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無責任体質に被災者憤り 熱海土石流1年 関係者核心語らず【残土の闇 警告・伊豆山㉟/終章 めぐる7・3㊤ 】

 災害関連死を含めて27人が死亡し、1人が行方不明になった熱海市伊豆山の大規模土石流は3日で発生から1年。逢初(あいぞめ)川上流の盛り土(積み上げた残土)が崩落して下流の集落を襲った未曽有の「人災」。盛り土の現旧土地所有者や造成業者、行政の対応が厳しく問われたが、関係者は核心を語らず、誰も法的責任を認めていない。再び「7・3」はめぐる。真相解明を望む被災者の思いを置き去りにしたまま-。

百条委員会が開かれた熱海市議会議場(下)と土石流起点で崩落した盛り土(右)のコラージュ
百条委員会が開かれた熱海市議会議場(下)と土石流起点で崩落した盛り土(右)のコラージュ


 発災から10カ月が過ぎた今年5月、熱海市議会の調査特別委員会(百条委員会)。盛り土の現旧所有者が初めて公の場で証言に立った。うそをつけば罰せられる証人尋問。大量の残土が搬入され、盛り土が造成された2009~10年頃に土地を所有していた神奈川県小田原市の不動産管理会社代表(72)は「土地を貸した。盛り土の行為者ではない」と管理責任を否定した。
 追及した橋本一実市議が造成業者との会話とみられる音声データを突き付け、「搬入を指示したのでは」と問い掛けると、いら立ちを隠さずに「分からない」「記憶にはない」と繰り返した。
 11年に土地を購入した現所有者の実業家(85)は「現地へ行ったことがない」「盛り土があったという認識がなかった」と関与を全否定した。別の関係業者は「(現所有者が)現地で工事の指図をしている」と食い違う証言をしている。
 5月に審理が始まった訴訟を意識してか、現旧所有者以外の工事関係者も、届け出と異なる高さに残土を積み上げた行為を誰一人認めず、事実関係すら明確になっていない。
 責任逃れの姿勢は行政も同じだ。県は「県と市の対応は失敗」と見解を示す一方で「県に法的な瑕疵(かし)や不作為はなかった」とも付け加え、巧妙に法的責任の回避を図っている。砂防ダム上流の砂防規制を放置しダム容量を上回る残土搬入を許したが、ダム管理者として「人工物の盛り土は所管外」との主張も変えていない。
 熱海市の斉藤栄市長は「責任を感じている」としながらも、百条委の結論が出ていないことを理由に行政対応の総括を先送りする方針を示した。結論は9月に控える市長選に間に合わない可能性もあり、市議から批判されている。避難指示のタイミングの妥当性や被災者支援の在り方もまだ検証していない。
 現状は遺族の目にどう映るのか。母親のチヨセさん=当時(82)=を亡くした鈴木仁史さん(57)は「これまでの報道を腹立たしい気持ちで見ている。現旧所有者の主張は全くつじつまが合わない。正直に語り、責任を認めてほしい」と憤る。遺族や被災者に両者から直接の謝罪が一切ないまま1年が過ぎようとしている。責任を押し付け合うような行政にも「仕事に真摯(しんし)に向き合ってこなかったことを反省してほしい」と訴える。
 5月の百条委。旧所有者と対峙(たいじ)した米山秀夫市議が語気を強めた。「(犠牲になった)27人なりの出来事が7月3日にあった。一瞬にして人生が変わった。その重みは避けて通れないでしょ。分かりますよね」
 旧所有者は「自分なりの検証をする」と言って議場を去った。業者や行政の無責任体質は、今も変わっていない。
 >熱海土石流1年、現場は今 理不尽な悲劇、それでも前へ【残土の闇 警告・伊豆山㊱完/終章 めぐる7・3㊦ 】

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