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熱海土石流巡り、不鮮明な重要文書 第三者委に未提出で検証されず 静岡県「見落とし」主張

 熱海市伊豆山で2021年7月に盛り土(残土処分場)が崩落して28人が死亡した大規模土石流を巡り、白黒化して一部判読できない状態で開示された静岡県の行政文書が、県の設置した行政対応検証委員会(第三者委員会)に提出されず、検証されていなかったことが24日までの県への取材で分かった。同文書内では、検証委が重点的に検証した県土採取等規制条例(権限は市)の規制の実効性を疑問視していたほか、より厳しい規制ができる砂防法(権限は県)の開発規制区域「砂防指定地」の標識を撮影した写真も掲載され、黒く塗りつぶすような加工がされていた。文書データを保有していた県の担当者は「(データを保管したパソコンの)フォルダーを見落とした」と文書を提出しなかった理由を説明した。

行政対応検証委員会で検証されなかった静岡県の文書(A283)。悪質な開発行為に対する規制方法を検討した結果が記されていた
行政対応検証委員会で検証されなかった静岡県の文書(A283)。悪質な開発行為に対する規制方法を検討した結果が記されていた
検証委で検証されなかった文書(A283)の主な記載内容
検証委で検証されなかった文書(A283)の主な記載内容
行政対応検証委員会で検証されなかった静岡県の文書(A283)。悪質な開発行為に対する規制方法を検討した結果が記されていた
検証委で検証されなかった文書(A283)の主な記載内容

 問題の文書「A283」は逢初(あいぞめ)川上流域で開発が本格化した07年4月、河口で泥水が確認されたため県と市で流域を調査した際の記録。泥水の発生源が上流域の宅地造成地で、山肌が露出し多少の雨でも泥水が流出するという調査結果を記していた。
 検証委は06年以降の行政対応を検証対象とし、この文書は対象に含まれていた。検証委の報告書は文書に記載された泥水流出の事実や調査結果に一切触れていない。県は本紙の請求に応じて今年2月に文書を開示。その際、不鮮明な文書をホームページで公表し、検証委の委員に意向を確認しないまま「検証結果に影響を与えない」とする見解も同時に発表していた。
 文書には「既存の造成地は(中略)問題の多いもの」と書かれ、関係法令の規制を検討した結果として県土採取等規制条例について「取り締まりの決め手がない」と記載。森林伐採や土砂の掘削が規制対象になると書かれた砂防指定地の標識の写真が載っていたが、当初の開示文書は黒く加工されて読み取れなくなっていた。
 県によると、元のカラー文書は熱海土木事務所が作成、保管し、21年の土石流発生直後に他の開示文書と一緒に電子化して本庁に送った。受け取った本庁の担当者がフォルダーを見落としたとしている。

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