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熱海の被災宅地復旧工事費90%補助 被災者「説明不足」/市長「不安踏まえた」

 熱海市伊豆山の土石流被災地の宅地整備に関し、被災者が復旧工事を行い、市が工事費の90%(上限1千万円)を補助する制度を設けたことについて、斉藤栄市長は26日の定例記者会見で「被災者の不安を踏まえ、より良い方式に変えた。反対の声は聞いていない」との認識を示した。ただ、被災者からは「寝耳に水。もっと丁寧に説明すべきだ」と不満の声が聞かれた。
 市はこれまで、避難先から帰還することを前提に被災者の宅地を買収し、一体的な住宅地を整備して分譲する方針だった。しかし被災者から「分譲価格が不透明」「希望する分譲地が他の被災者と重なった場合はどうなるのか」などと不安や疑問が相次いでいた。
 市によると、買収・分譲方式は市が指定したエリア以外の土地や帰還しない被災者の土地は対象外だった。しかし、帰還する意思がない人の土地も市が買い取ると認識していた被災者もいて、市の説明不足を指摘する声が複数から上がっていた。
 今回の補助金方式は、被災エリアの安全対策を図ることを目的に、帰還しない人の土地も補助対象にする。市は事業費として約2億6千万円を想定し、市議会6月定例会に補正予算案を提出する。
 市の方針転換に、70代の被災者男性は「説明もなく、宅地復旧費の1割を負担しろと言われても納得できない。この状況を招いたのは私たちではなく、行政ではないか」と不満を口にした。50代の遺族男性は「被災者の声を反映したというが、そもそも復興まちづくり計画に私たちの声を反映し、十分な説明をしたとは思えない」と話した。
 斉藤市長は、計画策定時に「多くの人の意見を吸い上げたと思っているが、十分でなかったところもあったかもしれない」と述べ、今後、懇話会を設置して計画の進捗(しんちょく)を管理し、住民の意見を聞く場を設けたいとした。市は補助金制度に関する説明会を6月下旬に開く予定。

 土石流受け 盛り土規制法施行
 「再発防止に効果」 熱海市長
 熱海市伊豆山の大規模土石流をきっかけに成立し、26日に施行された盛り土規制法について、同市の斉藤栄市長は同日の定例記者会見で、「包括的に盛り土を規制する内容で、再発防止の意味は大きい。大変喜ばしい」と述べた。
 今後、県などが進める規制区域の設定については「県が原案を作り、市町と協議して設定していくことになると思う。できるだけ早く進めてほしい」と要望した。盛り土規制法だけで悪質業者を排除できないとも指摘し、不適切な開発行為や土砂災害を防止するための既存の法律を積極的に活用する必要性を強調した。

 規制区域「早期に」 知事
 川勝平太知事は熱海市伊豆山で2021年7月に発生した土石流災害をきっかけに制定された盛り土規制法が26日に施行されたのを受け同日、「法の求める基礎調査を行い、規制区域の指定を早期に行うよう努める」とのコメントを発表した。「盛り土規制条例と盛り土規制法を適切に運用し、県民の安全と安心の確保に全力で取り組む」との姿勢も示した。

 「連携して対策」 国交相
 熱海市伊豆山で2021年7月に発生した土石流災害をきっかけに制定された盛り土規制法が26日施行されたことを受け、斉藤鉄夫国土交通相は同日の閣議後会見で「危険な盛り土によって人命が失われることがあってはならない。関係省庁や自治体と連携して対策に取り組む」と述べた。
 さまざまな場面に応じたガイドラインを策定したと説明し「地域住民や自治体の盛り土への関心は非常に高く、同法がしっかり効果を発揮するよう自治体や農林水産省とも連携していく」と強調した。
 同法では盛り土の崩落によって人家などに被害が及ぶ恐れがある場所を都道府県などが規制区域に指定して許可や監視を担う。違反した場合法人に最高3億円の罰金を科すなど、罰則の強化も盛り込まれた。

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