01~02年に直接雇用されていた。 元従業員は当時、分譲地の擁壁の建設に携わり、代表の指示を受け、事故で大破した4トンダンプを作業員が現場に埋めていたのを目撃したという。分譲地には現在、住宅が数軒建つ
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熱海土石流 盛り土届け出時の市職員ら追加招致 百条委、4月に
熱海市伊豆山の大規模土石流に関する市議会の調査特別委員会(百条委員会)は15日、各会派の代表者らによる非公開の会合を開き、土石流の起点になった盛り土の届け出直前に当選した斉藤栄市長をはじめ、手続きなどに関わった市や県の職員らを参考人として4月7、8の両日に追加招致する方針を固めた。 百条委は市や県に対し、盛り土造成の経緯などに関する質疑を文書で行った。小委員会はその回答内容を踏まえ、市の元、現職員のほか、県の幹部職員、盛り土の設計関係者ら計10人ほどを参考人として呼ぶことで合意した。 盛り土造成を巡る手続きや指導には、市や県の複数の部署が関与していた。しかし、関係者によると、県の文書回答
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社説(3月16日)盛り土規制強化 国県連携で対策確実に
熱海市伊豆山で昨年7月に発生した大規模土石流を踏まえ、政府は盛り土規制強化のための法案を閣議決定した。指定区域内の盛り土を許可制とし、違反を厳罰化するなどで、今国会での成立と来年夏の施行を目指す。 静岡県も盛り土に特化した条例の制定を進めるほか、通報窓口「盛り土110番」を開設した。来年度は関連業務を一元的に担う盛り土対策課も新設するなど、監視や規制の強化に本腰を入れている。国と連携し、実効性が高い対策を確実に講じるべきだ。 災害関連死を含め27人が死亡、1人が行方不明になっている伊豆山の土石流は、不適切に造成された起点の盛り土が被害を拡大したとされる。盛り土は現場の土地用途によって適用
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熱海土石流訴訟 5月18日初弁論
熱海市の大規模土石流を巡り、被災住民や犠牲者遺族が起点となった土地の現旧所有者らに損害賠償を求めた訴訟で、静岡地裁沼津支部は14日、第1回口頭弁論の期日を5月18日に指定した。原告側弁護団への取材で分かった。 住民らは昨年9月に提訴。原告は当初70人だったが、84人に増えた。請求の総額は約58億円。 住民らは、現旧所有者は起点の盛り土が崩落する危険があると認識していたのに放置したと主張。現旧所有者側は争うとみられる。
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癒やしのフルートで「勇気を」 視覚障害のプロ奏者・綱川さん 熱海の被災地に光 震災機に全国巡り10年
土石流被害のあった熱海市などで音楽演奏を通じ被災者支援に取り組む盲目のプロのフルート奏者がいる。生まれつき網膜色素変性症の静岡市清水区の綱川泰典さん(45)。20代前半で視力を失った時、音楽が心の支えになったことから「自分の音色で似た境遇の人に勇気を与えたい」と語る。全国の被災地を訪れ、活動は今年で10年目を迎えた。 1月中旬、熱海市のいきいきプラザの一室に綱川さんの透き通るようなフルートの音が響き渡った。耳を傾けていたのは昨年7月に同市伊豆山地区で起きた大規模土石流の被災者ら約50人。「フルートを聴いている時は災害のつらさを忘れられた」。クラシックなど7曲に聞き入りながら目に涙を浮かべる
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警戒区域住民「未来の会」発足 熱海土石流、復興計画「声反映を」
熱海市伊豆山の大規模土石流で、市が災害対策基本法に基づき設定した「警戒区域」に自宅がある被災者らが11日、市の復興計画に住民の意見や要望を反映させることなどを目的にした「警戒区域未来の会」を発足させた。同日、市役所で記者会見を開いた中島秀人代表(53)は「市と対立するのではなく、協力してより良い計画をつくりたい」と語った。 同会には警戒区域内の住民23世帯、約50人が参加している。被災の程度はさまざまだが、区域は原則立ち入り禁止のため、自宅が無事でも帰宅することはできない。住民は長期避難世帯に認定され、応急仮設住宅で暮らしている。 市は復興計画策定に向けて検討委員会を設置した。しかし、1
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熱海土石流 現旧所有者訴訟、5月に初弁論
熱海市で昨年7月に発生した大規模土石流を巡り、被災した伊豆山地区の住民や犠牲者遺族らが起点となった土地の現旧所有者らに損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が、5月18日に指定される見通しであることが11日、原告側弁護団への取材で分かった。静岡地裁沼津支部が近く確定する。 昨年9月の提訴後に遺族14人が加わり、原告は計84人に増えた。また、被告に現所有者の関連会社1社を追加。請求額は計約58億円に増えた。 住民らは起点の土地での不適切な盛り土が被害を拡大させたと主張。現旧所有者は盛り土が崩落する危険があると認識していたとも訴えている。 訴状によると、昨年7月3日の土石流で26人が死亡し、
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流出した山石、港復活の礎に 熱海伊豆山沖、伊勢エビ魚礁に活用
