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熱海土石流訴訟、争点は 審理長期化の見通し、弁護士が解説

 18日に第1回口頭弁論が行われた熱海市伊豆山の土石流災害を巡る損害賠償請求訴訟の争点となりそうなポイントについて、日本弁護士連合会災害復興支援委員会副委員長の永野海弁護士(静岡県弁護士会)に解説してもらった。
 盛り土の施工事業者に対しては、民法709条の不法行為責任追及となり、施工に問題があったことの立証だけでなく、盛り土が土石流として流出することを予見できたかが大きな争点となります。
 過去の裁判例(飛騨川バス転落事故、名古屋高裁判決1974年)では、当該災害の具体的な発生予測ができたかどうかまでは求めておらず、予見可能性の立証のレベルを緩和していることも参考になります。また、自然災害の予見可能性の有無は当事者の認識ではなく、事故当時の科学的知見をもとに判断されることも重要です(高槻市サッカー大会落雷被災事件、最高裁判決2006年)。
 一方、盛り土の土地所有者や占有者に対しては、盛り土が「工作物」と認められれば、土地工作物責任(民法717条1項)の追及が可能となります。
 この場合、今回の盛り土の設置や保存の上で「通常有すべき安全性」を欠いていたか、つまり瑕疵(かし)があったかどうかが大きな争点となります。瑕疵の議論の中では、瑕疵が土石流の発生にまでつながるものだったかどうかや、降雨の状況、地形地質の問題まで幅広く議論されることが想像されます。
 また、土地工作物責任では、土地工作物の占有者に第一次的な責任があるため、今回の盛り土を誰が実質的に占有していたのかも争点になるでしょう。
 民法709条、717条1項いずれの責任追及の場合でも、今回の大雨が予想をはるかに超えるものとして、不可抗力としての責任免除や減額を求める被告側からの反論も予想されます。浅間山リフト擁壁崩落被災事件の第2次訴訟の判決(静岡地裁1990年)でも、災害の状況を総合して業者の責任割合を減額しているので、この点も注目されます。
 今後、行政に対する責任追及が追加される可能性もあります。被害者の損害を算定する上でも、伊豆山地域を離れて不自由な生活を余儀なくされ、帰還のめども不明であることが慰謝料上考慮されるかなどについても、福島第1原発事故裁判で既に判決が出ていますのでポイントです。いずれにしても、審理の長期化が見込まれます。

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