テーマ : 熱海土石流災害

初弁論 現旧所有者ら争う姿勢 熱海土石流損賠訴訟

 熱海市伊豆山の土石流災害を巡り、遺族と被災者ら84人が、起点の盛り土部分を含む土地の現旧所有者らに計約58億円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が18日、静岡地裁沼津支部(古閑美津恵裁判長)であり、現旧所有者ら被告側は請求棄却を求めて争う姿勢を示した。現所有者側は「盛り土が崩落して土石流が生じる危険性を予見することなどできず、過失は認められない」と強調した。

熱海市伊豆山の土石流災害をめぐる初弁論のため、静岡地裁沼津支部に入る遺族ら=18日午前9時50分ごろ、沼津市御幸町
熱海市伊豆山の土石流災害をめぐる初弁論のため、静岡地裁沼津支部に入る遺族ら=18日午前9時50分ごろ、沼津市御幸町
熱海土石流を巡る主な経過表
熱海土石流を巡る主な経過表
熱海市伊豆山の土石流災害をめぐる初弁論のため、静岡地裁沼津支部に入る遺族ら=18日午前9時50分ごろ、沼津市御幸町
熱海土石流を巡る主な経過表

 旧所有者らは詳しい主張を追って行うとしている。
 土石流災害は2021年7月3日に起きた。災害関連死を含め27人が死亡し、1人が行方不明になっている。遺族ら70人が同9月、違法な盛り土が原因の「人災」だとして、起点部分の土地の現旧所有者や造成に関わった事業者ら12の個人・企業を提訴した。22年2月、遺族14人が原告に加わり、現所有者が設立した企業1社を被告に追加した。
 原告側は訴状で、旧所有者を「盛り土を適切に施工すべき注意義務を怠った」などと指摘。現所有者については、13年に県に対して「土砂崩壊による二次災害防止の安全対策工事を施工する」と書面で伝えていたことを踏まえ、危険性や工事の必要性を認識していながら放置したと批判した。
 現所有者は答弁書で、この書面の表題は「産廃処理について」であり、盛り土の処理に関する書面ではないと説明した。そもそも前所有者から盛り土の存在を聞いておらず、行政職員でさえ崩落の危険性を認識していなかったと反論した。また、現所有者の関連会社3社は「崩落地の占有者では一切ない」などとして、弁論を分離して速やかに請求を棄却するよう求めた。
 終了後、原告団が記者会見を開いた。「熱海市盛り土流出事故被害者の会」の瀬下雄史会長は「裁判を通じて原因の究明と責任の追及をしていく」と述べた。
 土石流災害で、一部の遺族は現旧所有者を業務上過失致死容疑などで刑事告訴し、県警が捜査している。

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