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特集 : 熱海土石流災害

社説(7月3日)熱海土石流1年 全容解明と支援 確実に

 熱海市伊豆山の大規模土石流はきょう、発生から1年。災害関連死を含む27人が犠牲となり、いまだに1人の行方が分かっていない。県や市は「人災」との指摘が強まる大災害の全容解明とともに、被災者と信頼関係を築きながら、生活再建への支援を確実に進めてほしい。
 土石流災害を受け、1日に県盛り土規制条例が施行され、5月には全国一律基準による包括規制を目的に盛り土規制法が成立した。実効性を高めるため、周知徹底や関係機関の連携、監視の強化などが今後の鍵となる。
 盛り土規制条例は、広さ千平方メートル以上か、土砂量千立方メートル以上の盛り土を行う場合は県の許可制になり、違反者には最長2年の懲役を科す。従来、盛り土は県土採取条例に基づく届け出制で、罰金も20万円以下で抑止力が弱いとされていた。
 3月の制定以降、周知期間が短いことや制度の複雑さから県に相談が殺到し、6月下旬までに約300件が寄せられた。まずは丁寧で分かりやすい説明を心掛けてほしい。

 盛り土規制法は、来春までとされる施行に向け、基本方針案などが9月にも公表される見通しだ。実務を担う自治体の準備が円滑に進むよう、国の積極的な情報公開が欠かせない。地方では土木系の専門職が慢性的に不足している。人材の確保や育成支援も求めたい。
 土石流を巡る県の検証委員会は5月にまとめた最終報告で、悪質な開発行為を繰り返す業者に適切な処置を行う機会は何度もあったとして、県と市の対応は「失敗だった」と結論付けた。不備がある申請書類を受理するなど、市の初期対応のまずさが失敗の最大の要因だと指摘した。
 行政側に被害が拡大した責任の一端があることを認めた形で、県と市は重く受け止めなければならない。市は土石流の起点となった盛り土の元所有者である神奈川県小田原市の不動産管理会社から2007年3月に盛り土造成の申請があった際、重要事項の未記載が多数あるにもかかわらず、是正を求めず受理した。
 盛り土が不適切だとして、市がいったんは発出を決めながら最終的に見送った措置命令について、報告は「発出を検討する必要があった」と言及し、県は積極的に関与すべきだったとした。県と市の連携不足は明らかだ。
 市議会が設置した調査特別委員会(百条委員会)は3月から参考人招致、5月から証人尋問を続けているが、真相解明は遅々として進んでいない。盛り土を含む土地の現旧所有者はいずれも、管理責任を否定した。行政、民間の関係者ともに他者への責任転嫁の発言が目立つ“泥仕合”で、遺族からは「まるで小学生のけんかだ」と批判が噴出した。

 百条委は今月以降、盛り土の行政手続きや指導に関わった市と県の職員に対する証人尋問を実施する。委員会の真価が問われる機会となろう。
 被災現場である「警戒区域」を離れ、市内外で避難生活を送っているのは約130世帯。市が4月に行った個別面談による意向調査では、「伊豆山に戻りたい」と答えたのが約5割、「戻らない」は3割、考えがまとまっていないのが約2割だった。
 5月下旬、行政が用地買収して宅地や道路を整備し、宅地を再分譲する「小規模住宅地区改良事業」を採用すると市が避難住民に説明した際、唐突さへの違和感を語る人もいた。行政側は被災者の声に十分耳を傾け、対話を重ねる必要がある。
 土石流を巡っては遺族らによる損害賠償請求訴訟や、県警による刑事立件に向けた捜査も進む。土砂崩落の起点となった土地の現旧所有者が土石流の発生を予見できていたかどうかが争点だ。行政の検証と合わせ、被害者が前を向き、二度と悲劇を繰り返さないために、経緯の真相を明らかにしなければならない。

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