熱海市伊豆山で昨年7月に発生した大規模土石流で、大量の土砂が流れ込んだ伊豆山港の漁業の復旧策として、静岡県は10日までに、土石流で流出した山石を活用して小型の魚礁を造る方針を固めた。特産の伊勢エビなどの漁獲量が落ち込み苦境に立たされている漁師の生産性向上を図る。工事は早ければ4月上旬に始まる見通し。 魚礁整備は、県が地元漁師に行ったヒアリングで提案があった。県によると、熱海港芝生広場に仮置きしている山石のうち、約50立方メートルを伊豆山港の北東数キロ沖の海底に積み上げて、伊勢エビなどが住み着く魚礁にする。 土石流では約1万8千立方メートルの土砂が海に流れ出た。県は昨年10月までに伊豆山港
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残土処理、発生者責任を明確化 政府 省令見直し方針
斉藤鉄夫国土交通相は10日の参院予算委員会で、熱海市伊豆山の大規模土石流を受けた盛り土規制の一環として、建設工事で発生する残土の発生者責任を明確化させる方針を示した。今国会で成立を目指す盛り土規制法に加えて資源有効利用促進法の省令などを見直し、元請け業者に搬出先が適正かどうか確認させる仕組みを構築する。国民民主党会派の無所属山崎真之輔氏(静岡選挙区)の質問に答えた。 土砂の搬出先での盛り土行為に関し、盛り土規制法案に基づく都道府県知事などの許可の有無を業者に事前確認させる。公共工事は発注段階で搬出先の指定を徹底するとした。 同法案は都道府県などが指定した区域内の盛り土を許可制とし、全国一
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熱海土石流 行政の責任は「司法の判断仰ぐ」 市長答弁
熱海市伊豆山の大規模土石流をめぐる市の責任について、斉藤栄市長は9日の市議会2月定例会で、「当事者の行政自身が判断すべきものではない。最終的には司法の判断を仰ぐもの」との認識を改めて示し、行政対応の検証中であることも踏まえ明言を避けた。橋本一実氏(熱海市民クラブ)の一般質問に答えた。 斉藤市長は昨年10月の記者会見でも同様の見解を示していた。一方、起点の盛り土に関する行政の不作為を指摘する被災者は多い。斉藤市長は、県の行政対応検証委員会や市議会の調査特別委員会(百条委員会)の検証に協力することが「今果たすべき役割。結果を真摯(しんし)に受け止めて再発防止に生かさなければならない」と強調した
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熱海土石流起点の盛り土 崩落の恐れ「認識せず」 市長答弁
熱海市伊豆山の土石流の起点となった盛り土について、斉藤栄市長は9日の市議会2月定例会の一般質問で、市内の広範囲で断水を引き起こした2019年の台風19号で土砂崩落が確認されなかったことを踏まえ「盛り土が大規模崩落を起こす恐れがあるとの認識はなかった」と述べた。小坂幸枝氏(日本共産党)への答弁。 市のハザードマップによると、被災地の一部は土砂災害警戒区域に指定されているが、盛り土部分は警戒区域になっていない。一方、県と市が公表した行政文書では不適切に造成された盛り土の崩落により住民の生命、財産に危険を及ぼす可能性があるとの認識を共有していたことが明らかになっている。小坂氏は「盛り土の危険性を
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熱海土石流 インフラ全復旧「2年超」 市長、仮設家賃補償も視野
熱海市の斉藤栄市長は8日、大規模土石流に見舞われた同市伊豆山の被災地の復興について、「インフラを全て復旧するには少なくとも2年以上は必要だ」と述べ、応急仮設住宅の家賃補助期間とされている2023年8月までの完了は困難との認識を示した。その上で、被災者の家賃補償などについて国や県と相談し、被災者に負担が生じないようにする考えを示した。市議会2月定例会で竹部隆氏(熱海成風会)の一般質問に答えた。 市は被災地の復興の理念を定める復興基本計画を5月ごろ、都市整備やインフラ整備の方向性を示す復興まちづくり計画を8月までに策定する方針。ただ、策定作業とは別に測量や地質調査、用地交渉など多岐にわたる業務
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不適切盛り土 静岡県内189カ所 県点検結果
静岡県は8日、県議会建設委員会で、熱海市伊豆山の大規模土石流を受けて行った県内の盛り土の点検結果を公表した。189カ所について法令や災害防止上の不備があった。熱海土木事務所に新設する伊豆山地区復興支援課について、市が実施する復興計画が円滑に進むよう技術的な後押しや国の支援事業の情報提供を行うことも明らかにした。 県によると、2000年以降に形成された盛り土1650カ所を点検した。問題が判明した189カ所のうち、排水施設の不備など災害対策上必要な措置が取られていない盛り土が118カ所存在した。 このうち、87カ所については所有者や開発行為者に是正指導をした。残る31カ所については、行為者が
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熱海市長 残った盛り土「被害可能性低い」 土石流起点
熱海市伊豆山の大規模土石流の起点となった逢初(あいぞめ)川源頭部で崩れずに残っている盛り土について、斉藤栄市長は8日の市議会2月定例会一般質問で「国の砂防工事により、仮に盛り土が崩落しても一定程度、受け止められる。直ちに下流域住宅地に被害を与える可能性は低い」との認識を示した。稲村千尋氏(熱海成風会)への答弁。 県の推定では、源頭部には約2万立方メートルの盛り土が残っている。斉藤市長は、監視体制や緊急時の情報周知体制が構築できているとしつつ、県が実施している盛り土の安定性評価の結果を踏まえ、「県と連携し適切に対応したい」と述べた。 国の砂防工事は、昨年12月下旬までに既設の砂防ダムに堆積