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上流域砂防規制「地権者の同意必要」 土石流で露呈「開発優先」残る矛盾【参院選しずおか】

 昨年7月に起きた熱海市伊豆山の大規模土石流で、崩落した盛り土(積み上げた残土)のあった逢初(あいぞめ)川上流域の現旧土地所有者はともに開発に意欲的だった。国や静岡県は残土搬入前の1999年、上流の地権者の「私権」を優先して砂防法に基づく残土搬入や盛り土の規制を見送り、放置していた。国は発災後も地権者の意向を重視する方針を変えていない。「開発が優先される規制」という国政の矛盾は残ったままだが、参院選で取り上げられていない。

逢初川上流域の砂防規制見送りの経緯
逢初川上流域の砂防規制見送りの経緯
逢初川上流の砂防ダムを越えて下流の集落を襲った土石流=昨年9月、熱海市伊豆山(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
逢初川上流の砂防ダムを越えて下流の集落を襲った土石流=昨年9月、熱海市伊豆山(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
逢初川上流域の砂防規制見送りの経緯
逢初川上流の砂防ダムを越えて下流の集落を襲った土石流=昨年9月、熱海市伊豆山(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)

 「法的要件としていないが、(上流域の地権者の)同意を得ることが望ましい」。斉藤鉄夫国土交通相は6月下旬の記者会見で、砂防規制しようとする場所の地権者同意取得の考えを問われると、従来の方針を繰り返した。国交省の担当者は「私権制限がかかるので運用としては同意を取ってもらっている」と説明している。
 だが、逢初川上流のように地権者が開発に意欲的なら「規制の同意が得られる見通しは立たない」(県関係者)のが実情だ。斉藤国交相は会見で「緊急性が高いと判断される場合には同意を得ずに(規制範囲の)指定を進めることも重要だ」とも付け加えたが、上流域の搬入土砂量が砂防ダムの容量を上回り、大惨事に至った逢初川の「緊急性」には触れなかった。
 規制範囲を決めるのが国と県のどちらなのかもはっきりしない。砂防法には範囲を決める法的権限が国にあると記されているが、法的権限のない都道府県が現地を調べて範囲を国に申請する仕組みになっている。国交省は「地域の実情をよく知る県が判断する」、県は「範囲の決定権は国にある」と互いに責任を押し付け合う。
 静岡産業大の小泉祐一郎教授(公共政策学)によると、1897年(明治30年)に制定された砂防法は国と自治体が行政機関として一体的だった戦前の体制を前提にした仕組み。小泉教授は「古い仕組みで責任の所在が曖昧になっている」と問題視し、「法改正で都道府県に範囲決定の権限を移譲すべきだ」と提案する。

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